2020年10月1日に自社開発のエリアマーケティングシステム「DEECH」をローンチしました。弊社は創業が2002年の会社なんですが、祖業はポスティングです。その会社が16年後にSaaSを開発してデジタルマーケティングを推進しているなんて不思議ですよね。僕が9年前にDEECH社に転職してきた時には架電営業が主流の超!アナログ営業会社でした。今回はそこに至るまでのストーリーをお話ししたいと思います。
川下から川上へのこだわり
どこの会社に勤めていても自分の夢は作れますし、組織に属したならば会社が目指す目標と自分のやりたいこととチューニングを合わせます。そのひとつの方法として新規事業への取組みがあると思います。DEECH社も既存事業の拡大と共に新規事業を積極的に行ってきました。そのなかで少々拘ってきたことは、川下から川上への事業展開への意識だったと思います。一般的な常識だと川下に向かっていく戦略が正しいと思いますが、DEECH社の場合には参入障壁が低いポスティング事業が祖業だったからこそ、川上に上がるしか方法が無かったのかもしれません。
■ポスティング(祖業)
祖業はチラシの投函。事業会社や広告代理店、制作会社から様々なチラシを倉庫に受け入れることで、投函後に成果の表れるものと表れないものの違いが蓄積されノウハウとなりました。
■デザイン
それならば、デザインを自分たちで行ったほうが良い提案ができるのでは?と考えデザイン部門を設立。チラシやパンフレット以外にもブランディングも行ったことで、経営層とのつながりも増加。その甲斐もあってWEB制作の相談が多く発生しました。
■WEB制作
コーポレートサイトのリプレイスやランディングページを制作。しかしWEBサイトの目的を追求すれば「作った後」にどのような提案をするのかがカギとなります。それには必然的にWEB解析やアクセス分析の知識が必要になるので社員の資格取得も含め、より専門的な領域に特化するようになりました。
■広告運用
WEB上で顧客を獲得したいニーズがどんどん旺盛になってきたことに伴い、WEB解析、アクセス解析を経てWEB広告の運用を支援する比率が高まっていきました。
■コンテンツ制作
WEBサイトの制作ではコンテンツSEOの依頼も多く、そこには分析や解析と同時にスピード感を高めるためにもライティングに対してのディレクションも求められるようになります。
■デジタルマーケティングのコンサルティング
DEECH社でもインバウンドマーケティングを行っており、その実践そのものがノウハウになっています。コロナ禍も追い風となりマーケティングオートメーションを活用したインサイドセールスの立上げに対しても明るくなってきたことで、コンテンツ制作、広告運用、メールマーケティングまでの一連のノウハウを提供。アナログな営業手法からWEBをメインとする営業戦略に移行したい企業へのコンサルティングを行うようになりました。
このように、川下から川上へと事業の範囲を拡大してきました。ポスティングやデザイン制作はよほどのことがない限り実務担当者とのやりとりに終始しますが、予算を大きく扱う案件にコミットするようになるほど経営層や経営企画部、マーケティング部、販売促進部など組織の川上への提案が必要になります。会社全体のビジネス偏差値を上げていくためにも、新たな知識を獲得していく「前提」での組織運営をしてきました。
広告業界の急激な変化
ここで我々が属している広告業界について触れてみます。広告業界はどのような状況になっているのでしょうか。電通が発表している毎年恒例の日本の総広告費。2020年はコロナ禍の影響がありながらも6兆1,594億円(前年比88.8%)に踏みとどまりました。
9年ぶりのマイナス成長とは言え、まだまだ6兆円を維持している大きな市場です。しかし、内訳を見てみると6兆円市場の中身は大きな変化の渦に巻き込まれています。
その変化の渦の中で、組織としては決して大きくないDEECH社がなぜ存在出来ているのでしょうか。
この図は15年間の各媒体の広告費(各媒体の市場規模)の変動を比較しています。いわゆるマスコミ4媒体(ラジオ、新聞、雑誌、テレビ)と呼ばれるメディアは軒並み広告費を激減させていて、その中でも新聞の広告費の凋落が特に激しく、悲惨と言ってよいほど市場がシュリンクしています。インターネット広告が急激に成長してきたことで、新聞広告がその煽りを一番受けてきました。
そして急成長しているのは言わずもがなのインターネット広告費。2015年にはインターネットの広告費が1兆円を超えましたが、そこからわずか4年後の2019年。長らく我が世の春を謳歌してきたテレビ広告費を一瞬で抜き去り、なんと2兆円の大台を突破しました。
ちなみにシンクタンクの矢野経済研究所によれば、ネットの広告費は2023年には約2兆8,000億まで伸長するとの予測をしており、特にスマホへの広告が市場をけん引(インターネット広告の約7割)すると見ています。
マスコミ4媒体の広告費の激減をインターネットの広告費が吸収していることが上図から把握できたと思いますが、最下部にあるプロモーションメディア費の15年間の比較はどうでしょうか(プロモーションメディア費に属する媒体の種類は以下を参照ください)。
約4,300億円ほど減少していますがこの激動の中でも2兆円を保ち続けています。企業は広告費を急激にインターネットにシフトしているものの、アナログでなければ出会えないユーザーが存在することも分かっているのです。
祖業への自己否定
DEECH社は祖業がポスティングであると冒頭でお話ししました。よって、プロモーションメディア費が大きく変動することがない市場の利点を生かして成長することができ、祖業は安定した売上を継続していて、社内の雰囲気も明るく誰しもこの延長線上に未来があると思っていたような気がします。しかし現状に満足するあまり、市場環境や動向に極端に鈍感になっていました。まさに木を見て森を見ずな状態に陥っていて、組織として自己否定が必要な時期に入っていました。
なければ作ればいいんじゃない?
プロモーションメディア費にカウントされる新聞折込やポスティングなどはアナログです。エリアマケーケティングの宿命ともいえる商圏設定には多くの人力が発生します。そんななか、「googleマップでポスティングが発注できたり、クラウドでさくさく動く商圏分析や反響分析が合わさったプロダクトがあったら使う企業ってあるのかな?」という仮説から生まれたのがDEECHでした。
DEECHを開発するにあたって有志で色々と議論・調査した結果、マーケティング寄りのプロダクトは存在していなかったので、「なければ作ればいいんじゃない?」的なノリで開発に着手する方向になりました。これは会社の良い文化だと思います。何かをやる際に考えながら走ってみるという企業文化はとても大切ですね。
この分岐点でのポイントは、社員から生まれたディスカッションを経営層のコミットの元、一緒に推進ができたことだと思います。そして、この開発に関わっている人間それぞれの当事者意識が強いことは大きな強みです。誰よりも要件定義に必死で、誰よりも現場で商談し、誰よりもチームの味方になってくれる存在があるからこそ前を向けているのだと思います。
アナログ企業から脱皮したこれから
WEBとアナログ両方のマーケティングを行っている企業は多くありません(広告代理店は受注の機能はありますが外注をしていることがほとんど)。そこに自社で開発しているプロダクトを掛け合わせると「競合が存在しない」状態になります。幸いエリアマーケティングシステム「DEECH」をリリースしてから多くのお客様に導入していただき、今後も開発を継続しながら我々が提供できる価値をどんどん還元してきたいと考えています。エリアマーケティング界隈のDXは始まったばかり。数年後には有店舗型のビジネスを行っている企業が当たり前のようにDEECHを導入している世界を創っていきたいと思っています。
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