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【早来学園の魅力に迫る!前編】震災から新校舎完成までの軌跡

もっと安平町のことを知って、好きになってほしい。そんな思いから始まった「まち紹介」。第二弾は、前編・後編に分けて、令和5年4月に開校する小中一貫の義務教育学校「安平町立 早来学園」の魅力に迫ります。

さっそく内覧会が開かれ、学校の枠を超えた環境が話題を呼んでいる早来学園ですが、一体どのようにして完成したのでしょうか。前編では、安平町教育委員会の永桶憲義教育次長にインタビューをし、早来学園ができるまでの軌跡を振り返ります。

ー まずは、早来学園が建設されることになったきっかけを教えてください。

早来学園の構想が始まったのは、平成30年に起こった北海道胆振東部地震の後です。早来中学校の校舎が被災し、生徒は仮校舎で授業を受けることになります。これまでとは違う仮設校舎では不自由な学校生活となり、一刻も早い新しい学校の建設を考えました。


ー なぜ小中一貫校になったのですか。

早来小学校、安平小学校、遠浅(とあさ)小学校も老朽化が進んでいたことや、将来4つの学校を統合することでコストを抑えて建設できるといったことが理由です。また、9年間の学校生活を通じ、小学校と中学校のギャップをなくすという狙いがあります。

ー 新しい学校の建設にあたって、まずはどんなことから着手したのでしょう。

最初に決定したのが、学校を建設する場所です。幸いにも早来小学校の隣にちょうど良い広さの土地がありました。旧早来中学校より狭いことが難点でしたが、「規模は小さくなるからこそ、これまで以上に楽しいと思ってもらえる学校を」という一心で、建設を進めました。

▲地盤の強さを残すため、もともとあった丘に沿うかたちで曲線に建設された校舎

ー 建設を進める上で大変だったことはありますか。

建設直後から資材不足と高騰が始まり、コンクリートや木材など、あらゆる物資の調達が懸念されていました。業者がなんとか必要な資材を確保してくれ、予定通りに進められることがわかった時は、安堵しましたね。

ー 専門家だけでなく、町民からも意見を聞く場もあったそうですね。これにはどのような意図があったのでしょうか。

今回の学校建設では、使う側の目線を大切にしました。「地域に愛される学校にしたい」という思いから、町民の声を聞く場として「新しい学校を考える会」を発足。建設が始まってからは町民主導の「みんなの学校をつくる会」へシフトし、まちが一体となって学校づくりを行いました。

ー 実際に取り入れられたアイデアはありますか。

「休み時間にくつろげるようヨギボーを置いてほしい」「教室に遊び場があったらうれしい」といった遊び心ある案が採用されています。私たちは、予算をどう削減できるかばかり考えがちですが、そこから生まれる価値の方が何倍もあるんだ、と。否定しそうになった時こそ、使う人が喜ぶものを取り入れようと心がけました。


ー コンセプトは「自分が“世界”と出会う場所」。こちらはどのようにして決定されたのでしょう。

新しい学校を考える会、専門家、教育委員会それぞれが思い描く理想の教育を議論し、意見を集約した結果として「自分が”世界”と出会う場所」というコンセプトが生まれました。

ー “世界”に込められた意味についても教えてください。

「学校で自分の極めたいもの(=世界)を見つけ、探求してほしい」「世界=自分と捉え、新たな自分と出会ってほしい」という想いが込められています。興味があると知識を吸収するスピードが速くなり、自ら問題を考え、解決する力を身につけることができます。そんな本質的な学びが行えるよう、ハード面には様々な工夫が施されています。

ー 様々な工夫とは、具体的にどのようなものがありますか。

例えば、子どもたちが授業を受ける教室。ここでは机や椅子の位置が固定されていないので、いつでも円になって主体的・対話的学習ができます。

天井一つとっても建築に興味を持ってもらえるよう、あえて剥き出しのデザインになっているんです。


ー 図書館や体育館の機能を備える「地域に開かれた学校」というのも魅力の一つですが、こちらについても教えてください。

従来の学校には、不審者などの防犯対策から知らない人を入れないという閉鎖的な一面がありました。しかし早来学園では、いつも知っている地域の人に見守られている方が安全を担保できると考えます。そこで、校内の一部を町民が利用できるよう解放し、子どもと大人が接点を持つ場所を設けました。

ー 学校が完成した今、どんな心境ですか。

一刻も早く新しい学校を建てたいという裏には、50年後も100年後も、長く使われる場所になってほしいという思いがありました。そんな一大プロジェクトを終え、仮設校舎に通学していた早来中学校の3年生を新しい校舎で卒業させてあげられることが何より嬉しいです。

ー ありがとうございます。最後に、町民に向けてメッセージをお願いします。

子どもだけでなく、大人もワクワクする校舎が完成しました。一般開放は4月から。地域のみなさんもぜひ活用してみてください。


永桶教育次長、ありがとうございました。出来上がるまでのプロセスを知ると、より愛着が湧いてきますね。後編では、完成した校舎に潜入し、早来学園の設備のこだわりや、実際にどのように教育が行われるのかをレポートします。お楽しみに。

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