なにをやっているのか
社有林(仙北市田沢湖生保内)
木の展示場「巨木の森」では、大型の一枚板を展示・販売しています。
大きく二つの事業があります。
1.山林を所有し多面的機能を維持しつつ木材生産を行う(山林経営)
秋田県内15市町村に1,000ha以上の山林を所有しています。その山林の多くは、引き継ぐ当てがない方からの相談に応じる形で購入したものです。山林が多い地方に人は少なく、また自分の山から薪や家を建てる材料を伐り出してくることもなくなり、個人が山林を所有する意味が失われてしまいました。これからは、法人が山林の施業だけでなく所有も集約し、管理しやすい形で次の世代に引き継いでいく必要があると考えています。
2.山の恵みを届ける(商業施設)
道の駅のように休憩や産直品に親しむ施設として「森の駅」を経営しています。木の展示場「巨木の森」(直営)と山菜や地元野菜のほかコストコ商品などを取り扱う「販売所」(テナント)、比内地鶏スープが推しの食事処「京にしき」(テナント)で構成されています。別館としてシェアスペース(貸し部屋)もあり、薪割りや焚火もできる場所になっています。
秋田市と盛岡市を結ぶ国道46号線沿いにあり、森林を背景にのんびり走る新幹線を眺めることもでき、撮り鉄や子供連れを見かけることもしばしばです。現在は、外国人観光客の多くが新幹線で移動しているため、当店への立ち寄りは少ないのが実態です。今後は、鉄道以外の交通インフラが整備されることを想定し、一日楽しめる商材を考えているところです。今のところ一番人気はポニーとのふれあいコーナーです。
なぜやるのか
当社の社有林のなかには、このようにとても不健康な状態のところもあります。「子供に山はいらないと言われた」と相談に来られる方が多くいらっしゃいます。可能な限り引き受けてきましたが、当社でもまだ対策ができていません。手入れの問題なのか、地形や気候に合わない樹種が植えられたせいなのか、原因は正直良く分からないため、対策を決めかねています。かつての山守の知見や学問的な知見など学ぶことがたくさんあります。
こども達が山や木に興味をもつきっかけづくりとして、年に数回、木工教室や自由制作のイベントを行っています。令和6年度は、秋田県森づくり県民提案事業に採択していただき、子供向けの木工教室に加えて植樹イベントや大人向けにスウェーデントーチを作るイベントを開催します。植樹する木は、色々と悩んだ結果、仙北市角館町の工芸品である樺細工の原材料となるオオヤマザクラを植える予定です。
山が荒れてしまうと、土砂崩れが発生したり、野生生物の住処が奪われたり、結果的に人間が安全に暮らせなくなってしまいます。また、木材という素材の供給やCO2を吸収し酸素を供給する機能が失われてしまいます。山を手入れし、その恵みである林産物を適切に享受することで、生活は豊かになると思っています。
その「適切さ」については、様々な考え方があります。研究成果によって分かること、人間の生活様式の変化によって変わるニーズ、気候変動によって山に期待されること、理想と現実を良い塩梅にやりくりしながら後世まで続けられる経営を考えなければいけません。
ここで大きな課題になるのは、現在の山林所有者の多くが個人であり、それを引き継ぐ人がいないことです。令和6年4月から相続登記が義務化されたため、この問題はより深刻になることが予想されます。山林の多くは、国土調査が行われていないため、所在地がはっきりしません。親から子へ「ここがうちの山だ」と引き継がれてきています。しかし、そのようにして所在地が分かっている所有者はすでに高齢の方がほとんどです。また、お隣さんとの境界も、手入れせずに藪になってしまうとほぼ判別不能です。山林が書面上(登記上)で引き継がれたとしても、もはやどこが誰のものか分からなくなってしまいます。このような状況では、手入れをすることもできなければ、木材として伐採するのに適した林齢(伐期)を迎えた山も手を付けることができず、経済的な価値も失われてしまいます。
ここに書ききれないほど多くの課題がありますが、一つ一つ解決していくことで、山の価値が経済的にも環境としても向上していけると信じています。ヨーロッパでは、森林の育成状況の調査をし、植林や手入れや収穫の計画を立てる「森林官」という仕事が人気があるようです。日本でも国土としての山を守り続けることはかけがえのない大事な役割だと思っています。
どうやっているのか
社有林から搬出した木材で薪を作り販売しています。かつては各家庭にチェンソーや鉞(まさかり)があって、丸太のまま購入しご自身で加工する方が多かったのですが、近年は写真のとおり割って乾燥させた薪の需要が増えています。このような薪を作るのには人手(労務費)がかかります。大規模な林業事業体では採算が取れずに薪事業を辞めたところもあります。当社は、設備投資の小さい事業で地域のニーズに応えるべく薪事業の拡大を。
木の展示場「巨木の森」では、天然秋田杉をはじめマツなどの針葉樹、ケヤキやクリなどの広葉樹の一枚板を販売しています。テーブルやベンチ等の製品として購入される方には、仕上げ加工の仕方や脚の形などの希望をお伺いし、職人さんに加工してもらいます。工務店さんや家具屋さんが原材料として購入されることもあります。
山の恵みを直接お客様にお届けできるよう、山林経営だけでなく木製品の展示販売も行っています。ただ、現状では店舗に常駐できる社員がいないため、開けるのは第3週末(金土日)に限定しています。一方で、近所の木工職人さんと連携し、その職人さんの製品を置くスペースを設け展示販売をする間、当社の店番もしてもらっています。地域で親和性の高い事業者同士が連携することで、多くのお客様に山の恵みをお届けできるよう工夫しています。
当社の一枚板を大切に使ってくださる方にお届けできるよう、これからは、首都圏や海外に向けた営業に取り組む予定です。