今回は入社2年目のエフェクトデザイナー田中の話の前編をお届けします。
内容は入社の経緯やスパーククリエイティブの開発環境や働き方、ともに働きたい人物像、今後の目標まで多岐に渡りました。「夢が叶った」と話す田中。その先にはどんな未来を描いているのか。ぜひ、デザイナー自身が語るキャリア論をご覧ください。
エフェクトは「ゲームへの最後の味付け」の仕事である
――現在の仕事内容をお聞かせください。
田中:メインの業務はVFX(ヴィジュアルエフェクト)をゲームにつける仕事ですね。
イメージとしては杖から出る魔法や火、他にも水や光をつくり、モーションや作ってきたもの[s1] に対して、エフェクトをつけ足すことです。
エフェクトデザイナーは、ゲームに対して「最後の味付け」をする役割を持っています。
――スパーククリエイティブに転職するきっかけは何だったのでしょうか?
田中:前職のゲーム会社に勤務していた時に、ツールとして「SPARK GEAR」を使っていたことからスパーククリエイティブは知っていました。その縁でCEOの岡村さんと話をする機会があったんですね。そこで私が好きなオンラインゲームのタイトルに、岡村さんが深く関わっていたという話を聞いたりした事が最初のご縁で、仲良くさせていただいていました。
当時はキャラクターを動かすモーションの仕事をしていましたが、前職の会社には社内にエフェクトを作れる人がいなかったんですよね。だから週に一日、出向という形を取り、スパーククリエイティブでエフェクトを勉強させていただいていたことが、一番のきっかけですね。
――岡村CEOの第一印象はどうでしたか?
田中:「変わった人だな」と思ったことが正直な気持ちです。私が会った当時はストリート系のファッションをしていたんですね。そんな岡村さんが私の前職の会社に「SPARK GEAR」の講習に来ていた時にトイレですれ違ったのですが、まさか社長だとは思いませんでした。講習が始まって「さっきすれ違った人は社長だったのか」と驚きましたよ(笑)。
――思っていた社長像とは違う人だったんですね。
田中:ファッションの影響も大きいと思います(笑)。岡村さんと話したり、デザインを勉強したりする中で、少しずつエフェクトへの関心が高まっていきました。また、もっと自分の実力を高めたいという気持ちもありました。前職で担当していたサービスは、リリース当初は自分ひとりでつくっていたのですが、チームになって、トップとして担当するようになっていたんですね。でも私としては「まだトップになれるほどの実力はない」というジレンマを抱えていたんですよ。このモヤモヤを解消するために、もっとレベルの高い会社で修行したいと考えて、技術力に定評があるスパーククリエイティブに転職しました。
――「技術力のスパーククリエイティブ」というイメージで入った田中さんですが、
入社後のギャップはありましたか?
田中:マイナス方向にはなかったです。もっと淡々と仕事をしていると思っていたのですが、熱い議論が交わされている場面を見て、意外に思うことはありました。ものづくりに対しての熱量も私が想像している以上でしたね。例えば、前職時代にスパーククリエイティブとは別の会社で作ったエフェクトを納品していた時があったのです。でも、岡村さんを含め他の社員の方々が修正して「こっちのエフェクトを使ってくれ」と言われたことがあって、とても驚きました。
――品質へのこだわりが強いのですね。
田中:こだわりが強いこともあって、喧嘩ではないですが議論になることはありますね。世に出るのは一つになってしまうので「どっちが良かったのか」は比べようがないのですが、修正したエフェクトの方が良かったということはよくありますよ。
入社して、幼い頃の夢を叶えることができた
――デザイナーチームはどういった組織編成になっていますか?
田中:エフェクトデザイナーだけで10~15人程度です。私の上司である先輩が、まさに私をエフェクトデザイナーとして育ててくださった存在です。その先輩はスクウェア・エニックス出身で、ファイナルファンタジー畑で育ったみたいです。
――とても尊敬されているんですね。
田中:そうですね。理論的にエフェクトを捉える方なので、例えば雲の切り方一つ、粉の舞い方、力の方向、風の向きなどを理論立てて組み立てる人なので、とても影響を受けています。
――デザインは計算や理論でつくれるのですね。
田中:もちろん先輩自身は計算や理論と感性の両面からつくっているはずです。私は直感でつくるタイプなので、学ばなければならない部分は多くあると思っています。学ばないとエフェクトの世界は落ちこぼれていってしまうんですよね。変化がとても激しい領域ですから。それに、エフェクトは想像の余地も大きくて苦労することも多いですよ。
――どういった想像をしているのでしょうか?
田中:例えば当たり前ですけど、人間がどれだけ早く拳を動かしても波動拳は出ないですよね(笑)。だから、「実際にはないものをどうやってわかりやすく表現できるのだろうか」と頭を抱えることはあります。他にも、ゲームの中だと風が緑色になることもありますが、本来、風は無色ですよね。だから「ここは青色にすれば伝わるかもしれない」と考えるのですが、「最終的には神が下ろすまで待つ」という選択になってしまいます。正解がないんですよ。だから「ここまで考えたなら、後悔はない」という瞬間まで考え尽くします。
――考え抜く環境の中で、教えてくれる人がいるのは助けになりますね。
田中:人の魅力は大きいですよ。弊社は規模がそこまで大きくないので、社長に話が通りやすいという点もあります。社長が開発ブースに来て社員と自然に話をしているので、
「社員が多すぎて社長が社員の顔も名前も知らない」ということはないですね。
トップとのコミュニケーションを取りやすい点は魅力です。
――「こんな仕事がしたい」という提案も通しやすそうですね。
田中:それもあってなのか、デザイン面だと今の自分より少しレベルの高い「背伸びができる仕事」を任されることが多いです。先日スクウェア・エニックス様との仕事でファイナルファンタジーのタイトルに関わらせていただいたのですが、私のような若手ができる仕事ではないと思います。
――思い入れのあるタイトルに関われたのですね。
田中:「私もついにファイナルファンタジーに携われたのか」と思えて、この業界に入って一番嬉しかった瞬間でしたね。そもそもゲーム業界にはファイナルファンタジーに関わりたくて入ってきたので、夢が叶った瞬間でもありました。でも、ひたすらレベルが高いと思うことばかりでしたよ。エフェクトも軽くつくったら絶対に採用されないですね。
――憧れのタイトルだったと同時に、苦労もあったのですね。
田中:自分の至らない点がよく見えました。デザインの仕方を学べた他にも、チームの回し方を見ることができた点は大きな学びになりましたね。例えば人に仕事を任せる時に表を使っていますし、出社したらまずはタスク確認をするなど工夫がされているんですよね。その工夫一つでプロジェクトが順調に進むようになることが分かりました。
後編続く