株式会社イノカの多様性溢れるメンバーの中でも、ひときわ異彩を放っているのが「CAO;Chief Aquarium Officer(最高アクアリウム責任者)」を務める取締役 増田直記の存在だ。
国内でも有数のアクアリストであり、イノカの生態系技術の根幹を担う増田に、イノカ創業の背景やコアテクノロジー、今後の展望についてインタビューしました。
【トピック】アクアリストとは / CAOが持つコア技術 / イノカ創業の背景 / 今後の展望と求める人物像
■アクアリストとは
− 今日は宜しくお願いします。早速、色々と分からないことだらけなのですが(笑)まず、増田さんは国内有数のアクアリストと伺いましたが、そもそも「アクアリスト」とはどのような人達なのでしょうか?
明確に定義があるわけではないのですが、広い意味では、アクアリウムを通して水生生物を飼育する水族館の飼育員やショップの店員だけでなく、趣味としてアクアリウムを楽しむために、飼育技術を発展させている僕のような人間もおります。
特にサンゴは飼育が難しく、健康的に長期飼育できている人は、恐らく僕も含めて日本に数十人程度しかいないと思います。実は水族館や研究者でさえ、サンゴを上手く飼育できていないんですよ。
− それは興味深いですね!水族館でもできていないことを増田さんができているのも気になります。専門的に生物学の研究をしていたのですか?
いえ、僕は元々は生き物が大好きな一般人です。(笑) 宇都宮の自宅に、水量が1トンもある巨大な水槽を設置しております。正解がない中で長年試行錯誤しながら、独自の飼育ノウハウを構築していった結果、サンゴ礁の生態系を再現できるまでに技術を高めていた、という感じですね。
実は水族館は必ずしもサンゴ飼育のプロではないのです。サンゴって死んでいるのか生きているのかも分からないという人が大半ですし、まして健康かどうかなどはほとんどの人は判断できないと思います。水族館は集客ビジネスなので、見て分かりにくいサンゴに飼育コストをあまりかけられていないところも正直、多いと感じます。僕自身も水族館が大好きなので、水族館で健康なサンゴが見れたらと思いますね。
■CAOが持つコア技術
−個人レベルで生態系飼育の技術を発展させてきたというのはすごいですね。増田さんの飼育技術の凄さは具体的にはどのあたりにあるのでしょうか。
端的に言うと「生き物と生き物が生きる環境が好きすぎる故に、魚やサンゴの表情を見て、環境全体の様子を把握できる」ことだと思います。いわゆる生き物好きですね(笑)サンゴを健康に飼育する条件として、水質・水流・照明をいかに適切に管理できるかがカギになるのですが、機械的に管理すればいいというわけではなく、生体や水槽全体の状況に応じて判断が求められるケースがほとんどです。この感覚を持っている人がそもそもほとんどいないので、飼育が難しいとされているのです。
実はイノカでは現在、「生態系の理解と再現」の第一歩として、僕の脳内をAI化しようというプロジェクトが進められています。(笑)自分がどのような視覚情報や数値から、どのような判断を下しているのかを体系化することにより、誰でも生態系を再現することが可能になります。イノカではこの「増田AI」をコアテクノロジーの一つとして位置付けており、様々な展望を描いています。名前がやばいですね(笑)
−大変興味深いです。実際の増田さんの業務内容はどのような仕事なのですか?
現在は主に、水槽の設計・立ち上げ・メンテナンス・イベント、これに伴う効率化やクオリティ向上のための企画などを推進しています。最近では、東京大学や民間の研究機関との共同研究の話も上がっており、大変ですがとても刺激的で楽しいですね。
また、沖縄の海など生物の住む環境にフィールドワークに行ったり、生き物と関わる時間が非常に多いので、生き物好きには堪らない仕事ですね(笑)
■イノカ創業の背景
– イノカ創業の背景についても教えてください。
CEO高倉との運命的な出会いがきっかけです。僕は宇都宮工業高校を卒業後、大手メーカーの関連会社の工場で鋳型の職人をやっていたんですよ。10年間勤めた頃、仕事の事情で、しばらく休職していました。その期間は、家族と自然にゆっくり向き合うことができる時間だったと思います。子供と毎日タガメを探しに田んぼに行ってましたね(笑)
ちょうどその頃に、「Arica」というアクアリウムWEBサービスがリリースされたのをたまたま見つけました。アクアリストが自分の水槽を記録したり、飼育知識を交換するWEBサービスだったのですが、自分もアクアリウムの技術や経験を広く広めたいという気持ちがあったので、開発者に応援メッセージを伝えたところ、インタヴューをお願いされました。そこで初めて話をさせてもらった時に全然水槽のことを分かっていないど素人だと感じまして、自宅に招き水槽を見ながら色々な話をさせてもらいました。(笑)
それが現CEO高倉だったというわけです(笑)東大生に何かを教えるという経験は初めてでした(笑)
– それは運命的ですね!(笑)当時は未来のCEOについてどんな印象でしたか?
見た目がハリーポッターみたいな男だと感じましたね。(笑)高倉くんは東京大学の大学院でAIの研究者をしていて、僕とは全く違うバックグラウンドでしたが、彼も趣味で長年アクアリウムをやっていて、生き物に対する情熱はとても強いと感じました。僕一人だけでは描けなかった世界を、彼がいることで描けるようになっています。普通だったら笑われそうな事を、真剣に聞いて実現させるんですから、すごい男です。
■今後の展望と求める人物像
– 最後に、増田さんが描くイノカの未来と、求める人物像を教えてください。
イノカは、2030年までに「地球の生態系ドクター」になり、2040年には月、2060年には火星に、生態系を再現することを掲げています。僕の仕事は、生態系の価値を伝えていくこと、そして生き物に関わる技術の発展を通じて、常にワクワクを作り続けることだと思っています。
僕の直下では「生態系エンジニア」という日本初の職種を募集していますが、とにかく生き物が好きな人やものづくりが大好きな人にぴったりな仕事だと思います。また、職場の雰囲気やコミュニケーションを大事にしているので、挨拶やホウレンソウが出来る方だと嬉しいですね。少しでも興味がある人は、是非一度、イノカのラボに遊びに来てください!都会のど真ん中で、サンゴツアーにご案内しますよ。
新型コロナウイルスの影響もありますので、WEBでの面談も大歓迎です!