■開発の背景と課題
近年、産業における技術革新が加速する中で、配送ルート、シフト配置などの大規模な組合せの中から最適な答えを素早く見つけたいというニーズが、物流や材料、通信など、あらゆるサービス分野で生まれています。
このような「組合せ最適化」へのアプローチの一つとして、近年注目されている手法の一つに、分野を問わず適用可能である量子アニーリングやイジングマシンを用いる手法があり、計算速度の大幅な向上が期待されることから、様々な企業や研究機関が開発に力を注いでいます。
しかしながら、実用化にあたり、以下の障壁がこれらのマシンの普及を阻害していました。
- 実社会における課題を量子アニーリング・イジングマシンを用いて解くにあたり、数理モデルをQUBO形式と呼ばれる形式に変換する必要がある。しかしながら、この変換を行サービスう際、付随する多数のパラメータの調整、マシン毎のインターフェースへの変換など、数多くの処理が必要となってしまうため、マシンの性能を最大限に活かすのが非常に困難である。このため、マシンを使いこなすために高度な専門知識を持った数理人材を高額な費用で専任させなければならない。(※1)
- 量子アニーリング、イジングマシンによる高速化が達成できたとしても、問題の送信や内部のデータ処理などに高速化を打ち消すほどの多大な時間を要するため、マシン本来の性能を発揮できない。
これらの課題を解決する手段として、Jijは「サービスとしての数理人材 (Expert as a Service)」をコンセプトに、企業専門知識が必要なテクニックやノウハウをクラウドサービスとして提供するJijZeptを開発しました。これによりJijZeptのユーザーは、社内に数理人材がいなくともJijが培ってきた量子アニーリング・イジングマシン技術を利用するための様々なテクニックを手軽に利用することが可能となります。
■JijZeptの特長
JijZeptでは、ユーザーが問題を送信する際に、マシンの扱う形式であるQUBO形式の前段階である数理モデル形式のままデータを送信することができます。この数理モデル形式の持つ独自のデータ構造により、数理モデルに付随する多数のパラメータの調整など、従来は専門家が経験と勘で行う必要があった種々の困難な処理を自動で実行できます。この数理モデル形式の持つ独自のデータ構造をクラウドサービスで用いた例は世界初であり、現在特許出願済みです。
また、問題の送信や内部のデータ処理など、計算以外の処理も効率化されており、多大な時間がかかっていた処理に関して、従来と比較して10倍近くの処理速度の向上を達成しています。これにより、JijZeptのユーザーは、量子アニーリング・イジングマシンを使う上で障壁となっていた諸々の処理を意識することなく、マシンの本来の性能が発揮された状態で使用することが可能です。
さらにJijでは、量子アニーリング・イジングマシン向けのアルゴリズムを日夜開発しており、開発されたアルゴリズムは、即座にJijZeptのシステムに反映されます。このため、JijZeptのユーザーは、常にJijのアルゴリズムエンジニアが手掛けた最先端のアルゴリズムを利用することが可能です。
豊富なチュートリアルも数多く用意しており、初めて数理最適化に取り組む企業様もJijZeptを利用していただくことが可能です。