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高速撮像技術とAIを活用した細胞解析プラットフォームを開発する株式会社CYBOでエンジニアを募集

高速撮像技術とAIを活用した細胞解析プラットフォーム「SHIGI」を開発する株式会社CYBOでは、画像処理技術者やWebエンジニア、組み込みソフトエンジニアの中途採用を実施します。創業者である代表取締役社長・新田尚氏に、デジタル顕微鏡の可能性やCYBOが描く未来、求める人材像についてお話を伺いました。

経歴と創業の経緯

――まずは、新田さんの経歴を伺いたいです。

新田

東京大学の理科一類に入学後、生命に興味を持つようになって農学部に進学し、生命の構造的な基本単位である「細胞」について極めたいと思うようになりました。細胞は複雑で種類も多く、治療や食料、病気の診断など様々な機能を果たします。そういったところが非常に面白いなと思ったのが、修士から博士になった20代前半の頃です。

――その後は、どのような経験を積まれてきたのでしょうか?

新田

東大発のベンチャー企業に就職し、最終的には執行役員になりました。そのベンチャーは細胞の活性を測る機械の開発・販売をしており、面白い経験ができました。7年ほど勤めた後、次は大学時代のボート部の大先輩に誘われてソニーに転職。もともとBlu-rayディスクの開発で培った「レーザーの光を当てて情報を取る」という技術を、細胞解析に技術転用しようとしていた新規事業に、ジョインしました。ユーザーである生物学や理学の先生たちから要望を集めたり、プロトタイプ機を共同研究で使ってもらい、結果をエンジニアに返したりと、エンドユーザーと開発の間をつなぐ仕事をしました。ソニーには約8年在籍し、開発したフローサイトメーターという細胞計測装置を製品化してプロダクトをワールドワイドに販売するまでの事業化プロセスを経験しました


――そこから、CYBOという会社を立ち上げることになったきっかけは何でしたか?

新田

東京大学大学院理学系研究科の合田先生に誘われ、新しい細胞解析技術をつくるプロジェクトに加わったことです。合田先生は高速イメージングという技術で世界的に有名になられた方で、現在はCYBOの取締役でもあります。そのプロジェクトでは超高速撮像技術で撮った細胞の画像をAIで解析し、解析結果に応じて必要な細胞だけを集める技術を開発し、私もプロジェクトリーダーとして開発に加わりました。その成果は2018年に世界的に有名な科学ジャーナル『Cell』に発表し、その後も様々な賞を受賞するなど、国際的にも高い評価を得ています。この論文発表のタイミングでCYBO社を立ち上げました。

――具体的にはどのようなプロダクトを開発しているのでしょうか?

新田

がん検査の支援システムや、脳梗塞や心筋梗塞などの血栓症を早期に見つけるためのシステムをつくっています。会社を立ち上げた後、研究成果を見た顧客から、「高速撮像技術やAI解析技術でこんなことはできないか」「こんなことで困っているんだけど」という感じで、様々なインプットがありました。そこにフォーカスし、顧客の課題に技術をはめ込んでプロダクトをつくっています。

高速撮像技術とAIを活用した細胞解析プラットフォーム「SHIGI」とは

――高速撮像技術について、そもそもなぜ細胞を高速で撮影する必要があるのでしょうか?

新田

多くの細胞を短時間で解析するためです。例えば、今我々が開発している「SHIGI」は、がんになりかけている細胞を見つけてくれる技術です。1万個の細胞のなかにがん細胞を1個見つけた場合、その技術には1万分の1のがん細胞を見つけられる感度があるということになります。10万個、100万個という膨大な数の細胞を見ることができれば、より感度が上がります。しかし、膨大な数の細胞を検査するためにものすごく時間がかかってしまうようでは、実用的ではありません。実用的に使える時間のなかで多くの細胞を測るためには、高速撮像が重要なのです。

――検査の精度という点ではいかがでしょうか?

新田

細胞診という検査の場合、異常細胞が見つかれば精密検査に案内されますが、正常な細胞を誤ってがん細胞として拾ってしまう「偽陽性」が起こると、患者さんが精密検査を受ける負担が増えることになります。逆に本来見つけるべき異常細胞を見落とす偽陰性があると、精密検査を受けるべき人が受けられなくなり、がんの発症を許すことにつながりかねません。精度と感度を両立するために、我々は高速撮像技術にAIの技術を組み合わせています。AIに細胞の画像をたくさん与えて、的確にがん細胞などの異常細胞を見分けられるようにしています。

――高速撮像とAIの組み合わせがCYBO社の強みなのですね。

新田

そうですね。あとは、ハードウェアとソフトウェアを一連で開発できるのもCYBOの強みです。ものすごい速さで撮影するだけではデータの洪水が起こってしまいます。そこでCYBOでは、撮影したデータをすぐさま信号処理することで、保存するデータ量を削減したり、何度も大量のデータにアクセスしたりしなくても済むようにします。撮像、信号処理、ソフトウェアを一体で開発することで、ソリューションを提供しているのです。


――CYBO社は「AIで細胞解析を革新するプラットフォームカンパニー」と掲げていますが、「プラットフォーム」について詳しく伺いたいです。

新田

スマホを例に挙げると、まずスマートフォンというハードウェアがあって、そのなかにソフトウェアであるアプリを入れると様々なことができるようになりますよね。同じように、顕微鏡検査をデジタル化するSHIGIというプラットフォームを病院に置き、具体的な検査については様々なソフトウェアを入れることで対応します。既存の検査機器は1台で1種類の検査しか行えないため、コストも下がらず、新しい病気にもなかなか対応できません。その点、SHIGIはファンダメンタルなツールなので、様々な病気や症状に対応するソフトウェアをアップデートしていくことができます。

初期の大事なアプリは自社でつくっていくつもりですが、いずれはユーザーの皆様がプラットフォーム上で動くアプリをつくるようになればいいなと思っています。例えば、患者数が少ない希少な難病に対しては、市場性の観点で今は個別の医療機器がつくられることはほとんどありません。しかし、ソフトウェアで対応できるようになれば、いろんな大学の先生とかが希少疾患を検査するソフトウェアをつくり、検査のロングテールを拾えるようになることも考えられます。

CYBOのエンジニアは医療に関わる社会的意義の高い仕事

――今回の募集では、医療や生物、細胞という分野以外で活躍されてきたエンジニアの方たちもターゲットになるかと思います。この領域で画像解析に携わる面白さや醍醐味は何でしょうか?

新田

医療に直結する仕事は人の命にも関係するので、社会的な意義がモチベーションになる方もいると思います。あとは、いろんな専門家と交流できることも醍醐味として挙げられますね。ユーザーである医師や技師から出てくる難しい要求をひとつひとつ理解し、解決していくことでまた新しい世界が開けます。

高速撮像技術という観点では、ユーザーが今デジタル顕微鏡について感じている不満や課題を全部ひっくり返してあげれば、これから一気に伸びる可能性があります。忘れ去られがちなディテールを追求すること、専門家たちと交流しながら技術を突き詰めようとすることに面白さを感じられる人。あとは、技術オリエンテッドというよりも目的オリエンテッドなので、広い視点で動くのが好きな人はより楽しめると思います。

――医療や細胞に詳しくない方でも、ユーザーの課題や求められているものを理解できるものでしょうか?

新田

大丈夫です。開発部には、バイオ系のバックグラウンドがある人はほぼいないですね。共同研究先の先生の話を真摯に聞き、開発部以外にいる詳しい方たちとディスカッションすることで、要望を十分にキャッチアップできると思います。むしろ専門外の人だからこその視点も大切ですし、異なるバックグランドの相乗効果を楽しめるのではないかなと思います。

――だからこそ、これまで医療やバイオの分野に全然触れてこなかった方にもぜひ応募していただきたいですね。今回募集するエンジニアの方には、どういったことを任せていきたいと考えていますか?

新田

ひとつは、SHIGIというハードウェア上のエッジコンピューティングで行う信号処理です。いかに効率よく信号処理するか、画像や解析のクオリティをどこまで上げられるか。もうひとつは、サーバーに送られたデータをまとめたり、将来的に新しい発見につながるよう解析したりといった、サーバーサイドでの画像処理の仕事もあります。さらには、細胞画像やAIの解析結果を医師などのユーザーに分かりやすく提示することもとても重要ですので、Web開発の経験者でしたら、画像データベースに接続するバックエンドや、画像を表示して操作するインターフェースを提供するフロントエンドなどの開発も挙げられます。

――例えば、今は工業製品の画像処理技術者や顔認証の仕組みに携わっている方が弊社に興味を持ってくださったとして、CYBO社の何を一番アピールしたいですか?

新田

非常にコンパクトな会社のなかで、ハードウェアからソフトウェアのソリューションまで一気通貫でつくれる点ですね。あとはやはり、医療という領域にも非常に価値があると思います。今も若くしてがんにかかっている方は少なくありませんが、早く見つければ問題が解決する可能性がより高くなりますから。

――早く見つければそれだけがんで亡くなる人を減らせますからね。既存のがん検診との一番大きな違いは何でしょうか?

新田

胃がん、肺がん、大腸がん、子宮頸がん、乳がんは5大がんと言われ、検診によりリスクを減らせることができます。日本では幸いにこれらのがんの検診はとても高いクオリティで実施されているため、ぜひ受診すべきです。より多くの方が受診すべき検査ですが、そうすると検査を実施する医療施設の負担増は免れません。そういった医師や検査士の方々を手助けするためにデジタルやAIなどの技術を開発しています。

――デジタル顕微鏡という技術は、検査以外にも活用できる可能性はあるのでしょうか?

新田

がん切除の手術中にすべてのがん細胞を摘出できたかを確認する「迅速診断」にも活用できると考えています。通常は、摘出した組織をオペ中に病理医が見て正常組織まで十分に切除できたかをチェックしますが、この方法では病理医がその場にいないといけません。だから手術のフレキシビリティが下がりますし、患者の体を開けた状態で結果を待たなければならないリスクもあります。デジタルの医療技術を活用すればチェック時間を短縮できますし、遠い病院にいる病理医が遠隔でチェックすることも可能になります。

CYBOの描く未来と現在のフェーズについて

――SHIGIの開発が進み医療業界に広く浸透することで、未来はどうなると考えていますか?

新田

様々な種類の検査を支援する基本的なプラットフォームが、資金がある一部の病院だけではなく、全国にある約8000の病院に普及している未来を目指しています。そうなると新たな検査法や、ユーザーオリエンテッドアプリケーションなども生み出されるはずです。短期的には検査業務も楽になりますし、人によるバラつきが減って精度が上がると思います。中長期的には、偶発的な発見が増える可能性もありますね。デジタル顕微鏡の普及によって顕微鏡検査や病理検査のデータ化が進めば、例えば北海道の患者さんと東京の患者さんの症例を比較することができ、これまで見過ごされていたものも見えてくるようになります。医学的な発見が加速し、いずれはユーザーの皆様のなかからノーベル賞受賞者が出る可能性だってあると思います。

――その未来に向けて、現在CYBOはどのようなフェーズにあるのでしょうか。

新田

今はファーストプロダクトのプロトタイプができたところです。まずは医療機器としての承認を得て、今後1~2年かけて収益を上げていきます。その後は拡販を進め、アプリケーション拡大のために次の資金調達をして、その次はIPOを目指します。

――求職者のなかには細胞や検査といった分野の市場規模について詳しくない方も多いと思うので、市場の規模感について伺いたいです。

新田

例えば、子宮頸がんのがん検診だけでも年間約1千万件以上行われています。ほかにも、膀胱がんは高齢化とともに罹患人数が増えていますが、再発が多い病気なので、尿を定期的に採取して行う再発チェックが欠かせません。手術後は月1回検査することもあり、検査回数が非常に多いため自動化に対するニーズは高いといえます。

――海外にも細胞計測分野のスタートアップはありますが、日本でやる意義はどこにありますか?

新田

日本はハードウェアの技術面が強く、ソフトウェアもいい人材がいるので、技術のベースがしっかりしています。また医者や検査技師のレベルもとても高いので、優れたAIがつくれます。先生方からの要求が多いということは、的確なフィードバックを得られやすいということでもあります。

海外のスタートアップのプロダクトは、クオリティや機能を割り切ってつくっている印象です。日本のユーザーに使用感を聞いてみるとやはり課題もあるようですし、それでは真に普及していかない気がします。だからこそ、日本でしっかりと受け入れられるプロダクトをつくって、それを世界に広げていく。感性的なところも含めて愚直にチャレンジするのは、わりと面白い環境だと思っています。

――日本の医療環境から考えると、データの集まり方やユーザー側のこだわりの強さなどが優位性になり得るのですね。最後に、グローバル展開の余地についても伺いたいです。

新田

病気は万国共通なので、グローバル展開の余地は十分にあります。いわゆる新興国も、豊かになったことで肥満が増え、脳梗塞や心筋梗塞などの血栓症が増えています。基本的な保健衛生が良くなることにより感染症などで亡くなる方が減り、今度はがんや動脈硬化が増えるという時代になっていきます。そういった国々では急激に検査体制が増えるわけではないので、グローバルで見てもニーズは増えると考えています。

――ありがとうございました。

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