2021年4月1日にエンジニアとして社員1名が入社しました! 井上 耕太朗:舞鶴高等工業専門学校卒業した後、九州工業大学情報工学部に編入し卒業。その後、同大学で博士前期課程を修了し、韓国のHankyong National University にて博士後期課程を修了。九州工業大学は学部・修士ともに学科首席で卒業し、Hankyong National Universityでも満GPAでの卒業。修士から博士まで約20本の国際論文の執筆および研究に関わり、うち7本が筆頭著者。直近のデジタルホログラフィック顕微鏡に関する研究は光学分野のトップジャーナルであるOptics Lettersにも掲載。 その後、自らの研究および経験を活かす場を求めて就職活動を開始し、2021年4月からアダコテックに入社。
ーまず、経歴を拝見しましたが、首席に満GPAと驚きました!トップジャーナルへの掲載もかなり審査が厳しいと聞いています。かなり熱心に研究されてたかと思いますが、在学中は研究活動以外でも何か活動をされていたのですか? 九州工業大学ではサークル活動としてロボットプロジェクト系のサークルに所属(RoDEP)。サークルではロボカップという大会へ主に参加し、被災地で活躍するレスキューロボットで全国大会ベスト8、Best in Class Autonomy賞などを受賞しました。
Hankyong National Univerisityでは研究とは別にVirtual Reality(VR)に関する個人的なオープンソース活動(誰でも自由に使ったり変更したりできるライセンスで自身の制作物を公開する)を行いました。ソフトウェアではVR空間でのアバターのオシャレを楽しむためのツールを公開し、約2~3000人ほどの利用者がいました。ソフトウェアだけでなくハードウェアの開発もしており、VR機器に使用する専用メガネフレームを設計しDMM.makeにて公開し、半年以上部品工具パーツ部門ランキングTOP3入りの人気商品となりました。
ー研究活動以外での活動実績も顕著で素晴らしいですね。ちなみに、韓国の大学院に進学したのはなぜですか? 最初のきっかけは九州工業大学での指導教授の紹介で修士1年生のときに短期留学し、3次元画像処理というテーマの一致、教授の知識の深さ、英語が必須の環境に身を置きたかったなど様々な理由から進学を決断しました。韓国では現在GIGA KOREAという大きな研究プロジェクトが推進されており、この一環で3次元ディスプレイやイメージング(撮影)の研究が活発に行われているので、予算や研究環境などで非常に良い条件だったのも理由の一つです。アメリカやヨーロッパの研究室も検討しましたが、当時、私の研究分野で最も条件が良かったのは韓国でした。しかし研究は韓国内に限らず、ヨーロッパやアメリカなど様々な研究機関との共同研究の機会も多く、なかなか修士だけでは経験できない貴重な機会に多く恵まれました。
ーなるほど、グローバルにご活躍されていたのですね。井上さんが画像処理や光学の研究をやろうと思ったきっかけは? 小さい頃は鉄腕アトムやガンダムに憧れてロボットへの興味が一番大きかったのですが、実際に高専や大学でロボットを作っていくうちに単純なスイッチやセンサだけではできることに限界を感じました。人間の行動も7~8割は視覚によって達成されるという情報もあり、画像処理および光学をマスターすれば、世の大半のことが制御できるということに次第に興味が移り、高専の卒業研究から自分の光学分野の研究は始まりました。2次元での画像処理を理解した後、大学からは3次元画像処理や3次元ディスプレイといった研究に移行しました。修士から5年ほど研究しましたが、光の使いみちは写真のようなものだけでなく、計算機や音場センシングなどへの応用事例もあり、未だに無限の可能性を秘めた分野で、その興味は尽きません。個人的な趣味の範囲で研究は続けるつもりで、良い成果が出れば時々論文を書くつもりです。
ーその中でも、成果を残した研究について教えてください。 様々な光学分野の研究に携わりましたが、最も大きな評価を得たのは、 光学分野のトップジャーナルに掲載されたデジタルホログラフィック顕微鏡における研究 (Angular spectrum matching for digital holographic microscopy under extremely low light conditions)です。デジタルホログラフィック顕微鏡とは、レーザーを干渉させて微小な測定物の3次元形状を測定するものです。
ホログラフィック顕微鏡は非常に便利な方法でありながらも欠点はあります。それは良質な光の干渉パターンを得るために、対象物に十分な強度のレーザーを照射する必要がある点で、露光時間が制限されるハイスピードカメラの利用などに大きな制限があります。最新の研究としては、低品質な画像から深層学習を用いて高品質画像を生成する研究がありましたが、深層学習は膨大なサンプルから対象の特徴を学習し、"いかにもそれっぽい"高品質画像を生成するもので、既知の観測対象ならともかく、これを顕微鏡が必要となるような未知の観測対象に適用するには大きな課題がありました。
この問題を解決するため、研究室ではアルゴリズムコンペのような状態になり、各々がメソッドを考案。このコンペには最終的に教授も参加しましたが、私のアルゴリズムが最良の結果を残しました。この研究はたった1枚のデータをもとに高画質な画像を復元できるのに対し、数千枚のデータを利用した既存の深層学習の結果を超える成果となり、採択された大きな要因だったと思います。今思えば、深層学習がホットな話題を占める現代に、シンプルかつスマートなアルゴリズムで真っ向から立ち向かうアダコテックとも通じる経験ですし、私がアダコテックを気に入った理由の一つでもありますね。
ー研究にあたって色々な機材が必要に見えますが、どのように機材を調達したのでしょうか。 実は日本の研究室では私の代から3次元画像処理の研究が始まり、ほとんど何もない状態にも関わらず研究予算が20万円程度しかなかったので、大学のレーザーカッターや3Dプリンタなどを使い、自分がイチから設計した部品で実験装置を作っていました。自分の3次元画像処理の研究では、カメラを決まった位置にマイクロ単位で移動させる3軸自動ステージがほぼ必須の研究でしたが、3軸自動ステージを購入すれば相場50万~100万円かかるのですが、ハードウェアからソフトウェアまですべて自分で設計し、8万円程度で制作して乗り切りました。
博士課程では修士のときの経験を活かすことで、高性能な機材に予算を割り振ることができ、実験のクオリティアップという点では大きなアドバンテージとなりました。特にトップジャーナルに採択されるような論文は理論はもちろん、実験の品質の良さというのも非常に重要で、同じような実験を微妙に条件を変えながら何十回も繰り返すので、特注部品が必要な場合もあります。私は3Dプリンタで設計した部品を多数用いて安定且つ高品質な画像が得られるシステムを作ることができたのでデジタルホログラフィック顕微鏡における研究結果を支える基礎となりました。
<写真>3軸自動ステージ
ーそこからポスドク(研究室)への道ではなく、企業への就職を選んだ理由はどのような選択なのでしょうか。 ポスドクを経て大学で研究を続けるという道は研究者としてまさに王道とも呼べる道であり、実際に海外の研究機関、研究室からオファーもいただいていましたが、私自身は実際の社会に近いところで自らの経験が活かせる場を求めていました。やはりその最前線は企業だと考え、思い切って産業界に飛び込んでみようと思いました。
ーそしてアダコテックへの就職を決めたのはどのような経緯で決断したのですか? COVID-19の影響により就職活動のため海外から一時帰国することもできなかった為、いくつかの就職支援サイトに登録していた中で、アダコテックをご紹介頂きました。その前にも、海外の研究機関やロボット系企業でいくつか内定を頂いていましたが、自分の経験が活かせそうで、会社としての雰囲気が最も良さそうだったので、アダコテックを選びました。私自身、深層学習も研究していましたが、まだまだ現実社会の問題への適応に多くの障害を感じていた深層学習ベースのアルゴリズムではなく、綿密に検証された理論とアルゴリズムで問題にあたるアダコテックの姿勢が、私の志向と最も近かったのも理由です。
ー雰囲気が最も良さそうと感じたのはどんなところだったのでしょうか。アダコテックのメンバー印象を教えてください。 面接全体を通し「話が通じる」感がもっとも高かったのがアダコテックのメンバーのみなさんでした。他社の面接だとあまり自身の研究やスキルについてぐいぐい質問が来ることはなく、形式的な人間性チェックのみという面接も多い中、エンジニアの方も交え、しっかりと当人の真価を見定めようという採用の本気度を感じることができました。また、代表の河邑さんはビジネス側のバックグラウンドにありながら、エンジニア側の話もよく理解されていたので、営業とエンジニアのすれ違いが多いと聞く会社もある中、社内でよくすり合わせの場が持たれているのが伝わったのも非常に好印象でした。
ーアダコテックに入社してからやりたいことやアダコテックでこういう風に活躍したい等の想いを教えてください。 自分の最も大きな強みは、不可能なことのほうが少ないと言えるほどの、ハードウェアからソフトウェアまであらゆる技術分野をカバーする手数の豊富さ、それによる問題解決力だと思っています。これらのスキルを活かして今までどの会社もお手上げだった案件にアプローチしていけるような人物になりたいです。また、分野を超えた柔軟な思考も取り柄のひとつなので、エンジニアとして入社していますが、私の中で営業と技術、フロントとバックエンドのような境界を作るつもりはなく、あらゆるポジションで会社に貢献できるような活躍をしていきたいと思います。
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