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物流業界の課題に「早朝宅配」で挑むカノエ。創業者2人が見据える未来と勝算

新型コロナウイルスの影響でEC市場が急増する一方で、物流業界が抱える課題が浮き彫りになってきました。「注文から○分でお届け」といったデリバリーサービスが増える一方で、配送を担う人材不足は深刻で、今のオペレーションを維持するのは限界を迎えています。

その解決策と私たち「カノエ」が目をつけたのが、日本で昔から新聞や牛乳の配達で利用されてきた「早朝宅配」。夜のうちに注文して朝届ける仕組みなら、配送を効率化できますし不在により荷物を受け取れないこともありません。

早朝に生鮮食品などを配達するサービスが「モーニング・エキスプレス」です。今回は共同代表の2人に、起業の経緯から現在の配送業界が抱える課題について語ってもらいました。

「間部と組んだら最高のチームを作れると思った」前職で出会った2人が共に起業するまで



―まずはお二人が起業するまでの経緯を聞かせてください。

間部:私は新卒で外資系の投資銀行に入社し、2年半働いた後にフィンテックベンチャーに転職しました。ベンチャーで働く面白さを実感できたものの、会社に雇われてできる仕事に限界を感じて起業を考えるように。当時、同じ会社で人事をしていた原さんと話すうちにイメージがどんどんと固まっていき、2人で起業することにしたのです。

原:私も新卒で外資の投資銀行に就職し、ヘッジファンドの営業に従事していました。3年働いたところでリーマンショックが起き、私はポジションをなくすことに。同じく外資の金融会社に転職したものの、リーマンショックをきっかけに「利益ばかりを追求する社会」に疑問を感じていた私は大きくキャリアチェンジすることを決意しました。

もっと人が安心して暮らせる社会を作るために、国際支援に携わり国連機関やNPOなどで開発の仕事を始めました。しかし、寄付の世界はビジネスの世界に比べて社会へのインパクトが限定的だと感じ、もっと大きなインパクトを出したいと思って転職した先が間部と出会った前職のベンチャー企業です。

―起業はどちらから持ちかけたのでしょうか。

原:間部と最初に話したのは部署を超えた「シャッフルランチ」のときです。彼は先輩からも後輩からも慕われており、その仕事ぶりは私の耳元に届いていました。私は営業を中心にキャリアを築いてきたので、理系のキャリアを持つ彼のような人とチームを組めたら起業もうまくいくだろうと考えて声をかけました。

間部:私もいつか起業したいと思っていて、社外でプロジェクトベースの活動をしていたので、自然と原さんと起業の話で盛り上がりました。お互いに考えている起業アイディアを壁打ちしながら、二人でピンとくるようなアイディアを探していたのです。

―お二人とも金融業界出身ですから、金融サービスのアイディアも出ていたのでしょうか?

原:不思議と金融領域のアイディアは全く出てきませんでしたね。当時勤めていたベンチャーのビジネスモデルがフィンテックの理想だと思っていたので、それを超えるようなアイディアが思いつかなかったのです。

間部:私も同感です。加えて私が金融業界に進んだのは、社会システムの一環として「お金の仕組み」に興味があったからで、金融業界そのものやお金を稼ぐことはあまり興味がありませんでした。自分で起業アイディアを考える時は、自然と金融ビジネスは出てきませんでしたね。

海外では既にユニコーンも。早朝宅配ビジネスの大きな可能性



―「早朝宅配」という事業ドメインに絞った経緯を聞かせてください。

原:きっかけは、二人で身近なペインを思いつく限り話し合っていた時のことです。2人の子育てをしている私は、仕事が終わってからも忙しく、帰宅してから翌朝に使う牛乳を切らしていることに気づくことがよくありました。「夜注文したら、朝には届いているサービスがあればいいのに」と話したのが早朝宅配を考え始めたきっかけです。

間部:原さんの話を聞いて、私も物流業界について調べてみました。EC市場が年々拡大する一方で業界は人材不足に悩んでおり、業界構造に問題があるのは明確だと思ったのです。

原さんのペインと業界構造の課題、その2つを組み合わせて考えてみると大きなビジネスチャンスがあると思ったのです。そして、どちらの課題も解決できるのが、日本に昔からある「早朝宅配」。新聞配達や牛乳配達で使われてきたルートは今も残っており、それらを活用すれば新しい物流の仕組みを作れると考えました。

―新聞配達や牛乳配達の市場は衰退しているイメージがあるのですが、実際のところはどうなのでしょうか?

間部:牛乳配達の市場は一時は縮小傾向であったものの、2000年代前半に底打ちしてから徐々に回復しています。ターゲットである高齢者はどんどん増えていますし、基本的に亡くなるまで解約しないサービスなので、今後も市場の拡大が予想されているほどです。

また、日本では衰退したかのように見える早朝宅配も、韓国やインドでは市場が非常に盛り上がっています。韓国には早朝宅配のパイオニアのようなベンチャー企業がいて、ユニコーンにまで成長し今年には上場を見据えている状態。

冷凍のミールキットなどを宅配しており「ホームミールリプレイスメント」をコンセプトに、家庭の食事を置き換えているところです。私たちも将来的には自分たちでキッチンを持って、日本の食卓をアップデートしていければと思います。

「早朝宅配」への強いニーズと今後のビジョン



―早朝宅配に事業ドメインを決めてから、どのようにサービスを組み立てていったのか教えて下さい。

原:最初は「何から配達するか」を話し合い、結果的にパンの配達から始めることにしました。朝食のニーズにマッチしますし、食パンなら「1斤」とサイズが決まっているので、注文数で大きさを予測しやすいからです。

継続率を見ていると確実にニーズがあるのは感じています。サービス開始当初から1年以上使ってくださるユーザーさんもいて、市場の可能性を感じますね。

間部:例えば週1で利用されるユーザーさんも結構いて、それだけで年に50回は利用してくれることになります。通常のECに比べて習慣化してもらいやすいため、高頻度かつ継続的に利用してもらいやすいんですね。成長する見込みは確実にあると思います。

―現在の目標について聞かせてください。

原:まずは今年後半のシリーズAの調達に向けてサービスを確立させること。単に売上を伸ばすだけでなく、お客様のペインポイントを見つけ、いかに解決できるのか探っていかなければなりません。

これから入ってくださるメンバーの方には、サービスを「1」のフェーズに持っていく所から携わってもらえるはずです。

―最終的にはどんなサービスを実現するのが理想でしょうか。

原:「当たり前のように、朝玄関を開けると食料品が届いている世界」を実現したいと思っています。私自身がターゲット世代でもあるので、そのようなサービスができたら日々の生活が非常に楽になりますね。

朝に食料が届けば日中の買い物が不要なので、仕事終わりに「冷蔵庫に何が入っていたっけ?」と考える必要もありません。ちょっとした生活の変化が私達の暮らしを幸せにしますし、一人ひとりの幸せが大きな幸せに繋がるのではないでしょうか。

間部:私たちが価値を届けたいのはユーザーだけではありません。物流を担ってくれる配達員の方々の労働環境改善も私たちの役割だと思っています。労働環境が悪かったり、給料が安かったりすれば、ますます物流業界の人離れは加速しますし、結果的に市場も衰退していきます

配達員により高い給料を払ってもらうためにも、配達業務を効率化して生産性を上げていく努力が欠かせません。早朝配達なら、注文を集約してまとめて配達できるので効率的ですし、再配達の必要もありません。今後もより効率的に配達できる仕組みを作っていくつもりです。

ユーザーさんだけでなく、業界に携わる人達にも価値を届けるのが私たちの仕事だと思っています。

ダークストア、ネットスーパー、新聞配達。潜在的な競合たちに対する優位性とは



―最近は注文から10分で品物が届く「ダークストア」も活況ですよね。そのような競合に対してどのような勝算を考えているか聞かせてください

間部:一つは「待ち時間」です。10分という待ち時間は非常に短いと思いますが、忙しい朝にスマホで商品を選んで注文し、10分待つというのは小さくない負担です。私たちのサービスは夜10時までに注文して、あとは寝るだけ。翌朝商品が届けば通知が届くので、実質「待ち時間ゼロ」でスムーズに商品を受け取れます。

また、配送時間の短縮で過当競争が起きる一方で、ユーザーを囲い込むための「送料無料キャンペーン」が乱発している状態。短期的には今の価格でサービスを提供できていますが、将来的には今のサービスを維持するのが難しくなっていくでしょう。私たちは無理のない配送オペレーションを組むことができるので、過当競争に巻き込まれず着実にサービスを立ち上げていけるのも強みです。

―「ネットスーパー」が早朝宅配に参入してきたらどうしますか?

間部:ネットスーパーが参入してくれば、それだけ市場が大きくなるので好ましいと思っています。一方でネットスーパーがそのまま早朝宅配に参入したからといってうまくいくとは思えません。

彼らは店舗の在庫と宅配の在庫を共有してもうまくいかないので、早朝宅配のための配達の仕組みを1から作らなければいけないからです。その負担は決して小さくないので、すぐに参入できるものではないと考えています。

また、スーパーが大きな配送センターに商品を集める「中央型」だとしたら、私たちは小回りのきく「分散型」。大手では取り扱えない地場の小さな店の商品なども取り扱って差別化していきたいですね。

―既に早朝配達をしている新聞屋さんも競合になる可能性がありますよね。

原:実際に参入したいと言っている新聞屋さんなども増えています。しかし、彼らが口を揃えて言うのが「ITやシステムがわからない」ということ。だからこそ、彼らと競合するのではなく、お互いの強みを活かして一緒に早朝宅配市場を盛り上げていければと思っています。

将来的には彼らに向けてシステムをパッケージ化して、フランチャイズのように展開していくのが理想です。彼らこそ日本の早朝宅配を支えてきた第一人者なので、彼らが中心になって市場を盛り上げられるモデルを作っていきたいですね。

完璧じゃなくてチームプレーで活躍できる人。今のチームにマッチする人材



―今は積極的に人材を募集していますが、どんな方なら今のチームにマッチしますか?

原:自分の強みを活かして、チームで補える人ならマッチすると思います。国籍や学歴にとらわれることなく「自分ならこの力で貢献できる」というものがあれば構いません。決して完璧な人を求めているわけではなく、みんなで補い合いながら、その中で自分の強みを発揮できる人なら活躍できると思います。

特に会社をグロースするフェーズを経験したいという人、早朝配達に面白さを感じている人であれば、一緒に楽しく働けるのではないでしょうか。

―早朝配達の面白さについて聞かせてください。

間部:市場がもつ大きなポテンシャルは一つの面白さだと思います。新聞の早朝配達だって、きっと昔は東京で始まって、その仕組みが沖縄から北海道と日本全国に広がっていきました。私たちのサービスも日本全国に広がればとても大きな市場になるはずです。

もちろん日本全国に広げるのが難しいのですが、だからこそチャレンジしたい人に興味を持ってほしいですね。一緒に大きな市場を作っていきたい方は、ぜひ一度話を聞きに来てみてください。

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