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新しい技術と向き合ってきた10年間-自然言語処理のプロ集団として顧客の課題解決に挑む、みらい翻訳のエンジニアリングマネージャー

みらい翻訳は2024年10月30日で設立10周年を迎えました。
今回は、創業間もない頃から在籍しているメンバーの1人である、エンジニアリング部マネージャーのkitaroこと北川にインタビューを行いました!
みらい翻訳での10年を振り返って、どのような10年だったか、今取り組んでいることや今後の展望についてお話しいただきました。

プロフィール
北川 浩太郎(ニックネームkitaro)
東京大学の計数工学科を卒業後、言語の問題に興味を持ち大学院にて自然言語処理の基礎技術の一つである構文解析の研究に従事。企業で自然言語処理技術の研究開発を続け、みらい翻訳へジョイン。現在みらい翻訳のエンジニアリングマネージャーとして活躍中。


- 約10年前、みらい翻訳にジョインした当時はどんなお気持ちでしたか?

kitaro:元々みらい翻訳設立のニュースを見て興味を持っていたこともあり、楽しみな気持ちで参画したことを覚えています。機械翻訳は自然言語処理の中でも重要である一方で難しい応用分野であることはわかっていたのですが、第1回 WAT2015(アジア言語の機械翻訳のワークショップ)も開催され、まさに機械翻訳が実用レベルになる機運が高まっている時期でした。

当時の機械翻訳は、現在大きな注目を集めているLLM(大規模言語モデル)のような、ディープラーニング(深層学習)に基づく手法が実用化される前でした。既存の技術の積み上げで翻訳精度の向上を実現するのがよいのか、新しいアプローチで実現するのがよいのかわからない難しい状況でした。

売るものがないゼロスタート
技術を用いて、初めて顧客課題を解決できた経験が糧に


- この10年間を振り返って、kitaroにとって印象に残っていることを教えてください。

kitaro:10年前は、まだ売るものがない状態でした。どうしたら機械翻訳は使えるものになるのか検証していく状態でした。そんな中、NMT(ニューラル機械翻訳)の商用化や、最新のモデルアーキテクチャへのいち早い切り替えに携われたのはとても楽しい経験でした。会社のGPUマシンだけでは足りず、クラウド上でモデル学習をしたときは、失敗したら数十万円が無駄になるのかとビクビクしていましたが、スピードが大事だからとにかくやろう!と後押ししてもらえたのはありがたかったです。

また、個人的なエピソードとして印象に残っている体験は、法律事務所とのプロジェクトですね。
契約書の翻訳ニーズに応えるため法務専用モデルの開発を行うことになったのですが、モデルの開発とは別に、協力先である法律事務所が抱える業務上の課題を技術で解決できないか、といった検証を行う機会がありました。
最終的に、技術を用いて業務プロセスの一部を自動化させることができたのですが、自分が学生時代から勉強していた技術を活用して顧客の課題を解決できたこと、また、その結果会社のビジネスとしても繋がりができ、本当に良い経験ができたなと思っています。

働き方も、この10年間で大きく変化したと思います。コロナ禍以前リモートが主流ではなかった頃、フリーアドレスのオフィスで色々な人がすぐ隣に来てくれた時代も良かったし、現在のようにフルリモートも可能になって愛知や沖縄のメンバーが参画してくれたことも本当に良かったと思います。どのタイミングが1番良かったというのは言えないですが、その時々のベストな形が作れているのではないかと思っています。

- 今のお仕事について教えてください。

kitaro:今は、エンジニアリングマネージャーをしており、チームでの取り組みが自分の取り組みに近いです。翻訳を軸に様々な課題を解決するということ、また、機械翻訳の精度向上に継続して取り組んでいます。最新の研究でこういった機械翻訳の精度向上があると分かった際に、それが我々のシステムに使えるかどうか、サービスを広げていくために必要な技術であるかを検証し、良かったら採用するということをしています。

精度向上については、ただ数字を良くすればいいのではなく、ユーザーの生産性を向上することが重要という考えの元取り組んでいます。そもそもユーザーにはどのような課題があって、新たに検討している機能がその課題を解消するような機能なのかを考え、有用であれば取り入れるということをしています。また、もちろんコストの面も重要です。新しいものを開発するだけではなく、現状のサービスを提供するにあたって大きなコストがかかっているものに対して、コスト削減の工夫を打ち出していくことも大きな貢献になります。良いものを作る、コストまで含めた上での効率化をする、といったいくつかのテーマに対して答えを出しいていくことに日々取り組んでいます。

翻訳のみならず、根本的なユーザー課題を解決する

- 部署全体の1番のミッションは何でしょうか。

kitaro:翻訳精度向上を通じたユーザーの生産性向上、顧客体験を向上するためにコア技術を開発することです。
コア技術の開発については、もちろんユーザーや社内からこういうものがほしいという要望があればそのために必要な技術開発をしますが、実際にはこういうものが欲しいと明確に言ってもらえることばかりではありません。技術の種から、こんなことができるのではと提案することそこがいかにできるかが我々のミッションです。また、世の移り変わりが激しい中、いかにスピード感を持ってユーザーの課題を解決できるかが重要だと思っています。
機械翻訳は様々な人に必要とされるものですが、ユーザーにとっては翻訳は手段であって、翻訳そのものが目的であるという人はほとんどいないと思っています。例えば、最新の情報を知りたくてニュースを見たが、英語で書かれた内容を理解できないから翻訳する、取引先に英語でメールを書く必要があるので翻訳する、など。ここで我々に求められていることは、翻訳を軸にしてユーザーの体験向上をしていくこと、翻訳だけではなくて直接ユーザーの課題を解いていくことではないかと思います。私たちはこれまで長年翻訳をやってきたからこそ、例えばこの課題を解く際に日本語以外でもできますよ、といった形で独自の強みを打ち出して行き、解決策を提示できると思っています。今後もそれをスピード感​を持って追求していきたいと思っています。

- どのようなところに難しさを感じていますか。

kitaro:例えば専門用語の一貫性が大事な契約書の翻訳や、数字のミスが許されない治験に関する書類の翻訳、直訳するよりもキャラクターの個性を伝えたいエンタメ分野の翻訳など、分野によってどのような翻訳をしたいかが変わってきます。それに合わせてカスタマイズする、それぞれの課題に寄り添ったサービスを作ることが求められており、そこが難しいところです。
当社の英作文支援サービスは、英語を使う際のペインを解消するには何をすればいいのだろう、と考えてできたものです。ここでのペインとは、ビジネスで翻訳をする人たちが英語でメールを送る際に、この表現は失礼になっていないか、と不安に思うこと等が挙げられます。これと同じように「メールを送りたい」ではなく、「こういうことをしたいときにどうしたらいいのだろう」といった世の中にある重要な課題を見極め、助けになるものが作れたらと思います。

様々なバックグラウンドを持つメンバーがいるからこそイノベーションが生まれる

- エンジニアリング部の体制やメンバーについて教えてください。

kitaro:エンジニアリング部は16名の組織で、3つのチームがあります。
機械翻訳モデルを作っているチーム、エンジン開発、リサーチの3チームです。現在私はエンジン開発とリサーチのチームのマネージャーをしています。
リサーチのチームには自然言語処理の博士号をとっているメンバーが複数いることもあり、エンジニアリング部全体が研究室っぽい雰囲気と言ってもらうことが多いです。確かに皆がそれぞれ萎縮せずに動ける環境であり、研究室のような雰囲気がある一方で、様々なバックグラウンドを持つメンバーがいるという特徴があります。モデル開発チームにはプロの翻訳者がいるということも、みらい翻訳ならではの強みです。作ったものが本当に良い翻訳になっているか、翻訳者の目でチェックすることができます。エンジニアの中でも就職してから自然言語処理に関わって転職してきたメンバーや、言語学を専門にエンジニアになったメンバーもいます。色々な人がいるからこそ、自分にとっての当たり前が通じるものなのかどうかが検証できたり、やり方を変えた方が良いと思うことを教え合えあったりできるのだと思っています。

- チームの動き方について教えてください。

kitaro:たくさんの課題に対して、それぞれ担当者をアサインする形で動いています。マネージャーとしては、方針を一緒に考えること、この期間までにこういう課題に対して答えを出そう、といったこと全体への責任を持っています。ある程度方針を決めたら、基本的には担当者それぞれのやり方に任せており、私はそれを支援するという進め方をしています。また、チームで定例を行っており、そこで意見をもらえることが担当者にとっても良いと思っています。このやり方だとここを見落としてはいないか、まずはこういうことをやってみると良いのではないか、などお互いにアドバイスをすることもあります。
研究開発を進めるにあたり、やってみたらより重要な話が見つかった、ということももちろんあります。
四半期毎に課題は見直しているのですが、少ない人数で何をやるかの判断はとても重要です。エンジニアリング部ではdanny(CEO兼CTO)との距離が近いため、CEOの意見を踏まえた上で、こっちの方が大事なので優先的にやりませんか、などと気軽に話せることも強みの一つだと感じています。

- これまでやりがいを感じたこと、楽しかったと思うことは何でしょうか。

kitaro:自分が作ったものがプロダクトになり、且つ実際に翻訳結果が良くなったと感じられることは非常に面白いです。技術寄りの話をすると、現在当社のNMT(ニューラル機械翻訳)は何回かモデルのアーキテクチャを変えているのですが、置き換える際にはどのような改善があったかを事前に評価しています。こういった誤訳が改善するのではないか、と仮説を立てた文の翻訳結果が実際に良くなったという体験をしました。論文の中ではスコアとしてどれくらい改善したのか説明はされても実際のところどのくらい意義があるかはわからないこともあるのですが、みらい翻訳では、プロダクトが本当に良くなったということを体験できたのです。
また、別の観点では、営業メンバーからアップセルした話などを耳にするのも嬉しい瞬間です。自分の成果としてだけでなく、会社という組織の中で技術で貢献できたと感じられるのは、やはり嬉しいことです。

自然言語処理のプロ集団として、新しい技術を使って良いものを作り出す

- 今後の展望について教えてください。

kitaro:部としての展望でもありますが、ランゲージサービスプラットフォーマーになる、ということです。翻訳という強みを活かして言語に関する課題を解決していく会社にするためには、何をすれば良いのか、どのような技術を確立すれば良いのか我々エンジニアリング部は自然言語処理のプロ集団として、会社を引っ張っていかねばなりません。
これまでの10年間で、大きな変化に対してキャッチアップしていかねばならないというタイミングは何度かありました。その都度手探りで新しい技術を取り入れて、今に至ります。守りに入らず、新しい技術を使って良いものを作り出すんだ、ということを今もやっている道半ばです。
エンジニアリング部にはここ2年間で新しいメンバーが加わったこともあり、その成果をこれから出していく時だと思っています。それが上手くいけば、0→1フェーズから1→10、10→100のフェーズへとジャンプアップしていけるのではと思っています!

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