生田(写真左):㈱ネストピCEO。
前田(写真中央):創業メンバーの一人。
栗田(写真右):㈱ネストピCTO。
【後ろ盾ゼロで会社を創業!疲弊とすれ違いを乗り越えた怒涛のスタート】
ーー本日はよろしくお願いいたします。皆さんは、前職のモバイルオンラインゲーム専門の会社で出会ったと伺っていますが、どういった経緯でネストピ創業に至ったのでしょうか?
生田:まず当時を振り返ると、その会社の倒産直前に『強くてニューゲーム』を5か月でリリースして、ネストピとして独立したという流れでしたが、お二人にはどのように声をかけましたかね?
前田:私も当時は土日出社したので、会社で作業をしている時に生田さんに声をかけられた気がします。
生田:土日出社はずっとでしたよ(笑)。
全員:笑
前田:周りの人数が少ない時間帯に、ふと声をかけられた記憶がありますね。
生田:たしかに。みんながいる場所だと話しづらい内容ですから。
栗田:私も明確に覚えていなかったですが、前田さんはネストピに来るんだろうな、自然とそうなるだろうと思っていましたね。
ーーどうしてその2人に声をかけたのですか?
生田:それで言うと、僕は一番最初に栗田さんに声をかけたのは間違いないのですが、栗田さん・前田さんと特に仲が良かったんですよね、一緒にランチ行っていたり。だから自然発生的に、そう繋がっていった気がします。そういえば前田さんはその時、どうしてネストピを立ち上げるメンバーとして一緒に働きたいと思ったのですか?
前田:そうですね。もともと働いていたメンバーとまたゲーム開発したいという想いもありました。そして生田さんのクリエイターを大事にするところ、クリエイターの評価に見合った報酬設計を作ろうという考え方が、これまで業界になかったものだったので、すごく魅力を感じたというところでしたね。
生田:それが、2番目で。1番目の理由は?転職活動がめんどくさかったのではなくて?
前田:そんな理由はないですよ!
全員:笑
生田:茶化してすみません(笑)。僕も個別インタビューでお話していますが、起業することはずっと決めていましたし、もう前職が倒産するとなったタイミングしかなかったと思います。「ここだ!」って。
栗田:それは、めちゃくちゃ思いますね。
生田:それまでゲームを作ってきたメンバーが一緒にフリーになる、という瞬間はまずないですから。色々と都合は良かったですよね、本当はちょっと早いかなと思っていましたが。当時は何もコネクションもないですし、所属していた会社が倒産したので、そこから仕事をもらうわけにもいかないじゃないですか。
栗田:後ろ盾ゼロですね(笑)。
ーーたしかに滅多にないようなタイミングですよね。
生田:だから想定より早まってはいるんですよね。そうして倒産後、とりあえずネストピを立ち上げようとなり、前田さんはすぐに合流しましたね、
前田:そうですね。すぐ合流した形でした。
生田:一番最初はあれですよね、『強くてニューゲーム』の運営をやったり。
栗田:そうです。取っ掛かりはHTML5でweb版を出すことに始まり、そこから他のゲーム会社への出向組と、自社コンテンツ制作の内製組に分かれていきました。
生田:7月に会社を設立して、ネストピ初のオリジナルタイトル『アンクラウン』の企画が始まったのは10月くらいからでしたね。設立から3か月くらいは準備したり、右も左も分からないなかで過ごしていました。
栗田:そうでしたね。生田さんとプログラマーの2人でモックを作って、そこから始まっていますから。
生田:個別インタビューでも軽く触れましたが、実はこの時に2つ企画を出しているんですよね。別の社員の企画と僕の企画で。
栗田:ああ、そうだそうだ。
生田:もう一つの方は『強くてニューゲーム』の素材を使ってゲームを作ろう、流用しようというものでしたよね。その企画と『アンクラウン』でどっちにしようかと悩み、挑戦的な方を選んだんです。そこからが大変だったという話なのですが……。
栗田:一年半ですもんね。
生田:その時の判断が正しかったのかは難しいですね。未だに悩むじゃないですか、置きに行くべきか挑戦するべきか、って。この二択がいつも現れるんですよね。だからたまに栗田さんも僕に囁いてきますよね。「置きにいかない?」「プチヒットでしっかり狙いにいこうよ?」と。
全員:笑
ーー結果論で良かったとはいえ、当時のお働きっぷりはお辛そうですよね。
前田:辛かったですね……。
生田:1年半の制作期間がありましたが、結局『アンクラウン』は完成しきっていなかったんですね。リリース延期がずっと続いていて、その時は出向しているメンバーもいてバラバラでしたし。栗田さんたちは出向組でアーケードゲームを作っていた時ですよね。
栗田:生田さんはその頃、2~3本くらいのタイトルをディレクションしていましたね。
生田:そうそう。でも設立した瞬間って勢いもあり仲間意識も強いものですが、出向という形で社外に出てしまうと、意識が薄れてしまうんですよね。一緒に働いている感覚もないですし、「ネストピで一緒に働いている理由とは?」と疑問を持ってしまいますよね、どうしても。
栗田:そうでしたね。
生田:実際に変なすれ違いも起きていましたし。みんな地獄のように忙しかったので、「あっちのメンバーは何をやってるんだ!」となりますよね。お互いに状況が分からないなかで、精神的にギリギリな線でやっていましたね。そのタイミングで「もう、ここで出そう!」とリリースを判断したんですよ。これについては栗田さんに相談した気がするのですが。
栗田:その相談はありましたね。きっかけとして創業メンバーからの相談もあったのですが、挑戦的なことをするにはご家族の協力もあってこその部分がもちろんあるので、そのメンバーの家族の方が忙しすぎる状況が続くことにこれ以上耐えられないという状況になったんですね。だから、ゲームとしても遊べるようになるギリギリのタイミングとリンクさせて、リリースを判断したと記憶しています。
生田:だからお知らせ機能の実装は諦めました。ゲーム内でユーザーに告知する機能は消すっていう。
全員:笑
生田:だから、本来必須だと思われる部分は削って、でも、一番大事だったのはゲームの面白さだったので。そこを削ったら完全にゼロになってしまうので、なんとか選択してリリースしたという流れでした。
【変わりゆくオフィス環境とリモートワークで気づいた、コミュニケーションの重要性】
ーーまさに怒涛のスタートだったのですね。その頃に覚えているエピソードは、他にもありますか?
栗田:私はその頃メンバーにあまり認知されていなくて。社内でバーベキュー会をやった時にはじめて認知されるレベルだったんですよね。当時、映画鑑賞部という週末にみんなで映画を観る活動もしていて、映画の終わり際に栄養ドリンクとお菓子を差し入れに持ってきてすぐ帰る人になっていました(笑)。
前田:ありましたね(笑)。
栗田:そういう意味では出向が終わって、中のメンバーとモノづくりできるようになった時は嬉しかったですよね。
生田:だから未だに僕は、今の環境は贅沢だなとは思っているんですよ。「あれは辛かったぞ!」と伝えたい……残念ながら多くのゲーム会社は、その辛い時期から抜け出せずにいるわけです。僕たちは抜け出すことができましたけど、戻りたくないです(笑)。
栗田:戻りたくないですね(笑)。
生田:とはいえ正直、前職時代の方が環境はやばかったですからね。『強くてニューゲーム』を制作していた最後の5か月が特に辛かったですが、しかも真冬だったんですよ。休日出社したときには広いオフィスの片隅で、みんなで寒すぎるので団子になって開発していました。
栗田:そうそうそう!
生田:毛布と小さいファンヒーターの奪い合いしていましたよ。
栗田:ありましたね~、懐かしい。その思い出のファンヒーターはネストピに持ってきましたよね。もう今は使わなくてよくなったけど。
全員:笑
生田:その時代と比較すると、ネストピは幸いにもオフィスに恵まれたんですよ。綺麗で広さも充分で、何より安くて。その時は快適にやれていたなと思いますね。インターネットもちゃんと通っていましたし。そのあたりは苦労がなかったですよね。
栗田:前職の環境を超える苦労はなかったですね。
前田:私も家からヒーター持ってきていましたもん。
生田:そうそう、追加したヒーターにも助けられていました。
ーー前職の過酷な環境と比較したら、今はとてつもなくいい環境ですね。
生田:イスだけはひどかったですね。僕がお手頃なものを見つけてみんなで買いに行ったのですが「これはペラペラすぎる!」とずっと文句を言っていました。その後、ちょっとだけお金が出来た瞬間にゲーミングチェアを買いましたね(笑)。
栗田:でも微妙に愛着がわいたのか、身体に染みついたのか。
前田:逆に「あのイスがいい!」と使っている人もいました。僕の場合はイスが悪すぎてバランスボールの方がまだマシでしたね。
栗田:そうして、創業の2年後くらいから、出向も終わり受託に切り替わるタイミングがきまして。リモートで作業したり応接スペースの床で仕事をすることもあるくらいに、オフィスの席がむしろ足りなくなったのも懐かしいですね。
生田:今の新オフィスもそうですが、もっとも快適なのは会議室だと本当に思います。それまでは何かトラブルがあり、話し合いが必要になるたびにカフェに行って、秘密のお話をしなければいけなかったり……会議室ができた時の感動は大きかったですね。だから、今後ネストピから独立するメンバーがいたら「がんばって会議室のあるオフィスを借りた方がいいよ!」と教えたいです。
全員:笑
ーー現在では世の中的にもリモートの風潮が強いとはいえ、オフィスとしての機能は重要ですよね。
生田:そうなんです。やっぱりゲーム開発を密に行うためには、コミュニケーションが重要すぎるんですよ。仕様が決まっていない作品を開発しているときは特に。コミュニケーションを取りながら、リアルタイムに話して、決めて修正しないと良いモノにはならないですね。ホワイトボードを使ったり、その場でカラダ含めて表現できる場は捨てがたいなと感じます。とはいえ、新型コロナウイルスが流行り始めた頃は、情報もない未知のものだったのでどうすればいいか本当に分からず、とりあえずフルリモートで3か月くらいやっていましたね。
栗田:一回目の緊急事態宣言が解除されて久々にオフィスに集合して、改めて「リアルで顔を合わせられる体制じゃないと作れないな。」と確信しました。
生田:このあたりは僕たちの開発の仕方に依存しているところはありますよね。インディーズという少人数で効率が良いところは、集まってすぐに共有できるという強みであって。順番に情報を渡していくようなやり方にすると、大きな規模のチームと変わらないんですね。僕らの強みは、ずっとインディーズを掲げているところですし、そこは失ってはいけないとメンバー間でも意見が合致していました。
【ネストピのビジョンの実現に向けて、仲間を受け入れられるタイミングが整いました】
ーー前田さんはプランナーですが、これまでのゲーム業界での経験も踏まえて、ネストピでの開発体制はやりやすいと感じますか?
前田:そうですね。僕はまだプランナーとして未熟だったのですが、そういう状態でもネストピという会社はやる気次第でいろんなことにチャレンジできるので、プランナーの枠を超えてやらせてもらえたり、仕事をしていて常にやりがいや楽しさを感じられる状態でしたね。
栗田:たしかに。その観点からすると、ネストピはプランナー、デザイナー、プログラマーといった職種という主となるものはありますが、あくまで役割としてあるだけだという気がします。プランナーがプログラムの領域に入ってくることもありますし、逆も然りといいますか。
前田:初期の頃はデザイナーさんもいなかったので、本来デザイナーさんの方で決めなければいけないことをプランナー側で巻き取ってやっていましたし、それもすごく新鮮でしたね。普通では触れないような部分の作業だったので。とはいえ巻き取って自分たちで触らないとどうしようもないので、やるしかなかったですよね。
ーー生田さん、栗田さんには前回インタビューで個別にお伺いしていましたが、創業当時に掲げていたビジョンがあったと思うのですが、前田さんは今のネストピがそれを体現していると感じますか?
前田:そうですね。まさに私自身も生田さんの思想について行きましたし、会社もどんどん大きくなっていく中で、ビジョンの実現に近づいていっているとは実感します。本当にその環境が「できてきている」ので、すごいなと思っていますね。
栗田:「できてきている」というのが的を射ていると思いますね。創業時はビジョン100%でやっていこうとしても、会社は回らないですから。そういった意味で出向などを経験しながら、やらない選択肢も取れるようになり、やっと今、ビジョンのようなものが濃く反映されてきている時期だと感じます。
前田:本当にここ最近の話ですよね。
栗田:当時は目の前のゲーム制作に精一杯で、ビジョンについても今ほどメンバーに対して打ち出していなかったですから。去年10月くらいにオフィスを移転して、社員が増えたことを皮切りに今の色を、メッセージとして出し始めた部分はありますね。制度自体は昔から変わっていないですが。
採用コンサルの方にもお話を伺ったのですが、創業から一巡して初めて人が多めに入るタイミングで、文化が醸成されていくそうなんですね。逆に言えば、そのコンセプトに合った人たちが、カルチャーフィットした人たちが入ってくるタイミングがあるそうで、まさに今のネストピがそうなのだと感じています。
ーーネストピのキーワードでもある、「モノづくりの熱量」の温度感が近いメンバーを、今やっと仲間を迎えられるタイミングなのですね。
栗田:そうですね。それこそ、前田さんは温度感の違いで苦労された経験があると思いますよ。プログラマーさんに実装をお願いする時の反応というかできる・できない論争であったり、どういったスタンスで話を聞いてくれるかといった経験ありますよね?
前田:確かにそうですね。過去、私の場合は実力が足りていなかったので意見を切られてしまうことももちろんありましたが、プログラマーさんから僕の提案に返してくれるような熱量を感じられないことはありましたね。ネストピの場合は、基本的に皆さんが「こう改善しよう!」とすごく乗ってきてくれるので、そのあたりは全然違うと感じています。
栗田:前田さんのおっしゃる通り、ネストピの現場の生の感覚では、100%を受け入れる体制はできていますね。ただ、リアルなところで大なり小なり、がんばって作ったのに捨てなければいけないシーンも時にはあります。でも基本的には、ゲームが面白くなる方向にみんな納得してくれている、とにかく面白くていいモノを作りたいというゴールがぶれていないので、そのあたりの後腐れは本当にないです。逆に前田さんは他の会社さんにいったら「働きすぎ!」って怒られそうなくらいですよね、めちゃめちゃ頑張るタイプなんですよ。それは、自分でやりたいという欲が強いんですか?
前田:もともとそうですね。若い頃からチームに所属していると自分が一番できない人だと思って仕事をするので、できないで終わらせるのではなくてできない分働けばいいとは思っていました。時間でカバーすればチームの助けになるかもしれない、という考えでこれまで働いてきているので、これが普通といいますか……。作品のクオリティを上げることに対して、時間をかけたらなんとかなるなら、誰に言われるでもなく時間をかけてやってしまうところはありますよね。
栗田:確かに。ゲーム開発でもよく2パターンあるんですよね。技術やツールで時間を短縮するのか、人が手をかけて時間をかけなければいけないところがあって。そういったところを前田さんは時間を見つけてやってくれているという認識です。
ーーネストピは、やりたいだけとことんやらせてくれる環境でもあるのですね。
栗田:基本的にスタンスとしてはそうですね。とはいえ、法律は守らなければいけないので(笑)。行きすぎたらブレーキをかけなければいけませんが、ポジティブな理由のやりたいことに関しては、なるべくできるように帳尻合わせるように仕事しています。ここは、次のフェーズに移行する際の課題になりうるなとは思いますね。私自身も働き方にメリハリをつけなければいけないなと思っています。そこは少しずつ変わっていけたらいいなと思いながら、熱量を発揮できる場所としてありたいですし、むやみやたらに帰らせることはしたくないですね。それこそ生田は夜の22時になると「22時警察です!」とクリエイターに声をかけていたり(笑)。あとは自己判断でキリのいいところまで作り切りたい方には許可しますし、そういったコミュニケーションはできていると思います。
クリエイターのなかには作業が乗っている時に止められることが嫌な人もいるんですよ。そこは日本の法律と合っていないところでもあり、みんなゲーム開発の経験者だからこそ、その「止められたくない!」という感情への理解もあるわけですね。朝遅めスタートの夜遅め終わりがいいとか、乗っている時に止めることがないように、とはいえ法律は守りながらというバランスで働いています。ネストピがまだ小さかった頃から、社労士さんにお願いして制度や働き方に関しても常にチェックしていただいているので、そこは法律順守でちゃんとしていきつつ、理想の体制でゲーム創りを進めていきたいですね。
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