人の心を動かすコミュニケーションを企画したいという興味からD2Cへ入社。新設の部署へ配属となり1年目から大型クライアントを担当してきました。様々なプロジェクトを手掛け、またグループ会社への出向も経験をした今、自身そして組織が目指すべき方向性は何か伺ってきました。
<インタビュアー:渡邊>
江藤雄大/株式会社カケザン 代表取締役兼プロデュース部 部長
2012年度4月、D2C新卒入社。2017年まで電通常駐。
デジタル領域に閉じず、プロモーション全体のプロデュースをはじめコミュニケーション設計・クリエイティブに従事。
2020年カケザン代表取締役就任。2021年からはD2CRにジョインし、さらなるデジタルマーケティング全体の提供領域拡大を目指す。趣味は野球と釣りなどアウトドア全般。
たどり着いた答えは「コミュニケーションを作ること」
渡:本日はよろしくお願いいたします。
江藤:よろしくお願いします。
渡:学生時代は建築デザインを専攻していたと伺いました。この分野に興味を持たれたきっかけは何でしょうか?
江藤:もともとデザインに関する分野は純粋にかっこいいなと思っていました。高校時代に進路を決めるタイミングで、モノづくり・建築を見るのが好きだった影響もあり、この分野での進学を決めています。進学した学部は芸術工学部で、建築だけでなくプロダクトや映像、音響など様々な学科とのつながりがあることも魅力の1つでした。
渡:文系卒の僕からするとまったく想像が付かないのですが‥。
江藤:そうですよね笑 めちゃくちゃ忙しい学生生活でしたよ。研究室に寝泊まりすることもあり、仕事感覚です。卒論も大量の枚数書きましたし、卒業設計で建築模型を作ったんですが1ヶ月くらい学校に籠っていました。
そんな中でも、時間を見つけて海外の建築を見に旅行へ行ったり、有名建築事務所のインターンシップに参加したりしていました。様々な価値観に触れることは大切だと考えていましたね。
渡:そこまでしてこの分野にのめり込んだ理由はなんでしょうか?
江藤:純粋に好きだった、面白かったに尽きると思います。そして大学生活を経て、大学院に進学しデザインストラテジー(社会に向けたデザイン戦略を考える)を専攻しました。
渡:かなり専門的に学ばれていると思いますが、就活はどのような軸で行われていたのでしょうか?
江藤:自己分析をしてたどり着いた軸は、「コミュニケーションを作る」「人に働きかける(=心を動かす)」です。建築は好きだけど、飽き性な一面もあるため1つのプロジェクトが年単位でかかるものも多い建築だと耐えられないかもなと思いながら、建築やディベロッパー、空間デザイン(=その空間、場所でコミュニケーションを作る)会社を見つつ、広告(=伝えるもの、見たり聞いたり体験でコミュニケーションを作る)会社も探していました。
渡:最終的にD2Cに決められたご理由を伺ってもよいでしょうか?
江藤:D2Cを含め複数社進んでいましたが、一番の決め手は、当時これから主軸になるであろう「モバイル」で世の中に様々な「コミュニケ―ション施策」が仕掛けられそうだなと思ったからです。
当時の面接官には、なぜ建築を専攻している中、広告業界を受けているの?と聞かれました。当時は異端だったと思います笑
思っていた以上の裁量とチャレンジできるフィールド
渡:ここからは入社後のご経歴を伺えればと思います。
江藤:新設のコミュニケーションデザイン本部プロデュース部に配属されました。入社当時からこの部署の配属を狙っていて、人事に直談判していました。
業務は今と大きく変わらないですが、マスを含む大型プロモーションと連動したWebサイト、キャンペーンの企画~制作、デジタルプロモーション全般の企画~制作です。まずは先輩と一緒に行動をしながら制作ディレクション、企画、全体の進行管理と経験を積んでいきました。案件によっては、動画制作やクリエイティブ制作、キャスティング、PRも経験しています。
渡:今振り返ると、希望されていた部署への配属はいかがでしたか?
江藤:希望は間違っていなかったなと思います。むしろ期待以上でした。よく入社して3年は修行期間だと言われている時代で、1年目はコピーやお茶を汲んでなんぼと思っていましたがそのようなことはまったくなかったです。いい意味で遠慮をさせてもらえない組織でした。
渡:新設の部署だからでしょうか?
江藤:どうですかね。組織のタイプが大きく影響をしていると思っています。自分がやりたいこと、新たな取り組みをとにかくやらせて貰える環境でしたが、やってダメならフォローするからと言われていました。
配属して2、3週間後にはすでにデザインカンプを作成していました。1年目から大手企業を担当させてもらい、自分なりに考えたプロモーションの提案や、担当ではない別の商品のプロモーション企画を考えて提案をしに行ったこともありました。
渡:1年目から裁量があり、チャレンジできる環境ですね。思い出に残っているエピソードや学びはありましたか?
江藤:大きく2つあります。1つ目は、案件全体の理解をすることです。プロジェクト全体を見渡すと分業を敷いていることが多いので、自分が知らないところで何か進行しているのか分かりにくいという事象になりがちです。
あなたの領域はここまで、ここから先は別の部署や会社が担当するということは業界柄多いですが、今どのようにプロジェクトが進行しているのか知らなくてよいことは無いと思います。担当領域が決まっているため、関係ないように見えますがそれが間違い。全て関係あると考えて、日々のコミュニケーションを取るべきです。
渡:案件規模が大きくなればなるほど関係各所も増えてくるので全体が見えにくくなりますね。
江藤:2つ目は、電通の方と仕事を一緒にする機会があったのですが、提案資料1つ1つの書き方、一言一句までに神経を研ぎ澄まして作成していた姿を見た時です。
もちろん営業としてのクライアントの握り方、コミュニケーションの取り方、仕事の引っ張り方など勉強になりましたが、資料作成はとことんこだわっていたと思います。提案用に自分が作成した資料を提出すると、クライアント提案時には手直しをされて全く異なる資料になっていることも多々ありました。
資料がどこで一人歩きをするか分からないため、認識にズレが生じないか、伝えたいことが伝わるか、主観ではなく受けての気持ちや状況なども考慮した上で資料に落とし込んでいる姿勢に大きな影響を受けました。
重圧の中でも会社とどう歩んでいくかを考え抜いた
渡:15年の下期(4年目)からグループ会社カケザンでの業務が中心になったと伺っています。
江藤:その通りです。今までいた部署とカケザンが展開している事業領域が似ていることもあり、出向となりました。
渡:業務内容に変化はありましたか?
江藤:そこまで変化は大きくなかったです。カケザンはクリエイティブブティックとして、デジタルを軸とした総合プロモーションやそれを拡張させたOOHや動画案件、イベントプロモーション、時にはオフラインのクリエイティブや販促なども提案、実施していました。
渡:働く場所が変わることに対する心境の変化はありましたか?
江藤:正直ありました。業務内容が変わらずとも所属している組織が変わったため、全てを0から取り組みました。D2Cがクリエイティブ関連の案件もできると認知され始めたタイミングでの異動だったため、新たにカケザンと名乗って一から仕事を取りにいくにはどう工夫が必要か考えさせられましたね。
渡:改めて0→1を経験されているのですね。
江藤:カケザン自体少数精鋭な組織なので、役職に関係なく全員が会社をいい方向に向かわせるにはどうしたらよいかを常に考えていたと思います。
限られた人数で会社としての責任を持たなければならない状況です。例えば、多くの会社の場合、ある事業部がへこんでも、別の事業部の売上でカバーできることがあると思いますが、カケザンは所属人数も少なく複数の組織体ではないため、赤字が続くと倒産に直結します。
渡:4年目のタイミングでかなりプレッシャーがかかる状況だと感じます。
江藤:一枚岩になっていましたし、みんなで助け合ってやっていく風潮は根付いていたのでそこまで感じなかったかもしれないです。
仕事と責任の両方を背負いながらいい緊張感の中、仕事に取り組めていたと思います。人数が少ないことが決してデメリットだけではなく、フットワーク軽く挑戦できるメリット面もあると思うので。
渡:人数が少ない=デメリットではない点もあることに関してはその通りだと思います。少し話しの角度が変わりますが、17年から取締役に就任されていますね。
江藤:はい、17年~取締役、20年~代表取締役として経営に関わっています。
渡:当時の心境はいかがでしたか?
江藤:当時心境の変化はそこまでなかったですよ。カケザンに加わってから役職は関係なく、会社をいい方向に導くためにどうしたらよいか考えて仕事をしていたので、人一倍責任は持っていたつもりですし、準備はできていたと言えばできていたのかもしれません。
ただ、役員になったらなったで見る世界は変わりました笑
渡:具体的にお伺いしてもよいでしょうか?
江藤:雇用や会社を背負う面もあるので、今月の数字がどうなのかではなく、半年、1年、3年先の計画を考えて動かないといけないなと気づきました。また会社の目指すべき方向性、ブランディング、事業計画を考え、その上で目標を達成する。責任の範囲とやるべきこと1つ1つの重要性を痛感しました。
渡:見る視点が変わった中での気づきはありましたか?
江藤:1人で全てやり切るのは到底難しいため、「周りを巻き込む」「協力してもらいながら導く」ことの大切さです。
自分の想い、意見は大事にしながらも、関係各位の想いも含め「1つになる」「同じ目線・価値観を持つ」ことがチームの強さにつながる。また取り組んでいる仕事がその先どうなるのか、何につながるのか先まで考えて行動することの大切さですね。
やれる自負があるからこそ、チャレンジの中心にいたい
渡:ここからは将来的なお話しも伺わせてください。
江藤:まずはグループ全体で、総合デジタルマーケティング会社を目指す中で「プロデュース」「クリエイティブ」領域でどのように事業貢献できるか考えています。
またプロデューサースキルやクリエイティブスキルを活かして、より広い領域で大きな案件獲得をし、各部署と連携をしてともに成長できるためのきっかけ作りなどは取り組んでいきたいです。
渡:その上で、現在考える課題はありますか?
江藤:そうですね…。まずは部のメンバーが持つ個々のスキルの棚卸しでしょうか。目の前の案件で忙しくなってしまいがちなため、みんなのスキルシェアなどできていない状況です。メンバーみな特徴があり、個としての強い力を持っているので、お互いの強みを組織に還元しつつ可能なところは共有化ができれば理想です。
渡:江藤さん個人として何か挑戦したいことはありますか?
江藤:案件も経営面も常に最前線に立って挑戦をし続けたいです。永遠のチャレンジャーでいたいと考えています。
渡:目標としている像などはありますか?
江藤:クライアントから信頼して指名を貰えるようなプロデュース集団になり、自分もその中のいることですね。
時代が変わっていく中で、新たな取り組みを行う際に「一緒にやりませんか?」と常にチャレンジをクライアントと一緒に歩んでいきたいです。スキル面だけではなく、信頼面もしっかり得られるようになりたいです。誰にも負けない自負はあるのでその立ち位置に到達できるよう日々取り組んでいきます。
入社から現在に至るまで様々な挑戦をしてきた姿は本当にかっこいいなと実感をしたインタビューでした。これまで培った経験をさらに飛躍させ、どのようなプロデュース集団を作り上げるのか今後が楽しみです。