こんにちは。子ども運動教室LUMO(ルーモ)の後藤です。
先日の記事で、障がいのあるお子さんのショートステイ(短期入所)の概要やどんなときに利用できるのかについてお伝えしました。
後編では、私が前職のショートステイでお会いしたお子さんのケースをいくつかご紹介し、ショートステイをより良くする方法について考えていきます。
ケース1 :不安が強く、知らない場所では眠れない小学2年生のAさん
【ご家族の思い】
Aさんは、場所見知りや人見知りがあり、緊張の強いお子さんです。自宅以外のお風呂に入れない、寝付けないことが想定されました。ご両親からは、「親に何かあったときのために、親と離れた環境に慣れてほしい。」と、定期的な利用で徐々に慣れることを目指し、送り出してくれました。
【事前のご家族との相談】
少しでも不安感を軽減したいという思いで、年齢の近いお友だちと同じ部屋にできないか、ご相談がありました。しかし、当時の施設には個室しかなく、相部屋対応ができなかったため、入眠まではしばらく職員が付き添いをすることで同意いただきました。また、入浴をしたがらないことを想定し、「着替えのときにカラダを拭いてください」と代替案をいただきました。
【ご利用時の様子】
Aさんは自身のリュックを手放すことができず、ずっと不安そうな表情のまま、職員のそばで過ごしました。ご家族のご心配通り入浴はできなかったのですが、ボディシートで体を拭くことができ、すっきりしたようです。個室に案内した後は職員がそばでお話しをし、眠りにつくまで見守りました。しかし1時間ほどで覚醒してしまい、以降は付き添いをしても眠れません。個室へ入ることも嫌がったため、職員と一緒に事務所で過ごしていただきました。翌日はご家族のご希望通り学校へお送りしましたが、寝不足のままでした。
【その後の対応】
半年ほどかけて、Aさんはついに朝まで眠れるようになりました。その理由はひとえに「慣れ」だと感じています。
当初からお気に入りのぬいぐるみやリラックスできるCDを持参してもらいました。しかし睡眠時間は短く、何かの対策が特別な改善につながった様子はみられませんでした。ご家庭では、ショートステイからの帰宅後はご自宅でゆっくりと過ごすようにされていました。
しかし、「眠れないと本人がしんどくなるから」とあきらめるのではなく、「繰り返すことで慣れてほしい」「いざというときに本人が苦しまないように準備したい」話されていました。私たち支援者側も、ご家族の強い思いに助けられたケースでした。
ケース2 :自宅以外の食事を食べられない小学3年生のBさん
【ご家族の思い】
Bさんは、自宅以外のご飯が食べられず学校の給食さえ受け付けないため、お弁当必須のお子さんです。「このまま自宅でしか食べられない状態だと、宿泊学習も楽しめない。何より、親の緊急時に本人が困るので、改善したい。」というご家族の思いで、利用開始となりました。
【事前のご家族との相談】
学校で過ごした後、帰宅せずに直接入所いただく想定でした。ご家族からは「学校でも持参の弁当なら食べられるので、持参できないか」との提案がありました。しかし衛生面の補償が難しい状況から控えていただきました。少しでもご本人が安心できるよう、愛用のお弁当箱を持参してもらい、そこに施設食を配膳して提供することになりました。
【ご利用時の様子】
夕食時、Bさんはお弁当箱に入った食事をちらっと見るだけ。「食べない」と言って、一切手を付けません。翌朝も同様でした。普段の「お母さんのお弁当」とは、味、おかずの内容、つめ方などすべてが異なるわけで、違和感があったのだろうと思います。
【その後の対応】
数回の利用を重ねても改善しない様子に、ご家族と相談しました。今回の目標は他所の食事をとることです。思い切って、「お弁当箱には詰め替えず、施設の食事をそのまま提供する。その代わりにふりかけを持参し、食事と一緒にお出しする」ことにしました。
最初は職員がふりかけを預かり、ごはんにかけてお渡ししました。召し上がることはありませんでしたが、配膳のルールに基づいて、食べなくても食器を下げることができました。そこで、次の食事ではふりかけをトレーに置き、自分でかけられるようにしてみました。
Bさんは、少し気になっているものの手を付けません。しかし、そんなことを何度か繰り返したある日、自分でごはんにふりかけをかけたのです。職員全員が「お!!」という驚きとともに、注目しました。結果、少しお箸に触れたものの、召し上がりることはありませんでした。
この時のことを、関わった職員全体が反省しました。「職員が注目している雰囲気を感じ取ってしまい、食べることができなくなったのではないか。」と。ご飯を食べる姿に注目されることは嫌ですよね。とりわけBさんにとっては、最初の一歩を踏み出そうとしているときだったのです。
そこで次回は、ほかの利用者と同じ空間(食堂)にせず、あえて「一人になれる場所で食事を提供する」ことにしました。職員はお膳を渡した後、できる限り何もないふうを装い、その場を離れます。しばらくすると、Cさんが「ごちそうさま」と食器を下げてくれました。お膳を見ると、ふりかけご飯を食べた形跡が! 配膳担当の職員は「すごい!」と言いたい気持ちを抑え、素知らぬ顔でお膳を受け取っていました。後で顛末を聞き、皆でBさんはもちろん、その職員にも拍手を送りました。
これ以降、一人になれる場所での食事から、皆と同じ食堂の壁側の席など、徐々に人前での食事環境に近づけていきました。Bさんの食事の様子や、食べられるものにも変化がありました。人目があっても少しずつ食べれるようになり、白いご飯からお味噌汁を飲み、メイン料理についても魚ならば食べれるようにと種類が増えました。次第に小鉢も食べれるようになり、ついに完食!!ご利用開始から1年が経過していました。
その後しばらく経ってから、「外食にもチャレンジしました」と、ご家族から嬉しいご報告もいただきました!
ケース3 :宿泊学習に向けた練習を希望された小学5年生のCさん
【ご家族の思い】
「宿泊学習までに1人で入浴できるように練習していきたい」。高学年になってもご家族と一緒に入浴しているCさん。一人で入浴するように伝えるとケンカになってしまうそう。親がいると頼ってしまうそうで、宿泊学習を楽しめることを願っての利用開始でした。
【事前のご家族との相談】
自宅では体を洗うのもご家族がしているとのことでした。ショートステイでは、できなくてもいいから「自分で洗う」ことにチャレンジしてほしいとのご要望でした。そこで職員は「手伝ってほしい」と希望があれば、「仕上げは手伝うね」と声掛けし、まずは自分でやってみるよう促すことを決めました。
【ご利用時のご様子】
いよいよ入浴のとき。Cさんは職員の顔色を伺いながら「一人ではできない」と不安そうにしていました。「仕上げは手伝うから、Cさんやってみてね。横で見てるね」と話し、シャワーの使い方やシャンプーの出し方、出す量などを一つひとつ一緒に確認しました。「できてるよ」「上手だよ」「大丈夫だよ」と肯定的な声を掛けながら見守ります。するとぎこちないながらもできる限りやってみます。お風呂上がりに「ひとりでできた!ってお母さんに伝えようね」と言うと満面の笑みでした。
【その後の対応】
半年間、月に1回のショートステイを利用し、職員と一緒に練習しました。少しずつ自信もついてきて、「1人でできるよ」「先生見ててね」と前向きな態度を見せてくれました。ご自宅でも「手伝って」ということが少なくなり、自分のことは自分でするように。半年後、修学旅行に参加し、「楽しかった」「お風呂も自分でできた」と報告してくれました。
ショートステイをより良くするには?
ショートステイを円滑に実行できる答えは一つではないと感じています。
やはり、利用経験を重ねて徐々に慣れていくことが一番です。
しかし、ご家族との相談内容や私なりの試行錯誤のなかで、円滑にするための留意点をお伝えできればと思います。
すべて正しいというわけではありませんし、これだけが大切というわけでもありません。少しでもご家族のヒントになれば幸いです。
🗝より良いショートステイのカギ🗝
前提
・最初は1泊など短期間から
(利用時間を選べるなら、夕方入所・朝退所が最も短時間)
・お休みの前日に利用し、帰宅後はゆっくり休む
ご家族が留意すべきこと
・ニーズをはっきり伝える(できるようになりたいことなど)
・(理解できるかどうかは別として)本人にショートステイを利用することを説明する
・気になること、注意してほしいことは施設職員にあらかじめ伝える
・お気に入りの音楽やぬいぐるみなど、本人が安心できるものを用意する
(施設のルール・許容範囲を確認)
・帰宅後はゆっくりしたり、ご家族との時間をつくれるようにする
施設側が留意したいこと
・表情や仕草など細かな変化を見ておく
・様子や表情の変化をしっかりと見ておく
・ご利用時の様子を細かくお伝えする
・様子から考えられる原因や代替案をご家族と相談する
最後に
ご紹介したお子さんの実例は、決して特別ではありません。「食べられない・眠れない」ご様子をみることは、職員にとっても心配なものです。
「もっと大きくなってからでもいいのではないか」というご意見も理解できます。やはり、ショートステイの利用は難しいとお考えの方もいるでしょう。もっとハードルが上がったとお考えの方もいらっしゃるでしょう。
もちろん、どういったお子さんであっても、時間をかける必要があります。家庭というコンフォートゾーンを一人離れて過ごすことは、大変なことだからです。
しかし、特性のあるお子さんには、一つひとつの成長が、並大抵の努力では成し得ないと感じています。ご家族がお子さんの将来を心配する気持ちは特別です。だからこそ、お子さまの将来の可能性を広げたいと送り出してくれたお気持ちを応援したいと思いました。
LUMO(ルーモ)で指導員をしているいまなら、原始反射の統合という視点から、不安感や日常の困りごとを改善するお手伝いができると感じています。
LUMOの運動プログラムは、日常生活の困りごとや不安を改善するための一つの手段です。“原始反射を調える”視点から、運動を通じて脳を刺激し、思うように動いたり考えたりできるようにしていきます。と同時に、自発的にチャレンジできるマインドを育むことを目指します。
例えばショートステイで心配にあがりやすい悩みに関係する原始反射を調え、お子さん自身が対処しやすい状況を目指します。
不安感・恐怖心
→不安感やイライラの軽減
各種感覚過敏
→光、素材・匂い・音など、生活全般を阻害する過敏を緩和
口元の発達
→偏食の軽減、食事量の増加
腰回り
→おねしょの軽減
LUMOではたくさんの運動メニューがあり、お困りごとに合わせた提案をしています。目標に向けてどんな症状を改善すべきか考え、適切なロードマップを導きます。体験レッスンも行っておりますので、ぜひ一度お近くのLUMOにお問い合わせください。