こんにちは。株式会社ドズルインターン生のさんちゃんです。今回は2023年3月23日にドズル社公式noteにて公開された、社員インタビューの記事をご紹介いたします。制作チームのプロデューサー”ネコおじ”さんから、YouTube動画の企画のたて方をお聞きしました。ぜひ最後までお読みください。
※部署名や各制度、社員に関わる情報、チャンネル登録者数などの情報はインタビュー当時のものです(2023年3月:インタビュアー、文責:ponta)
登録者100万人を達成し、いまもっとも勢いに乗るYouTubeチャンネルのひとつ、ドズル社。彼らの凄さを人が語るとき、その口の端に必ずのぼるのが“企画力”である。
多種多様な動画企画を、メインチャンネルとメンバーチャンネルでアップし続ける質と量の両立は、他のチャンネルの追随を許さない。
今日は、そのドズル社の屋台骨ともいうべき動画企画の担当者下記3名に、インタビューしてみた。
・制作チームのプロデューサーネコおじ氏(コアクルー)
・主任ディレクターのありえる氏(コアクルー)
・るーぷ氏(パートナークルー)
※ドズル社では「共に未来をつくる船の仲間」という想いを込め、正社員をコアクルー、業務委託で働くメンバーをパートナークルーと呼んでいます。
YouTubeに限らず、企画に携わる人全員、ヒントにしてほしい内容となっている。ぜひご一読いただきたい。
ネコおじは企画特化
――ネコおじさんっていま、どんなお仕事をされてるんですか?
ネコおじ
いや、僕の仕事はもうほとんど、声を除けば動画の企画だけですね。
(ネコおじ氏 近影。ナショナルクライアントに声を提供する売れっ子声優でありながら、高いプロデュース力でドズル社にはなくてはならない存在になっている。)
――企画特化なんですね。それは社長のドズルさんと一緒に考えるんですか?
ネコおじ
その形もありますね。
――なるほど。ドズルさんとネコおじさんは、実際に会って話してるんですか?それともリモート?
ネコおじ
いや、ドズルさんとは『ドズネコミッドナイト』というYouTube上のラジオ番組で、公開企画会議をしています。
――公開企画会議。すごい。新しいですね。
ネコおじ
それも、視聴者から企画を投稿してもらう形を取っています。
――視聴者さんから動画の企画を募集するんだ。100万人の登録者がいるチャンネルで採用されたら嬉しいだろうなあ。
ネコおじ
たまに、ドズルさんじゃなくて、ほかのメンバーが代役で入ることもあります。
――“ドズ抜き”もやってるんですね。
ネコおじ
あとは、その『ドズネコミッドナイト』の投稿者の中に、めちゃくちゃ優秀な“ドラマチックぬか漬け太郎 ”っていう人がいたんですけど、その人を口説いて、ふたりだけでやる企画会議も週一でやってます。
――そんな、ハガキ職人あがりの放送作家みたいな人がいるんですね。
ネコおじ
それとは別に、ドズル社のメンバーから上がってくる企画もあります。それらをもとに一週間に撮る企画を作っています。
――なるほど。動画企画の基盤となる、ゼロからイチを作る作業は、ネコおじさん、ドズルさん、ぬか漬け太郎さん、メンバー、そして視聴者さんが担っているんですね。
ネコおじ
はい。そうやって企画の大筋が決まってからは、ディレクター陣と企画を詰めていく作業に入ります。
――ディレクター陣というと?
ネコおじ
えっと、ドズル社は一週間に3日、撮影する曜日が固定で決まっていて、曜日ごとにディレクターが決まっています。いまこの場にいるありえるさんや、るーぷくんも曜日ディレクターです。彼らと、決まった企画を詳細に詰めていく感じですね。
わかりやすさと演じやすさを重視して企画を詰める
――“企画を詰める” ってのをもうすこし言語化してもらっていいですか?
ネコおじ
えっと、企画を詰めるっていうのは、“わかりやすさ”と、“演じやすさ”について、「こうしたほうが面白いよね」みたいなアドバイスをディレクターに対してしてるって感じです。
――例えばどんな風にです?
ネコおじ
例えば、マイクラの企画なんですが、“ダメージを受けちゃうと骨折していく、最大でもダメージ4回までしか受けられない”って企画が最近あったんですが。
――はい。
ネコおじ
ダメージを 1回受けると片腕が骨折したりとか、2回受けると両腕骨折状態になるとか。最終的には救急車が来て運ばれるみたいな。ダメージが可視化されて視聴者にわかりやすくするためのブラッシュアップをするようにしました。
(「痛い=骨折」というシンプルさが光る)
――なるほどね。
ネコおじ
そうやって、見た目の変化が起きると演者も引っ張られて即興のアドリブを入れやすくなって「痛い!」とか、いいセリフも引き出せます。そのへんはすごい意識して企画に入れるようにしています。
――なるほど。ゲーム内で傷ついても、演者さんの痛覚はぶっちゃけ、無関係ですもんね。
ネコおじ
そうですね(笑)だからこそ企画段階で、演者さんが動きやすいように意識して設計してますね。
――それが“詰める”ってことなんですねぇ。ネコおじさんは演者としての一面もありますが、それは演者の動きやすさの理解に役立ってますか?
ネコおじ
それはかなりあると思います(笑)動画に出演するのが増えてから、演者視点というのは磨かれたと思います。
――やっぱり。
ネコおじ
たとえば準備段階で「ここは多分、演者からしたら、リアクションに困るな」みたいなところは事前に察知できるようになりました。そこは、凄く良かったです。
――演者力が企画力にもつながってるんですね。
ネコおじ
そうですね。あんま考えてなかったですけど、言われてみたら、確かにそうです!
――いやいま気づいたんかい。
ネコおじ
いま気づきました。
いい企画と、そうでない企画の差はどこにあるの?
――では次に、演者としても出演している『ドズネコミッドナイト』について掘り下げて聞ければと思うんですが。
ネコおじ
はいはい。
――たくさん投稿がある中で、採用される企画、されない企画の差はどこにあるんでしょうか?そこに企画力というものの正体が隠されているような気がしています。
ネコおじ
差ですか。
――言い方を変えると、「企画の目の付け所はいいけど、ここがこうなればもっといいのに、惜しい」というポイントとなるのはどこでしょうか?
ネコおじ
うーん…シンプルに動画のサムネが浮かぶか、タイトルがわかりやすいかというのがめちゃくちゃ大事ですね。
――ほうほう。
ネコおじ
ひとことでいうと“ヒキがあるかどうか”ってことになってくるんですかね。内容が面白くても、ヒキが弱くてわかりづらいものは絶対数字が伸びないので、ちょっと採用しないですね。
――なるほど。
ネコおじ
さっきの『痩せたり太ったりする世界でサバイバル』という企画を例に説明すると、“サムネで左側に痩せたドズルさんを置いて、右側にマックスに太ったドズルさんを置く感じだよね”みたいに、サムネがぱっと浮かんだりするものはいい企画になりますね。
――そういえば、映画も同じって聞いたことがあります。
ネコおじ
映画もそうなんですね。
――名作と呼ばれる映画って、その映画を象徴するような強いビジュアルイメージがひとつはあるみたいです。『ロッキー』だったらフィラデルフィア美術館の階段を昇って両手を上げるシーンだし、『ボヘミアンラプソディー』なら最後のライブシーンですかね。たったひとつのシーンを撮りたいために映画を作っちゃう監督もいるそうです。それくらいぱっと浮かぶビジュアルがめちゃくちゃ大事らしくて。
ネコおじ
なるほど。ロッキー大好きです。
――だから、強いサムネの一枚絵が浮かぶかどうかというのは、YouTubeに限らず、エンタメの企画の作りかたとして本質的だなと聞いていて思いました。
ネコおじ
ビジュアルの話つながりだと、あとは同じ画にならないかどうか、画変わりがあるかっていうところは大事ですね。
――たとえば?
ネコおじ
たとえば、採用できないほうの例で言うと「マイクラの鉱石を集める選手権」みたいに、鉄と銅とダイヤモンドを集めるみたいな企画がよく投稿されます。
――なるほど、わかりやすくていい企画に思えますが。現にぼんさんの“鉄を千個集める動画”は人気ですし。
ネコおじ
それを3競技やって、1競技目は鉄です。2競技目は銅です。3競技目はダイヤモンドですって繰り返すんですよね。
――こうして聞いてみると、ちゃんと競技性が担保されたeスポーツって感じがしますけど。
ネコおじ
競技としてはいいんですけど。動画として考えた場合、「ただブロックを掘ってるだけだよね…」みたいな話になっちゃうんですよ。
――たしかに!出オチじゃないですけど、最初、ルールを発表したところが面白さのピークで、あとは同じ画が30分続くとなると、それってやっぱりツラいですよね。
ネコおじ
そうなんですよ。ミニゲームとしてはいいけど、柱としてはちょっと物足りないかなと。
――整理すると、企画で大事なのはサムネで視聴者を引き込めるかどうか(インプレッション)ということと、画変わりで飽きさせない(視聴維持率)ということですかね。
狂ってる、意味がわからない企画が個人的には好きです
ネコおじ
あとはまあ…狂ってる、意味がわかんない企画が、個人的には好きです。
――というと?
ネコおじ
“UFOが襲ってくる”とか。
――小学生か(笑)
ネコおじ
そう、でも視聴回数が伸びたんですよね。36万回再生だったかな。ふわっとした企画でも中身を詰めるのは得意なので、タイトルだけでもいいんですよ。きちんと狂ってれば。
――ほかに狂った企画はなかったですか?
ネコおじ
あとは「闇のゲームに負けると全ロスする世界」って最近出した動画があるんですが、送られてきた企画には三文字で「カイジ」とだけしか書かれていませんでした。
――三文字(笑)
(ちみつな企画書の再現。実際はDM)
ネコおじ
「カイジ」とだけ書かれた三文字を、“エンドラ討伐中、そういう闇の命をかけたゲームをやらされる。もし負けちゃうと、集めていたアイテムを全部なくなる”みたいな企画に昇華しました。
――詰めるというより、膨らませてますね。
ネコおじ
そんときはぼんさんと2人で膨らませました。
――再度、面白い企画で整理すると、①ヒキのあるサムネを作れて、②画替わりで起伏を作れて、③狂気という意外性がある、みたいな感じですかね。
ネコおじ
そういうことになりますね。
ネコおじはずば抜けた発想力の持ち主
――今度は、ありえるさんから見たネコおじさんについて聞こうかな。ドズル社CHの制作チームをひっぱるネコおじさんはどんな人ですか?
ありえる
あっはい。うーん。
――「何もない」でも全然いいですよ。「ああ、何も言うべきことはないんだな」「ないんだな」って思うだけなので。
ありえる
ネコおじさんは、企画力とか発想力とか制作チームの中でもずば抜けています。
――それはやはり、キャリアが長いからですかね?
ありえる
もちろん経験値もあるんでしょうが、やっぱり天性のものがありますね。
――たとえば?
ありえる
たとえばマイクラのミニゲームの企画を考えてるとき、『猛牛なでなで選手権…』って急に言い始めて。
――『猛牛なでなで選手権』
ありえる
「何だ!?」って。
――なるほど。お気が、触れられた…。
ありえる
いや、それって結局、『でっかい敵モブキャラに何回ダメージを与えられるかのミニゲーム』のことだったんですけど、それを「なでなで」で表現するのか~。なるほど~って感心した記憶があります。
(ヒキを作る作業には、ワードチョイスも当然含まれる)
――同じ企画でも、タイトルで印象が変わりますね。
ありえる
はい。「戦う」じゃなくて、「なでなで」で面白みを作るところとか、言葉の発想力も長けてるなって思いました。
――素直に企画名を考えると『強敵に何回ダメージを与えられるか選手権』だと思うんですけど、それをネコおじは『猛牛なでなで選手権』ってネーミングに落とし込んだんですね。
ありえる
そうですね。何それ!?って1回驚かされるっていうか、引き付けられる面白さっていうのを考えるっていうのが上手です。
ネコおじ
へへへ。
ありえる
改めて本人の前で言うと…恥ずかしいですね…。
ネコおじ
ありがとう。
――そういうイチャイチャやめてもらっていいですか。
ネコおじ
すみません。
――るーぷさんも、ネコおじさんの天性の狂気には学ぶところはありますか? あのおじさんの企画力ならこう狂うだろうな、みたいな。
ネコおじ
狂うだろうな(笑)
るーぷ
そうですね。例えばミニゲームでいえば、競技によっては得意な人がいるから、勝つ人が固定化してしまいがちで同じ画になりがちなんですよね。頭脳ゲームならこの人、建築ならこの人、みたいに。そういうときに「ネコおじさんなら意味が分からないゲームを入れて画変わりを入れるだろうな」みたいなことを考えたりはします。
――そういう意味ではネコは企画チームのいいコーチにもなっているということですね。
るーぷ
そうです。
――それで、人間としてはどうですか?パワハラとかあったら、この場でぜひ告発してください。
るーぷ
パワハラはないですね。ぼくの上司にあたると思うんですが、みんなにエコひいきなく平等に優しく接してくれます。時にはしっかりフィードバックしてくれるので、ありがたいなと思っています。
――企画チームのリードとしても、みんなの働きやすい場所を作ってくれてるんですね。
るーぷ
はい。
ネコおじはもともと編集者だった
――でも、ネコおじさんがドズル社に入ってきた当初は編集者さんだったと聞きました。企画マンじゃなかったんですよね?
ネコおじ
いやー。本当ですよ…。
――ネコおじさんはどのタイミングで企画力をつけたのですか?
ネコおじ
そうですね。入社当初、『クラッシュ・ロワイヤル』というゲームの配信者の月間再生数を、短期間で3倍にしろっていうミッションがあって。「何言ってんの?」みたいな感じだったんですよ。
――3倍はえぐいですね。何言ってんですかね御社。
ネコおじ
ただ、幸運なことにその担当した配信者さんがめちゃくちゃやる気に燃えてくれていました。それで、いっちょやるかと思って、じゃあ再生数を伸ばすために企画を発案しようってなって。上手くいきました。
――3倍達成。
ネコおじ
達成しましたね。そんとき企画が当たったという成功体験ができたので、「自分もがんばればいけるな」という自信になりました。
――そこが出発点だったんですね。
ネコおじ
はい。そんでそのとき、いまの基盤になる狂気的なヒリツキコンテンツも味を占めました。
――どんなのがありましたっけ。
ネコおじ
『負けたらゲームのアカウント削除』と『負けたほうがクラロワのホグライダーの髪型(モヒカン)にする』ってやつでしたね。
――当時から相当ヒリついてますね。
ネコおじ
ヒリつきを嫌いな人はいないですよね。だってpontaさんがプロデューサーやってる『今すぐおみやげ買ってこい』の“負けた直後に新幹線に乗っておみやげ買ってくる”もそうだと思うんですが、“狂気の沙汰ほど面白い”って、普遍性がありますよね。それを、そんとき見つけちゃいました。
――見つけちゃいましたか…。
ネコおじ
そこまではただの編集マンだったので、望んで身に着けたというより、追い込まれて身に着けたスキルだと思います。
――なるほど、今回は、ネコおじの企画プロデューサーとしての仕事と成り立ちを聞いたところで、次回はネコおじと一緒に働くディレクターおふたりの企画のお仕事を聞いていければと思います!
後編はありえるさんとるーぷさんに、ドズル社での企画の立て方、企画力のつけ方についてインタビューしてみました。お楽しみに!