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【拝啓、23歳の自分へ】何もかもがイヤになっても、きっと仲間が助けてくれる。だから立ち止まるな

23歳のきみからしてもたいして驚かないと思うが、きみは新卒1年目で会社をクビになる。そこから先はどうしようもない社会人生活を送ることになり、27歳のいまもどうしようもないまま。だけど、助けてくれる仲間たちのおかげで自分にあった働き方、生き方を見つけられた。いまから伝えることは、大げさではなく僕の生存戦略だ。「仕事がうまくいかない」「周りの人と同じことができない」と悩むきみが、少しでも気が楽になるようなヒントになれば良い。

友達や先輩は絶対に大切にしろ

僕がここまで生きられたのは間違いなく周りの人たちのおかげだと思う。社会人3年目からいままで、僕はアルバイトと個人事業主のライターを兼業しながら生計を立ててきた。会社員2年目のとき、つまり体調を崩して退職する少し前に僕はライター講座に通っていた。「ライターになる」という強い意志などはなく、書いたり読んだりするのが好きだからという理由でふらっと入会した。

正直に言うと講義の内容はたいして興味をそそるものではなかったが、講義後にクラスメイトと飲むのが楽しかった。ほぼ毎週集まってはとにかく飲んで騒いだ。半年間の講座費用は20万円弱だったが、それと同じくらい飲み会にお金を使ったと思う。

その時期と並行して「哲学っぽいことを話したい」と思い、僕は哲学好きが集まるゆるいサロンに入った。ここでも月1回程度の集まりのあとは飲んで騒いだ。この結果、友達がたくさんできた。ライター講座の内容も哲学の知識もまるで身につかなかったが、とにかく友達が増えた。

そして社会人2年目の冬、僕は体調を崩しがちになって会社に行く気がなくなっていた。精神科で「不安状態」と書かれた診断書をもらい、1ヶ月休職したのちそのまま退職した。鬱気味になっていた。ノルマが厳しいとか、残業が多いとか、人間関係が悪いとかそういう要素は一つもなかった。それなのになぜそんな状態になったのか自分でもわからない。その原因をじっくり考える間もなく、今度は将来の不安が押し寄せてきた。ほとんどのお金を酒に替えてきたので貯金はない。どうにかして仕事を見つけて稼がなくてはならなかった。

このとき助けてくれたのが、ライター講座や哲学サロンで出会った人たちだった。心配して飲みに誘ってくれただけでなく、仕事を振ってくれる人が何人かいたのだ。その人たちとは飲んで騒いだだけでなく、仕事のこともプライベートのことも気兼ねなく話せる安心感があった。

話していて安心した理由は、その人の導きたい結論に持っていこうとするのではなく、ただ普通に話を聞いてくれたからである。単に興味がなかっただけなのかも知れないが、共感してくれなくても解決しなくても、とりあえず話を聞いてくれることがとてもありがたかった。

ライター講座や哲学サロンで出会った人たちとは今でも連絡を取って飲みに行くし、仕事もくれる。きみは社会人4年目にも、嫌なことが重なりに重なり「死んでも良いかな」と本気で思うような危機に直面する。だけど、そのとき救ってくれたのも同じ人たちだ。その信頼関係を壊してはいけない。

つらいときは発信する。助けてくれる人はきっといる

僕みたいに体調を崩して鬱気味になる人は、助けを求めるのが苦手なんじゃないかと思う。「自分のキャパシティはどこまでなのか」「自分はいま何に困っているのか」「困っていることをどう伝えれば良いのか」「何をどう手伝ってもらえば良いのか」といったことがよくわからない。少なくとも僕はそうだ。その結果、ストレスを溜め込みすぎて突然パンクし、周りの人たちに何回も迷惑をかけてきた。いまでこそ「まずいかもな」という直感は働くようになったが、それでも間に合わないことはある。

覚えておいてほしいのは、「つらいときは絶対に自分だけで解決しようとしない」ということだ。仕事なら仕事を振ってくれた人や職場の人に、プライベートなら普段から連絡を取る人に連絡をしてほしい。普段連絡を取る人がいないならSNSで弱音を吐く。仕事の場合は「ちょっとよくわからず困っています」と率直に相談しよう。わからないことがわからない、という状況でも良いと思う。そのときはまずやってみたこと、考えたことを話す。「こいつこんなこともできないのか」と思われるかも知れないが、パンクするよりは良い。道標を与えてくれるかも知れないし、別の方法を提案してくれるかも知れない。

プライベートの場合、僕は日常的に連絡を取る人はほとんどいない。メッセージのやり取りは遊びの誘いと日程調整がほとんどだ。だから僕はSNSに頼る。しんどさを発信することで思いもよらない人が連絡をくれてご飯に誘ってくれたりする。もっとも、こういったことが上手にできないから困っているわけなのだが、ひとまず言語化できるくらいには自分のことがわかってきたと思う。

お金を稼ぐ道は一つじゃない

2年目に体調を崩してフリーランスになるまでは、「社会人なら正社員で働くべき」「バイトなんてダサい」という考えを持っていた。お金の稼ぎ方も、どこかに所属して毎月決まった給料をもらう、というパターンしか知らなかった。大学3年生になれば何もわからないまま就活が始まり、周りの人たちはどんな会社に「就職」するかという情報を求めて右往左往するわけだから、やっぱり自分も焦るしそれ以外の道を考える余裕なんてない。大学を卒業して就職してからも、この会社で働かないなら別の会社に就職、そうでなければフリーター、の二択しか頭になかった。

当時僕の周りにいた社会人だって会社員として働いている人がほとんどだし、フリーターになろうものなら「参考にしちゃいけない大人」みたいに言われることもしばしばあった。社会人2年目のときは働き方のパターンを知らないまま体調を崩し「会社員やフルタイムは無理かも」と思ってしまったわけだから、どうやって生きれば良いのかわからなかった。

そんな中、友達からライターの仕事をもらい、初めて「フリーランス」という働き方を知る。月給や時給ではない、「記事1本◯◯円」というお金の稼ぎ方は「正社員かフリーターか」という選択肢しか知らなかった自分にとっては別世界といっても過言ではなかった。ありがたいことに友達から仕事をもらうだけでなく、自分で応募して仕事をもらうことも少しずつ増えてきた。

そうは言ってもライターだけで生きていくのは難しかったため、飲食店でのアルバイトも始めた。実際、ライターだとデスクワークが中心になるため、体を動かして接客する仕事はリフレッシュにもつながった。こうして、「正社員かフリーターか」の二者択一ではない自分なりの働き方を見つけられたのだ。そのころには「社会人なら正社員で働くべき」「バイトなんてダサい」といった余計なプライドはなく、自分のあった働き方を見つけることが重要でありその道は一つではないと信じるようになった。

止まっていてはだめ。ネットとリアルを走り回れ

社会人2年目と4年目に「もうダメかも知れない」と本気で思うほどの危機が訪れたものの、周りの人たちのおかげでなんとか生き延びることができた。僕はとても運が良かったと思う。だけど、単に運の良さだけでなく、自分なりに努力した点だってある。それは「とにかく動き回ったこと」だ。

フリーランスになり収入が安定しなくなったことで、自分で仕事を探し回らなくてはいけない。コネもスキルもない当時の僕(いまの自分もだが)が待っていても仕事は来ない。とにかくネットで仕事を検索して、相談できる人に相談した。「ライター 業務委託」とか「ライター 東京」とかいうキーワードで検索し、自分にできそうなものがあれば応募した。

友達や先輩から飲みやイベントに誘われれば、仕事につながるかどうかは関係なしにできる限り参加した。その中で面接や案件の受注につながったり、お世話になっている人から「こんな話があるんだけど手伝ってくれない?」と言ってもらえたりした。

ただ、自分がフリーランスになって感じるのは、フリーランスでどんどん稼いでいける人は、まず会社員としてちゃんと仕事ができる人ということ。なぜなら発注してくれるのは企業だからだ。会社員として何年も勤め上げてからフリーランスになった人にはかなわない。僕はそこから脱落している。できる仕事とできない仕事の差が大きい。「甘い」と言われそうだが、できないものはできない。だからこそ動き回って、自分にできる仕事を探すしかない。

かっこ悪くても生き延びる

二度の危機をむかえたことで余計なプライドは捨てられるようになった。以前よりも助けを求められるようになったと思う。そしていま、三度目の危機に直面している。なぜこうも安定しないだろうか、と悩む瞬間も多々ある。もし会社員の友達が「フリーランスになろうと思っている」と相談してきたら「会社員として働けるなら会社員のほうが良いよ」と言って止めると思う。

だけど僕は僕でフリーランスになったから見えた世界、経験できたことはたくさんある。大事なことは自分にあった働き方を探しつづけることであり、その結果が会社員でもアルバイトでもフリーランスでも、何でも良いと思う。23歳の僕がいまの僕を見たらきっとバカにするだろう。だけどいろんな人に出会って何回も助けてもらった末にいまの僕がある。どれだけかっこ悪く見えようが、何が何でも生き延びてみせる。

【筆者プロフィール】
荒井貴彦(あらいたかひこ)
1993年東京都北区生まれ。2016年に大学卒業。新卒1年目の会社でクビになり、2社目で鬱気味になり退職。2018年、成り行きでフリーランスライターになる。以降、アルバイトとライターで生計を立てる。社会人6年目の現在、たまたま誘われた会社に入社したものの2ヶ月半で退職。就職にともないバイトは辞め、以前結んでいた業務委託契約も切ってしまい、再びの危機に直面している。

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