「100人中、1人が熱狂すれば発売するという点が最大の魅力」と語るのは、バーテンダー、バンド活動、デザイン事務所でのデザイナーを経験し、インプレスグループに入社した鎌田さん。
今回はIPGネットワーク、プラットフォーム事業推進部にて、オンラインショップ(pTa.shop)プロジェクトメンバーである鎌田さんに、この事業部で働く魅力について語ってもらいました。なぜこのチームには失敗の概念がないのか、なぜやりたいことをやっても大きな損失が生まれないのか。その答えが、この記事の中に記されています。ぜひ最後までご覧になってくださいませ。
鎌田一成 / 株式会社IPGネットワーク プラットフォーム事業推進部 コンテンツ・ディレクター
大学在学中から約13年間バーテンダーとして働く傍ら5年ほどギタリストとしても活動し、映画出演も経験。その後、デザイナーとして制作会社に勤務。2016年にリットーミュージック入社し、オンデマンドプリントTシャツサイト「T-OD」を運営するT-OD事業部にてTシャツデザイナーとして従事。手がけた作品の中にはBiSHをはじめとする有名アーティストも多数。2022年7月より(株)IPGネットワークのプラットフォーム事業推進部に所属し、オンラインショップ(pTa.shop)の立ち上げに参加する。
就活経験は皆無。会社員になるまでのバーテンダー生活13年を振り返る。
ーー バーテンダー、ギタリスト、リットーミュージック、そしてIPGネットワークと、個性的な経歴をお持ちの鎌田さんですが、当時についてお聞かせください。
バーで働き始めたのは、僕が大学生になってすぐの頃ですね。当時、サントリーさんが「カクテルバー」というものを展開し、それが火付け役となって「カクテルブーム」が巻き起こっていたんです。高校生を卒業してすぐの頃だったので、お酒を飲めるわけもなかったんですが、子供心に「お酒」というものに強い魅力や憧れを感じました。作る過程もさまざまだし、色も綺麗だし、組み合わせ方で本当にどんなものでも生み出せてしまう。
だからこそ「バーテンダーになりたい!」と思って、求人を頑張って探したり、友人に紹介してもらったりして、自分の家から電車で1時間ほどかかる新宿のバーで働くことになりました。毎日いろんな人がバーに訪れてきて、本当にたくさんの人とお話しする機会を頂きました。
ーー バーテンダーとして働く中で印象的だったことはありますか?
お客さんとカウンター1枚を隔てた状態での絶妙な距離感を学びました。お客さんには「たくさんバーテンダーと話をしたい人」や「静かにしっぽりと飲みたい人」、「バーテンダーに話しかけてもらいたい人」など、いろんなパターンがいらっしゃいます。僕自身がお客さんの話を聞いておらず、急に話しかけられることもしばしば。
だからこそ、お客さんと自分とを隔てるカウンターを通じて“ベストな距離感”というものをずっと模索し、お客さんの機微を捉えながら自分の仕事を進めていくという技術が身についたなと思っています。その時からの癖なのかはわからないですが、「話は好きだが、口下手である」という自負を今でも持っています(笑)。就職氷河期だったことや諸々の事情があり、そのままバーテンダーとして就職し、最終的に13年ほど働いていました。
ーーそんなにバーテンダーをやられていたんですね! バンド活動を始めたのはいつ頃のお話ですか。
本格的なバンド活動自体は大学を卒業した頃からで、もともと70年代のロックが好きな高校生だったのですが、大学の音楽サークルに入ったことがきっかけでたくさんの知らない音楽と出会うことができました。その後、縁あって加入したバンドでは「自分たちの根底にある音楽」とはどういうものだろうと模索し、ファンタディスコな音楽を5年ほどやっていました。今思い返すとたくさんの経験をした、良い時代だったなと思います。
とても思い出に残っているものとして挙げるのであれば映画に出演できたこと。もちろん、セリフすらないチョイ役だったのですが、バンドメンバー全員で音楽関連の映画に出させていただいたのは良い思い出ですね。
ーー映画出演はすごいですね。本当に音楽を極めているというか、心の底から楽しんでいるというか。その経験がリットーミュージック入社に繋がっているということですよね。
まさにおっしゃる通りです。バーテンダーをして、ギタリストをして、というただのお酒と音楽が好きな少年をしていた中で、ウェブにあがっていた求人記事が目に止まりました。僕の仲の良いバンド仲間が投稿していたものだったんですが、それこそが「リットーミュージック」だったんです。
もちろん、音楽を好きな人であればリットーミュージックのことは知っているでしょうし、僕からしたら「あいつがいる会社ならきっと面白いはず!」という興味本位で応募しました。
出版社所属なのに編集者じゃない。未経験でも出版社で働き続けられたワケ。
ーーまさに縁から繋がっていったんですね。リットーミュージックに入った当初についてお伺いしたいです。
僕がリットーミュージックに入社したのは、実はアルバイトとしてだったんです。面接の際にも、半年で辞めることを社長の松本(現インプレスホールディングス代表兼任)に伝えてありました。というのも、バーテンダーを13年も経験し、そろそろ自分のお店を持ちたいなと思っていた時期で、開業資金を一生懸命貯めていたんですね。リットーミュージックでのお仕事は「面白そうだったから」という気持ちと、「開業資金の足しにしたい」という気持ちとがあって面接を受けたんですよ。
しかし、いろんな事情があってバーの開業をあきらめなければならなくなってしまいました。そうなるとリットーミュージックでの仕事も面白いし、そこで働いている人たちも本当に魅力的だし、リットーミュージックをやめる理由がないなと。そこからずっとリットーミュージックにお世話になっております。
ーー独立も考えられていたのですね。リットーミュージックに入られてからの業務内容はどのようなものだったのでしょうか。
私は今日に至るまでTシャツの事業に携わってきていて、Tシャツのデザインを主に行ってきました。T-ODという事業なんですが、その立ち上げメンバーとして採用していただいたような形です。僕が見かけた求人もものすごくおもしろくて「Tシャツのプリンターを買ったから、これで面白いことできる人!」みたいな、遊び心満載のものでした。
もちろん出版社ですので、紙媒体や電子書籍のお仕事をサポートすることもありましたが、基本的には音楽関連のTシャツをひたすらデザインして、販売して、サイトを運営していました。
ーーすごい求人ですね(笑)。バーテンダーやバンドマンから完全にかけ離れたお仕事だと思うのですが、T-OD事業で実際に働いてみて、どのように感じられていたのかをお伺いしたいです。
すごく楽しかったですし、これまでの音楽活動のおかげもあって、仕事は非常にやりやすかったです。その醍醐味は、アーティスト、ギタリスト、ドラマーとリットーミュージックのコネクションをフルに活かし、コアな音楽コンテンツをデザイン化できること。BiSHの公式アイテムの制作にも携わらせていただいたプロセスは、いまでも鮮明に思い出すことができます。
また、アーティスト側とだけではなく、リットーミュージックが所属するインプレスグループ全体との繋がりを持てるようになったのも非常に良い経験でしたね。グループ会社といえど、対応するジャンルも違えば、出版に対する考え、こだわりも様々。現在ではオフィスの改装にも取り組み、フリーアドレス制になったこともあって部署間や会社間でのコミュニケーション量も増えましたが、当時はほとんど話をする機会がありませんでした。
そんな中で唯一、いろんなジャンルのTシャツを制作するために部署を横断していたのが私。現在のプラットフォーム事業に近しいことをその当時からやっていたんです。僕は編集をする人間ではないから、彼らに備わっている編集の深さを理解することに苦労はしましたが、どれだけの熱量を持って編集し、コンテンツを生み出しているのかを知れたことは本当に大きかったと思います。
ーーリットーミュージックに所属して、グループ内で見ても特別なことをやられていたんですね。
本来専門誌が多いインプレスグループには良い意味で「オタク気質な人」が多いんです。そうではない私が彼らとコミュニケーションを取ることによって、その専門性と触れ合うことができたのはなかなかできない経験でした。
私自身、そういった多くの人との関わりがあったからこそ、ものすごいスピードで成長できたと思いますし、それが今の事業にも活かせているなと感じています。
自由度も裁量権も最高レベル。失敗がないチャレンジを支えているのは発注があってから生産をする独自の仕組み
ーー現在鎌田さんはT-OD事業ではなくIPGネットワークに所属し、pTa.shopのプロジェクトメンバーとして活動されていますよね。T-ODとpTaは非常に似ているように思えるのですが、その違いについてお伺いしたいです。
端的に言えば"主体"が違うかなと考えています。T-ODでは編集部からくる「こんなTシャツ作りたいんだけど!」という意見をひたすら形にしていて、pTaでは「自分たちの作りたい」「こんなのあったら面白そう」をひたすら形にしているというイメージです。
松本のインタビューでも述べられていましたが、このpTaを運営する「IPGネットワーク」という新会社は、インプレスグループが保有する全てのコンテンツを横串で捉え、出版業界における新しい仕組みを作ることを目的に設立されました。
言い換えれば、インプレスグループ30年の歴史における悲願でもあるんですよね。これだけの会社がインプレスグループに参加しており、多様なジャンルをカバーしているからこそ、自分たちにしかできないことがある。グループとしての期待も、松本からの大きな熱量も感じながら日々仕事と向き合っています。
代表の松本のインタビュー記事はこちら!
ーーこの事業における面白さを教えてください。
2つあります。ひとつは「これなに?」という未知から始まり、徹底的に深掘りしていった先に面白いアイデアが転がっているということと、もうひとつはオンデマンドだからこそ無限の可能性をトライし続けられるということですね。
T-ODで仕事をしていたときも「これなに?」と思うものはたくさんありました。ただそれはリットーミュージックという「音楽ジャンル」における未知だったため、まだ対応可能な範囲だったんです。しかし、pTaになると、インプレスグループ全体、そして外部から参加していただいている著名な出版社様にも広がっていくため、その幅は何倍にもなります。
ついこの前は、美術館に行って、そこから面白いことを見つけていきました。正直、私は美術や絵画に関して全くの素人です。それでも事業を通じて面白いものを生み出さなければならない。じゃあそもそも、何が面白いんだろう。その面白さはどうやったら伝わっていくんだろう。対象に対しての「これなに?」から、制限のない自由度の中でアイデアを生み出せることがpTaの面白い点かなと思います。
また、2つ目もそれに重なりますが、自分たちの考えた「これが面白い」を無限に世の中に表現し続けられることも、面白いところですね。自分が考えた「面白い」は、誰かにとっての「面白い」じゃないかも知れない。100人いたときに、その中の1人しか「面白い」と思ってくれないかも知れない。
一般的なTシャツ事業であれば、在庫を抱えながらビジネスを進めていくため、100人中1人しか面白いと思ってくれないのであれば、販売することができないですよね。しかし、オンデマンドプリントというものは注文があってから印刷をする仕組みなので、面白いと思ったアイデアがあれば全て発売してしまうことが可能です。
言い換えれば、そのコンテンツに1人でも熱狂するファンがいれば、それを製品として展開しても良いということ。本来リスクとなること、このプラットフォームでは「面白いこと」が優先する。もちろんデザインセンスの良し悪しは必要ですし、現段階では発売を見送るコンテンツもあることも事実ですが、「面白ければ、挑戦できる」、それはここで働いていて魅力と感じることですね。
ーー面白いことに挑戦したい人であれば最高の環境かも知れませんね。それ以外にこの事業で働く魅力があればぜひお伺いしたいです。
今年始まったばかりの事業だからこそ、今まさに「事業を作り上げている」フェーズにあります。そんな立ち上げの黎明期とも呼べる事業に携われること自体が面白いと思います。先ほどお伝えしたことが前提にあるため、いろんな冒険もできますし、新卒だったとしても、いろいろな仕事に挑戦できるのは魅力的な環境です。
また、このビジネスの正解を、代表の松本でさえも知りません。各々の中にある「面白い」をひたすらにぶつけあって、話し合って、手を動かしていく。過去には、新元号が出た瞬間に元号がプリントされたTシャツを発売最速で届けるというユニークな試みも実施しました。
結果はそこまでついてきませんでしたが、そういった遊び心を持った挑戦も、根底にある「面白い」をしっかりと表現したからこそ実現したんだと思っています。それを新卒から体現できる環境は、本当に数えるほどしかありませんし、今ここで働く十分な理由になるんじゃないかなと思いますよね。
ーー鎌田さんの視点から見て、どのような人と一緒に働きたいと思いますか。
いくつかあるんですが、まず最初に思いつくのは「好奇心旺盛な人」ですね。あとは「チームでコミュニケーションを取れる人」、「人と会話をするのが好きな人」です。まだまだ小さな規模で仕事を進めることになる一方で、インプレスグループを横断する形で仕事に取り掛かります。だからこそ、いろんなことに興味を持って、挑戦したいと感じてくれて、自分の中にある「面白い」「楽しい」を会話の中でしっかりと伝えてくれる人であれば、ぜひ一緒に仕事をしたいなと感じます。
ーーでは最後に、これからチャレンジしていきたいことをお伺いしてもよろしいでしょうか。
何度かお伝えしてきましたが、やはり「出版業界における新しい仕組み」をこの事業を足掛かりに作っていきたいなと感じています。pTaを成功させることによって、きっとそれが出版業界における新しい何かになっていくと信じています。また、このミッションはインプレスに所属する誰もが強く思い描いていることであり、私はこれまでインプレスグループにお世話になってきた。だからこそ、まずは自分が手を動かしながらこのミッション実現に向かっていきたいです。
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