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木の価値を高めたい。ADX代表が語る「自然と共生する建築物と持続可能な仕組みづくり」とは?

こんにちは!株式会社ADX採用担当です。
本日は、代表取締役の安齋さんにインタビューをしてまいりました。

  • 代表が抱く木造建築に対する想い
  • ADXが掲げる「自然と共生する建築」とは
  • 今後のADXが目指す未来に

についてお話しして参りますので、自然と人を繋ぐ建築プロジェクトに参画してみたい方や建築物の設計〜施工〜プロダクト開発まで一貫して関わりたい方はぜひ最後までご覧ください。

株式会社ADX代表 安齋さんプロフィール

1977年福島県二本松市にて、祖父の代から続く安斎建設工業の3代目として生まれる。 自然と共生するサスティナブルな建築を目指し、2006年に株式会社ADXを創業。登山がライフワーク。

木の価値を高めていくために

「森と生きる」をフィロソフィーとし、自然と共生する建築物を手がけるADXですが、安齋さんは木造建築に対してどのような考えを持っているのでしょうか?

私は、木造建築の特徴を正しく理解した上で、よりよくアップデートしたいと考えています。私のルーツは、福島県で約65年間続く工務店の3代目です。長い間、木造建築に関わってきたため、その良さと悪さを熟知しています。

戦前の日本は木造大国でしたが、火に弱い、価格が高いなどの理由から鉄筋・コンクリートにとって変わられ、40〜50年間は木造建築に関する知見や技術がアップデートされてきませんでした。

しかし本来、木は私たちにとって自然を感じられる身近な建築素材。加えて、木材は植林すれば再生産できるという点でサステナブルです。最近では、技術が進歩し燃えにくく加工しやすい木材も開発されています

これまでの経験と新たな技術を融合し木造建築の良さを広めることが、木の価値を高めます。それは、森を守りひいては地球環境を守ることにも繋がると信じています。


最近では、木造の宿泊施設の建設プロジェクトに力を入れていますね?

はい。しかし、以前は木造の住宅を多く扱っていました。ただ、冒頭にもお伝えしたように、長年建築に従事していると木造住宅の「マイナスな面」も見えてきます。

何十年ものローンを組んで建てたのに、頻繁なメンテナンスが必要だったり、子供が巣立つと同時に部屋が物置と化す家も少なからず見てきました。加えて、今は空き家の増加も社会問題になっています。

このことから、ADXでは「木造住宅をつくらない」という選択をしました。その代わりに、木造の持つ特性を理解しメンテナンスをしっかり行う事業者と一緒に、セカンドホームやキャビンなどの宿泊施設を手がけるようになったのです。

現在では、全国に点在するSANU 2nd Homeや奄美大島のMIRU AMAMIなど、日本各地の自然豊かな土地で建築プロジェクトを推進しています。

▼SANU 2nd Home


人と建築物の調和を大切にしたい

自然と共生する建築物をつくる上で、ADXが大切にしていることを教えてください。

私たちは、自然にお邪魔をする立場にあるので、敬意は忘れないようにしています。建築物の影響で自然環境が変わったり動物たちの生活に支障がでるものは、いくら見た目がよくてもつくりたくありませんから。

ADXでは、最初に「森のカルテ」と呼ばれる森林地域の資源評価調査を行い、その土地の自然環境や動植物の生息状況を把握し、設計に活かします。

自然に戻しやすい素材の使用や建材のトレーサビリティの設計、さらには建築が増えるほど森が豊かになっていくリジェネラティヴな観点は、私たちが常に大切にしていることです。


安齋さんご自身が意識的に心がけていることはありますか?

物事を多角的な視点から見るようにはしていますね。例えば、人間の目線だけではなくて、植物や動物の目線から開発を俯瞰してみる。現在だけではなく「過去を見る目」も大切にしています。

「この木を伐採すれば、成長するまでに数十年かかる。そうすればこの動物に影響がある」というように、過去・現在をチューニングして未来を予測する力は、3世代を通して木造建築に関わってきたからこそ身についた能力かもしれません。

同時に、ものの見方を画一的にしないためには「子どもの発想」も必要だとも考えていて。子どもは、木の棒ひとつでも遊び道具にできる天才です。大人になるとつい探究心や遊び心を忘れがちですが、豊かな発想を生むという点で、子どもの視点も欠かせないと考えています。


“地球を冒険する”をコンセプトに掲げる建築プラットフォーム「EARTH WALKER(アースウォーカー)」シリーズの「MOON」のデザインも、自然から影響を受けているそうですね?

「MOON」は、標高4000mの高標高地帯でも快適な居住空間ができるよう、気圧コントロールと酸素調整機能を含む多くの機能を備えた建築物です。アイデアの源は非常にシンプルで「風が吹いた時に飛ばされない形」をコンピューターでシュミレーションした結果、この形に辿りつきました。

メロンの皮のような、独特な外装のヒントになったのは「葉脈」です。葉脈が幾何学的ではなく、ランダムな模様になっているのは、効率よく光合成をし強度を保つためです。何もないところからアイデアが浮かんだというよりは、自然界にあるものを真似した形ですね。


テクノロジーを駆使した持続可能なモノづくり

ADXのモノづくりには自然への敬意や探究心が根底にあるようですね。一方で、福島本社のラボや工場の存在、専門性の高いメンバーが揃っていることから、「モノづくり」へのこだわりを感じます。

私たちは単に、「木造建築は自然や環境にいいですよ」と啓蒙したいわけではありません。

私たちが目指すのは、建物としての機能や作りやすさも追求し、「リアルにモノが作れる集団」。だからこそ、自社に専門家や施工部隊を有し、川上から川下まで1本筋の通った事業を展開したいと考えています。その過程で、特に重視しているのは作り手の安全性や、将来的な再現性・持続可能性です。

例えば当社では、事業のモデル上厳しい自然環境下で施工を行うこともありますが、マイナス20℃の土地で何ヶ月もかけてキャビンをつくり上げることは非現実的です。そこで、マシンで加工できるよう設計を工夫し、福島の工場で8割がた完成させた後、トラックで現地に輸送するのです。

こうすれば、現場での工程が減り、職人も安全に作業ができます。加えて、工期が短くなれば自然の負担も減少します。自然環境との共存を唱えるだけでなく、再現性のあるモノづくりの仕組みを整えることも大切だと考えています。

▼SANU CABIN MOSS


ADXには「ローテク」と「ハイテク」が共存しているということでしょうか?

そうですね。思想の部分では土着的な考え方を持ちながらも、技術面ではデジタルを積極的に取り入れています。

設計においては、エンジニアやプログラマー、さまざまな領域の専門家の力を借りて科学的なデータを重視していますし、上述した福島にある工場は最先端のテクノロジーを駆使して「自動化」を徹底しています。

私たちがデジタル化を進めているのは、事業の持続可能性を重視しているからです。これまでは、メンテナンスが必要になれば大工さんに頼み、修理することができました。しかし、この先職人の数が減り、事業継承が難しくなるのは明らかです。

私たちは建物をつくるだけではなく、それを維持する責任も負っています。100年後に、建築物をメンテナンスし続けるためにも、「人に頼らない技術」の導入が必要だと思いますね。


ADXが目指す未来とは?

今後の目標を教えてください。

2019年に「世界中に山小屋をつくる」と宣言した通り、これからも日本中の自然豊かな場所にADXの手がけるキャビンを増やしていくつもりです。そして、2030年までには海外に進出したいと考えています。

世界中にキャビンを展開し、事業を拡大したいというベンチャーな気質はありますが、一歩一歩実直に歩みを進める創業当初からの姿勢は変わりません。フィールドが世界に変わったとしても、その土地の自然をよく理解し、環境に相応しいプロダクトをつくるという基本は大切にしたいです。


その目標を達成するために、ADXはどんな集団を目指していきますか?

やはり、「一貫したモノづくりができる建築家集団」になりたいです。

一般的な建築事務所では、絵を描く人は絵だけを、物をつくる人はつくるだけと分業制になりがちです。しかし、分業制ではモノづくりの過程で齟齬が生じやすく、「軸」の通ったモノづくりが難しい。

私たちは、「自分たちで設計したものは自分たちでつくる」スタイルを貫くことで、建築工法や建材、さらにはエネルギー計画まで、様々な分野の新しい技術と情報を日々アップデートし、未来の建築の可能性に挑み続けたいと考えています。

そのためには、多様なスキルや専門性を持った集団でなければなりません。全員が同じよりも、それぞれが個性を尊重し、相乗効果が生まれた方がチームとしても成長しますからね。

複数の種類の木が混在する豊かな森のように、多様性が共存するチームをつくっていきたいです。


安齋さん、ありがとうございました!


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