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スタートアップではない、と宣言するunnameの「決め切らないことを決めた経営」


こんにちは!BtoBマーケティングの「一歩目からグロースまで」をハンズオンで支援するunname(アンネーム)の採用広報 橋尾です。

unnameは経営方針として「スタートアップにあらず、ベンチャーのごとし」と宣言し、それをHPに記載しています。

代表の宮脇は、メガベンチャーからIPO準備企業、創業したてのスタートアップ企業などで勤務経験があり、スタートアップの環境と戦い方を目の当たりにしてきました。

その代表が、なぜ今このタイミングで、なぜ「スタートアップにあらず、ベンチャーのごとし」と考えるのか?

「unnameって、スタートアップ界で急成長するスタンスのかっこいい会社なんじゃないの?」とアホっぽい質問をしてしまった広報担当の私が、経営スタンスについて掘り下げて教えてもらったことを記事にまとめています。


話し手:株式会社unname 代表取締役 宮脇 啓輔

2014年 株式会社サイバーエージェント(メガベンチャー)2017年 BASE株式会社 BtoC向けのマーケティング(上場前スタートアップ)2018年 株式会社ペイミー CMOとしてBtoB向けのマーケティング(創業半年のスタートアップ)2019年 株式会社unname設立 BtoBマーケティングの戦略立案~運用を提供


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ー unnameのリクルートサイトに記載されているこのコンセプトなのですが、 これは「私たちはスタートアップでもベンチャーでもない」という宣言と読み取ることができますね。

そうですね。言葉の定義は諸説あると思いますが、ここでは以下のように定義して話を進めて行きますね。

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■スタートアップVCからエクイティによる資金調達をして、短期間での急成長・EXITを目指す企業■ベンチャーイノベーティブな技術や事業で、革新を起こし急成長する企業

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この定義からすると、今のunnameはどちらにもあてはまらないと思っています。

まず、スタートアップの方は明確に該当しません。unnameのビジネスは初期投資が必要なモデルではないため、現状はエクイティでの調達が不要で、当面予定もしていません。

事業を特定のドメインに絞って、課題解決を社会に広く提供するような会社とは目指す成長曲線が違っていて、デット調達の方が相性が良いです。基本方針としては、堅実な資本政策、地に足をつけた運営を大切にしています。

ここ最近の傾向として、少し「スタートアップ・ベンチャー」を安易に名乗りすぎている企業が多い印象も持っているんですよね。起業したての会社をスタートアップと表現したり、人数が少ない会社をベンチャーと呼んだり、ですね。

個人的に違和感があったので、僕らの立ち位置を宣言しようと、リクルートサイトに記載していました。

ー明確にスタートアップではない、という事は理解しました。「ベンチャーのごとし」というのは、どういうことでしょうか?

今の僕らは言ってしまえば中小企業なのですが、ベンチャー企業のような成長角度を描きたいし、マインドを持ちたいと思っています。

将来的にはイノベーティブな技術を持ったり、世間があっと驚くようなことを仕掛けたいとも思っています。

ーこういった経営に関するスタンスを、しっかり考えてポジショニングし、サイトで表現したりする企業はそう多くないですよね。何か考えるキッカケがあったのでしょうか?

そもそも僕が起業したのは、「自分の人生を豊かにする手段として、会社を経営し続けたいな」と考えていたためです。

「人生のピークはまだまだ先にある、なんなら死ぬまで来ないかもしれない」と感じられるような生き方をしたい。そして、自分が手掛けた事業を通して、他者の人生のピークを更新したいとも思っています。

自分のためにも、他者のためにも長期的に取り組む必要がある、というより、ずっと続けていきたいと思っています。短期的なゴールを設定して走り抜けるような、スタートアップ的な会社を創りたいと思わなかったのです。

加えて、スタートアップ企業は、社員が長期的にキャリアを積み上げるのに向かない要素が多いとも思っています。経営サイドはどうしても株主に目線が向いてしまって、経営や事業選択の自由度が下がってしまいます。

また、これは意外にも見落としがちだと思うのですが、組織の拡大とともに分業化が進み、業務範囲や責任分掌が狭まったり、権限移譲も進むことで裁量も失われるケースが多いです。

つまり、事業や会社が上手くいけばいくほど、入社当初求めていた環境は、それに反比例するように無くなっていくんですよね。(スタートアップに行く人ってカオスな環境を求めている人が多いという前提ですが)

そうなると、個人が会社に及ぼす影響が相対的に小さくなり、当事者意識や経営視点が失われていく。そうなると、スタートアップにいることによるキャリアへの好影響や成長機会は限定されますよね。

ー「会社がうまくいくほど、当初求めていた環境がなくなる」というのは辛いですね。宮脇さんは、スタートアップの在籍経験がありますよね。実際はどのような感じだったのでしょうか?

それはもう、めちゃくちゃ楽しかったですし、キャリアの中で一番成長できたと感じています。笑

スタートアップって、(規模感やフェーズにもよりますが)自分が頑張らないと会社がうまく行かないんですよね。

1社目は社員3,000人を超える規模だったので、やはりカルチャーも仕組みも出来上がっていたりして、自分の影響力なんてほんのはわずかでした。それが、10人ほどの会社になると自分が会社に与えるインパクトが段違いです。

それもあって、これまで以上に自分事化しやすい環境でした。

でもスタートアップに行けばいつでもそんな状態で働けるわけではなく、自分が求めていたポジションに空席があり、着席できたうえで自走し、会社に貢献できる状態だからこそとも思います。

自分自身は入社したタイミングや周りのメンバーにも恵まれました。これらが揃わないと、スタートアップでうまく活躍したり、成長できたりするのって難しいんじゃないかという実感もありますね。

結果的にスタートアップで成長できて楽しかったですが、同時に負の側面も多く垣間見ました。メディアでは華やかな一面にスポットライトが当たりがちですが、実態が伴っていなかったり、組織崩壊が起きていたり。

今の日本の産業の成熟度も合わせて考えると、これからスタートアップをやるのは、あまりにも成功確率も持続可能性も低いと感じました。


「今の日本、起業しやすいけど拡大難しすぎない?」

僕は会社を創業して、日々頑張って運営しているわけなんですが、起業って全然おすすめしていないんですよね。笑

めんどくさいことが多すぎるし、車輪を再開発しがちだし、グローバル化が進んだ昨今では、競合が国内じゃなく国外になったりするし。

暖簾分けして小さい会社ばっかりできていたら、圧倒的な黒船にやられちゃうなとか考えることもあります。そんな矛盾を抱えながら自分は頑張っているのですが。

そんな中で、会社を経営するうえでスタートアップの形を選択しなかったのは、ここまで話した自身の経験に基づく理由だけではありません。今の日本で起業って難しすぎない?とも思っているためです。

理由は大きく3点です。

-------1. 限られた成功できるスキマ2. 日本に依然として存在する大企業3. 優秀な若者の採用難-------

1.限られた成功できるスキマ

日本は、あらゆる産業が成熟していて、ビジネスでうまくいく隙間がほとんどない状態だと思っています。すぐに思いつくような事業は、だいたい誰かが考えたことがあったり、既にビジネスにしているんですよね。

そんな中でもまだ成功のイメージがしやすいのは、アート・エンタメ、ディープテック(最先端技術)あたりだと思っており、アカデミックな知見を持った起業家が活躍しやすいように思います。

あとは、既に起業してIPOを実現させているなどの成功経験を持っていて、起業2周目の人も、勝ちパターンを会得していて成功しやすいですよね。

日本だけだと今後どんどんマーケットは小さくなっていくので、海外展開を前提にする必要性も高まっていると感じています。

2.日本に依然として存在する大企業

うまくポッカリと空いた領域を偶然見つけることができたり、せっかく自分でマーケットを創り上げたりしても、資本力のある大企業が後から参入して来て、体力勝負に持ち込まれてしまうこともありますよね。

そのうえ日本は、経済が停滞しているだけでなく、人口が減っています。
2100年には人口が6,000万人になると発表されていて、日本市場はシュリンクしていくことが分かっている。

その市場でパイを奪うような事業をしながら成長するのは、単純に難易度が高いと思うんです。

3.優秀な若者の採用難

最後のハードルとしては採用難ですね。人口減少に加え高齢化が進むので、若手と言われる20~30代の人材はどんどん減少します。

団塊世代の出生数が270万人ほどだったのに対して、1990年生まれは122万人、そして2022年の出生数は80万人を割りました。この70年間で若者の数が1/3程度まで減ってしまったんですね。

そんな中、今でも就職活動で人気なのは大企業です。優秀な人材はそこに流れてしまう。(スタートアップやベンチャー企業を含めた)中小企業は引き続き、優秀な若者の採用難に立たされていくと想定しています。

参考情報:政府統計ポータルサイト  https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003411595

こうやって日本の起業環境を捉えた時に、僕にはそれでもどうしてもやりたいこと、どうしても解決したい課題がその時点では無かったんです。

資金調達はしやすくなったり、法人向けのSaaSが会社運営の負を解決してくれてはいますが、事業の拡大や成功の難易度は反比例するかのように高まっていると感じています。

そんな中、魂を燃やして取り組める事業じゃないと、スタートアップという形でやる必要もありません。なので、「スタートアップにあらず、ベンチャーのごとし」というスタイルを選択しています。


unnameの経営における基本指針「決め切らない」

「スタートアップにあらず」という言葉や経営方針には、僕の基本スタンスも影響しています。「その時に適切なポジション」にいられるように、決め切らないことを決めているんです。

いま日本経済は停滞しているのに加え、AIの登場も含め、テクノロジーの加速度的な進歩によりいつ何が起きるかも分からず、かなり不安定だと感じています。

そんな先が読みにくい中で、経営方針や事業ドメインを決め切ってしまうのはリスクが大きいなと。

後戻りできるようなリスクならまったく問題ないのですが、長く経営を続けたいので、何かにフルベットしすぎないように慎重に、冷静に考えています。

そもそも、「unname」という社名もそういう意味を含んでいます。具体的な名前がついていると、それに事業ドメインが縛られてしまうんですよね。

「サービス名=会社名」の会社は、事業ドメインを決め切っているので、社名もわかりやすい方がいいということだと理解しています。

自分はあくまで決め切りたくないと思ったので、抽象度の高い名前がいいと思っていました。その結果「未だ名前がない(unname)」という社名となりました。

「これから何者にでもなれるぞ!」とポジティブに捉えています。笑

ー決め切らない経営、ですか。柔軟な印象です。

時代に合わせて、アメーバのごとく姿形を変えてやっていくようなイメージです。コンパウンドベンチャー(最初から複数の事業を立ち上げる)も、少し考えが近いですね。

前述した通りですが、あらゆる産業が成熟化しているため、ひとつの事業やビジネスモデルで勝負をかけたり、従来のスタートアップのような一点突破では難しい時代だとも心得ています。

なので、潮流を読んでアジャストする必要があるだけでなく、潮の流れを感じるまで待ってられる忍耐力や企業体力が肝要だと思っています。

小さい会社のできることは流れを巻き起こすことではないと思うんです。
流れが起きそうなドメインを見極め、流れが起きた時にすぐに乗れるように準備しておくこと。

この戦い方は、スタートアップとはあまりにも相性が悪いと思っています。

ーしなやかですね。確かに宮脇さんは以前から、「ゆくゆくは事業をいくつか持ち、それを子会社化して、その中でスタートアップという形の組織が合っても良い」というお話はされていますよね。

はい。会社のポートフォリオをしっかり作った上で、勝算がありそうな領域の事業であればスタートアップに挑戦してもいい、と思っています。

これは、事業単体の勝算だけではなく、事業ポートフォリオを堅実に組むことで、失敗したときに死なない状態を作る、という意味での勝算も含んでいます。

ーここにも長く続ける、という基本のスタンスが反映されてますね。

こういった経営判断を、自分たちが自由にできることを重要視しています。

エクイティで調達すると、どうしても自分たちだけで意思決定しにくくなったり、株主に説明義務があったりするので。自分たちで100%判断できる状態にしているんです。

そのうえで、市場的に追い風を感じた時にアクセルを踏めるように、日々の堅実な経営・事業運営、社員のレベルアップ…筋トレをするのみです。

来るべき時に備えて、強固なレンガの家を建てているんです。そうすれば、いつでもスピード感を持って舵を切ることができる。

ーむしろ、スタートアップよりも身軽な意思決定が可能なんですね。

はい。でも、だからこそなんですけど、かっこいいスタートアップを見つけると、それは本当に尊敬というか…嫉妬もします。

自分の「好き」を確立していて、それをしっかり事業にして、勝てるマーケットを拓いて、それが世界にも展開可能な形でやっている人を見ると、くそー!と。笑

最近NewsPicksの動画で知ったのですが、昆虫バイオスタートアップの(株)トムシさんとか、まさにそんな感じで。

まずネーミングが秀逸ですよね。「カブトムシ」と読めるんです。昆虫好きゆえのビジネスをしていて、事業としても面白くて、世界にもマーケットがある。「くぅ~かっこいい~」と、思わず唸ります。

ーそんな中なのですが、今後unnameをどんな会社にしていきたいですか?

「Update your peak.」という想い自体は変わっていないのですが、自分自身がアップデートされたことによって、アプローチも変えていきたいと思っています。

いきなり「言ってること全然変わるやん!」って思うかもしれないのですが、日本の国益につながる事業を創っていきたいと思っています。

これまでは、個人の人生に着目してできることはないか?と考えていたのですが、国単位でアップデートしていかないと、日本国民が今までのような豊かな生活を送れないと気づきました。

このテーマに取り組めるのは少し先になるので、ドメインを決めすぎず、時代を読みながら準備を進めたいと思っています。

※宮脇さんのビジョンに関する考え方の過去記事:ビジョンに掲げる「Update your peak」とは

ビジョンに掲げる「Update your peak」とは :第1回|人生のピークをアップデートってどういう意味?(1/3) | unnameメンバーインタビュー
BtoBマーケティングの「一歩目からグロースまで」をハンズオンで支援するunname(アンネーム)の採用広報の橋尾です。unnameではマーケターとして共に働く仲間を募集中!もっと我々について知...
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ー個人的には「日本を良くしたい」と考えている企業にこそ、スタートアップほどの急成長をして、優秀な若者の活躍する場所になって欲しいとも思います!笑

そのためにも、unnameは今できることから取り組んでいます足元は、BtoBマーケティングの支援をすることで、日本企業の生産性向上に貢献したい。

日本に影響を与えるようなことならば、ニッチな領域で小さくやっていても意味がないので、会社自体の拡大を伴う必要があるだろう、とも考えています。

今はまだ国益に直接的に貢献するとは言い難く、遠回りにも見えますが、引き続き、得意なマーケティングを軸足に地道に頑張っていきたいと思います。

ーまさに筋トレ、ですね。

そうです!筋トレを繰り返しながら、今はマーケティング領域でプロダクトの開発も並行して進めています。

いろんな形でマーケティングのキャリアを考えたい人にとっては、よりいい環境になっていくのではないかと考えています。


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