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畑を荒らすイノシシの捕獲情報を管理。新ソリューション「Econnect」を大学院生メンバーが開発。

ミカン農業が盛んな愛媛県の離島「中島」。農家の皆様を悩ますイノシシの害獣問題を解決するために、イノシシの捕獲情報の管理システム「Econnect」を愛媛大学と共同で開発。その実装を担ったシグマアイの学生アルバイト、清水さんにプロジェクトについて聞いてみました。

【プロフィール】
清水 将季
東北大学大学院 情報科学研究科 情報基礎科学専攻に在籍(2022年3月修了予定)。量子アニーリング技術を活用した、災害時の避難ルートの最適化を研究。2021年4月にアルバイトとしてシグマアイにジョイン。仙台市のコールセンター向けソリューション「whis+」や、害獣問題向けソリューション「Econnect」の開発を手掛ける。

イノシシの捕獲情報を管理して、現地の農業を守るソリューション

−まずは、「Econnect」のソリューションの概要について教えてください。

愛媛大学 農学系研究科の武山絵美教授と協働開発したiPadアプリです。愛媛県の「中島」という人口3000人くらいの島での使用をまずは想定しています。中島はみかん農業が盛んな島なのですが、イノシシの害獣問題に悩まされていて、その解決を目的にしたソリューションです。イノシシを捕獲した際には、写真を撮影して大きさなどを行政に報告する必要があるのですが、その一連の作業と管理をデジタル化しました。一言で言えば「イノシシの捕獲情報の管理システム」ですね。行政が過去の情報を管理しやすくなり、研究などの二次利用もできるようになります。

−このプロジェクトはどのように始まったのでしょうか?

2021年の11月に「Econnect」のプロジェクトは立ち上がりました。私はそのタイミングからジョインしたのですが、当初の武山先生とのミーティングが印象に残っています。このプロジェクトへの熱量がものすごかったので。過去にも捕獲情報の電子化を試みていたのですが、現地の方々の理解を得るのが難しく、なかなか実現までのハードルが越えられなかったそうです。「これが実現できる最後のチャンスだと思って取り組んでいます」とおっしゃっていただいて、私たちとしても腹をくくりました。

駆除がゴールではない。生態系とより調和した打ち手を見出したい

−イノシシの捕獲情報を管理する、というソリューションの切り口はどのように生まれましたか?

当初から武山先生には「イノシシの捕獲情報の管理システムを作って欲しい」と依頼を受けていました。そこからさらに話し合ったのは、「捕獲情報を全国で共有することによって、捕獲量や時期が最適化されるのでは」という仮説です。現状の捕獲量は、現地の皆様の「経験と勘」に頼っていますが、そこに「データ」の観点を入れることで、生態系とより調和した打ち手が見いだせるのではないかと。「罠の見張りの自動化」のような駆除に主眼を置いたものではなく、イノシシたちと共生できるようなシステムを作っていきたいと考えました。

私自身は、「誰かのためになるモノづくり」が大好きなんですよ。「Econnect」の前は、仙台市のコールセンター向けの最適化ソリューション「whis+」の開発に携わっていました。シグマアイの学生アルバイト社員として、双方のプロジェクトで社会問題の解決に直結した活動ができたのは、私自身の今後のキャリアにとって大きなプラスになると思っています。

ITリテラシーが高くない方でも、安心して使えるiPadアプリに

−「Econnect」の開発において、ご自身はどのような役割を担当しましたか?

このプロジェクトは計5人で進めています。事業開発の責任者として、執行役員の田口さんとマネージャーの羽田さん(こちらのMeet Upにも登壇)が立っていて、ビジネスサイドで一人、そしてエンジニアサイドとして、私ともう一人がアサインされています。羽田さん以外は、全員同年代の若手です。

−開発担当として、もっともこだわったことは何ですか?

「Econnect」はiPadアプリとして提供するのですが、現地の皆様がiPadにほとんど触れたことがありません。ITリテラシーが高くはない方でも、安心して使えるものにすることにはこだわりましたね。以下、アプリの紹介になります(マニュアルから抜粋)。それぞれの画面の構成要素と機能をシンプルにまとめました。文字もできる限り大きくしています。






iPadの既存のUIに馴染みがないので、より使いやすいものをいちから作りました。たとえば、入力する場所をタップするとキーボードが下から出現するのがデフォルトの仕様なのですが、それに慣れていないユーザーが多いので、最初から入力キーを表示しています。また、日中の屋外で使われるケースがほとんどなので、ディスプレイへの照り返しがすごいんですよ。ですので、あえて文字を大きめに配置したり。現地の皆様のご意見をヒアリングして、一つひとつの機能を実装していきました。

「人と動物が共存する社会は、どうすれば作れるのか」

−このプロジェクトにジョインして、4〜5カ月が経ちますが、ご自身が成長を実感できたことがあれば教えてください。

まず、修士論文の提出時期と重なっていた中で、何とかカタチにできたのは良かったです。iPadアプリの開発は初めてだったので、コーディングやデザインのスキルが身につきました。また、チームでのものづくりも、これまでに経験したことがありませんでした。メンバーと協力しながらプロジェクトを進める手法も身についたと思います。この3月中旬に、無事に現地でのオンボーディングを迎えることができました。

ただ、成長の実感は、「実装スキル」よりも「考え方の深化」で感じています。日々のミーティングでは、このアプリの先のソリューションについて議論することも多いです。「イノシシを捕獲して記録することがそもそも正しいのか」「次の世代の農業はどうあるべきなのか」「人と動物が共存する社会はどうすれば作れるのか」などなど、武山先生とも語り合って次の展開を考えています。アカデミックな領域とビジネスの領域が溶け合う形で議論ができるのは、大きな刺激になりました。

4月からは大手IT企業で、量子コンピューティングの知識と社会を俯瞰して捉える視点を活かす

−では、最後に、ご自身の今後の展望について教えてください。

2022年3月末で東北大学大学院を修了し、大手IT企業に入社します。システム開発の仕事に就く予定ですが、シグマアイの業務を通じて得られたことを活かすことで、「社会のためのものづくり」を推進していきたいです。

学生アルバイトという雇用形態でシグマアイでは働いていましたが、「Econnect」プロジェクトでは“開発責任者”のような仕事も任せていただきました。目の前のユーザーのために、はもちろんですが、これからはより大きく社会を捉えて、広く人々の役に立つソリューションを開発していきたいです。大学院の研究で学んだ量子コンピューティングの知識と、シグマアイで経験した社会を俯瞰して捉える視点を活かすことで、新たなソリューションを生み出すのが当面の目標です。

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