約200名の方にご参加いただいた本イベントでは、マッキンゼーや野村総研などでコンサルタント、リクルート・楽天などでソリューション営業を担ってきたカスタマーサクセスのメンバーが登壇。
前半では、「atama plusのカスタマーサクセスとは?」「前職との違い」といったテーマでパネルディスカッションを行いました。後半では、視聴者からの質問を受け、atama plusの働き方やプロダクト・組織・事業の課題について、赤裸々にお答えしました。
※2021年8月4日に行われたオンラインイベントの内容を編集し、再構成した記事です。
モデレーター:村田 洋佑(営業企画)神奈川県出身。新卒でMcKinsey & Companyに入社し、新規事業立案やオペレーション改善に従事。教育改革に真正面から取り組むatama plusのアプローチに強く惹かれ、2018年7月にatama plusへ入社。大手集団塾、個別指導塾向けのカスタマーサクセスなどを経験。現在はビジネスチーム全体の事業企画・営業企画を担当。
パネラー:松本 彩子(カスタマーサクセス)東京都出身。新卒でリクルートマネジメントソリューションズに入社し、営業、研修プログラムの開発、中国事業責任者などに従事。もともと関心のあった教育の領域で、プロダクトを磨いて本気で世の中を変えようとしている姿勢に惹かれ、2019年1月にatama plusへ入社。現在は個人塾・個別指導塾に対する事業開発・カスタマーサクセスを担当。
パネラー:佐藤 圭祐(カスタマーサクセス)広島県出身。新卒で野村総合研究所に入社し、様々な分野のイノベーション創出・新規事業開発支援を担当。学生時代から興味のあった教育事業にフルコミットしたいと思い始めた矢先にatama plusと出会い、全員で生徒や塾に向き合う姿勢に魅力を感じ、2020年5月にatama plusへ入社。現在は大手集団塾に対するソリューション営業・カスタマーサクセスを担当。
パネラー:烏野 憲一郎(カスタマーサクセス)大阪府出身。新卒で楽天に入社し、その後リクルートへ転職。両社では複数の新規事業の立ち上げ・推進、営業、マーケティング、法務、リスク管理、経営企画、組織運営など幅広い職務を経験。30代後半になり自分が心からやりたい仕事を考えた結果、教育を通じて社会に貢献したいと考え、2020年3月にatama plusへ入社。現在は大手集団塾に対する事業開発・カスタマーサクセスを担当。
生徒、先生、塾の経営者。3者への価値づくりに向き合うカスタマーサクセス
村田:そもそも「カスタマーサクセス」に馴染みのない方も多いかと思うので、仕事内容について教えてください。
烏野:atama plusは、全国の塾・予備校さん(以下、総称して塾と表記)に、SaaSモデルでAI教材「atama+」を提供し、塾さんを通じて、そこに通う生徒さんにatama+を使っていただいています。いわゆる「B2B2C」と呼ばれるビジネスモデルです。その際、塾さんへの導入を支援するのが、カスタマーサクセスです。
塾さんのバリューチェーンから考えると、atama+はいわば「ど真ん中のサービス」ともいえます。塾は「勉強を教えること」や「生徒の面倒をみること」を価値とするビジネス。そのコアの部分でatama+を利用いただいているからです。
カスタマーサクセスとしては、「ど真ん中の商売道具をアップグレードして、企業価値そのものを高めること」にこだわっています。
atama+の価値は、生徒、先生、塾の経営者の3つの視点で捉えることができます。生徒にとっての価値は、もちろん「勉強が楽しくなる」「成績が上がる」こと。また、atama+の先生向けアプリでは生徒の学習状況がわかるので、先生には「一人ひとりに寄り添った指導ができる」「保護者とコミュニケーションが取りやすくなる」といった価値を届けられる。そうして、よい学習体験ができると、学力があがり、よい評判が広がって塾に生徒が集まる。結果として、経営者にとって「塾の収益が上がる」という価値にも繋がります。
生徒、先生、経営者。それぞれに価値提供するために、経営から現場まで幅広く支援しています。
そのために、まずは徹底的に「塾を知る」ことからはじめます。社員さんや生徒さんに話をうかがうことに加えて、塾の理念や歴史を研究したり、ビジネス環境を調べたり。それらを踏まえて、塾の経営者の視点にたって、戦略や課題について僕らなりの仮説を立て、できるだけ経営者の痛みに寄り添うことを目指しています。
その次に「設計」ですね。atama+をどのように導入すると塾の課題解決に繋がるかを話し合います。それが決まったら、最適な商品設計。いくらで提供するか、その時の塾の収支はどうなるか、を考え、授業運営やカリキュラムを決めます。さらに、新しく立ち上げた授業を多くの生徒に届けるためにどんな販促をするかまで一緒に設計します。
最後は「実行」。僕らは「現場」に深く入り込むのを大事にしていて。atama+の研修だけではなくて、塾の教室に伺い、先生たちと一緒に生徒を指導しながら「ここはもっとこう指導するのはどうか」といった改善活動も徹底します。
まとめると、カスタマーサクセスはatama+を使うことで塾の成功につながるように、塾さんを徹底的に理解して一緒に事業をつくっていくことに取り組んでいます。
村田:かなり多岐にわたる支援をしているようですね。烏野さんは、この前会った塾の経営者さんとのアポでも「どうしてここまでやってくれるの?」と言われたとか。
烏野:そうですね。「とことん経営者の視点に立って考え抜ける仕事っていうのはやりがいあるなあ」と思って日々格闘しています。
atama plusのカスタマーサクセスならではの難しさ
村田:みなさんは前職ではコンサルタントやソリューション営業という職種を経験されているわけですが、前職との共通点・相違点や難しさをどう捉えていますか。
松本:大まかな仕事は同じだと思います。前職では、お客さんの人材関係の課題を把握して、解決策を考えて改善していたので。決定的に違うのは、atama+自体が、塾が生徒や保護者に提供するサービスの一部になる点です。
前職で提供していたのは人材系のサービスだったので、あくまでもお客さんの本業を支える人の育成、組織の課題解決という販管費サイドの投資になるビジネスでした。対して、atama+は原価サイドの投資になるビジネス。atama+導入の成否が、生徒や保護者さんが塾に通う動機である「学力を上げる」「勉強の習慣を身につける」といった価値を提供できるか、さらには、その塾が市場で勝てるかに直結する。だからこそ、ここまで支援が多岐にわたるのかなと思ってますね。
村田:「ここまでやるの?!」って思いませんでしたか?
松本:今は思ってます(笑)。ただ私たちがここまで幅広く、深く支援するようになったのは、正直この一年ぐらいの話。私が入社した2年半前は、もっと範囲が狭かったと思います。当時も、atama+をとても評価いただいていましたが、それでも、生徒の学力が思うように伸びないといった課題もありました。
そこから全員でひたすら現場に行って、課題の発見・解決を繰り返すうちに、支援の幅が広がった。そんな感覚を持ってますね。
烏野:atama+に限らず、新しいツールだけ入れてもなかなか現場の業務の実態は変わらず、使いこなせないケースはよくありますよね。僕らはフル活用して成果に繋げてもらうために、ひたすら掘り下げたらこうなったみたいな。
松本:そうそう、本当にそう。
佐藤:徹底的にやり切りますもんね。僕は前職がコンサルだったので、経営課題を分析して提案するという仕事をやっていましたが、atama plusでも動き方はすごく共通していると感じます。
違うのは、現場に対する「解像度」が圧倒的に高いことです。 僕は、経営者の方と毎週話しますが、同じように現場の教室長や、担当の先生方も含めてたくさんの方と深く関わっています。なんなら、塾の教室に通い過ぎて、生徒さんと顔見知りになっているメンバーもいたり(笑)。僕自身も顔が浮かぶ生徒が何人もいます。そのぐらいお客さんやユーザーを深く知ってるのは本当すごいなって。
Q&A:カスタマーサクセスの体制・働き方は?
村田:ここからは、視聴者からの質問も交えていきます。まずは「これだけ多岐にわたるカスタマーサクセスの仕事、どんな体制でやってるんですか。」とのこと。いかがでしょうか。
佐藤:全体で40人程度で、各塾さんごとに3〜4人くらいでチームを組んでやっています。いいなと思うのは、各チームがお互いにノウハウを共有しまくることじゃないですかね。深く現場に入り込んで課題を拾って、ほぼリアルタイムに情報共有しながら、atama+を磨いていく感じ。すごくチーム戦をやってるなあと。
松本:強みが全く違う人が集まって、お互いの持ち味を活かしながらチームとして成果出しているのもいいですよね。めちゃくちゃデータ分析に強い人もいれば、お客さんと仲良くなって教室を自由に出入りできるぐらいの信頼関係を築くのが得意な人もいて。
烏野:あとは、「大変そうな仕事」という印象を持たれる方もいるかと思うんですけど、atama plusって「Love fun. 楽しくなくっちゃ。」という価値観をすごく大事にしています。結局一人ひとりが楽しくないと、長続きしないなと。
その意味で、情報だけでなく、毎日のお互いの気分のような人間的な部分も共有できる環境を作れているのが会社としての強さかなと思います。チームで楽しく働くバランスは、これからも大事にしたいですね。
Q&A:ワークライフバランスは?
村田:次の質問です。「学習塾がお客さんのビジネスとのことですが、夕〜夜帯も仕事が入りますか」「ワークライフバランスはどうですか」と。2人のお子さんがいらっしゃる烏野さん、どうでしょう。
烏野:今のところは、みんなの支えもあってうまく両立できているかなと。atama plusはフルフレックス制なので、チーム内で相談して柔軟に働けます。例えば、夕方以降になることの多い現場訪問は、その時間帯も動きやすいメンバーが対応することが多い。夕方以降が動きづらいメンバーも現場を訪問したい時には、家族と調整したり、時には他チームの力も借りたりして、流動的に働けるようにしています。
佐藤:子育て中のお母さんやお父さんも多いですよね。スタートアップって、深夜までガリガリ働いて、徹夜するイメージを持ってたんです。でも入ってみたら、全然そんなことなかったのは結構驚きでした。
僕も家で働いている時に子供が泣いたりすると、手を止めることもあります。でも、自分の裁量の中で調整できるし、それを快く受け入れてくれるチームなので、とっても働きやすいですね。
烏野:たしかに誰かが苦労していても、みんなで解決しようとしてくれる。いい意味でお節介な人が多いので、その安心感はありますね。
Q&A:プロダクトで直面している課題はありますか?
村田:導入塾教室も4年で2500教室を超えたり「もうatama+は完成されているのでは」と思われてしまうことも多いのですが、プロダクトの課題といった観点ではみなさんどう考えていますか。
松本:私たちは「プロダクトは永遠のβ版」と言っていて、課題はまだまだ山積みです。でも、コアな価値がまだ見えていない状態とは違う。「個別最適化されたカリキュラムを生徒に届ける」という点では圧倒的だと自負しているし、導入した塾や生徒にも評価いただけていると思うんです。
それでも、まだまだカバー領域が不足している科目があったり、生徒によっては学力をあげるまでに時間がかかっていたり。解決すべき課題はたくさんあって、全員でそれに向き合ってるって感じかな。どうですか、勝手な私見なのですが。
佐藤:そう思います。作りたい機能や提供したい価値は、まだまだたくさんある。いまのatama+でも喜んでもらえているけど、もっとやれることがあるなと。
烏野:実際に塾の教室に行くと、そう思いますよね。「atama+を正しく使っていただけていないな」、「この生徒さんには、まだ足りない部分もあるなあ」とか。現場でそういうシーンに直面して、すごく悔しい思いをすることも多い。教科ごとに新たな課題が生じたり、集団塾と個別指導塾で必要な機能も全然違ったりします。伸びしろがたくさんあるからこそ、僕は奮い立たされることのほうが多いんですけどね。
村田:価値のあるプロダクトがあるという自信はあるけれど、もっともっと磨きたい、ということですね。
Q&A:組織・事業面で抱えている課題は?
村田:続いて、チーム・組織や事業の課題はどうでしょうか。今のような関わり方をするなら、事業の急拡大にあわせてカスタマーサクセスに取り組む仲間も、もっと必要になるのでは?
松本:それにつきますね。よりよい教育を広げるために、もっと多くの塾さんを通じて生徒に届けたいと思った時に、冒頭でお話ししたやり方だけでは限界が来ると思うんです。
烏野:さらに大きくするなら、これまでのやり方を見直す必要がある。導入先を広げる活動と、各塾さんに深く入っていく活動の両立は、新しい課題として生まれていますね。
佐藤:組織の観点でいうと、今はこの規模でも比較的うまくやっていると思いますが、ミッション実現に向けて、さらに急拡大しないと辿り着けない時期に来ています。その急拡大に伴って何らかの「成長痛」が起きるかもしれないという危機感は、常に持っていたいですね。いまは全社員で160人ぐらいの組織。それが倍の人数になっても、同じカルチャーで働けているか、組織・チームはどうなるかといった場面を想像しても、しきれない感じです。
「手つかずの課題」が山積みの教育業界。チームを超えてプロダクトを磨き続け
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村田:ここまでたくさん語り尽くしてきた気もしますが、改めてみなさんが思うカスタマーサクセスのやりがいや魅力を語ってもらえたらと思います。
佐藤:教育業界ってまだ手がついてない課題が本当に多い。現場に行く度に感じます。そんな中で、ある塾さんから頂いた言葉がすごく嬉しかったんです。「これだけ様々なICT・デジタルツールが普及してるけど、実際の現場では、まだまだギャップが大きい。そこを埋める仕事がatama plusのカスタマーサクセスの仕事ですよね」と。
直接的にプロダクトを開発しているわけじゃないですけど、僕らがプロダクトと現場にある大きなギャップを高速で埋めることで、現場が変わる。そんな実感を持てるところに、やりがいを感じます。
松本:私は、これまでと少し違う形態の塾さんに向けた戦略立案もはじめていて、それが楽しいですね。基本的なプロダクトは同じでも、セールスやカスタマーサクセスのやり方は全然変わってくるので、ほとんど新規事業。0から学び直して、戦略を作り上げていくのにすごくワクワクしています。
新たな機能を開発して解決する場面も増えてくるので、そのためにプロダクトチームと一緒に働けるのもめちゃくちゃ面白いですね。日々たくさんの現場を見に行って、開発の優先順位の議論まで一緒にやっています。
烏野:みなさんと共通点が多いんですが、僕は日々向き合う課題を解決することが、「子どもたちの笑顔を増やす」ことに繋がっているのが、すごいモチベーションになるかなあ。
あとは、僕もプロダクトチームと密に連携して、開発に直接関われるのは、貴重な経験だなと。例えば、英語を学ぶ上で、英単語の語彙を増やす必要があるという課題があった時には、プロダクトチームとプロトタイプを作って、一部の塾さんで試してもらったんです。そうすると学習の習慣化や先生の関わり方など運用上の課題もたくさん見えてきて。それらをもとにまた議論して、改善を続けています。自分では「プロダクトを一緒に作っている」と思えるくらいの感覚です。