Work Is Play — あったらいいなを現実に—、コーポレートサイトのファーストビューに、そんなキャッチコピーを掲げるのが、株式会社WIPです。デジタルマーケティング、クリエイティブ制作を生業とするWIPは、アパレル・飲食店などの自社事業を持つ「事業会社」の一面も持っています。
今回はそんなWIPの代表松木さんに、ご自身のキャリアと、WIPを立ち上げた経緯、現在のWIPに込めた思いを聞いてみました。
Founder&CEO 松木 優(Matsuki Masaru)
1992年石川県金沢市生まれ。大学進学で上京。
東京工業大学を卒業後、2015年に株式会社セプテーニへ新卒入社。
同社では、インターネット広告運用コンサルタントとして、主要WEB媒体の広告運用に従事。
退社後、デジタルマーケティングを支援するフリーランスとして活動し、株式会社LOBへ就職。(現在は楽天グループ株式会社へ吸収合併済み)
その後、2019年1月より株式会社WIPを設立。
同社では、代表取締役CEOとして、 デジタルマーケティング事業・クリエイティブ事業・ブランドプロデュース事業を遂行。
大手広告代理店からスタートアップ、そしてフリーランスへ。CEO松木のこれまで
——松木さんは石川県金沢市生まれで、大学進学に伴い上京されています。当時から起業を志していたのですか?
いえ、当時は「自分の学力で進学できるもっとも学力の高い大学へ」と思っていただけで、将来について具体的に考えていたわけではありませんでした。進学先の大学の学科に強い興味があったわけでもなかったので、大学進学後は古着屋でのアルバイト、スケボー、音楽、ファッションのような、いわゆる“カルチャー”に興味を持ち、時間と熱を注いでいました。
——当時インターンなどはしていなかったのですか?
「起業家」と言うと学生時代からスタートアップやベンチャーに興味を持ってインターンをして…というイメージがあるかもしれませんが、当時の自分はそういうものにあまり興味はありませんでした。
新卒の就職活動のとき、アルバイトとして関わっていたアパレル業界に行くのか、大学の先輩たちのように研究職を目指すのか、興味のあった広告代理店に就職するのか悩みました。研究職は飽きてしまいそうだったし、アパレルは今やるのはなんとなくもったいない。広告業界は数字を扱うので自分の得意な領域と合っていそうでしたし、市場も伸びていて、その先何をするにしても役に立ちそうな気がしたんですよね。そういう理由で、新卒で株式会社セプテーニ(以下、セプテーニ)に入社しました。
——セプテーニではどんなお仕事をされていたのですか?
セプテーニでは、広告運用のコンサルチームに所属していました。営業担当が獲得した案件を受け取り、管理画面を見ながら日々クリエイティブやターゲティング等の調整をして数字を見る仕事を担当していました。
微細な調整によって結果に明確な差が出るので面白味もあったのですが、2年ほど経つと、広告運用よりも、もっと事業サイドに関わり、事業を創ってみたいという気持ちが強くなり、次の挑戦がしたいと思い、次第に外に出たいと思うようになりました。
——その後、どのように転職活動をしたのでしょうか。
転職サイトに登録し、何社かで面接も受けました。その最中に10人ほどの規模のスタートアップで働く知り合いに「うちに来ない?」と声をかけてもらいました。
社会人経験2年だったので、「スタートアップの環境で一緒にやらないか?」と声をかけてもらえたことが嬉しくて、半ば勢いで入社を決意しました。
入社後は、広告運用のみならず、プロダクト開発のコンサルティングのPdMなど、今までとは異なる経験も任せてもらえて楽しかったのですが、カルチャー面のアンマッチを感じ、結局3週間で退職を申し出てしまったんです。
——3週間ですか?
そうです。職務経歴書に書くか悩むくらいの在籍期間ですよね(笑)。今ではこうして笑って振り返れるのですが、それまで人生の中で大きな挫折や失敗を良くも悪くもあまり味わってこなかった私にとって、短期で辞めてしまったことはすごく大きな挫折となりました。両親や友人にも言えず、2社目を退職したあと1ヶ月ほどぼーっと過ごしてしまったほどでした。
「さすがにちゃんと働かないとやばい」と思い始めていたものの、焦って次の会社を探したらまた短期離職を繰り返してしまうかもしれない。そう思って、まずはフリーランスとしてやってみようと気持ちを切り替えました。それまでのプライドを捨て、知り合いに片っ端から「仕事をください」と連絡して食いつなぎました。
——そのまま法人化して起業に至るのでしょうか。
いえ。実は違うんです。フリーランス生活は沢山の方のご協力もあり、早めに軌道に乗り、月に50~60万ほど稼げるようになりました。ですが当時の私は、営業ができるわけでもなければ、たくさんつながりがあるわけでもなかった。事業を創れるわけでもなかったので、今まで培ってきた広告運用を中心に案件を請けていました。
ただ、画面を見て広告を“いじる”しかスキルがない中でフリーランスを続けていても、伸びしろがないと感じていました。
そんなタイミングで、業務委託として手伝っていた株式会社LOB(以下、LOB)に誘っていただき、当時3人目の正社員として入社するのを決めました。
小さな会社に入ったからこそ経験できた「組織作り」と「一気通貫での広告業」
——LOBではどのような仕事を担当していましたか?
LOBは、広告のシステム開発をしている会社でした。システム開発の事業と広告事業、2つの柱があり、私は広告事業でキャッシュを作るミッションのもと働いていました。広告事業の正社員は、自分を含めて2人。そのほか10名ほどの業務委託を抱えて組織を編成し、業務を遂行していました。また、入社して半年後くらいに上司が退職してからは、広告事業の責任者もしつつ、一部プロダクト開発のPdMも担当させてもらいました。
入社して少し経ったころ、会社がExitを目指すことが決まり、事業も従業員数もものすごいスピードで拡大しはじめました。「会社ってこうやって事業が伸びてお金が回って人が増えていくんだ」と目の当たりにしたんですよね。
スタートアップ特有のスピード感、目標達成に対して手段を問わない姿勢などを肌で感じて、起業に対してさらに興味が湧きました。かなり近い距離で経営を見ることができ、自分でもできるかもしれないという自信にもつながっていきました。
——フリーランスの仕事と、LOBでの仕事にはどんな違いがありましたか?
フリーランスとして受けていた仕事とLOBで受けていた広告事業は、基本的な業務内容は同じです。でも、フリーランスが一人でできる仕事の量には限界があり、天井も見えやすい。一方LOBでは仲間を集めてどんどんチームを大きくしていけたので、できることの幅は広がっていく一方でしたし、どうやって人を動かしクオリティを担保するのかを考える力もついたように思います。最終的には業務委託メンバー含め15人ほどの組織を見る立場になったので、ゼロイチで組織を作る経験とスキルも得られました。
また、新卒で入社した大手との違いも明確に感じていました。大手の仕事は分業制で、私が担当していたのは広告事業の中の運用部分だけ。LOBは小さな組織だったので、おのずと営業・プランニング・ディレクション・納品、と多くの仕事を担当しなければならず、いわゆる“広告代理店の仕事”である一通りの業務ができるようになりました。
LOBに入る前は、フリーランスとして広告運用を担当していましたが、LOBで経験を積んだため上流から下流まで一気通貫で業務を担当できるようになり、PLを見ながら事業全体を理解し、経営についても学べた。それが後押しとなり、WIPの立ち上げを決めました。
WIPを、従業員の得意と好きを生かせる場にしたい
——WIPを立ち上げ、どのように事業を作っていきましたか?
まずは、それまでやってきた広告事業を始めキャッシュを作りました。数か月後から、自社事業としてアパレルブランド、コスメブランド、メディア、アプリ開発などさまざまな事業を立ち上げました。ただ、初期に立ち上げたもののなかにはうまくいかなかったものもあり、お金もたくさん溶かしました(笑)。
というのも、当時は、自分の好きなものをやっていたというよりは「これでお金稼ぎできるんじゃない?」みたいな下心があったんですよね。その領域や商品にたしかに興味はある。でも、自分がそこにたくさんお金を払って買うほどの熱心なファンではない。熱量も中途半端でしたし、「儲かりそう」という思考がノイズにもなっていました。だからうまくいかなかったのだろうなと、今振り返ると思います。もちろん当時は新規事業づくりに避けるリソースもなければ、単純にプロダクトを作って伸ばすという経験がなかった、というのもあります。
でも、身銭を切ってトライアンドエラーを繰り返した経験は、確実に今に生きています。WIPでは現在、広告事業、クリエイティブ事業のほか、アパレル・飲食の事業を行っていますが、私もメンバーも心から好きと思えるものだけが残っているんですよね。それは、「熱量を投下しないとうまくいかない」という初期の学びがあったからこそだと思っています。
——アパレル・飲食事業はどのような体制で運営していますか?
基本的には、メンバーがプロジェクトリーダーになり、PLの作成、予算管理、運営まですべて実行しています。銀行口座も分け、予算は“一法人”のように管理。家賃・光熱費の管理といった細かいところまで任せているので、面白味を感じながら働いてくれているように思いますね。
——これまでの経験を活かし、広告事業一本で会社を経営するという選択肢はなかったのですか?
起業当初からその気持ちはありませんでした。もともと私が起業を志したのは、好きなことでお金を稼げる状態を作りたかったから。私は学生時代から変わらず、服、飲食店のようなカルチャーに紐づく事業が好きだったのですが、レッドオーシャンであるその領域に、それだけで飛び込んでいくのは難しい。
そこで、自分の「得意」と「経験」を生かした広告事業でキャッシュを作り、好きな領域に投資をしていくと決めました。将来的には好きなことだけで会社が回るようになればいいですが、それはあくまでも最終的なゴール。それまでは今の体制を続けていきたいと考えていますし、広告事業が土台となっている会社ではあります。
このように話すと、広告事業が嫌い、みたいな語弊が生まれそうですが、私自身クライアントのサービスをどう伸ばしていくか考えることは好きですし、数値を分析して施策を実行し改善させることは得意ですし、広告事業を通して様々なサービスに触れマネタイズを知れるという経験は自社事業の運営にも活かされてますし、というのが大前提です。
——広告事業としての強みはどの部分だと感じますか?
大手や中堅規模の場合、プランニング、運用、クリエイティブディレクション、デザインなど、分業化するケースがありますが、WIPでは、一気通貫で担当できることです。広告運用のみならず、1人1人のメンバーがクライアントへマーケティング戦略の提案から実行からクリエイティブディレクションまででき、個々の能力が高い会社だと思います。
スタンス面ですと、"事業者目線"を持ちながらクライアントの事業拡大に貢献していることです。そもそも、大企業より、中小企業、スタートアップのクライアントが多いので、普段折衝する相手はCEOやCMOレイヤーが多いです。一緒にPLを見ながら入り込んだり、一緒にKPI設計していくこともあります。1広告媒体の成果最大化ではなく、サービスをつくった後に、どうグロースさせていくかを考えていることが特徴です。また、自社プロダクトや自社店舗の企画・運営も行っているので、自社事業を通じて個々が"事業者目線"を持てていることも大きいかなと思います。
——今回、WIPが採用に踏み切る理由はなぜですか?
WIP立ち上げからしばらくの間は、高校時代の友人と2人で経営をしていました。当時は広告事業は私が手を動かし、アパレルなどの“好きなこと”を手を動かしてやってくれているのが友人でした。そのころはお互いに「やりたいことをやれていればOK」と感じていたのですが、やりたいことにもっと手を広げていくためには、仲間を増やしくていく必要があるといつからか感じ始めたんですよね。
2022年に5人にまでメンバーを増やしたとき、いろいろできるようになったなという感覚を持ちました。それまで自分が担当していた業務を新しい人に任せ、自分は新たな事業に頭や手を使える状態を作る。その方が会社としても健全だし、発展性を感じられるから、メンバーにとってモチベーションにもなるんですよね。
今後、広告事業を拡大し軸足をさらに強固にできれば、自社事業の数を増やせる可能性も出てきます。そのために、同じ方向を向いて働ける仲間がほしいと考えています。
——今のWIPでは、どんな仲間を募集していますか?
WIPには、これまでの経験と高いスキルを生かし、やるべき仕事はやりながら面白いことにもチャレンジできるメンバーが集まっています。まずはそのカルチャーにマッチする人を探したいと思っています。
WIPは「Work Is Play」を掲げ、誰もが好きなことに没頭したり、やりたいことを実現したりできる世界を作りたいと思っています。だからこそ、WIPに入ってくる人にもぼんやりでも何かしら夢みたいなものを持っている人だと嬉しい。今はゴリゴリのコンサルなんだけど、実は将来パン屋をやってみたいなと思っている、とか、そんな人の方が向いていると思います。
たとえばパン屋をやるとなったら、どんな機材が必要で、原料は毎日どのくらい必要で、いくらの商品を何個売るのかなどなど、パン屋を経営する上でいろんなことを考えなければなりません。初期投資や運営に必要な金額がわかれば、他の事業でどれくらいの売上をあげておかなければいけないのかもわかる。それを考えていくだけでも面白いと思っています。
自分が作った服を着てもらえるとか、自分の作ったお店にお客さんが来るとか、普通に生きていたらそんな経験できないじゃないですか。子どものときに夢見ていたとしても、大人になるにつれてその思いってしぼんでいってしまいますよね。
だからWIPは、普通に生きていたらできない面白い経験を作れる場でありたいと思っています。そして、その“面白い経験”を作るためにも、メイン事業である広告事業の土台を固め、しっかりとやっていく。
ありのままの自分で、一緒に事業成長を目指してくれる人を心からお待ちしております!