ハードウェアエンジニアの久保田です。
僕は長野県出身ですが、友人が地元で米農家をやっています。長野県南部、西の中央アルプスと東の南アルプスの山々に囲まれた肥沃な土壌で、アルプスの雪解け水を使ってお米を育てています。
お米の座光寺農園:https://zakojifarm.jp/
ホームページに書かれていますが、農園の目標として、毎年美味しいお米を作ることはもちろんですが、「里山や田園、棚田による美しい景観や文化を維持していく」が掲げられています。
里山は「人里近くにあって,その土地に住んでいる人のくらしと密接に結びついている山・山林」を表す言葉です。原生的な自然を開拓して、農業などを通じて人と自然の関わりの中で作り上げられてきた自然環境であり、その土地特有の景観を持っていたり、多様な生物の生息環境となったり、伝統文化の基盤となっていたり、食料、木材、水といった自然資源の供給元になるなど、多様な価値を有しています。里山を維持していくには人と自然との関わり合いが重要で、友人の農園でも、農業による人と自然の相互作用を通して、里山の景観、生物、文化を残していこうと活動しています。
里山は日本の国土の4割程度を占めます。多くは山間部に存在しますが、近年は都市化や人口減少などに伴い、里山で暮らす人が減少し、環境の劣化が指摘されています。そのため国や地方公共団体、企業や民間コミュニティなどで、里山保全のための様々な活動が実施されています。
昨年のG7サミットで2030年までに国土の30%以上を自然環境エリアとして保全するという「30by30(サーティ・バイ・サーティ)」の目標が約束されました。日本の環境省ではこの達成のために、国立公園等の保護地以外にも、地域、企業、団体によって生物多様性の保全が図られている土地「OECM(Other Effective area-based Conservation Measures)」を定め、その保全も促進していこうとしています。里山もこれに含まれています。
景色を映す窓である Atmoph Window にも、里山の景色がいくつもあります。例えばこのストーリーのカバー写真に選んだ「夕暮れの丸山千枚田」で映されています棚田は、農林水産省が選定した日本棚田百選にも選ばれている、日本を代表する里山の一つです。
Atmoph Windowの景色として、多くの里山の景観を映像として記録し、残していけるとうれしいです。
里山の保全活動の中には、「里山を3Dモデルとして記録する」というものもあります。
モデル化することで、モデルによるシミュレーションを基に里山の保全施策を検討したり、里山の変遷やその影響を研究するような未来の研究に活用できるデジタルデータとして記録しておけるようになります。
このようなモデルを使った研究として、例えば次のようなものがあります。
H25 農業農村工学会大会講演会講演要旨集 名勝棚田の景観配慮型整備のための3次元モデル作成と課題
内川義行 文化的景観としての棚田保全と整備技術に関する研究(2014)博士論文.岐阜大学.岐阜
Atmoph Windowの風景にはCGを使った風景も多数存在します。里山の3Dモデルが作成、保存されることにより、CGを使ってモデルから当時の里山の風景を再現することも可能になります。今回は試しに、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスで公開されています棚田の3Dモデルを使って、里山のオリジナル風景の映像を作成してみました。
利用した3Dモデル:”北五百川の棚田”
licensed under Creative Commons Attribution (http://creativecommons.org/licenses/by/4.0/).
作成した里山の CG 風景:
里山の風景を再現して、オリジナリティも加えることができました。Atmoph Windowのアップロード機能を使うと、自作の風景をAtmoph Window上で楽しむことができます。自分が住んでいた里山の風景映像を作成すれば、それを観ながら思い出に浸る時間を作ることができそうです。里山の景観を維持したり、過去の景色を振り返ったりする上でも、里山の3Dモデルは価値がありそうですね。
「世界中の美しい景色を映し出すスマートでデジタルな窓」であるAtmoph Windowにはこれからもたくさんの景色を加えていきますが、その活動を通して、世界中の里山の景観も残せていけたらと思います。