代表インタビュー:「患者と医療従事者の距離をなくす」薬剤師・MR出身起業家の挑戦 | 話せるメディカル株式会社
今回は、話せるメディカル株式会社の代表取締役、木下将吾にインタビューを行いました。我々は、医療従事者と一般の人々が抱える距離感を解消することをミッションに掲げています。木下は、製薬会社やスタート...
https://www.wantedly.com/companies/company_744585/post_articles/921181
木下 将吾 代表取締役 | 薬剤師
摂南大学 薬学部薬学科卒(薬学士)
・日本イーライリリー(株) MR
・HeaR(株) HRコンサルタント
・(株)ゼロワンブースター マネージャー を経て話せるメディカル創業
詳細はこちらのインタビューから!
藤野 唯香 薬剤師
摂南大学 薬学部薬学科卒(薬学士)
・クラシエ製薬(株) 学術部員
・調剤薬局 薬剤師 を経て、はなせる薬局 薬剤師
──まずはお二人の経歴について教えていただけますか?
木下:はい。私は薬剤師として、新卒で製薬会社イーライリリーの日本法人に入った後、スタートアップ、そしてコンサルティング会社を経由して、話せるメディカルを設立しました。薬剤師という資格を持ちながら、いろいろな業態を経験してきたことが、今の事業に活きていると感じています。
──藤野さんはいかがでしょうか?
藤野:私は新卒で漢方メーカーのクラシエ製薬に入社して、学術部員として働いていました。
主に営業の人のフォローであったり、臨床試験の組み立てなどを担当していました。その後、患者さんに直接薬を渡すことの重要性を感じて、調剤薬局で働くことを選びました。
──お二人は大学時代からの知り合いと伺いましたが。
木下:そうですね。大学の同期で、キャリアの節目節目で情報交換をしてきました。就活のことだったり、テストのことだったり(笑)。
藤野:それに、お互いアンテナが高かったと思います。私も業界を変えたいという思いがずっとあって。
資格を取って普通に働いていける環境の中で、医療への課題感や、自分のやりたいことへの想いがある珍しいタイプ同士だったんですよね。
(左:木下 右:藤野 2人は大学時代の同級生)
──そんなお二人が、今回「はなせる薬局」という形で再び一緒に働くことになったわけですね。
木下:そうですね。お互いの描くビジョンが近いんです。「これはいい」「これは良くない」という未来の見え方が似ているというか。
藤野:木下さんから誘われた時、薬剤師のことも考えていて、患者さんのことも考えている。それに、薬局業界ってあまり変化のない業界で、変化があるとしたら調剤報酬が変わることによって変わっていく。そんな中で、「こういう風にしたらもっと良く働けるよね」というビジョンを描いている薬局の未来が面白そうだと思って、一緒に働きたいと思いました。
──まず、はなせる薬局の概要を教えていただけますか?
木下:はい。一般的な保険調剤薬局で、クリニックの近くにある門前薬局として分類されます。診療科は精神科で、月に約1000人の患者さんが来局されています。特徴的なのは、オンラインでの服薬指導を受け付けているところですね。それ以外の機能は一般的な調剤薬局と大きく変わりません。
──スタートアップである話せるメディカルが薬局を運営することになった経緯をお聞かせください。
木下:薬局を作った理由は大きく二つあります。一つはシンプルにビジネスチャンスだと考えたこと。クリニックの先生方から「薬局をやりませんか」というお声がけをいただいた時に、収益性があると判断しました。
もう一つは、弊社でもともとやっていた薬剤師さんによるクリニックの相談代行サービスとの相乗効果を狙ったんです。オンラインで働く薬剤師さんが多くいましたので、そういった方々により多くの仕事をしていただけるような展開として、オンライン服薬指導が活かせるのではないかと考えました。
──はなせる薬局ならではの特徴について、もう少し詳しくお聞かせください。
木下:価値としては、まず働いている人に働きやすい環境を作りたいと考えています。知り合いの経営者の話を聞いても、薬局には無駄なものが多い。特に紙の利用とか、日々の業務の中での「これってなんでやらないといけないんだろう」というようなことが多いと聞いていたので、そこは全部なくしたい。できるだけDXしたいという思いは強くありました。
実は、この考えは学生時代の経験が原点になっています。5年次の実習で働いた薬局で、全部手書きで、パソコンをほとんど使わない環境を見て、「なんでこんなに使える環境があるのに使わないんだろう」と疑問に思ったんです。
藤野:実際に働いていて感じる特徴的な部分として、発注システムがとても使いやすいですね。通常の薬局だと、発注作業が煩雑になりがちなんですが、当社のシステムはスピーディーで効率的です。また、在庫管理もデジタル化されているので、ストレスなく業務が進められます。
──従来の薬局との違いについて、藤野さんの視点からお聞かせください。
藤野:はなせる薬局の特徴は、ルールをガチガチに決めていないところですね。他の薬局だと、ある程度もうルールが決まっていて「こうしなければいけない」という部分が強いんです。それの良さももちろんありますが、はなせる薬局の場合は、良くも悪くもルールが柔軟で、その都度「こっちの方がいいんじゃないか」という提案がしやすい環境があります。
特にメンタルクリニックの門前薬局として、患者さんの細かなニーズに応えられる点は大きな強みになっています。例えば、お薬の一包化や服用方法について、患者さんごとの要望に柔軟に対応できるんです。
──クリニックとの連携について、特筆すべき点はありますか?
藤野:クリニックさんとの連携が非常に良好で、ここまでの関係性は珍しいと思います。特に、ビジネスチャットを活用したコミュニケーションは画期的です。電話だと、クリニックの診療の妨げになる可能性がありますが、チャットならタイミングを選ばずにやり取りができます。また、既読機能があるので、メッセージが確実に届いているかどうかも分かります。
木下:そうですね。デジタルツールを活用したコミュニケーションを受け入れてくださるクリニックさんというのは、まだまだ少ないと思います。その点で、私たちは恵まれた環境にあります。
──オンライン服薬指導について、どのような手応えを感じていますか?
藤野:これは薬剤師の働き方を大きく変える可能性を秘めていると感じています。特に、かかりつけ薬剤師としての継続的なケアという観点で画期的です。例えば、患者さんが引っ越しをしても、オンラインで継続的なケアが可能になります。また、薬剤師自身が転職や移動をしても、信頼関係を築いた患者さんとのつながりを維持できるんです。
木下:そうですね。従来の薬局では、場所が全てでした。でも、私たちはビルの6階にあって、それでも新規の患者さんが来てくださったり、オンライン服薬指導で東京都外からの処方箋も受け付けたりしています。薬局の可能性を広げられていると感じています。
──医療従事者としてのモチベーションについて、お聞かせください。
藤野:医療従事者、特に薬剤師は、処方箋一枚の単価や枚数で評価されがちな職種です。でも私は、患者さんに寄り添い、心が温かくなるような関係性を築けた時に、最もやりがいを感じます。
医療現場は確かに過酷な状況も多いですが、だからこそ患者さんへの愛情を失わないことが大切です。病気で辛い上に、医療従事者の冷たい対応で心が傷つくようなことは避けたい。「病気になったけど、こういう医療従事者と出会えてよかった」と思ってもらえるような存在でありたいですね。
木下:その通りですね。ただ、医療というのは投資している割に還元されていない業界でもあります。だからこそ、働いている人たちは金銭的な価値以外のところに、やりがいを見出さなければならない。その中で、いかに効率化できる部分は効率化しながら、本当に大切な患者さんとの関係性に時間を使えるか。それが我々の挑戦でもあります。
──最後に、今後の展望についてお聞かせください。
木下:私たちの世代が、医療の未来を担っていかなければならないと考えています。国の制度をうまく利用するということではなく、現場のニーズに制度が追いついてくるような、そんな形を目指していきたいですね。
藤野:新しいことにチャレンジしたい、医療を変えていきたいという思いを持った仲間と一緒に働けることを楽しみにしています。特にオンライン服薬指導は、薬剤師という職業の可能性を大きく広げると確信しています。患者さんとの関係性を大切にしながら、医療の未来を一緒に作っていける仲間を待っています。