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Webパフォーマンス向上の鍵「レスポンス圧縮とその最適化手法」前編

最近は予約システムばかり設計・実装している、エンジニアの柿添です。
予約周りの要望の中でロックや速度の話が何度も浮上してきましたので、 今回は、Webサイトのパフォーマンス向上に欠かせない「レスポンス圧縮」について話したいと思います。
(※今回はシステム的な速度アップではなく、コンテンツ配信速度アップの話です)

1. レスポンス速度の重要性

現代のWebサイトでは、ユーザーが求める最も重要な要素の一つが「スピード」です。 わずか数秒のページ読み込み遅延が、以下のような深刻な影響をもたらすことが研究や実績から明らかになっています:

  • ユーザー体験の低下: 読み込みに時間がかかると、ユーザーの忍耐力は限られ、競合他社のサイトへと移動する傾向が顕著です。これにより、直帰率が増加し、ユーザーエンゲージメントが低下します。
  • コンバージョン率の減少: 特にECサイトでは、1秒の読み込み遅延が売上に直結します。一部の統計では、1秒の遅延がコンバージョン率を7%以上低下させる可能性があるとされています。
  • 検索エンジン順位への影響: Googleはページ速度をランキングアルゴリズムの重要な要因としており、遅いサイトはSEOでの評価が下がります。検索結果での順位低下は、結果的にトラフィック減少を招きます。
  • モバイルユーザーへの影響: スマートフォンやタブレットが主流となる中、モバイルデバイスの多くが不安定または低速な通信環境に依存しています。そのため、どのような環境でもスムーズに閲覧できるサイト設計が求められます。

このような課題を克服するために、データ圧縮は不可欠な技術です。 圧縮技術を活用することで、転送データ量を大幅に削減し、ページ表示速度を向上させることが可能になります。これにより、ユーザー体験を最適化し、ビジネス成果を向上させることができます。 特にCloudflareは、次世代の圧縮アルゴリズムであるZstandard(zstd)を導入し、従来の圧縮形式を超える効率性を実現しています。この革新的な技術により、サイトのパフォーマンスを最大限に引き出し、より良いユーザー体験を提供します。

2. Webブラウザのレスポンス圧縮とは?

レスポンス圧縮とは、HTTP通信においてWebサーバーが返すデータを圧縮し、効率的にクライアントに送信する技術です。

クライアント側では圧縮されたデータを解凍することで、迅速かつスムーズなデータ利用が可能になります。
この技術は通信効率の向上だけでなく、Webサイト全体のパフォーマンス改善に寄与します。


レスポンス圧縮のメリット

  • 圧縮・解凍コスト: 圧縮・解凍はCPUリソースを消費します。ただし、モダンなハードウェア環境ではその影響は最小限に抑えられるため、メリットがコストを上回ります。
  • 大容量ファイルの非効率性: 画像や動画、PDFなど、既に圧縮されているデータでは効果が限定的で、場合によっては不要なリソース消費を引き起こす可能性があります。

ブラウザとサーバー間の通信プロセス

  • ブラウザのリクエスト: クライアント(ブラウザ)はHTTPリクエストに Accept-Encoding ヘッダーを含め、対応可能な圧縮形式をサーバーに通知します。 例:
    Accept-Encoding: gzip, deflate, br
    Accept-Encoding: gzip, deflate, br
    この場合、ブラウザはGzip、Deflate、Brotliの圧縮形式に対応していることを示しています。
  • サーバーのレスポンス: サーバーはクライアントがサポートする圧縮形式の中から最適なものを選び、Content-Encoding ヘッダーで指定してレスポンスを返します。 例:
    Content-Encoding: br
    Content-Encoding: br
    これはレスポンスデータがBrotliで圧縮されていることを意味します。

レスポンス圧縮の処理フロー

以下はレスポンス圧縮の基本的な処理フローです:

  1. クライアントがリクエスト送信Accept-Encoding ヘッダーで対応形式を通知。
  2. サーバーが最適な圧縮形式を選択: レスポンスに Content-Encoding ヘッダーを付加。
  3. クライアントが受信し解凍: 圧縮されたデータを解凍し、表示または処理。

この仕組みは、効率的な通信を実現し、特にページ表示速度の向上に大きく貢献します。


3. なぜレスポンス圧縮が必要なのか?

レスポンス圧縮は、Webサイトのパフォーマンスを向上させ、ユーザー体験を最適化する上で欠かせない技術です。
特に、現代の多様な利用環境(モバイル端末や低速通信回線など)を考慮すると、その重要性はますます高まっています。

1. 通信量の削減

レスポンス圧縮により、サーバーからクライアントに転送されるデータ量を大幅に削減できます。 例えば、圧縮が適用されたテキストデータでは、サイズが70〜90%削減されるケースも珍しくありません。これにより、以下のような効果が期待できます:

  • 通信コストの削減: ネットワーク帯域の消費量が減るため、インフラの運用コストを最適化できます。
  • 迅速なデータ配信: 小さなデータサイズは、ページロード時間の短縮に直結します。

2. ユーザー体験の向上

ページ表示速度が向上することで、ユーザーの待機時間が短縮されます。これにより:

  • モバイル環境でも快適な閲覧: モバイル通信や公共Wi-Fiなど、必ずしも高速ではないネットワーク環境でもスムーズな体験を提供。
  • 直帰率の改善: 読み込み時間が短いほど、ユーザーはページを離脱しにくくなります。

3. SEOとビジネス成果への貢献

  • 検索エンジン最適化(SEO): Googleをはじめとする検索エンジンは、ページ速度をランキングアルゴリズムの一部に採用しています。高速なサイトは検索順位が向上し、トラフィック増加に繋がります。
  • コンバージョン率の向上: ECサイトでは、ページ速度が売上に直結します。たった1秒の遅延が売上を数%下げる可能性があるため、圧縮による速度改善は収益に大きな影響を与えます。

4. 持続可能なWeb運用

  • 環境負荷の軽減: 圧縮による通信量削減は、データセンターのエネルギー消費量を減らし、結果的に環境負荷の軽減にも貢献します。

5. 現代の多様なデバイス対応

圧縮は、ブラウザやデバイスごとに最適なフォーマットでデータを提供できるため、ユーザーごとの利用環境に応じた最適化が可能です。
特にモバイルやタブレットなどのデバイスにおいて、圧縮技術はその真価を発揮します。

4. 圧縮のタイプとブラウザでの対応状況

  1. Gzip
    • 対応ブラウザ: すべての主要ブラウザ
    • リクエスト例:
      Accept-Encoding: gzip
      Accept-Encoding: gzip
  2. Brotli
    • 対応ブラウザ: Chrome, Firefox, Edge, Safari
    • リクエスト例:
      Accept-Encoding: br
      Accept-Encoding: br
  3. Zstandard (Zstd)
    • 対応ブラウザ: 一部のモダンブラウザ(2024年3月以降、ChromiumベースのブラウザとFirefoxが対応)
    • リクエスト例:
      Accept-Encoding: zstd
      Accept-Encoding: zstd
    • 背景: Zstandardは、FacebookのYann Collet氏によって開発された高度な圧縮アルゴリズムであり、大規模なデータ処理を効率的に管理する目的で作られました。2016年8月にオープンソース化され、その優れた圧縮率と速度により、近年では人気が高まっています。2024年3月には、ChromiumベースのブラウザとFirefoxが対応する予定で、今後さらに普及が進むと予想されます。詳細は Zstandard GitHubリポジトリ を参照ください。

後編に続く>>

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