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イノベーション組織研究15:IKEA SPACE10

IKEAのイノベーションラボ「SPACE10」

今回は、IKEAのイノベーション組織「SPACE10」について紹介します。

IKEAといえば、スウェーデン発の世界最大家具チェーンとして世界中にブランドを拡大させていますが、昨年家具メーカーであるにも関わらず、昆虫や藻を原料としたファストフードを開発したニュースが話題になりました。 そのアイデアを生み出し、開発した組織が「SPACE10」です。

SPACE10は「次世代の持続可能な生活を探求する」ことを目的に2015年にデンマークの首都コペンハーゲンに開設されたIKEAのイノベーションラボです。開設当初から食や住環境といった領域でのサステイナブルなサービス開発をテーマに掲げ、数々の先鋭的なプロジェクトに取り組んでいます。

SPACE10のミッションはあくまで「マクロトレンドを踏まえて、未来のためのソリューションを生み出す」ことであり、プロジェクトの短期的な収益化に関する基準は一切定められていないようです。

オフィスは、地上2階建てと、地下研究施設からなります。地上部の1階はイベントや展示会向けのオープンスペース、2階は通常のオフィススペースとなっています。また、地下は工具やレーザーカッターが自由に使用できる「Makery」や人工光による植物の栽培が可能な「The Farm」といった研究用スペースとして活用されています。

IKEA本体から独立した運営体制

SPACE10の特徴の一つに、IKEA本体から独立した運営を目指している点があります。運営はInter IKEA Systems B.VというIKEAの子会社が行なっており、SPACE10の社員はこの子会社の社員のみで構成されています。また、立地面でも、あえてIKEAがあるスウェーデンと離れたコペンハーゲンに拠点を構えることで独立性を強めています。

世界中から人が集まるオープンな環境

SPACE10は外部とのコラボレーションを目指したオープンな組織であり、世界中からクリエイターやエンジニア、学生など様々なバックグラウンドを持つ人が集まります。

オフィス1階にはプロジェクトから生まれたプロトタイプなどが外部者向けに展示されており、SPACE10のメンバーは来客者の反応をプロダクト改善に活用しています。イベントや展示会も日常的に開催されており、コペンハーゲンのクリエイティブコミュニティの中心的な存在となっています。

また、SPACE10ではプロジェクトごとに外部から専門家を招き入れ、積極的なコラボレーションを行っています。創業初期から“Don’t be a website — become a part of the web(私たちはウェブサイトではない。見ているだけではなく参加してほしい)”と発信しており、オープンなコミュニティからイノベーションを創出することを目指しています。

プロジェクト事例

Space on Wheels

ブランド戦略コンサルティングファーム「f°am studio」 のコラボレーションプロジェクトで、自動運転で移動するコンセプト展示スペースを開発中。IKEAの展示販売のみならず、移動カフェや八百屋、健康管理用の施設などとして利用できる構想を掲げる。

The Fast Food of the Future

本記事の冒頭で紹介した、昆虫や藻類を使用したハンバーガーやミートボールの開発プロジェクト。2018年にSPACE10のMediumアカウントにてプロジェクトを公開した。現在はまだ研究段階であり、IKEAのレストランなどには並んでいない模様。

The Farm

地下実験施設「The Farm」にて水耕栽培に関する実験を行うプロジェクト。通常の栽培方法と比較して消費する水を90%削減しながら3倍早く育つ野菜を栽培している。

なお、IKEAの食品部門トップがSPACE10のイベントを通してTheFarmに興味を持ち、世界最大の屋内農業を行うアメリカのスタートアップ「AeroFarms」に紹介。2017年10月にIKEAからAeroFarmsへの出資につながった。

イノベーション組織マッピング

IKEA本体の社員が一人も在籍せずに独立した運営をしている点や、外部から様々な人材を集めて開発している点から、非常にオープンな組織であると言えるでしょう。また、家具を中心としたライフスタイルをIKEA本体の既存ドメインと定義すると、本組織では家具に縛られずにライフスタイル全般で研究開発を行なっており、既存ドメインとは遠いと言えます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回はIKEAのイノベーション組織「SPACE10」について紹介しました。

「SPACE10」は、IKEAとは独立したオープンな組織であることに加え、短期的なビジネス化を目的としないプロジェクトを数多く走らせている点が特徴的でした。コストセンター的な意味合いが強いSPACE10ですが、世界から注目を集めるプロジェクトを生み出していたり、地元クリエイティブコミュニティの象徴的存在となっているなど、ブランド戦略上IKEA本体にも貢献していると言えそうです。


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