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「インフラ・セキュリティにかかるコストをゼロにしたい」グローバルの共通課題に挑戦するクラフトマンソフトウェアが考える未来のインフラの世界観

「車輪の再発明をなくし、インフラ・セキュリティ領域のコストを限りなくゼロにしたい」。そんな思いで自社プロダクトの開発や、インフラ・セキュリティの受託事業を展開するクラフトマンソフトウェア。今後、グローバル展開も視野に入れる同社のこれまでの歩みや未来に向けた展望、開発組織のあり方について、代表取締役の森 怜峰、取締役の竹原 俊広に聞きました。

代表取締役 森 怜峰(もり れお)

17歳でホワイトハッカーを始め、企業向けセミナーを通じてクラッキングからネットワークや情報資産を守るノウハウの伝搬に務める。株式会社サーバイス、株式会社スイフトスタッフのCTOを歴任しながら、SNSやスマート照明、入退場管理システム、Facebookページマーケティングシステムなど、さまざまな業域の開発チーフを手掛ける。

2013年には、株式会社クラフトマンソフトウェアを創業し、ブラウザテスト自動化サービス「ShouldBee」でOpen NetworkLab DemoDay 2014 Spring最優秀チーム賞を受賞。開発と運用のチームワークが円滑になるインフラの設計や、地方創生のための地方自治体向けプライベートクラウドの構築などを手掛けてきた。著作に「特集2 軽量仮想化基盤のDocker 今ハマる三つの使い道: 開発と本番の環境がそろう」『日経SYSTEMS2015年3月号』日経BP社、『実践ドメイン駆動設計』翔泳社, 邦訳レビュー、『すごい開発チーム育成ハンドブック』共著、『マンガでわかるDocker ① 〜概念・基本コマンド編〜』湊川あい著, 監修など

取締役 竹原 俊広

1973年ラオスに生まれ、幼少期から日本で育つ。ペット業界での起業を経験後、2003年にIT業界に転向。大手企業のITインフラ運用管理の責任者を務める。

2013年には、インシデント管理システム「OTRS」の日本OTRSユーザ会の会長に就任。OTRSの国内普及に寄与する。ラオシステムズ代表、株式会社OSS ONE副社長、株式会社クラウドエイジア代表等を歴任し、2016年株式会社クラフトマンソフトウェアに取締役に就任。運用設計とセキュリティが強み。運用領域では、通信業・製造業・流通業・サービス業などのべ100社以上の企業に対しインシデント管理方法を指南。セキュリティ領域では、大手金融機関のセキュリティ認証PCIDSSの運用を担当した。著作に、「Docker/Ansible/シェルスクリプト: 無理なくはじめるInfrastructure as Code」『Software Design 2014年11月号』技術評論社

アプリケーション、インフラ、セキュリティを横断して理解できる「強み」を生かして急成長を実現

——クラフトマンソフトウェアを立ち上げようと考えたきっかけはなんだったのでしょうか。

森:クラフトマンソフトウェアを立ち上げる以前、弊社のCTOである野澤と、ブラウザテストを自動化するプロダクトを開発していました。開発を続けていくためには資金が必要だったため、VCからの調達を視野に入れ、会社を立ち上げました。

現在はセキュリティ・インフラ領域に特化した受託にも事業を広げています。自分自身、エンジニアとしてのスタートがインフラとセキュリティだったため、もともと得意でもあり好きな分野でした。インフラ・セキュリティの構築に悩む企業は多く、「得意」と世の中の需要が合致する結果となりました。

竹原:私はエンジニア歴18年の中で、自動化して省力化したい部分を見つけるのが得意でした。森と野澤とは創業以前からの知り合いでしたが、当初は一緒に開発をするのではなく、お客様を紹介するなど、2人を応援する立場でしたね。クラフトマンソフトウェアの取締役に就任したのは2016年で、現在は営業や受託案件の統括といった業務を行っています。

——2013年10月の創業から、まもなく10年を迎えます。これまでを振り返って、どこが企業成長のターニングポイントになったと考えますか?

森:ターニングポイントという点では、インフラ・セキュリティの事業に特化したタイミングですね。

2013年の創業当初は、先ほど申し上げたテスト自動化のプロダクトを開発・提供していました。しかし、思ったようにプロダクトの売上が伸びずに停滞してしまったのです。その後アプリケーション開発の受託事業を始めたものの競争優位があるわけではありませんでした。アプリケーション開発は作ったら顧客との関係性は一旦区切りがつき、持続性な収益が上がるわけではありません。より自身の専門性がある分野に特化した方が良いと考え、2017年からインフラ・セキュリティの受託事業をスタートしました。

アプリケーション開発と違い、インフラ・セキュリティ領域は作って終わりではなく、保守・運用が必要です。エンタープライズ企業になればなるほどセキュリティの重要性が増すため、収益も安定し先を見た経営ができるようになりました。

以上のような事業展開の背景から、クラフトマンソフトウェアはインフラ・セキュリティとアプリケーション開発、双方の知見を有しています。アプリケーション開発をする際、どういったインフラを必要とするか、決定の責任の所在が曖昧になりがちです。私たちはアプリケーション開発、インフラ、セキュリティのすべてに精通しているため、作りたいアプリケーションに適切な構成やインフラを明確に提案することができます。そのような点が大きな強みとして顧客企業からは評価いただいているように思います。

——クラフトマンソフトウェアのインフラ事業の特徴の1つに、Kubernetesを採用している点が挙げられると思います。

森:多くの会社では、「AWSやGoogle Cloudといったクラウドサービスに命を握られたくない」と思っていながら、それを使わざるを得ない状況にあります。そのうえで、万一AWSに不具合があったり、提供しているサービスの内容を変更したりといったことが起これば、ビジネスに直結する問題になりかねません。

これらのクラウドサービスは、コアの部分がオープンソースになっていません。Kubernetesを使えば、クラウド上のオープンソースを活用して止まりにくいインフラを設計することができます。そうすれば、ユーザー企業の安定性を確保することができます。

弊社では、コンテナ環境を日本で初めてプロダクト環境に導入しました。当時から、コンテナ技術は今後本格的に普及していくだろうと予測していましたが、Kubernetesがゲームチェンジャーだったと思っています。インフラは手動での操作が当たり前でしたが、今後はKubernetesを使った自動化が普及していって、それが当たり前の世界になっていく。そうした世の中の先駆けとして、Kubernetesを導入しました。

エンジニアの負荷を軽減し、現場のコストを削減する。目指す世界観をグローバルな規模で実現したい

——今後、クラフトマンソフトウェアをどうしていきたいか、展望を聞かせてください。

森:事業戦略面においては、企業がインフラ、セキュリティで抱える課題を解決するプロダクトを開発、リリースしようとしています。未だリリースをしていないために詳細な記載が難しいのですが、Kubernetesを活用しながら、インフラ、セキュリティ、アプリケーションを統合したプロダクトにしようとしています。また、インフラ領域の受託事業も将来的にはプロダクトに統合していきたいと考えています。

中長期の目標としては、プロダクトのグロースを経て、2029年頃のNASDAQへのIPOを一つの目標として置いています。弊社では時価総額1兆円でのIPOを想定しているため、マザースではなく、より規模の大きなNASDAQからのIPOを考えています。日本国内だけのプロダクトにおさまりたくないという思いがありますね。

IPOまでの具体的なロードマップとしては、プロダクトのPoCを2022年8〜9月頃に完了させ、2023年にクローズドβ版をリリースします。2023年いっぱいかけてプロダクトマーケットフィットを経て、2024年に正式リリースし、以降はサービスをグロースさせ2029年を迎えることを想定しています。

——このプロダクトで目指したい世界観はどのようなものですか?

森:インフラエンジニアやアプリケーションエンジニア全般に言えることですが、エンジニア自体の人数が減ってきています。これは日本だけでなく、世界的にも同じことが言えます。需要は益々増えている中で、エンジニアの数が減ってしまっている状況なのです。

そんな中、日本のエンジニアは膨大な時間を残業に費やしています。残業の主な内容は、インフラの調整やセキュリティキャッチアップ、メンテナンス、機能開発や不具合対応です。それと同時に、高品質で価格を安くする、機能を増やすといったプレッシャーがかかり続けています。

インフラエンジニアの採用も年々困難となっている中、インフラ・セキュリティに対して各企業がやっていることは同じで、各社が車輪の再発明をしています。現在、一定規模の企業の場合、インフラ・セキュリティや、DevOpsに平均で7,8人分のコストがかかっており、およそ年間1,000万円ほどだと試算しています。

そのような課題を抱える企業に対して、私たちのプロダクトは、インフラ・セキュリティにかかるコストを限りなくゼロにしたい。そういった世界観でプロダクト開発を進めています。

こうしたインフラ・セキュリティ事情はどの国でも起きているものであり、グローバルに展開しうるプロダクトだと考えています。

——そうしたビジョンを達成するにあたって、どんな開発組織を作っていきたいですか?

森:成し遂げたい世界観に共感いただき、技術的にも専門的な人材が多く集まる組織にしたいと思っています。これまで、「インフラエンジニアはプログラミングができない」「プログラミングができないからインフラエンジニアになる」といった流れがあったように思います。そうではなく、どちらもできる人に来ていただきたいですね。私たちは、インフラ・セキュリティを手動ではなく、自動化したいと強く考えているので、プログラミングができて、インフラ、セキュリティもできる。そういった方が集まる組織を目指したいと思っています。

事業の成長に伴って、エンジニア以外にもカスタマーサポートや営業ができる人も必要になるでしょう。エンジニアばかりでは会社の運営はうまくいかなくなると思うので、バランスを取りながら採用を進めていきたいと考えています。そして、理想はそういった方々にもプログラミングのスキルがある方が望ましいです。率先して社内の業務を自動化している、当たり前に全員がプログラミングしている、そういう組織の世界観を持っています。

遠隔でのコミュニケーションを前提に、テキストベースのコミュニケーションで相互理解を深める

——そうした開発組織やカルチャーを実現するために、どんな方がマッチすると思われますか?

森:今後はグローバル化に伴って、タイムゾーンが異なるさまざまな拠点同士でコミュニケーションを取る必要が生まれます。リアルタイムで話すことができない状況下では、文章ベースで仕事を進めていきたいと考えています。暗黙知で仕事をするのではなく、お互いの思いを文章にして共有できるようにしたいですね。

クラフトマンソフトウェアではリモートワークが中心なので、よりそうしたコミュニケーションが求められます。オフィスにいたとしても、その場で「たまたま聞いていた人」には伝わりますが、そうではない人には伝わらない、といったことが起こり得ます。そういったことは非効率ですよね。エンジニアはPCさえあれば仕事ができるからこそ、コミュニケーションにおいては文章ベースで相互理解できるようにしたいと考えています。

もちろん口頭でディスカッションすることも時には必要ですが、考えを文章にまとめて発信するカルチャーを大事にしていきたいと思います。それを実現するためには、仕事の流れややらなければならないことを仔細に観察して、フォーマットやプロトコル、ワークフローに落とし込める人、そしてそれを実行していく人たちが必要だと考えています。

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