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過去の渡航データを先端技術で分析。ヨーロッパの豪華客船ツアーの成約率が3倍に!

シグマアイは量子技術などのテクノロジーを活用して、様々なソリューションを社会に提供する会社です。今回のインタビューに登場するのは、キーエンスや外資系企業、人材系企業を経て、2022年4月にシグマアイにジョインした小林さん。入社直後に携わったのが、三越伊勢丹ニッコウトラベル様とのプロジェクト。旅行代理店の営業戦略の効率化を目的とした、データ分析とレコメンドシステムを開発しました。既存の顧客リストに比べて、約3倍に成約率を伸ばしたこのシステムをどのように生み出したのか。詳しく聞きました。

【プロフィール】
小林 孝広(こばやし・たかひろ)

パイロットを目指し、米国大学に進学。操縦士免許を取得するが、ビジネスの世界に可能性を感じて、2006年にキーエンスに新卒入社。法人営業を担当した後、AIGにセールスコンサルタントとして転職。独立後、複数社の立ち上げと経営に関わるなか、学校再建を役員として経験したことをきっかけに、2020年より人材系の会社にて新規事業開発の責任者を務める。2022年4月にシグマアイにジョイン。主に事業開発や人事戦略・企画を推進している。

課題をゼロベースからヒアリング。営業、電話オペレーター、添乗員に徹底的に話を聞いた

ー三越伊勢丹ニッコウトラベル様とのプロジェクトには、どのような形でジョインしたのでしょうか?

このプロジェクトは、私が入社する前から動いていたのですが、2022年4月に新社長が就任。そのタイミングでこれまでの提案内容を一旦見直すことになり、私は課題をゼロベースでヒアリングすることから始めました。コロナ禍の影響で、旅行業は打撃を受けていて、短期間に成果を出すことが求められているのを、ヒアリングの端々から感じましたね。

営業の現場にも伺いました。どのように商談をセットして、そこでどのような話をしているのか。間近で見ながらヒアリングを重ねる日々。見込み顧客向けの説明会にも同席して、その年齢層や志向などを肌で感じる努力もしました。営業の方だけではなく、電話オペレーターの皆さんや添乗員にも話を聞いたことも、ソリューションのコンセプト策定に活きています。毎週のように事務所に通っていましたね。

ヨーロッパの豪華客船ツアーの成約率が3倍に!

ーヒアリング内容をもとに、どのような提案を行ったのでしょうか?

様々な情報を統合し、2つのソリューションを提案しました。1つ目は、営業活動の最適化システムです。過去の旅行先のデータから、購買の可能性が高い顧客を抽出して、営業活動の優先順位付けに活かすものです。2つ目は、中長期で「コアなファン」を育てるためのシステム。伊勢丹三越ホールディングス全体でデータ連携を行い、購買、旅行、金融などのサービスを複合的に提供することで、ロイヤリティを高めてもらう。そのようなグループの核になるシステムをご提案しました。

現時点で形になっているのは、1つ目の営業活動最適化システムです。その可能性を探るために、一つの商材に絞って開発しました。ライン川やドナウ川のクルージングを楽しむ、同社が建造した豪華客船『セレナーデ号』ツアーです。70万円以上の価格帯の富裕層向けツアーなのですが、過去のツアーの参加履歴を元に、『セレナーデ号』に興味を持ってくれそうな顧客を抽出。従来は人間の経験と勘で営業活動を行っていたのですが、このシステムを活用することによって、成約率が約3倍に向上したのです。同様のモデルは他の商材にも展開が可能で、大きな可能性を秘めています。



▲開発したシステムの一部。過去の渡航先から、『セレナーデ号』ツアーとの親和性をポイント化

百貨店との連携や、添乗員を軸にしたプラットフォームの可能性も

ー一方で、グループ企業連携のシステムの進捗はいかがでしょうか?

現在、その取り組みに移行しつつあります。旅行に行っていただいたお客様にバッグをご案内したり、百貨店の外商を利用しているお客様に豪華なツアーをご提案したり。様々な商材を展開する、三越伊勢丹ホールディングスだからこそ、新たな顧客体験を提供できると考えています。お客様の志向や属性データをシステムで分析することで、可能になるはずです。ただし、部署によってデータのフォーマットや格納方法が異なる場合は、揃える必要がありますので、その調整から取り組むことも視野に入れています。

そして、もうひとつ、ツアーのプロジェクトを通じて、面白い可能性が見えてきました。参加者の満足度には、添乗員との関係性やコミュニケーションが大きく影響していることに気づいたのです。ディナー時に添乗員がテーブルを回って、ご要望や満足度をヒアリングしています。その内容をタブレットに記載してもらって、シグマアイでデータを分析することで、よりきめ細やかなサービスを提供する。また、相性の良い添乗員をアサインするなど、添乗員を軸にしたサービスのプラットフォームも構想しています。

ー最後に、今後の展望について、聞かせてください。

「旅行」というサービスは「アナログそのもの」ですが、デジタル化して最適化できる余地は多くあります。マーケティングや営業活動から、旅行先でのサービスまでを一気通貫でつなげることで、より満足度の高い体験を提供できる。さらに、三越伊勢丹ホールディングス各社のサービスと連携させることで、見たことのない複合的なサービスが生み出せる。業界を変えるくらいの大きなソリューションに育てていきたいですね。

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