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【事務局長インタビュー】ビジネスから学校教育へ。起業家が経営する学校で教育の未来を切り拓く。

 今回は神山まるごと高専の事務局長/副校長を務めている松坂孝紀(まつざか たかき)さんにインタビューをしました。なぜこの学校に参画したのか、どのような組織を目指しているのか、などお話を伺いました。

 当校の取り組みや、当校でのお仕事にご興味がある方は、是非ご覧ください。

ーまずは自己紹介をお願いします!

 神山まるごと高専の事務局長を務めている松坂といいます。学校の組織運営全般を行っており、文科省をはじめとする行政対応もやりますし、財務管理もやりますし、組織づくりもやってます。企業でいうCOO(Chief Operating Officer)のような役割です。よろしくお願いします!

ー元々はどのようなキャリアなんでしょうか?

 私自身は、ずっとビジネスの世界でキャリアを積んできました。ずっと「教育」に課題意識を持っていて、大学でも教育学を学びましたが、教育を変えるためにはまずリーダーの存在が重要だと思い、卒業後は社会人向けのビジネススクールの運営に携わりました。その後、リーダーだけでは変わらないと思い、人事コンサルティング会社を起業することになります。そこで自社の経営をしながら、企業内の教育に携わったり、地方自治体と一緒に地域のリーダーを育てるプロジェクトなどをやってきました。ずっと「教育」を軸に、教育が変わるテコを探し続けていたんですよね。

ーそんな松坂さんが、なぜ神山まるごと高専に関わることになったのですか?

 「いずれは学校に関わりたい」という気持ちはずっとありました。社会は「人」でできていて、その「人」がどのようにしてできていくかをさかのぼれば、「教育」に行き着きますし、その先には必ず「学校」がある。前職の仕事でも地方自治体のコンサルティングを手がける中で、学校の存在が、その町の魅力に大きな影響を与えるという事例を目の当たりにしてきました。

そんな中で、徳島県神山町という、地方創生で既に先駆的な取り組みをしている場所に、いままでにない先進的な学校ができる、という話に、大きな可能性を感じました。しかも、これまでにないカリキュラムに、起業家が経営する学校。「これは世の中が変わっちゃうくらいの学校にできる」と思ったんですよね。

ーとはいえ、思い切った決断ですよね。キャリアチェンジに迷いはなかったのですか?

 これほど新しい学校をつくるチャンスは一生に一回だろう、と思ったのは大きかったです。ずっと教育の世界にいて、「学校をつくりたい」という人には何度も会ったことがありますが、「学校をつくりました」という人にはほとんど出会わない。学校をつくるって、そのくらい難しいものだと思うんです。

最終的な決め手は、「学校をつくりたい」ということだけではなく、「学校を卒業した人たちの活躍が見たい」と思ったことだと思います。「いずれは学校に関わりたい」と思っていたのですが、冷静に考えると、学校をつくるのに数年、入学した学生が卒業するのに5年、その学生が社会で活躍するまでにまた十数年。そんなことを想像していたら、あっという間に自分は還暦だなと。タイミングも今しかないと思い、携わることに決めました。

ー移住についても教えてください。たしか、ご家族で移住されたんですよね?

 そうですね。妻と娘2人を連れて移住して、もう2年くらいになります。ずっと東京で暮らしていたので、シンプルに分からなかったのが「田舎で暮らす」ってどんな感じ?ということでした。

 人口は約5,000人、商業施設も少なかったりしますので、車が主な移動手段になったり、買い物をしに隣町に行くとか、生活の変化は予測されました。ただ、総じていうと「まぁ田舎といっても日本だしな」という印象でした(笑)コンビニもあるし、amazonも届く。家族からも「やりたいことなら応援するよ」と背中を押してくれました。

 実際住んでみても、不便さは感じていません。逆に田舎に住んでこそわかる、良さも感じています。人の温かさを感じる場面は沢山あり、多くの人に良くして頂いてます。これまでだと大型連休などに家族でわざわざ行くような豊かな自然が身近にあり、野菜もたくさんもらいます(笑)

ーなるほど。そういった考えがあってのキャリアチェンジだったんですね。実際、働いてみていかがですか?

 学校教育の世界は、思った以上にたくさんのルールがありますし、「なんでこうなってるんだろう?」と思うような慣習もたくさんあります。学力偏重の入試、実社会と乖離した教育内容、一方通行の授業形式、ブラック校則、教職員の働き方。問題意識を持つ人は多いのに、なかなか変わっていないのが学校教育の世界だと感じています。変えづらい様々な制約があるのも事実です。

 ただ、神山まるごと高専のよいところはそこで諦めないこと。本質的にやった方がいいと思うことを、どのように実装するかということを、トコトン考えていきます。様々な壁やルールを踏まえて、落としどころを探す。それを一つひとつ粘り強くやっていくと、それが学校業界にとっての新しい事例になる。ふるさと納税の活用も、学費の実質無償化も、学際的なカリキュラムも、起業家講師の起用も、新しい入試のあり方も、副業OKな働き方も、本来こうあるべきだよねということを追求した結果だったと思います。

ー神山まるごと高専に対する社会からの反応をどのように感じていますか?

 沢山の応援者の方々の存在で成り立っているなと思います。こんなに応援してくれると思う人がいるとは思っていなくて、本当にありがたいと思うことばかりです。

 あと良い意味で意外だったのが、神山まるごと高専の取り組みを、他の学校や企業がそれを真似し始めてくれたり、官公庁が良い事例としてそれを後押しする制度をつくってくれるということがあるということです。最近だと、高専がスタートアップ人材を育成するための補助金を文科省が補正予算を組んで用意してくれた、ということもありました。学校設立のための寄附集めについても、経産省と財務省を中心に制度変更が検討されています。私たちの活動が評価され、ちゃんと波及していっている。「こうやって、社会って変わっていくんだ」という感触を得ています。

ーその感触はすごくやりがいに繋がりますね。これからやっていきたいことがあれば教えてください。

 まずは、神山まるごと高専の学生が「モノをつくる力で、コトを起こす人」になって卒業し、社会で活躍する姿を見たいと思っています。どんな卒業生が生まれてくるのかは、ただただ楽しみですね。

 あと、私自身の挑戦としては、神山まるごと高専での取り組みが、学校業界や教育業界にとって「そんなのもアリなの?」と思ってもらえるような存在であり続けるようにしていくことだと思っています。私立の一学校としてできることは、あくまでも選択肢の一つをつくること。でも、多くの人に「それいいじゃん!」と思ってもらえるような取り組みになっていれば、学校業界、教育業界全体がよくなると思っています。多くの人が求める本質的な活動を続けて、「世の中が変わっちゃうくらいの学校」に少しでも近づけていたら嬉しいです。

ーありがとうございます。最後に、この記事を読んでいる皆様にメッセージをお願いします!

まず「学校で働く」「地方で働く」ということを考えたことがない方がほとんどではないかと思います。私自身もそうでした。でも、新しい学校をつくるプロジェクトに携わるチャンスは、恐らく一緒に一度あるかないかだと思います。教育に思いを持っている方であれば、ぜひこの機会に真剣に向き合ってほしいです。これまでのキャリアを活かして、飛び込んできてもらえたら嬉しいです。私自身の経験もたくさんお話ししたいと思います。

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