BRIDGECOM X5の売れ行きは伸び悩み、私ベアは心身共に疲れ、弊社ベアリッジは倒産の危機にまで追い込まれました。
しかし、製品を売るには「代理店を活用する」という一つの鍵を見つけ、その鍵を頼りに売上を上げるべく私は突き進み出しました。
しかし、しかし、その先に待ち構えていたのは...
どこへ一体何をすれば製品が売れるのか、皆目検討がつかず、またお客様・ユーザーにとってメーカーからの直売りすることが最良なのだと私は思い込み、迷走しておりました。
業務用製品は、特殊な機能があり、価格は安くなく、各メーカー様々な種類の製品があり、また製品選択を誤ると現場の作業効率や生産性にもかかわるので、ユーザーはどのメーカーの、どの製品が自分達の現場に適しているのか見極めが重要となり、購入する際は非常に慎重になります。
そこで多くのメーカーやユーザーと取引をする商社の存在が必要となるわけです。
私は、X5を取り扱ってもらうべく色々な商社へメールや電話を毎日しまくりました。しかし、ほとんどの会社に相手にされず、テキトーにあしらわれ続けました。
もちろんそんなことは承知の上。へこたれず毎日続けていると、数社からアポが取れました。
そこで思い至ったのが、「製品ではなく、自分に興味を持ってもらう」ということでした。
また、まずは自分が相手に興味を持たなければ、こちらにも興味を持ってもらえないと気づき、アポを取れた会社について事前によく調べました。
目次
- 製品説明は後回し
- お隣を陣取り、ふむふむ
- お中元・お歳暮は、サブリミナル効果を添えて・・・
- 『軸』は自分ではなく、相手との『間』に置くもの
製品説明は後回し
とある無線機の商社のY社長にアポが取れたときのこと。
「製品にあまり興味ないし15分だけね、それでも良ければ」と事前に言われましたが、その15分のために新幹線に乗り東京へ向かいました。
私は前日にその会社のホームページやY社長のブログを拝見すると、経営理念やY社長の経営者としての思いがぎっしりと書き綴られており、じっくりとすべて目を通しました。
その内容に「シメシメと思い」、私は内容を頭に詰め込みました。(Y社長、もしお読み頂いていたら、どうかお見逃しくださいませ🐻🙏)
私はY社長にお会いしても、製品に関する話は一切せず、自分がその会社について興味を持った部分をY社長に質問しまくりました。
どんな思いで経営理念をつくり、日々どのような思いで経営をし、信念や日々考えていること、どんな気持ちでブログを書いているのか、など。
もちろん、興味を持ったのは本心ですが、前のめりに、ちょびっと演技し、話を聞く姿勢を見せることで、Y社長は新米経営者の私に自身の経営論を熱く語って頂け、15分はとっくに過ぎ1時間半も話をすることができました。
するとY社長は「君さ、いい加減持ってきた製品を出しなよ」と笑いながら言ってくれました。
今度は私がX5について熱めに説明すると、「君は自分の製品をとても楽しそうに話すね」とおっしゃって頂き、なんとその場でX5を10台発注してくださりました。
現在こちらの会社様からは、ほぼ毎日注文をいただいております。Y社長、従業員の皆様、いつもありがとうございます。
お隣を陣取り、ふむふむ
私が所属する経営者団体の広報から届くメールに、『会社の危機から脱した過去』についての講演に目が留まりました。講演される方は、測量機器メーカー、また商社でもある会社のM社長。
この会社を調べると多くのトランシーバーを取り扱っていることを知り、この講演は聴くべきだと思い、講演参加を申し込みました。
講演の同日にサッカーW杯フランス大会「日本 X クロアチア戦」があり、試合時間は講演時間に近く、また講演後の懇親会はまさに試合時間と被っていることに私は気づきました。そして、チャンスだと思いました。
たぶんこの講演の参加者は予定よりも少なく、そして懇親会はさらに少ないだろうと予想し、その予想が的中しました。(M社長も、もしお読み頂いていたら、どうか、どうかお見逃しくださいませ🐻🙏)
講演では一番前の席に座り、懇親会ではM社長の座る席を確認すると隣の席に迷わず、私は大きな体をすべりこませました。
Y社長同様に質問しまくり、M社長はさまざまなお話をしてくださいました。そして、M社長から私への質問が及んだ際に、「実は、弊社は自社でトランシーバーを作っておりまして・・・」と話し出した途端、「な~んだ、君は元々私に自社製品を売り込むのが目的だったな」とM社長にすぐに見抜かれてしまいました💦。
しかし、M社長はニコっと笑うと、「まぁいいよ、同じ団体のメンバーのよしみと、君の仕事に対する貪欲さを買って、仕入担当の者達に製品を紹介してもらう機会は準備してあげるよ。でも、製品を取り扱うか否かの判断は、彼らだからね」と仰って頂き、後日製品を紹介させて頂く機会を頂けました。
そしてこちらの会社様にもB-EAR製品を取り扱って頂くことになり、つい先日にもかなり大口のご注文を頂けるほどのお取引を頂いております。
M社長、また従業員の皆様、本当に感謝をしております。
ただ、今でこそB-EAR製品はさまざまな現場でご採用頂けるようになりましたが、当時数社と代理店契約ができたからといえ、すぐに製品の売上が伸びるわけではありませんでした。
どうすれば製品が売れるのだろうかと考える日々。
必死に製品を紹介してもらおうとアピールしても、代理店の営業マンにとってはB-EAR製品をお客さんに売り込む動機がない。
そう考えたときに、大事なのは「お客さんへの紹介のしやすさ」だと気づきました。
営業マンの方がお客さんにB-EARを紹介しやすくするために、まず熊のキャラクターを考案。そして漫画をつくり、さらにはアニメも制作しました。
その販促物を各代理店に配布したところ、じわりじわりと売れ行きが伸びていきました。
写真:BRIDGECOM X5の魅力をカジュアルに伝える販促漫画
トランシーバーなんて、ただでさえ機能の違いなんてよくわからず、ただ活字が羅列している製品仕様が記載されたカタログを読んでも、お客さんは理解しづらいはずです。だからこそ、ここに時間とお金をかければ、他社と比べての優位性も得られるのではないか?と思いました。
また代理店の営業マンには若い方が多く、まずは彼らにB-EAR製品に興味をもってもらい、製品を手に取ってもらうためにも漫画やアニメは、有効的なアプローチだったのだと思います。
お中元・お歳暮は、サブリミナル効果を添えて・・・
5、6年ほど前から始めたことなのですが、特に取引の多い代理店宛に送るお中元やお歳暮に、少し工夫を凝らしております。
それは、贈りもの一つひとつに『B-EARロゴを貼る』というもの。
事前に、送り先の支店や営業所へ電話を入れ、できるだけ従業員さん全員に行き渡るよう従業員数を確認し、そしてその送る商品一つひとつにB-EARロゴのシールを貼っておきます。
たとえばお中元でアイスクリームを送るのであれば、なるべく暑い日の御昼過ぎに届くよう配達を設定し、取引先へ届けてもらいます。
どこの会社も冷凍庫に入る数は限られており、それほど保管できないので、アイスクリームはどうしてもその日のうちに従業員さん達に配らざるを得ないはず。
すると、一人ひとりの机の上に、B-EARロゴが貼られたアイスがずらりと並びます。これが「ザ・B-EARからのお中元・お歳暮 ‐ サブリミナル効果を添えて - 」でございます。
どうせお金と手間をかけるなら、「あ、またB-EARからだな」「あそこは色々考えるな」「面白いことするな」と印象が残った方がいいですよね。
実際に取引先の方からも、「B-EARのお中元やお歳暮はいつも楽しみ」という言葉をいただきます。
何か行動を起こすのであれば、できるだけ「爪痕を残す」というのが、私ベアのモットーでございます🐻。
写真:ベアーアイスクリーム🍨
『軸』は自分ではなく、相手との『間』に置くもの
「相手に興味を持ってもらうこと」を意識しながら、最初の5、6社は1社1社時間をかけ、代理店契約をさせて頂き、お取引を広げていきました。
が、少しずつ製品が売れ出すと他の商社やレンタル会社から「うちでも取り扱わせてほしい」と問い合わせが来るようになりました。
そして、X5の販売を開始してから2年と半年が経つころに、ようやくB-EARの売上は軌道に乗り始めました。
やはり何事も「0→1」を達成するのは大変です。
私はB-EARを立ち上げ、最初の製品、BRIDGECOM X5を売るために2年半ほど、本当にもがき、あがき、苦みました。
ただ、その熟成期間があったからこそ、物事を客観視できたのではないかと思います。
自分の製品に自信を持って売り込みたくなるけれど、やはりそれは自分本位な考え方。「相手にとってのメリットはなんだろう?」と考えた時に、本当に有効なアイデアが出てくるのだと思います。
物事を考えたり、進めていくうえで置く『軸』は、自分に据えるものではなく、またお客様やお取引様の相手に据えるものでもない、と私は考えます。
相手に『軸』を据えてしまうと、時に相手に振り回されてしまったり、言いなりになってしまうこともあります。
物事を考えたり、進めていくうえで置く『軸』は、自分と相手の『間』に据えるのが一番良いのではないかと、私は考えます。
熟成期間を経て、なんとか乗り越えた弊社ベアリッジですが、実は同じ時期に「骨伝導のペテン師」や「特許技術を持つキツネ目の男」に、どっぷりすっぽり、大きな体はハマってしまい、身動きが取れない状態でございました💦😮💨。
次回、Vo.4:「『技術🔧』という名の『サーモン🐟』をぶら下げられ、翻弄された熊の巻」!!