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看護師の業務改善がなかなか進まない背景

こんにちは、はよんです。

前回のストーリーでは、看護師がいかに過酷な現場で働いているかについて記載しました。看護師が何故忙しいのか、大変なのか少しご想像して頂けたと思います。今回はそんな看護師の業務改善について、私自身まだまだ勉強中の部分を少し記述したいと思います!

目次

  1. 看護師の業務改善が難しい要因
  2. 診療報酬と看護の関係
  3. 大前提となる診療報酬制度について
  4. 看護の質に対して診療報酬がつかない
  5. 業務改善をしても看護師の人数を減らすことが出来ない
  6. 他のサービス業とは圧倒的に異なる病院
  7. 看護には個別性がめちゃくちゃある
  8. 看護師の業務改善は不要なのか

看護師の業務改善が難しい要因

前回のストーリーを読んで、なんとなく看護師が大変なのはわかったけど、「なんかもっといい方法あるだろう」「それこそ今のIT技術があればもっと無駄とか省けそうじゃん」と思われる方もいらっしゃると思います。

私自身もずっとそう思いながら仕事をしていたし、今もそう信じてチーム一同日々少しずつ前進しています。

しかし、実際はなかなかそう簡単には進みません。

その背景には、そもそも前提として医療や病院というレガシーな業界という点での難しさと看護だからこその難しさ両方の要因が複合的にあると私は考えています。

診療報酬と看護の関係

大前提となる診療報酬制度について

看護師の業務改善について述べる前に、医療の価格を決めている「診療報酬制度」について少し知っておく必要があります。この「診療報酬制度」については、分かりやすくまとめてくれている記事がたくさんあります。

厚生労働省 医療保険「診療報酬制度について」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken01/dl/01b.pdf

日本医師会「なるほど診療報酬」
https://www.med.or.jp/people/what/sh/

本当にめっちゃ簡単に伝えると、日本においては公的な医療の価格は国が決めているため、病院各々が価格を自由に決めることは出来ません。

例えば、盲腸の手術をA病院でしてもBクリニックでしても「盲腸の手術代」は同じ価格です。

また、医療の価格以外にも「初診料」や「時間外加算」など、病院が国の定める基準や要件をクリアすることで、医療の価格にアドオンで料金を取得できるものもあります。

看護の質に対して診療報酬がつかない

現状の診療報酬制度では、一般的な看護の中身に対して値段設定がされていません。(専門看護師や認定看護師によるケアを除く)

とても極端なことを言うと、看護の中身がどれだけ良くても、病院の収入が上がることはないし、逆に中身が悪くても収入が下がることもありません。

とても丁寧で患者さんが「気持ち良い」と感じる清拭(入浴が出来ない方に身体を拭く行為)をしても、さくっと5分で清拭をしても「お金」という意味で病院はメリットを享受出来ないのです。

もちろん淡々と清拭をするよりも丁寧で気持ちの良い清拭をした方が患者さんやそのご家族にとっては大きなメリットがあるのは言うまでもありません。(そしてそれこそが看護師が患者さんに良いケアを提供しようとするとても大きなモチベーションの一つになっています

患者さんやご家族からとても感謝はされますが、看護師個人や病院がお金という意味では評価されないのが現状です。

業務改善をしても看護師の人数を減らすことが出来ない

また、一般的な企業でよく見られる「業務改善からの人件費削減」という流れが看護師の場合ほぼ実施不可能なのも大きな要因です。

例えば一般企業で新しい会計ソフトを導入したことで経理の人を一人減らせるようになる、と言った業務改善が病院はできないのです。

というのも、現状の診療報酬制度では看護の質についてお金はもらえませんが、看護師の人数が揃っていることに対してはお金がもらえます。

例えば一般病棟では、看護師1人に対して患者数が7人なのか10人なのか13人なのかによって病院が国からもらえるお金が変わってきます。この場合、看護師1人に対して7人が一番看護師数が手厚いと評価されるので、最も高い料金をもらえます。

つまり、何かしら業務改善をしてここの人数を減らしてしまうと、国が定める要件を満たすことが出来ず、お金をもらうことが出来なくなります。

以上の点から、病院経営という側面からだけ見ると看護師の業務改善はコストパフォーマンスがとても悪いです。仮にお金をかけて業務改善しても病院の収入がすごく上がる訳ではないし、人件費も減らすことができません。つまり現状の制度では、看護師の業務改善に限られた資金を使うメリットが病院経営という観点では圧倒的に少ないのです。

他のサービス業とは圧倒的に異なる病院

一般的なサービス業、例えばレストランや美容院であれば質の良いサービスを提供すると、口コミなどの良い評判が新規顧客だけでなくリピーター含めて集客に繋がります。

例えば焼き鳥屋さんの場合、どれだけ美味しい焼き鳥が提供されるお店でも、店員さんが全然来てくれなくて、接客もめっちゃ雑でオーダーしたものが全然来なかったり、オーダーしてない商品を持ってきてしまうお店だと、また次回も来ようとはならないし、他の人にこの焼き鳥屋を勧めるかと言われると、そうではない人が多いと思います。(ここで価格が圧倒的に安いという要素が加わると話が大きく変わりますが)

そして焼き鳥屋さんはここ以外にもあるので、もっと自分が満足する焼き鳥屋さんをきっと探すと思います。

美味しい焼き鳥を提供するだけでは、きっと経営は上手くいかず、店はサービスの質を上げるために企業努力をします。例えば有名な外部講師を読んだり、教育に時間をもっとかけたりするかもしれません。サービスの質を上げることは経営に大きく影響するので、ある程度のお金をかけるのです。

しかし、病院はなかなかこういう風にはなりません。

そもそも地域に1つしかないとか、●●科にかかるためにはここに行かなくてはいけない、▲▲医師が紹介してくれた等の理由によって患者さんが病院を自由に選べるという状況が、一般的なサービス業と比較してかなり少ないのです。(地域や疾患によります)

つまりサービスの質向上が集客には非常に影響しにくいのです。

となると患者さんからの評判が良かったとしても病院にとっては「お金」という意味ではそこまでメリットがありません。(もちろん大前提として良いケアを患者さんやご家族に提供している病院は最高です!)

また一般的なサービス業の場合個性を出すことが出来ます。例えば「安い、うまい、早いが売りの焼き鳥屋」から「全室個室でコースしかない焼き鳥屋」まで同じ焼き鳥屋さんでも提供する価値を変えることが出来ます。それに伴い価格も店によって大きく異なります。1本100円を切る焼き鳥屋さんからきっと1本数千円する焼き鳥屋さんまであると思います。(焼き鳥屋の上限が全然わからない・・・)

ですが病院はこうはいきません。そもそも大前提として値段が診療報酬制度によって決まっているので、個性を出しにくいです。(先ほど言った盲腸の手術代はどこでも一緒だという話です。)

医療という社会のインフラである以上最低限の医療の質を担保する必要があり、そこにさらにアドオンで個性を出すのは値段が決まっている以上相当難しいです。

となると、看護師によるサービスの質を向上することに病院が貴重な財源を使おうとは考えにくい現状です。

看護には個別性がめちゃくちゃある

当たり前のことですが、世界中で全く同じ生活をしている方はほぼいません。

仮に年齢、性別、地域、宗教、経済状況等が同じだとしても、生活のベースにある生い立ちや価値基準などは人によって異なります。

好きな食べ物や生活スタイルも違います。

看護師が対象としている方は、何かしらの傷病を抱えている方です。

同じ傷病だったとしても程度や患者さんの感じ方や受け入れ方は違います。

人が違う、生活が違うとなると全く同じ療養上の世話というのはあり得ないということがおわかり頂けると思います。

「清拭」1つをとってもお子様とご高齢では方法が違うのはもちろん、寝たっきりの方や麻痺がある方、点滴や酸素マスクをしている方などで留意点や方法は変わってきます。もちろんいくつかのパターンはありますが、実際はそれらのパターンを組み合わせつつ、対象となる患者様の表情や反応を見ながら臨機応変に対応しています。

いわゆる「経理業務」や「在庫管理業務」みたいに、ある程度決まった流れや型に業務を当てはめるのが「傷病者の生活」となるととても難しい、というか果てしなく無理に近いのです。

(これこそが看護の面白さや奥深さでもあるのですが!!

看護師の業務が療養上の世話と診療の補助と、全部が対人間だからこそ、簡単に「効率的に」とは出来ない業務が本当に多いのです。

個人的には教育や保育、介護なども似たような部分があると考えています。

例えば分数の足し算の教え方にはある程度メソッドや順序があるとしても、生徒それぞれによって理解するスピードや理解度は異なります。故にメソッドがある=効率化できるとは限らないです。

また看護師にも個性があります。

これは日本の看護師の大きな特徴の1つだと思います。

あまりここでは具体的に言いませんが(というのもこれだけでまた別の記事が1つできるくらいのボリュームになりそうなので)、看護師になるためには現状日本ではたくさんの方法があり、同じ看護師国家資格取得者でも本当に様々な教育背景を持った人がいます。

また看護師という名が付く資格にも、専門看護師や認定看護師、准看護師と様々な看護師があります。そして看護師も当たり前ですが人間です。となると、看護師によって価値基準やライフスタイルも大きく異なります。

例えば、患者さんの爪を切るという1つの行為を見ても、爪を切るだけの看護師がいれば、やすりまでかける看護師もいるでしょう、爪切りと同時に熱いおしぼりを持って行く看護師もいるかもしれません。

大前提として看護師は療養上の世話と診療の補助という対人間の業務がメインである、そしてその看護を提供する人と受ける人双方に個性があるという特質上、大胆に目に見える形での業務改善というのは本当に難しいのです。

看護師の業務改善は不要なのか

ここまでお話しした通り、看護師の業務改善は現状日本の制度上、そして看護という特質上、非常に難しいことは事実です。

では、看護師の業務改善は不要なのでしょうか。

私はそうは思いません。

とても難しいからと言ってやらない理由にはなりません。
現場の看護師は本当に疲弊しています。

今この時も自分の何かを犠牲にして目の前の生命と真摯に向き合っている看護師が全国にたくさんいます。そしてそんな看護師が今の日本の医療を支えていると言っても過言ではないと私は思っています。

新型コロナウイルス(以下コロナ)の流行に伴い医療職を始めとしてエッセンシャルワーカーの働き方や働く環境は世間から注目を浴びる機会が増えました。

しかし看護の現場に関しては、コロナ前からほぼ崩壊していました。

以下は2017年に約32000人の働く看護師を対象とした調査 結果の一部です。
1年前と比較して、仕事量がどうなったかを聞いた質問ですが、6割近い看護師が増えたと回答しており、コロナ以降業務量がさらに増えているだろうということは容易に想像できます。

こちらは就業時間前後の労働時間についてですが、7割以上の看護師が就業時間前後にも仕事をしていて、コロナ以降の業務量増加に伴いさらに就業時間前後もさらに仕事をしていると想定できます。

また、7割以上の看護師が常に何かしらの薬を内服しているというデータもあります。

コロナ流行に伴い、現場の過酷さと忙しさがこの統計データを取った時と比較して、何段階もレベルアップしているのは誰にでも容易に想像が出来ます。

現場の工夫と努力と献身さによってなんとか毎日をギリギリ維持している状況がずっと続いています。

医療に関わる、どの職種がいなくなっても医療が成り立たないのは言うまでもありませんが、看護師がいなくなると日本の医療は破綻します。日本の医療を陰で毎日支えている100万人の看護師の業務改善は、働く看護師のためだけでなく、医療を受ける患者さんやご家族の皆様にも必ず還元されます。

看護師の業務を少しでも改善し、看護師がよりhappyに働ける環境を作ることは、日本の看護だけでなく医療のアップデートに必ず繋がります。

もちろん、この記事で散々述べたように立ちはだかる壁が多すぎて一筋縄では行きません。

でも私は出来ると思っています。

会社として事業として継続できると強く確信しています

この記事を読んで少しでも看護師や看護師の業務改善に興味を持たれた方は、是非お気軽にご連絡下さい。

一緒に看護や医療について語りましょう!!

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