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【創立ストーリー】理事長が語る、神山まるごと高専の挑戦と創立までの裏側

今回は神山まるごと高専の発起人でもあり理事長を務めている寺田親弘(てらだ ちかひろ)さんにお話しを伺いました。そもそも何故この学校を作ったのか、神山まるごと高専は何に挑戦しているのか。学校の根幹について、インタビューしました。

 当校の取り組みや、当校でのお仕事にご興味がある方は、是非ご覧ください。

ーまずは自己紹介をお願いします!

 神山まるごと高専理事長であり、Sansanという会社ではCEOをやっている寺田といいます。理事長という肩書きで、スタッフ・メンバーたちと日々、この学校の創業~運営に向き合っています。ベースは東京ではありますが、神山にも度々出現して、学生と触れ合っています。なんでも聞いてください。よろしくお願いします!

ーそもそも、なぜこの学校を作ろうと思ったのですか?

 私自身、もともと「社会に対して何かイノベーションを起こしたい」という思いを強く持っています。親が起業家なこともあり、自分として何かそういったイノベーションを実現する手段は会社を起こす事だ、と自然と考えていました。その起業を通して社会に提案をしていく、こんなサービスがあったらいいんじゃないか、こんな世の中だったらいいんじゃないかと、世の中に示していくことを、Sansanという会社でしています。

 その一方で、自分というリソースを使ってソーシャルセクターでも、何かコトを起こしたい、と昔から思っていました。色々な方向性を考えましたが、自分もかつて経験している「教育」がいいな、と思いました。

大学卒業後、三井物産株式会社に入社。米国・シリコンバレーでベンチャー企業の日本向けビジネス展開支援を行い、帰国後は子会社の経営管理などに従事する。2007年にSansan株式会社を創業し、営業DXサービス「Sansan」をはじめとした「働き方を変えるDXサービス」を提供。2021年、東証一部(現東証プライム)上場。2023年に開校した私立高専「神山まるごと高等専門学校」の理事長に就任。


 2016年頃から、同じく発起人の大南信也さんに「学校を作りたい」と言っていたらしいのですが、正直よく覚えていません(笑)。ただ、いろんな人にいろんなアイディアをぶつけていました。

 私の中高時代は褒められたものではなく「何かやりたい。けれどどうしていいかわからない」という思いを抱えて、いろんなコトを中途半端にやってみたり、やらないでいたり…とモヤモヤした期間だったなと思います。その期間自体、今の私を構成する上で、とても貴重な期間でもあるわけですが、ただ、現代に、そういった何かやりたいこと、いわば野心をもった学生をエンパワーできる学校があったらいいなと思って、この学校づくりに着手しました。

ーその中で、徳島県神山町に高専を作るという企画になったのはどういう背景があるのでしょうか。

 これはメディアさんの取材でもよく聞かれて、答えに困る部分でもあるのですが、最初から何か明確な答えを持って場所や学校のスタイルを決めた完璧な青写真があったわけではなく、「現代の起業家精神を持った学生を育成する」というゴールを目指して、様々な課題をクリアしていった結果そうなりました。徳島県神山町という場所は、元々2010年からSansanのサテライトオフィス「Sansan神山ラボ」を設置させていただいて、長いご縁がある町です。学校を作ろうと思った時に、最も地元の方々とも連携でき、そしてその町自体がイノベーションを経験している神山に場所をピン留めしたのは自然なことでした。

2019年6月の構想記者会見の様子

 高専にいたったのは、私自身高専出身ではないので、元々は縁遠い存在でした。Sansanに高専出身の優秀なエンジニアがいたこともあって、何か優秀な人材を輩出する教育機関だな、と思っていた程度です。神山町に学校を作るとなった時に、小学校・中学校・高校は既にある。大学を作っても既存の起業家教育を提供している大学がたくさんある。そうなった時に、高専が良いのではないかと思うに至りました。15歳という文理の振り分けも行っていない早いタイミングから、20歳という大人と呼ばれるタイミングまで、5年間学びを行える。そして大学のような高等教育機関に位置し、卒業と同時に社会に出ることができる。神山町にも既存の高専施設はない。これが良いのではと思いました。


ー学校を作るというアイデアを立ち上げるのも大変そうですが、実際に開校に至るまで学校づくりをするのも大変だと思います。どんな苦労がありましたか?

 めちゃくちゃ大変でした。この大変さを知っていたら、やらなかったと思います(笑)。というのは冗談ですが、起業とは異なる大変さがありました。

 一つは開校資金を集めること。

 ビジネスで言えば、会社を大きくすること、いわばサービスの売り上げを伸ばすプランがあり、お金を集めるにも、乱暴にいうと「今投資をしてくれたら、みなさんにも利益がいきますよ」と言えるわけです。ただ、学校は教育機関。この学校に寄付をしてくれる人々へのリターンは、理想とする若者を育成し、社会に送り出すこと。その若者たちが社会を変えていくこと。その未来像に揺らぎはないですが、スパンも長いですし、何より金銭的なリターンを提供できない。この未来への可能性にお金をいただくわけです。

 教育業界での経験ゼロの起業家が作ろうとしている、私立の高専。最初はかなり訝しがられました。開校に必要だった資金は21億円。私も私費で出していますが、全然足りませんでした。ただ、1社が賛同してくれて、また1社と、共感がまるで雪だるまのように大きくなっていきました。また、Makuakeで応援購入プロジェクトをした時には、1,611名の方が、まだ姿形もない学校に応援をしてくれました。沢山の企業や個人の方々の想いで、ここまで来ました。

2021年4月、立ち上げメンバーで行った現地視察

 もう一つは、文科省への設置認可申請の許可をいただくこと。

 学校法人の立ち上げと、学校自体の立ち上げを行ったため、申請自体の作業量も膨大でしたし、この新しい学校の姿形を説明するのは本当に骨が折れました。ここに関しては、私というより、学校長の大蔵さんや事務局長の松坂さんが語った方が相応しいかもしれません。

 ビジネスサイドの目線で言うと、ベンチャー企業は大体クォーター3ヶ月単位で目標を設定して動きます。それも必要があれば都度見直したり、とにかくやってみて、どんどん方向性を最適化して、ということをしています。一方、学校はそういうわけにはいきません。認可申請の段階で、5年先のカリキュラムや着任する教員の布陣を確定させる。普段なかなか接しない時間軸に戸惑ったのは覚えています。ただ、若者の未来を預かる期間でもあり、間違いがあってもいけない。その厳密さも理解しています。

開校した神山まるごと高専の授業の様子

ー実感がこもった言葉ですね。実際に開校し学生が入学したのを見て、どう感じますか?また、これからやっていきたいことがあれば教えてください。

 学生たちが楽しそうに過ごす姿を見ていると、やっぱり「主役は学生」だなと思います。開校するまでも思っていましたが、本当に実感が湧きます。私たち運営側はあくまで学校というステージを作っただけ。そこに魂を込めるのは学生たちです。だから、私としてこう導きたいとか、こんなふうにしてほしいとか、正直ありません。ここで思う存分学んだ学生たちが道を切り開いていく。その姿を見てみたいなと思います。

ー最後に、この記事を読んでいる皆様にメッセージをお願いします!

 神山まるごと高専は、教育機関でもありスタートアップでもあると思います。これまでの学校経営とは異なるこの環境に飛び込んでくれる仲間がいれば、ぜひトライしてみてほしいと思います。まだ初年度で、みなさんが思う以上にいい意味で完成されていません(笑)。一緒に新しい学校を作りましょう!


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