千葉大学発医療スタートアップ企業である当社では、創業時からのミッション「テクノロジーと柔軟・独創的な発想で救急・急性期医療現場の課題をスマートに解決し、より多くの患者さんを救う」を実現するために、2021年事業を推進してまいりました。2020年より千葉市で運用中の「救急医療情報サービス Smart119」は、現場の課題に対して、継続的な改善を行い、また現場のデータに基づいたAI 予測診断アルゴリズムの開発・実装を進めてきました。こうした救急医療に対する要望の変化へ、即応する体制と将来性が評価され、地方自治体主催の実証実験事業者として選ばれました。また、「災害時危機管理サービスrespon:sum(レスポンサム)」では、新型コロナウイルス感染症に対応した各機能を着々と追加しました。このような取り組みへ、ご評価をいただき、新たに第三者割当増資により約3億円の資金調達も実現しました。
当社代表取締役/CEOの中田孝明は、次のように述べています。
「私たちは、医療技術だけでは解決できない課題の克服に向けて、様々なテクノロジーを活用する事業に取り組んでいます。コロナ禍の最中に始まった2021年は、『院内クラスター』『接種後副反応』『感染妊産婦の救急搬入困難』など、医療の様々な課題が顕在化した一年であり、それらに対し私たちが速やかに取り組んで改善する機会が多くありました。『respon:sum』への積極的な機能追加により、さまざまな緊急的状況において、医療機関の事業継続支援が可能になりました。『Smart119』は千葉県外の地方自治体における実証実験が採択され、脳卒中のAI予測診断アルゴリズムの開発も完了しました。医学研究の成果をICT、AIを活用して社会へ実装する積極的な取り組みが評価され、既存株主の追加出資に加えソニー・PKHSAのファンドから新規投資を受けることもできました。2022年も事業と開発の強化を加速させて、最新の医療を日本全国へ届け、誰もが安心できる未来医療の構築に邁進していきます」
■2021年実績
【1:新型コロナウイルス感染症への対応】
「災害時危機管理サービスrespon:sum(レスポンサム)」に、数々の機能を追加しました。
■第3波 2020年10月~21年2月
・2020年12月 respon:sumに「職員健康管理機能」を追加
[目的]院内クラスター抑止
■第4波 2021年3~6月
・3月 respon:sumに「ワクチン接種後職員健康管理機能」を追加
[目的]医療従事者ワクチン接種後の副反応管理
・6月 respon:sumに「掲示板機能」を追加
[目的]デルタ株出現による、治療および予防対策への知見集約
・7月 respon:sumにデジタル端末対応アプリを追加リリース
[目的]職員使用促進、訪問看護など遠隔作業対応
■第5波 2021年6~9月
・9月 respon:sumに「配置部署機能」を追加
[目的]組織的災害医療活動の支援
・9月 新型コロナウイルス感染妊産婦入院調整支援システム
「COVI-CO」(Covid-19 Coordination Powered by respon:sum)を開発・運用開始
[目的]感染妊産婦救急搬入困難の解決
・11月「COVI-CO」を千葉県に導入
【2:AI予測診断アルゴリズムを開発、実用化へ】
日本医療研究開発機構(AMED)の研究開発課題「先進的医療機器・システム等技術開発事業『救急医療予測研究開発』」に採用された「脳卒中AI予測診断アルゴリズム」の開発を完了しました。この機能は、「救急医療情報サービス Smart119」に追加され、救命率向上とともに、後遺症軽減も期待できます。千葉市消防局への導入(2021年度中)を皮切りに、AI予測診断が社会実装されます。国際科学誌『Scientific Reports』(英国、Nature Research社発行)に研究論文が掲載されています。
【3:行政イノベーションプロジェクトに採択】
「救急医療情報サービス Smart119」は、9月に「TRY! YAMANASHI! 実証実験サポート事業」(山梨県主催)に採択されました。山梨県南東山梨市で22年3月まで実証実験を行い、救急搬入困難の解消、医療機関受入までの時間改善など、地域に最適化したシステム開発、運用を検証します。
【4:ベンチャー・キャピタル4社からの支援】
8月に、ニッセイ・キャピタル株式会社、三井住友海上キャピタル株式会社、Sony Innovation Fund、合同会社PKSHA Technology Capital、スパークス・AI&テクノロジーズ・インベストメント株式会社より、総額3億675万円の資金調達を受けました。
【5:営業・事業開発体制の充実】
株式会社Smart119では技術開発体制の充実と併せて、サービスを多くの医療機関・医療従事者に活用していただける営業・事業開発体制の拡充にも注力しています。現在の営業部門のリーダーは、法人ビジネス担当執行役員として「LINE」の立ち上げメンバーの一人だった古賀美奈子が2021年より参画しています。2021年には、災害対策システム「respon:sum」の最新機能が、大阪急性期・総合医療センター、千葉大学医学部附属病院をはじめとした多くの病院で導入されました。新型コロナウィルス感染妊産婦の入院調整支援システム「COVI-CO」の開発にあたっては、千葉県との連携で早急な導入・運用開始が可能になりました。現在は医療従事者向けの3回目のワクチン接種に向けた活用開始準備もスタートし、より多くの方々に、安心できる未来医療を届けられる体制づくりが進んでいます。
■2022年事業方針
【1:「救急医療情報サービス Smart119」の全国展開】
2021年に採択された山梨県における実証実験が開始されます。この結果を活用し、人口構成や気候、医療施設数、消防署数、救急車の保有台数など、地域特性に最適化した、各自治体の要望に応えられる柔軟なシステムを日本全国で提供していきます。すでに千葉県以外の自治体・消防本部からも多くの要望をいただいており、来年は、さらに多くの全国の自治体と連携して実証実験を進めていく予定です。
【2:「新型コロナウイルス感染妊産婦入院調整支援システムCOVI-CO」の活用】
「救急搬入困難者(救急搬入のたらい回し)」の問題は、コロナ禍以前から社会問題となっていました。とりわけ、新型コロナウイルスに感染した妊産婦の入院対応は喫緊の課題です。千葉県に導入された本システムの全国展開を進めていきます。
【3:AI予測診断アルゴリズム対象症状の拡大へ向けた研究開発】
「脳卒中」を対象に実用化されたAI予測診断アルゴリズムの研究開発を、千葉大学大学院医学研究院 救急集中治療医学の共同で継続。新たに「急性心疾患」にも対応する予定です。