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すべての人が “らしく、たのしく、ほこらしく” 生きられる社会をつくりたい TRP共同代表 山田なつみ(ez)

年々規模を拡大し、2019年は20万人、2021年はオンラインながら160万人近くの人が参加した日本最大級のLGBTQ関連イベント「東京レインボープライド(TRP)」。2012年の東京レインボープライド初開催の時からボランティアとして参加し、現在は、NPO法人 東京レインボープライド 共同代表理事を務めるez(イージー)こと、山田なつみに話を聞きました!

自分らしく生きられる社会は、すべての人たちにとって生きやすい世の中。

— TRPに参加したきっかけを教えてください。
2012年のTRPに友達に誘われてボランティアとして参加したことが始まりです。それまでは、パレードを歩いたこともなかったんですが、ボランティア向けの活動説明会に参加しました。当時の説明会の参加者はゲイの男性ばかりで、レズビアンの女性は私一人だったようです。今でも思い出すんですが、当時は、まだこれほどLGBTQの認知も広がっていない、普段は生きづらさを感じているであろう、クローゼットのゲイの方々が参加している重々しい雰囲気(笑)。けれど、その雰囲気が当日は一変し、みんな別人のようにイキイキと輝きだして、楽しみながら街を練り歩くんです。こんな楽しくて、素晴らしいイベントがあるんだ、もっと多くの人たちに知ってもらいたい、一緒に楽しみたいと感じて、翌年からは運営側のメンバーとして参加しました。2019年10月からは、会社員の傍ら共同代表理事にも就任しました。

— 自分のセクシュアリティを意識したきっかけは?
私は、たまたまはじめてお付き合いした人が女性で、その後もずっと女性と付き合ってきました。それが自分にとって当たり前で、特に当事者として悩んだり、意識したこともないんです。学校や職場でも周りの人たちにカミングアウトしてきましたが、それに対して何か言われたこともなかった。逆にそれがTRPの活動に関わるきっかけになったんです。

TRPの活動やLGBTQのイベントを通じて、ゲイやトランスジェンダーなど、さまざまなSOGI(性的指向・性自認)の方々と知り合う中で、こんなに自分のセクシュアリティに悩んだり、生きづらさを感じている人たちがたくさんいるんだ、「たまたま、私は自分のキャラや周りの人たちに恵まれていただけだったんだ」って気がついて。そこから、“すべての人が、より自分らしく誇りをもって、前向きに楽しくいきていくことのできるHappy!な社会の実現をめざす”、TRPの活動に本格的に参加しました。

当事者だから辛い思いをしないといけないなんておかしい。

— この10年で、多くの人たちがLGBTQの存在を知ることになりました。どのように感じていますか?
この10年で多くの方たちにLGBTQの存在を知ってもらい、注目を集めて嬉しい一方で、TRPの共同代表としてメディアの取材を受けると、必ずといって「辛かったことはなんですか?それをどのように乗り越えましたか?」という質問を受けるんです。たまたま、そのような経験をしてこなかった私は、いつも回答に困ってしまうんですよね。逆に、LGBTQ当事者は辛い思いをしている、していないといけない、と世の中から言われている気がして。そこから、「これってなんかおかしいな…」と疑問を持つようになったんです。

確かに、辛い経験をしている方や自分のセクシュアリティに悩みながら生きている人はたくさんいます。けれど、私もそうですが、自分らしさを大切に前向きに生きている当事者もいるのに、いつまでも「LGBTQの人は辛い思いをしている人、可哀そうな人」という印象を社会から持たれているような気がします。自分であることに誇りを持っている人はたくさんいて、そういう当事者もいることをもっと知ってほしいって思っています。

もちろん、まだまだ差別や偏見、制度が整っていないことで暮らしにくいなと感じることは当然あります。当事者であることで同じ機会を持てない社会はおかしいと思っているので、次の世代には、誰にも辛い思いをさせたくない、Happy!な世の中にしなくてはと考えています。

セクシュアリティにとらわれない世代の価値観や行動力が頼もしい!

— 特に若い世代では、当たり前のようにLGBTQが認知されています。
30代の私から見ると、東京レインボープライドのプロジェクト「YOUTH PRIDE JAPAN(以下YPJ)」に参加する10代、20代のメンバーなど、若い世代のLGBTQへの関心の高さや、セクシュアリティの枠にとらわれない考え方にはびっくりすることもあります。

この世代は、自分自身のジェンダーやセクシュアリティを明言する人が少ないなと感じていて、「自分はまだ決めていません」「まだわかりません」という人たちが多く、変わるものと捉えていることが多い気がします。私たちの世代は「レズビアンです」「トランスジェンダーです」と自分が何者であるかを決めて、その後はそのセクシュアリティで生きていく人が多かった気がします。広くLGBTQが認知されるようになって、若い世代が「自分らしさ」を考えたときに、性的指向だけでなく性自認(自分の性別をどのように認識しているか)から考えていく意識が広がっているのではないかと思います。

LGBTQを知ったきっかけを聞いてみると、「YouTubeで、ドラァグクイーンのメイクや衣装が素敵だなと思って」「Neflixの海外ドラマで知った」「高校の探究学習の授業のテーマに選んだ」といいます。情報を得る手段や機会が増えていることも素晴らしいし、ちゃんと知っていこうとする姿勢がすごいなって思います。なにより、LGBTQの当事者かどうかに関係なく「多様な考え方」「多様な意見」があることを前提に、相手を尊重しながら自分たちにとっていい選択は何かを考えて行動している姿には頼もしさを感じます。

誰かの作ったモデル通りに生きないことが重要。

— ezさんにとって、TRPのモットーである「らしく、たのしく、ほこらしく」生き方とはどのようなものですか?
まだまだ、さまざまな固定概念に囚われすぎなんじゃないかなと思うことがあります。例えば、私は女性なので身近なところでいうと、「いくつで結婚するのか?」「子どもをいくつで何人産むのか」「子どもをどこの学校に入れるのか」など、ネットや周りの情報を見て、他人と比較しすぎる人は多かったです。理想のライフステージを作るのは悪いことではないけど、それに縛られて無理やり実現するのはしんどいし、それが実現しなかったときに自分を追い込んだり。そういった世の中にある固定概念やレールに縛られている人に、「レール通りに生きていなくても、自信を持って自分の人生を生きている人ってかっこいいよ」って言いたいです。

TRPのメンバーは、まさに「らしく、たのしく、ほこらしく」を体現している人たちの集まりで、「多様性」を表すにはぴったりな団体だなって思うくらいです(笑)。昔と比べて女性メンバーも増えましたし、年齢やセクシュアリティ、経歴とかも様々な人たちが集まっていて、本当に個性豊かなんです。当事者ではない方も活動しているので、みんなそれぞれ違った価値観があり、立場・視点が異なるからこそ自分でも気づかなかったことに気づけたり。もちろん、メンバーの中にも、固定概念に苦しんでいたり、現状のルールにもやもやしている人たちもいます。でも、そういった現実にもやもやしながら生きるよりも、その社会を「変えていこう」と思って行動に移しているから、みんなすごくイキイキしているんです。

TRPも以前は、「大人の部活」「和気藹々」とした雰囲気でしたが、今はチームとして一段階成熟し、TRPの活動を通じて世の中を良くするために、自分の知識やスキルを活かしたい、行動をおこしたいという意志がより強くなった感じがします。

「らしく、たのしく、ほこらしく」生きるために、私自身が大事にしていることは、深刻に考えすぎないこと。中学の時に担任に言われた「あなたはeasy goingだね」というコメントが由来の「ez」の名の通り、楽観的に考えるようにしています。あとは、割とシンプルなんですが、自分がかっこよくないと思うことはやらないようにはしています(笑)。

私も含めて上の世代こそ意識や価値観をアップデートする必要がある。

—— すべての人たちが「らしく、たのしく、ほこらしく」生きることのできる社会をつくるには、世の中がこれからどんな風に変わっていくといいんでしょうか?
LGBTQについて認知や関心が高まって、それこそZ世代などは学校の授業で学んだり、ネットやドラマを通じて、多くの情報を得る機会があります。いろいろな情報の中からきちんと正しい情報を得て、自分なりにちゃんと考えて行動していくことができれば、そんなに心配はいらないんじゃないかと思っています。逆に、もっと私たち以上の世代の意識や価値観をアップデートする必要があるんじゃないかと思っています。私も含めて(笑)それこそ、この世代は「男らしさ」「女らしさ」の固定概念にまだ縛られていると思うので、セクシュアリティの話しだけでなく「世の中には多様な人がいる」「人の数だけ意見があり、意見は違ってて当たり前」というところからスタートなのかもしれません。

最近は、ゲイカップルの日常を描いた漫画やドラマ、他人に恋愛感情を抱かないAロマンティック・Aセクシュアルをテーマにしたドラマも話題になりましたよね。今まで触れてこなかった情報や価値観を、わかりやすく理解できるテレビなどのコンテンツも増えるといいですね。

「上の世代の意識なんか変わらない。変える必要はない」という意見もあるけど、現在のマジョリティであるこの世代の意識を変えていくことはとても大切なことだと思っています。「人生100年時代」に、これから4、50年近く、今の若い世代と一緒に社会を作っていくことになります。「変える必要がない」と思って両方が歩み寄ることをしないことで、二極化構造の社会になってしまうのは、TRPが目指す「だれもが暮らしやすい多様な社会」とは言えないなと。だから、TRPのイベントにもそういう人たちに来て、いろいろな価値感があって、いろいろな人がいるというのに触れてほしいですね。

以前、同じ共同代表の杉山の講演会に「LGBTQに物申すつもりできた」と年配の方が参加されたことがありました。その方は講演の後、「講演を聞いてみて、まだうまく言えないけど、いろいろ考えなおすことがあった。ここにこれてよかった。」とおっしゃったそうです。草の根的ですが、こういった機会も非常に重要です。

春の東京だけでなく、年間通じて日本全国を盛り上げていきたい!

—— 今後、TRP2022ではどのようなことにチャレンジしていきたいですか?
2022年は3年ぶりに代々木公園での開催を予定しています!以前のような大規模開催はできませんが、ようやく青空の下でみんなで会うことができます。そして、今年からはGWだけでなく、この2年間培ってきたオンラインのノウハウを活用して、6月のプライドマンスにもオンラインイベントを行います。

また、これからは東京だけでなく、日本全国の広がりを強めたい。TRPが開催される4月の東京・代々木公園だけがお祭り騒ぎで盛り上がるんじゃなくて、地方も含めた日本全国で年間を通じて盛り上げていきたい。東京だけでなく、その土地土地の団体とも連携して、当事者だけでなく、一般の方々含めた、全国の人たちがもっと楽しんでもらえるようにしたいですね。

特定非営利活動法人東京レインボープライドからお誘い
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