ハードウェアエンジニアの久保田です。ハードウェア開発の試作開発技術の向上や、試作の素材の選択肢を増やすことを目的に、2年ほど前から木工を習っています。まだまだ腕は上がりませんが、今回は木工の学習の一貫として、Atmoph Window 2 の木製フレームを自作してみました。Atmoph Window 2の変わった楽しみ方として、皆さんに紹介できればと思います。
Atmoph Window 2のアウターフレーム
Atmoph Window 2 の特徴の1つに、アウターフレームの取り換えができる点が挙げられます。インテリアや気分に合わせて、フレームを取り換えて外観を変えることができます。アトモフではプラスチックフレームと木製フレームを販売しています。木製フレームは、ウォールナット、チェスナット、ワーミーメープル、ディズニーの4種類。いずれも日本国内屈指の家具メーカー「カリモク家具」にて製作された、木材が本来持つ温かみを最大限に生かした最高品質の木製フレームです。
表題の風景はカリモク家具の工場のものです。アトモフではカリモク家具の工場の風景を3つリリースしています。
〇カリモク家具の移動式ラック
〇カリモク家具の組み立て場
〇カリモク家具の板材選別
プラスチックフレームと木製フレームの着せ替えだけでなく、種類の違うプラスチックフレーム間、木製フレーム間での着せ替えでも、Atmoph Window 2の印象が大きく変わって楽しむことができます。
左から、チェスナット、ウォールナット、ワーミーメープル、Disney(Disneyモデルは、現在[Bioplastic]を販売中、Woodモデルは、現在フレーム単体のみでの販売となっています。)
人によってはオリジナルのデザインでアウターフレームを作りたい、といった方がいるかもしれません。色や模様だけを変えたい場合は、既製のフレームにペイントやシールなどで装飾することで実現できます。ただ形から変えたい場合は、フレーム自体の製作が必要になります。そんな時に個人でも作りやすいのが、木製フレームです。木はDIYで多く使われている材料で、プラスチックなどの他の材料に比べ、購入や加工がやりやすいです。ホームセンターで素材も工具も全て揃います。今回はオリジナルのデザインでアウターフレームを作りたいという方の参考になるように、実際にオリジナルの木製フレームをDIYで製作した事例を紹介します。図面も公開しますので、オリジナルフレームを作ってみたい方がこのブログを読むことでチャレンジしやすくなれば良いなと思います。
オリジナル木製フレームのデザイン
Atmoph Window 2のアウターフレームは、風景を映すディスプレイの付いたインナーフレームを覆うものです。そのため最低限の機能は、インナーフレームを嵌められることになります。自作のアウターフレームであっても、既製のアウターフレームと内側の寸法が同じであれば、インナーフレームはもちろん嵌ります。つまりオリジナルのアウターフレームをデザインする際は、内側の寸法さえ既製のアウターフレームと揃えれば最低限の機能は満たすことができて、それ以外は自由にデザインできることになります。
これを踏まえて、今回は次のようなコンセプトでオリジナル木製フレームをデザインしてみました。(本当はアカンサス模様のような複雑な彫刻を施して思い切りオリジナリティを出したかったのですが、そんな技術はまだありません…。そこで今回は全体としては既製品のデザインを踏襲しながら、細かなオリジナリティを追加する形にしてみました。)
- 内側の寸法を既製のアウターフレームに合わせる(アウターフレームとして機能させるために必須)
- 既製の木製フレームのデザインをベースに、次のオリジナリティを加える
- 全体的なサイズや厚さを既製品より一回り大きくして、重厚感を出す
- 既製品には無い色にする
- 細かい部分(木の接合方法、各種穴など)も、変えられるところは既製品と変える
このコンセプトを基にCADで作成したデザインが次のものになります。CADは個人用途であれば無償で使用できる Fusion 360 を使用しました。
オリジナリティは具体的に次のものを加えました。
- 木枠全体の縦横のサイズ、奥行きを約20mm広げる
- 色は高級木材マホガニーの赤味を帯びた色にする
- 木の接合は「留つぎ+チギリ」、スピーカーや空気用の穴は「長穴」を採用する(既製品ではそれぞれ「3枚継ぎ」、「複数個並べた丸穴」)
- 前面の角にフィレット(角の部分を丸める加工)を施すことで、既製品よりも丸みを帯びたフォルムにする
マホガニーの赤味が特に目立つデザインですので、今回作成するオリジナル木製フレームの名前は「Atmoph Frame [Wood] (Mahogany)」モデルにしました。
オリジナル木製フレームの製作
ここからは木工DIYになります。デザインで「色は高級木材マホガニーの赤味を帯びた色」にしましたが、マホガニーの木材は高くて買えないので、材は栗(チェスナット)にして、マホガニー色の塗料を塗ることにしました。ということでフレーム名も「Atmoph Frame [Wood] (なんちゃってMahogany)」モデルに早速変更です^^;。
今回はフレームの木目をきれいに繋げたかったので、全パーツを一枚の板から切り出せるように、素材は無垢一枚板にしました。そのため手順①「フレームの4辺のパーツを切り出す」が必要になり、木工教室の大型工具を使用して作業しました。ホームセンターで購入できる集成材を使う場合は、ホームセンターでパーツの形に切ってもらうことで、手順②から開始することもできます。この場合は個人用の小型工具でも作業が可能です。
手順① フレームの4辺のパーツを切り出す
無垢一枚板からフレームを構成する4辺のパーツを切り出しました。ジグソー、バンドソーで大まかな形に切断し、手押しカンナ盤と自動カンナ盤で表面を平らにしました。
手順② パーツを整形する
4辺の各パーツをデザインに合わせて整形しました。上下辺のパーツはボール盤やルーターでスピーカー穴や空気穴を作りました。4辺とも留つぎ用に端を45度でカットしたり、前から見た際に奥行きを感じられるように前面部を斜めにカットしたりしますが、こちらはテーブルソーや手ノコ、かんなで形にしました。
手順③ フレームの組み立てと接着
4辺のパーツを留つぎで組み合わせてフレームにしました。各パーツは木工用接着剤で接着しました。4隅にはチギリを入れて、接合強度を高めました。
手順④ 塗装
やすりで表面を綺麗にした上で、マホガニーカラーのオイルフィニッシュ用塗料で塗装しました。
完成!
デザイン通りの形にできました。インナーフレームはしっかり嵌りました。既製のアウターフレームより一回り大きいことや、既製品には無い赤味を帯びた色であることから、重厚感が出たかなと思います。一枚板から作りましたので、フレームの各辺の木目が大きく、また切れずに繋がっているところは良い感じになりました。
オリジナル木製フレームをDIYしてみての感想
Atmoph Window 2のオリジナル木製フレーム「Atmoph Frame [Wood] (なんちゃってMahogany)」モデルをDIYで作ってみました。作ってみての感想は、4辺の4パーツのみで作れますので、全体的に作業はやりやすかったです。ただ各パーツには細かい工作が必要になり(インナーフレームが入る部分の段差や、空気穴やスピーカー穴、インナーフレームを嵌める溝などを作るための工作)、そこは少し手間が掛かりました。細かい工作は手作業ですと精度がなかなか安定しません。高精度で高品質のカリモク製アウターフレームの価値を再認識しました。
それでも自分で作ったフレームには愛着が湧きました。フレームを一つ作ってみると、次はこんな風にしたいというアイデアも浮かんできて、楽しくなります。彫刻も含め、次はより凝ったデザインの木製フレームのDIYにトライしたいです。
今回は無垢一枚板から作業しましたので作業①で大型の工具を使いましたが、4辺のサイズにカットした木材をホームセンターで購入してくれば、作業②から着手できます。この場合は個人用の小型工具でも作業が可能ですので、チャレンジはしやすいかなと思います。
ブログの最後に、インナーフレームが嵌る内側の部分の図面を添付します。「オリジナル木製フレームのデザイン」の章で説明した通り、インナーフレームが嵌る内側の寸法さえ既製フレームの寸法に合わせてもらえればアウターフレームとしての機能は実現でき、それ以外のデザインは自由に決めることができます。オリジナルデザインのアウターフレームを作りたいという気持ちがでてきましたら、このブログや添付の図面を参考に、楽しみながらチャレンジしてみてもらえるとうれしいです!
図面
アウターフレーム図面(インナーフレームが嵌る内側の部分)
AtmophWindow2OriginalFrame_Whole_Drawingダウンロード
上辺パーツ
AtmophWindow2OriginalFrame_Top_Drawing-1ダウンロード
下辺パーツ
AtmophWindow2OriginalFrame_Bottom_Drawing-2ダウンロード
※今回作成したオリジナル木製フレームの3D CADデータ(STPデータ)も提供可能です。ご希望の方はお問い合わせください。
Special Thanks
木工技術は次の木工教室で教えていただいています。ありがとうございます。
木工房 YZ:
http://atelier-yz.e-hozen.com/
DIY WORK’S KYOTO:
https://www.kyoto-sign.com/diy/