【ハマザスDX(デラックス)第6観測ポイント】
「デジタルの知識は要らない」前編
日本のデジタル行政トップのこの言葉は、特に中小企業におけるDX推進の本質にあてはまる。
緊急事態宣言が解除された今、宴席も増えており、経営者同士が飲み会をする機会が多くなったと聞く。もちろん、昔のように二次会、三次会はなく、皆大人しく終電前に電車で帰宅するのだが。今回はその席で、DXに悩む経営者を囲んだ宴席での仮想のドラマ仕立てでどうぞ。
12月初旬、東京某中華店にて
「芝さん、リアル本当にご無沙汰です。」
「どうも〜。前橋さん。今日はいい会になりそうすね。リアルで乾杯はやっぱ、いいっす。」
「そうそう。ここの中華。ほんとこの濃い味、変わらず嬉しいですね〜。」
「いやー。ビールが進みます(笑)」
「おおっと!マルさんもご来店!おーい、こっち、こっち来てくださいよ。」
芝こと芝大門は、10年ほどまえにシステム会社エンジニア営業から独立して、今は病院向けのシステムソフトの開発、販売を手掛けている。従業員は25人ほど。
「芝さんのところは、医療で堅調だし今どきやっぱいいでしょ?25人も正社員養えるのは、すごいですわ。」
「いやいや、運、運!実際は自転車操業だからね。そいやマルさんもベトナム家具の輸入、復活したってFB見ましたよ。」
「…コロナで会社畳もうかと思いましたけど、ベトナム現地の社員が頑張って!とWeb会議で何度も励まされて。なんとか踏みとどまったよ。うちは日本の従業員少ないこともあって、補助金使って危機一髪!助かりました。」
マルこと門梨は、ベトナム家具の中心としたセレクトショップを経営して、日本に5店舗、従業員は15人ほどだが、海外パートナーを30人ほど契約社員として雇用している。
「ところで、前橋さん、後継問題進んでる?」
「うーん。ウチはデジタル化でハマってるな…やればやるほど泥沼つうか。ベテランと若手が対峙しちゃって、なんかあると社長!ってトラブル解決マン(笑)。」
前橋は、金属加工の二代目で、高専卒業後いくつかの機械メーカーを経て家業を継いでいる。先代からのベテラン技術者が現役で、高付加価値の仕事を請け負っている。取引先からデジタル化の波が押し寄せる中、独自のサービスをどうやって提供するかが、大きなテーマだが、若手は売上があがる、多品種汎用品加工の大手のデジタル連携に組み込むことを目論んでおり、じっくり高付加価値の仕事をするベテランとの軋轢がある。これをどうしたら次の成長に繋げられるかが目下の前橋の悩みだ。
餃子を摘んで、前橋がおもむろに、
「芝さんは専門で、マルさんにも聞きたいんだけど、やっぱデジタルやらないとだめ?」
「うーん。コロナでWeb会議始めたのは思わぬ効果かな。ウチは、国とか文化が違うっていうか、最初は割り切って管理してたから。ベトナムと日本でクラウドの商品管理システムの確認でメール。たまに出張してね。普段は電話会議だけど、元からリモートだしね。それでいいと思ってたよ。文句もなかったし。でも今回Web会議をどんどんやったら、すごく日本のことに憧れ強くなって、毎回提案とか、すごいやる気なんだよ。ほんとありがたい。」
「そっか。ウチは、現場で当人同士が近いせいか、デジタル挟んで衝突が増えちゃって…」
門梨と芝大門の二人はオヤっと顔を見合わせたものの、しばらく沈黙した時間が流れた。
ビールもだいぶ進んだ宴もたけなわ、赤い顔した三人が腕組みしながら、ああだ、こうだと話をしている。
後編に続く
※本コンテンツは、日経クロステック/日経コンピュータ 「「デジタルの知識は要らない」、では縦割りに苦しむ最前線はデジタル監に何を望むのか」2021年 9月3日版を参考にいたしました。
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00551/00005/?i_cid=nbpnxr_child