代表取締役 関 厳
東京大学卒業後、大手経営コンサルティング会社に入社。同社史上最年少で専務取締役に就任し、コンサルティング部門の責任者として活躍。2012年、リブ・コンサルティングを設立。トップコンサルタントとして幅広い業界のコンサルティング支援に携わる。
100年間、輝き続ける 企業に必要なこと
ー御社のクライアントを指す 言葉の中に 『インパクト・カンパニー』という 表現がありますが、 その定義から教えてください。
インパクト・カンパニー』は、弊社オリジナルの言葉で、展開する事業やサービスによって社会に”Before” ”After ”が生まれる、そんなインパクトを生む中堅・ベンチャー企業を指しています。言い換えるならば、それは“100年後の世界を良くする会社”であると定義づけています。 「100年企業」という言葉と混同されがちですが、“100年後の世界を良くする会社”というのは、一瞬のインパクトを社会に与えて、その時に得た利益で100年間をやり過ごしていくような会社では決してありません。 100年間、価値提供を続けるということが重要であって、そのためには、「業績」「CS」「ES」「人材育成」「仕組み作り」という“5つの成果”を総合的に追求していく経営観がある企業が、やはり継続的に輝き続けることができると思っています。
ーそういった企業を見極めるのは 難しそうですね。
中堅・ベンチャー企業の経営者と、直接、お話する機会が多いため、会社の価値観が見えてきます。 経営層が、先ほどの“5つの成果”のような考え方を、“綺麗ごと”と受け流すことなく、しっかり共感してくださるかどうか。そして逆に、彼らのメッセージに我々が共感できるかどうかということも、コンサルティングが成果を上げるために重要な要素だと思っています。 中堅・ベンチャー企業だと、“初めてコンサルティングを使う”というケースも多く、“そもそもコンサルを使うべきなのか”であったり、“コンサルって理屈っぽいけど、結果って本当に出るの?”と言うところから議論がスタートします。その時に、私は、企業が次のステージに進むうえで、第三者が、“想い”を持って会社をサポートすることは間違いなく必要だと、自信を持ってお伝えしています。 確かにこれまでは、必要だけれども、普及してはきませんでした。それは、フィーの問題はもちろん、支援スタイルの問題があったのは確かです。結局、コンサルタントが得意としている問題解決であったり、資料をアウトプットするというスタイルだけでは、比較的意思決定がスピーディーな中堅・ベンチャーの支援としては不十分だったのでしょう。 だから私たちは、無理のない投資額を設定し、支援スタイルもどちらかというと、お客さんと一緒になって数字を作っていくところまでお付き合いをするというスタイルを採用しています。 コンサルタントを使いなれていない企業様が多いので、理屈の正しさと成果創出という、この両方が成立しないと納得しないのです。また、どうやってコンサルタントと共同体制を作っていくのかがよくわからないという方もいらっしゃいます。 だから私たちは、経営者や経営幹部の方々としっかりコミュニケーションをとって、何を求めているのかというところを外さないようにしています。結局、コンサルタントが“想い”を持って向きあわなければ成立しないのです。
中堅・ベンチャー企業に コンサルは必要か?
ーそもそも中堅・ベンチャー企業に コンサルティングは 必要なのでしょうか。 激動の時代を勝ち抜いてきた 経営者の中には、 一人で意思決定しながら 切り盛りしてきた方も 多いように思えます。
これまで、おひとりの力で会社を引っ張ってこられた経営者の中には、確かにそういうニュアンスで、コンサルティングを入れたがらない方もいらっしゃいますが、やはり時代の変化に伴い、経営を取り巻く環境も大きく変わっています。デジタル化やグローバル化が加速度的に進行し、商流や人々の働き方まで変わっていって、経営者が押さえておかなければならない要素、学校でいえば“科目数”のようなものがものすごく増えています。 CEOやCOOにはじまり、CFO、CMO、CDO、CHRO、CWOといった様々なCXOが注目されることから分かるように、毎年新しい注目テーマが増えています。しかも、ひとつ一つの項目における変化のスピードも速い。このテーマの増加とスピードアップを一人の経営者の頭の中で掌握して処理することは、もはや難しくなっています。 当たり前のことですが、経営はマネジメントチームで進めるべきです。比較的伸びている会社の経営者は、優秀だからこそ自分の限界がわかっていらっしゃる。だから自社を次ステージに引き上げるためにコンサルタントを活用します。特にベンチャーや中堅企業は、一時的に優秀なリーダー人材というリソースが不足しているので、そこを私たちがハンズオンでサポートするという役割も求められます。
ーお話を伺っていると、大手企業 以上に、中堅・ベンチャー企業の コンサルティングニーズは 高いように思えますが。
創業前には、私自身も大企業に対するコンサルティングを担当していたので、大企業向けのコンサルティングの価値は十分に理解しています。ただ、当時、中堅やベンチャーの市場が伸びてきているにもかかわらず、そこをサポートする会社は存在していませんでしたから、そこにビジネスチャンスがあると感じました。 そして、“インパクト・カンパニー”が増えていけば、世の中が変わっていくのは間違いなくて、こんなに意義があってエキサイティングな事業があるのだから、それをやらない手はないと思ったのです。
ー中堅・ベンチャー企業への コンサルティングをしたいという 求職者ニーズはいかがですか。
多くの若い方に「大手企業と新進気鋭で成長中の企業のどちらで働いた方が面白い?」と聞くと、ほとんどの人が「後者が面白そう」と答えます。コンサルタント志望者に同じように「どちらのコンサルティングが良い?」と聞くと、「新進気鋭で成長中の企業をコンサルするほうが面白そう」と答えるけれども、実際にはまだほとんどのコンサルティング会社は大手企業を中心に支援しているのが現実です。彼らや彼女らにとって、当社は新たな選択肢となってきています。
海外マーケットへの挑戦
ー求職者にとって 新たな選択肢となる御社としては、 ずばり、どのような人材を 求めていますか?
まずは、弊社の理念に共感できるか?という点がすごく重要で、“インパクト・カンパニーを支援して世の中を変える”という仕事にかけたいという方に来ていただきたいですね。
ー“仕事にかけたい”という 表現が素敵ですね。 やはり、熱量が重要だと いうことですね。
相手が意思決定者でないのであれば、どのような熱量をぶつけても変わらない時もあるかと思いますが、中堅企業やベンチャーの経営者や経営幹部だったら、コンサルタントの熱量によって、相手の意思決定や踏み込み方が変わってくるし、それに伴って結果も変わったりします。 戦略や戦術ももちろん重要ですが、経営者と幹部陣が心底「これが大事だ!」と共通認識を持てば、それで成果が現れることもあります。コンサルタントが感情移入して、しっかり“想い”と“熱量”をぶつければ、本当に会社は変わっていくのです。それを目の当たりにできるのは、私たちの仕事の醍醐味のひとつだと思います。
ー御社のビジョンについて お聞かせください。
中期的なビジョンとしては、日本発祥でアジアNo.1の経営コンサル会社というのを目指していて、実は海外においても、この中堅・ベンチャー領域のコンサルが見当たりません。結局、日本と同じように欧米ファームが強いので、この領域がホワイトスペースになっています。“存在しないマーケットをつくる”という側面があるので、長期的な取り組みになるとは思っています。 事業拡大って何なのか?と考えたときに、私はすごく単純な図式を思い浮かべてしまうのです。やはり良い会社と付き合って、一緒にプロジェクトに取り組んで、そしてうまく会社が回りだしていく。なかにはクライアント企業の納会で一緒に喜んだり、社員旅行に連れて行ってもらったりするケースもあります。 私たちの事業が拡大するのって、そういった良い場面の数を多くすることだと思うのです。インパクト・カンパニーが社会に増えていき、そういった喜びの場面の掛け算が広がっていけば嬉しいし、それに国境はないですよね。 うちの会社がこのまま拡大を続けたら、何が起こるのだろうか?と考えたことがあります。例えば社員数が1,000人となり、コンサルティングの対象会社が3,000社となったとします。それでも日本には200万以上の会社があるので、全くカバーしきれないという計算になります。 ただ、そこで思ったのは、私たちが支援している会社が、様々な場所で輝き出せば、そこを目指そうとするフォロワー的な企業が増えていくだろうということです。2007年前後にAppleが伸びたことによって、“イノベーションを起こす会社”が憧れとなっていったのと同様、「インパクト・カンパニーになろう」と言い出す企業が世界規模で加速度的に増えていけば、世の中が一気に変わるかもしれません。それを目指して、私たちは熱量を持って、クライアントと向かい続けているのです。
(インタビュー・文:伊藤秋廣[エーアイプロダクション]、写真:岡部敏明)