業界内だけでブランド構築は難しい。
これが私の感じた福祉業界におけるブランディングの現実です。
私は入社する前から、SANCYOが運営する「就労継続支援A型事業所 TANOSHIKA」の臨時講師として利用者さんにデザインを教えておりました。
平日は別の会社で業務を行いながらなので、講師としての活動は月に2日程度。
毎日利用者の状況を把握するスタッフと違い、私は常に一歩引いた俯瞰的(客観的)な位置から利用者や事業所を見ていました。
経営陣からは「会社としてブランドを構築したい」「会社としての価値を言語化したい」という声をよく聞いていましたが、冒頭で述べたように、福祉業界のみでブランドを作るのは非常に難しいと言わざるを得ません。
なぜならスタッフはあくまで支援のプロフェッショナルであって、ブランド作りのプロではないし、ブランドは構築したらはい終わり!というものでもないからです。
単なる福祉事業所としてではなく、一企業としての現状の課題や目指すべき方向を整理し、ブランドの土台を形作る(言語化する)。それをもとに表現(デザイン)し、浸透させ日々の支援や行動に落とし込む、といった大枠のフローを形成し、それを循環させる必要があります。
こうなると流石に、通常業務(支援業務)を行いながらだと難しいでしょう。
できることではなく、やるべきことを。
そんな紆余曲折があり、会社と共にSANCYOのブランドを作り上げるため、私は2020年に正式に入社することになりました。
入社後、より近くで深く情報を掘り下げることで見えてきたのは、
- 会社としての理念(ゴール)は存在していたものの、中身の詳細が言語化されておらず、途中が見えない。
- 目の前の業務自体が達成すべき目的化している(会社の理念を見失っている状態)
- ベースの考えが、「やるべきこと」より「できること」にウエイトがある。
という深刻な課題でした。
会社としての方向性が明確でないため、
- 目指すべき方向性のベクトルが示せず、スタッフの判断・行動に迷いが生じる。
- 企業の外からの見え方に一貫性がない。
- 差別化はできても、会社としての明確な存在価値を積み重ねれていない。
このような問題が表面化しつつありました。
ひいてはこれは『企業を愛してくれるファンが増えない。』ということに繋がります。
人は、その企業が「何をしている」かではなく、「なぜ、そうしているのか」に興味を持ち、心を動かされます。『株式会社SANCYOは障害者雇用のために福祉事業をしている』だけでは人の心に響かないということです。
企業としての「Why(なぜ、企業活動を行なっているのか?)」をしっかりと伝えることで、興味を持ち、共感が生まれ、一緒にブランドを育ててくれるようなブランドパートナーが増えていきます。
見えてきた成果と、新たな課題。
ブランド構築を進めていくことで、様々な変化が起きました。
弊社のビジョンや方向性に共感し、入社したいと思ってくれる方や学生インターンの応募の増加。関係機関の方からの講演の依頼やイベントへの招待など、着実に共感の輪が広がりを見せてきました。
また、会社のマインドをもとにビジュアルへの落とし込みを進めるにつれて、認知度も上がり、クライアントワークの依頼が増え続けています。
しかし、見える反応に隠れて、見えない課題はまだまだたくさん存在します。社内への浸透や、体制の見直し、質の向上、それに伴う事業展開など、やるべきことは山積みです。
また福祉業界は、制度の見直しが進んでおり、スピード感を持って事業を前に進めることが重要になってきます。止まることなく、着実に前に進むためには、今いる仲間だけではなく、新たな力が我々には必要です。
福祉業界は社会的に影に隠れた印象があるかもしれませんが、わたしたちはそこを逸早く明るく照らすために、日々試行錯誤しながら活動しています。
「生きづらさ働きづらさのない世の中を創る」
そんな弊社のビジョンにもし少しでも共感して力を貸して下さるなら、その力を存分にふるっていただくための環境を用意する準備があります。
皆さんが持つスキル・知識・情熱を、単なる企業の利益のためよりも、社会をより良いものにするためにこそ注いでいただきたいのです。
あなたのデザインが誰かの希望や未来を創るその時をSANCYOで迎えませんか?