出産・子育てで抱いた“子どもへの想い”と“理想の社会への夢”が起業の原動力に!
三浦里江 代表取締役
子どもが仕事の犠牲になる”ことへの違和感
当社を創業する前は金融機関に勤めていました。早朝から夜中まで、身を粉にして働く典型的な“ハードワーカー”でしたが、出産を機に昇進がなくなったり、今まで積み上げてきたものが認められづらくなったり、といった不本意な体験が何度かありました。
子育て中も、多忙で子どもを習い事に連れて行くことすらままならず、「私が仕事を頑張るほど、子どもの教育にかける時間がなくなってしまう」「親のせいで子どもの可能性を奪っているのでは……」などと、常にジレンマを感じていました。子どものために働いているはずが、そのせいで子どもが犠牲になってしまう。そのことに強い違和感があったんですね。
どちらの体験も、“出産・子育て”と“仕事”がトレードオフになってしまう現状に問題があるのは明らかでした。私一人の力で社会を変えることはできないけれど、起業して私と同じ思いをしている女性に役立つサービスを生み出せば、そうした社会の状況に対する一つの“解決策”になるかもしれない──そう考えたことが起業のきっかけになりました。
「家庭環境にかかわらず、子どもが自身の夢を叶えられる世界にしたい」「子育てを理由にキャリアを諦めなければならなかった女性が、輝ける社会をつくりたい」。そんな想いで立ち上げたのが“キッズウィークエンド株式会社”です。
コロナ禍の“窮余の策”──ピンチをチャンスに!
ちなみに、起業までの過程にも紆余曲折がありました。大学院で起業について学び、様々なビジネスコンテストに応募してみたのですが、これがなかなか反応がよく、賞をいくつもいただいたんですね。で、これはいけるぞ!と。
ただその後、Webサービスのプロトタイプを作ってみようとプログラミングの専門学校に通ったんですが、こちらは3ヶ月ほど学んだあたりで自分に能力がまったくないことがわかり……(笑)。ならばと、学校で「私はこんなものが作りたい」と周りに呼びかけて「この指とまれ!」方式でできたチームが今の会社の原型です。
このチームで習い事関連のWebサービスを立ち上げたのですが、認知度をなかなか上げられず苦労しているうちに今度は世間がコロナ禍に……ただでさえ少ない利用者がほぼゼロになってしまいました。ただ、この時期に学校が軒並み休校になったことで、さまざまな企業が自宅で過ごす子どもの支援策を打ち出し始めた。そこで、その情報をまとめたキュレーションサイトを作ったところ、アクセス数が急上昇。その後、子ども向けの「学び」に関するライブコンテンツの情報をまとめたり、自分たちで制作したコンテンツを配信し始めたのが現在のサービスの原型となっています。
子どもたちに“生きていくために必要な学び”を
私たちは現在、オンライン教育プラットフォーム「キッズウィークエンド」を通じて、子どもたちに学校では教えてくれない「生きていくために必要な実践的な学び」を届ける事業を展開しています。内容はバラエティに富んでおり、各界の第一人者の先生方がご自身の専門や人生について平易な言葉で語りかけてくれたり、世の中を支えているさまざまな職業を体験できたりと、多種多様な授業を提供しています。
サービスの特徴は“多様性”。都会に住む子、地方に住む子、公立の学校に通う子、私立の学校に通う子……家庭環境もさまざまですし、中には海外から授業を視聴してくれている子もいます。学校というコミュニティが地域や家庭環境によって限定されがちなのに対して、私たちの提供するバーチャル空間は、多様な背景を持った子どもたちが集まる“小さな社会”。そこで一つのテーマについて共に学び、話し合いながら交流を深めることができるんです。
もう一つの特徴は、企業や団体が教育の担い手になっている点です。これまで、教育者以外の人が子どもに何かを教える機会は限られていました。でも、社会に蓄積された知恵やノウハウは、大人だけのものではありません。子どものうちにそれらの一端に触れることができれば、その経験はきっと、彼らが将来、変化の激しい時代を生き抜いていくための手がかりとなってくれるはずです。
若い会社ならではの“風通しのよさ
まだ創業2年の若い会社ですから、知識やノウハウの蓄積が十分というわけではありません。そのぶん、誰でも自由にアイデアを発信できる風通しの良さを大切にしていて、各人が裁量をもって新しいことややりたいことに積極的にチャレンジしています。
メンバーは金融、人材、医療、マスコミなど様々な業界で活躍していたプロフェッショナルで構成されており、それぞれの経験や知見を生かして仕事に取り組んでいます。ライフスタイルも様々なので、リモートワークを導入し、勤務時間の変更や勤務形態にも柔軟に対応しています。こうした環境から、メンバー同士のコミュニケーションは特に重視していて、バーチャルオフィスなどのツールを積極的に導入しているほか、一人ひとりが報告や確認、ちょっとした雑談などの際にお互いの思いや考え方を伝え合うことを心がけています。
学ぶよろこび”を世界中の子どもたちへ
現在提供しているオンライン授業のプラットフォームによって、子どもたちの興味を“広げる”という意味では一定の成果を挙げているのではないかと思います。一方で今後は、子どもたちが興味を持った分野を“深める”ことができるような仕組みをつくりたい。テクノロジーの力で、子どもたちが仲間を集め、対象を自分の力で掘り下げながら新たな学びや体験を創り出せるような機会を提供したいと考えています。気の進まない宿題も、放課後に仲間とわいわい取り組めるような仕組みがあればきっと楽しいものになるはずです。
オンラインプラットフォームは場所を問わないので、サービスを日本だけの閉じたものしておく必要はありません。テクノロジーの力を使えば、学ぶよろこびを世界中の仲間と共有するようなサービスがきっとできるはず。そんなサービスを私たちの手から生み出して、世界中の子どもたちを繋げることができれば素晴らしいですね。