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“ちらっと” 見てってくれませんか?ー魔法の言葉『オノマトペ』

こんにちは!
子ども運動教室LUMO(ルーモ)」の児童指導員の射場(いば)です。

みなさんは日常生活のなかで「これってなんて言えばいいんだろう?」
と困ったことはありませんか?
そして、無意識のうちに「これを “ぴっ” てして “ぽん”!」のように、
言葉にできないような謎の言葉を使っているのではないでしょうか。

特に大阪に住んでいる人は道を案内するとき、右も左も言わずに
「あの角 “グイっ” て行って ”ちゅーっ” て歩いとったら着くわ!」
謎の言葉だけで会話することも多いですよね。
何を言ってるかわからない割には、迷わず目的地に着けるので
いつも不思議に思います。

このような謎の言葉を【オノマトペ】といいます。

オノマトペは日常生活のなかにたくさんあふれています。
無意識のうちに使っている魔法のような言葉ですが、
意識して使えるようになったらもっと
円滑なコミュニケーションがとれるようになると思いませんか?

そんな便利な【オノマトペ】について、今回はお話していきます。
ぜひ “ちらっ” とだけでものぞいていってくださいね!

目次

  1. オノマトペって?
  2. 日常にあふれているオノマトペ
  3. オノマトペを使ってみよう!
  4. “パッ”とわからないこともある
  5. オノマトペを “ぐんっ!” とパワーアップさせる方法
  6. “見る”オノマトペ
  7. 伝わりやすさだけじゃない

オノマトペって?

そもそもオノマトペって結局何なの?
と思う方もいらっしゃると思うので、もう少し詳しくお話しますね。

オノマトペとは、自然界の音や声、物事の状態や動きなどを
音(おん)で伝わりやすく表した言葉のことを言います。
また、オノマトペは擬態語(ぎたいご)と擬音語(ぎおんご)の
二つに分けることができます。

〈擬態語〉…物や人の様子を直接表す。 例:もぐもぐ、にこにこ等
〈擬音語〉…音や声を直接表す。    例:にゃーにゃー、ブーン等

その場の状況にあわせてオノマトペを使うことで、
より相手に物事を伝えやすくなります。

日常にあふれているオノマトペ

その場の状況にあわせてオノマトペを使うためには、
どんなオノマトペがあるか知る必要があります。
ここでは日常にあふれたオノマトペを状況別にご紹介いたします!
自分ならどんなときに使うオノマトペか、ぜひ想像しながらご覧ください。

〈食事〉
もぐもぐ、むしゃむしゃ、パクパク、ちゅるちゅる、もちもち、ほかほか、アツアツ、ひんや~り、ペロペロ、ごっくん、びよーん

〈乗り物〉
ブーン、ドゥルンドゥルン、ピーポーピーポー、ガタンゴトン、プシュー、ゥウー、シュッシュッポッポー

〈動物〉
ワンワン、にゃーにゃー、にゃーお、ミーミー、キャンキャン、ぴよぴよ、ウキー、モォー、ヒヒーン、ぶーぶー、ガオー

〈動き〉
てくてく、とことこ、たったった、のろのろ、ぐるぐる、ころころ、ふりふり、ブンブン、シュッシュッ、パンっ、ぽんぽん、ぐいー、のびー、ぴゅーん、ぴょんっ、ぽいっ

〈感情〉
わくわく、どきどき、ヒュッ、ひえ~、ギクッ、ハラハラ、しょぼーん、キラキラ、むかむか、イライラ、カチンッ、ほわほわ、もやぁ、にやにや、にこにこ

後述する『オノマトペ処方展』では、天井からたくさんのオノマトペがぶら下がっていました!


オノマトペを使ってみよう!

では、実際にオノマトペを使ってお話ししてみましょう。
オノマトペを使わない会話と使った会話を比較して、
伝わりやすさなどの変化を感じて(体感して)みてください。


~よく噛んで食べてほしいとき~

「しっかりよく噛んで食べようね」
⇒「いっぱい “もぐもぐ” しようね」

最初の文章は “しっかり” を入れることで、
後に続く「よく噛んで」を強調することができていますね。
しかし、1〜5歳くらいの子どもたちは “しっかり”  や  “よく噛む” 
などの理解が難しいことが多いです。

では、後半の文章のように
“もぐもぐ” というオノマトペを使ってみたらどうでしょう?
オノマトペを使うことで、子どもにとって難しい言葉をシンプルに表すことができます。
さらに、動き(ジェスチャー)と組み合わせることでより伝わりやすくなります。


~走らずに歩いてほしいとき~

「走ると転んでケガするよ!ゆっくり一緒に歩こうね。」
⇒「走るとズテンってなってケガするよ!てくてく一緒に歩こうね。」

最初の文章でも、転んでしまうことや、ゆっくり動いてほしいことが伝わりますね。
しかし、転ぶときの “強さ” は伝わりにくいように思います。
ここでは、転ぶとケガをして痛い思いをしてしまうことを伝えたいので、
ケガをするような転び方を想像できるオノマトペを使う必要があります。

例えば、“こてんっ” というオノマトペでは、
軽く躓いただけでは、ケガをしそうにない転び方のように感じませんか?
ほかにも、“ころりん” などはどうでしょう。
ケガをするというより、どこかに転がって行ってしまいそうですよね。

では、“ズテンッ” や “ズベッ” はどうでしょう。
転んだ後、膝から血が出て痛くなるような様子が目に浮かびませんか?
これで「痛い思いをしてしまう」ということを簡単に伝えることができます。

ゆっくり歩くときのオノマトペは
“てくてく” 以外に “とことこ” も伝わりやすいと思います。
“てちてち” なんかも小さく歩いているようでかわいいですね!

“パッ”とわからないこともある

ここまでオノマトペの種類や使い方のお話をしてきて、
「オノマトペって何でもわかりやすく伝えることができるんだ!」
ということが伝わったかと思います。

しかし残念ながら、
すべてのオノマトペが確実に相手に伝わるわけではありません。

毎日新しいものがつくられているように、
オノマトペもどんどん増えつつあります。
新しいものって、最初「何それ?」って思いますよね。
オノマトペに関しても、同じことがいえます。

例えば私の場合、子どもたちに後転を教えているときに
「 “ぎゅんっ!” て後ろにいくんだよ!」と伝えたところ、
「なにそれ?」という表情をされたことがあります。

最初にご紹介したような日常的に使われているオノマトペであれば、
ある程度想像して行動することができます。

しかし、初めて聞いたオノマトペだと
“言葉” から “動き” を想像することが難しく、
どうすればいいかわからなくなってしまいます。
さらに、オノマトペから子どもたちがイメージした動きに齟齬があれば、
なおのこと伝わりません。


オノマトペを “ぐんっ!” とパワーアップさせる方法

上記のように初めて出会う物事だと、
オノマトペだけでは伝わりにくいことがあります。

さらに伝わりやすさを強めるためには、
動きや文字を『見る・見せる』こと、
状況に合わせて『言い方を変える』ことで、
不足している情報を補うことができます。

・動きを『見る・見せる』
オノマトペと一緒に動きを見せることで、
「このオノマトペ(音)のときは、こうやって動くんだ!」とイメージしやすくなります。
さらに、オノマトペと一緒に動きを見せることを繰り返し行えば、
いっそうイメージが深まり理解に繋がっていきます。

ほかにも、オノマトペを使った後の相手の表情を見ることも大切です。
使っている本人がわかりやすいと思っていても、
相手が「なんか違う気がする」と感じていると、
同じように繰り返しても違うニュアンスのまま相手に伝わってしまいます。
オノマトペに限らず、自分の納得がいかない出来事というのは受け入れ辛いですよね。

また、受け入れられないままでいると、
言われたことと反対の行動をとってしまう方も多いのではないでしょうか。
お互いのイメージをすり合わせるためにも、
相手も共感できているかを確認しながら
動きにあったオノマトペを使う必要があります。

この記事とあわせて、
同じく指導員である江川さんのnoto『刮目して見よ』もぜひご覧ください!
“見る” ということはどういうことか、見ること・見せることの大切さなど、わかりやすくまとめてあります。

・状況に合わせて『言い方を変える』
同じオノマトペであっても、声の大きさ・高さ・速さなど抑揚を変えると、まったく違うイメージで伝えることができます。

例えば「もぐもぐ」と発声する “速さ” を変えてみてください。
ゆっくり言えば、一口が大きかったり、噛むスピードが遅く感じませんか?
逆に早く言えば、一口は小さく、嚙むスピードも速く感じますよね。
同じ単語でも、想像するものがまったく異なることを体感していただけると思います。

オノマトペ処方展』ブースより。あなたはどれを処方されたいですか?


“見る”オノマトペ

オノマトペは会話のなかだけではなく、街中でもいろんな姿で見かけることができます。

それはコンビニに貼られている新商品のポスターであったり、
布団やソファーなどの家具が売られている店のチラシであったり、
さまざまです。

ここで注目してほしいのが、文字の大きさやフォント(形)です。
先ほど「状況に合わせて言い方を変える」という話をしましたが、
声が出せない方や、耳が聞こえない方(←発声障害や難聴など)の場合、
実行できないことがほとんどです。

しかし、文字の大きさやフォントを変えることで、
物の硬さや温度、動作のは速さや大きさなどの情報を簡単に伝えることができます。

実際に川崎市立聾学校の生徒たちのアイデアから、
まさしく “見るオノマトペ” が生まれました。

その名も『エキマトペ』です!
エキマトペとは、駅のアナウンスや電車の音といった環境音を、
文字や手話、オノマトペとして視覚的に表現する装置のこと。
2021年9月13日から15日までJR巣鴨駅、2022年6月15日から12月14日までJR上野駅1・2番ホームにて実証実験がおこなわれていました。

東京都内で期間限定開催された『オノマトペ処方展』でも紹介されており、
私も実際に体験してきました。

電車の音に合わせて、モニターに角ばったフォントで「ガタンゴトン」と表示され、音が近づいてくると文字の大きさも変化していました。
オノマトペのフォントの変化だけでなく、さらに動きが加わり見ていてわかりやすさとともにわくわくしました。

ほかにも、『ミルオト』や『オノマトレンズ』など、見るオノマトペが増えています。

「オノマトペ処方展」ブースより。日常にあふれるオノマトペは子育て中のパパママをも救う。

伝わりやすさだけじゃない

最初にお伝えしたように、
オノマトペとは、自然界の音や声、物事の状態や動きなどを
音(おん)で伝わりやすく表した言葉のことです。

自分の考えや気持ちを相手に伝える際、
動き(動作)や言い方、文字の形(フォント)などと組み合わせることで、
より円滑にコミュニケーションをとることができます。

しかし私はオノマトペのいいところは、伝わりやすさだけではないと考えています。
オノマトペの一番いい所…それはなんと言っても、
とにかく楽しい!ということです。

LUMOで運動を教えているなかでも
オノマトペを使用しているときと、していないときでは
子どもの表情が全然違います。

例えば、後転が苦手な年少の男の子。
後ろに勢いをつけて倒れることが怖く、
「できない!」と落ち込んでしまうことが多くありました。

「いまは  “ころりん”  て感じだから、次は  “ビュンッ‼ ”  ていけるかな?」
などとオノマトペを活用するようになってからは、
「いまビュンできた?!」
と自分から進んでチャレンジすることがぐんと増えました!

遊びや趣味なんかでも、楽しいことって長く続けることができますよね。
LUMOに通っている子どもたちのなかにも、
“ころころ” 、“どたどた” 、“ビュンッ” など、
動きと一緒にオノマトペを声に出して楽しんでいる姿が見られます。
何事もまずは楽しむことができれば、今よりもたくさんできることを増やしていけるのではないでしょうか。

子どもたちと関わるなかで、私が大切にしていることの一つに
“カラダを動かす楽しさを伝えること” があります。
カラダの動きにオノマトペを当てはめることで、
「ころんってできたね!」「ビュンって早く走れたね!」など、
子どもたちと一緒に音を楽しみながら運動に取り組んでいます。

これからも楽しみながら伝えることができるオノマトペを探して、
子どもたちの成長を支えていきたいと思います。

皆様もぜひ日常に隠れているオノマトペを探してみてくださいね!
そして “ふっと” このnotoを思い出してくれると嬉しいです。

また次もお会いできるのを楽しみにしています。

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