今やゲーム実況動画は、スマートフォン向けゲームのマーケティングに欠かせない施策となりつつあります。しかし、すべての実況動画が成功しているわけではなく、有名YouTuberを起用しても再生数が伸び悩むというケースも少なくありません。では、ユーザーの心を掴む実況動画は他と何が違うのか。そして、今年のYouTuber施策はどうなっていくのでしょうか。
マーケターが注目すべきポイントを、「ゴー☆ジャス動画」など人気チャンネルを運営するナオ 代表取締役 西尾敏夫氏と、ゲーム実況マーケティングを支援するBUZZCAST 代表取締役CEO 山田雄介氏に伺いました。
動画マーケティングへの期待と懐疑
ナオ株式会社
代表取締役
西尾敏夫 氏(写真左)
株式会社BUZZCAST
代表取締役CEO
山田雄介 氏(写真右)
――:本日はよろしくお願いします。はじめに、お二人が動画マーケティングに取り組むようになったきっかけを教えて下さい。
西尾敏夫氏(以下、西尾):元々僕はファイブゲートというWebメディアの会社にいたのですが、モバイルゲームユーザー向けの特典情報サービスを立ち上げて、それがきっかけでナオを設立しました。ナオはゲームのプロモーションを専門とする会社で、ユーザーの皆さんへ毎日新鮮なゲーム情報をお届けしています。ビジネスモデルとしては広告収益が主ですが、従来のテキストやバナー広告ではなくて、トレンドを意識して動画コンテンツという形で発信するようになりました。始めたのは2013年頃ですね。まだ「YouTuber」というワードが生まれたかどうかという時期からです。
山田雄介氏(以下、山田):僕がBUZZCASTを立ち上げたのは2015年9月で、ゲームの動画マーケティング界隈では最後発と言えます。当時、既にインフルエンサーマーケティングが流行っていて、再生数をベースにして価値基準が作られていたのですが、再生数よりもその先に生まれる認知やDLが重要だなと感じていました。ここを科学する事ができれば、後発でもまだ市場価値が作れるのではないかと考えて、再生数ではなく、アプリDL数、CPIで運用できるBUZZCASTを立ち上げました。その後、親会社のメタップスからMBOによって独立して、現在に至ります。
――:西尾さんはかなり早い時期から動画マーケティングの波を感じていて、一方、山田さんは過熱気味だったトレンドに一石を投じる形で動画マーケティングのビジネスをスタートさせたということですね。
西尾:そうですね。今でこそ元SMAPの草彅剛さんもYouTuberとして活動していますが、ナオは黎明期からプロのタレントを起用してきました。それがゴー☆ジャスさんやザ・たっちの二人で、テレビではスターと言えるポジションではなかったかもしれないけれど、やはり視聴者の心を掴む見せ方、番組作りの勘所を押さえていて、それが個人のYouTuberと大きく異なる点だったと思います。もちろん、個人のYouTuberで才能を開花させた人もいますが、安定した品質でトラブル無く配信を続けられるYouTuberは実はそれほど多くはいないんです。
――:なるほど。個人のYouTuberは、動画のクオリティやゲームとの相性次第で、広告効果が大きく変動してしまう。そこで、BUZZCASTのような定量的な効果測定が求められるようになったということですね。
山田:仰るとおりで、ゲーム業界で動画マーケティングが本格的に採用され始めた時期にちょうど事業の独立が重なったこともあり、本当に沢山のお引き合いをいただきました。
「動画マーケティング元年」と呼ばれた昨年を振り返って
――:昨年はYouTuber施策が注目を浴びた年となりましたが、今振り返ってみて、どのような感想をお持ちですか。
西尾:ゲーム業界各社が動画マーケティングに詳しくなってきましたね。これまでは「興味があるから、とりあえずやってみたい」という漠然とした要望だったのが、このターゲット層にこういう内容を伝えてほしい、というようなピンポイントなご相談をいただくようになって、ROIもシビアに求められるようになりました。特に企画へのこだわりは強くなりましたね。瞬間的なバズよりも、ユーザーコミュニケーションのひとつとしてファンに心から楽しんでもらえる内容を制作したほうが、結果的にCPIも下がりますし、KPIの改善に繋がるという気付きがあったんだと思います。
――:山田さんはいかがですか。
山田:スマートフォンゲーム市場という観点では、国内市場は成熟しきっているとばかり思っていましたが、たとえば、『SINoALICE』(ポケラボ)のようなオリジナルタイトルの新作がしっかりヒットを達成していて、まだまだチャンスはあるんだなと感じました。一番驚いたのは、中国、韓国のパブリッシャーが今まで以上に台頭してきたことですね。
中国企業で言うと、『崩壊3rd』(miHoYo)、『陰陽師』(NetEase)『アズールレーン』(Yostar)、韓国企業ならNetmarbleの『リネージュ2 レボリューション』も垂直的な立ち上がりでした。彼らが市場を席巻できた要因は、ゲーム自体が良質だというのはもちろん、マーケティングへの投資を躊躇しない積極的な姿勢にあると思います。日本のパブリッシャーもグローバルで競争していけるような予算とアジリティが求められるようになったのではないでしょうか。
――:そういった市場動向を受けて、求められるYouTuber施策も変わってきているのでしょうか。
山田:トレンドが無いわけではありませんが、結局は再生数とコンバージョンのどちらも目標を達成したいというのが、クライアントの本音のはずです。その上で、定番の人気YouTuberを起用するのか、知名度はあまり高くないけどトガッた人に依頼するのか、というような判断をするステップになるわけですが、これまでは勘とノリで決まりがちだった部分でもあります。そこでBUZZCASTとしては、適切なポートフォリオ戦略をこれまでのデータを分析して導き出すというサービスで、マーケターの皆さんとYouTuberを支援したいんですね。
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