アーキタイプ中嶋です。
(冒頭の写真は、Wantedlyの仲さんディレクションによるものです汗)
インキュベーション事業をかれこれ7年以上手がけて多くの起業家と出会ってきた経験から、いつも考えてる事のいくつかをちょいと書いてみます。
過去から現在に至って当社が支援したくなるスタートアップはいずれも、
・「既に顕在化している、または社会シフトから顕在化する可能性のある特定の課題」を
・なるほど!と思わせる「アプローチ」を
・卓越した、または独自の「技術力」で解決する
所がほとんどです。
海外事例だと、FlightCarの様な、空港駐車場に留める自動車をレンタカーとして利用させてもらう事で、利用者には低価格でレンタルし、オーナーには駐車代を払って貰うどころかレンタル収入を提供し、事業社もレンタカーの在庫を持たずにすむ、といったアイデアいいですね。
他にもイギリスのTransferWiseが手がける、異なる二人の異なる二国間の海外送金ニーズ(自国に送金して決済しないといけない)を、お互いの送金と入金の国が逆転しているなら、それぞれの国毎に支払いを肩代わりして処理することで預金から海外送金せずに済む、というクラウドソーシングな海外送金事業で手数料を激安にしたモデルも最高にグッときます。
もちろんWantedlyの様に「ソーシャルグラフを活用した知り合い採用的アプローチ」も一目惚れ状態でグッときたのを覚えてます。
ところで、いつも悩むのは二点。
大抵のスタートアップのアイデアが
1:課題発見力が浅い。
2:なるほど!と思わせる「アプローチ」が一言で整理できない。
という事です。
裏返せば、この2点で納得できてチーム構成(本項はまた改めて)がよければ、ほとんど支援しちゃうと思います。
1の課題発見力は、
1-a:創業者が強いインサイトを持つ領域。
1-b:創業者自身が感じた強い課題意識。
1-c:創業者の身近な人の課題意識を解決したいという誠実性。
みたいな所がキードライバーになりそうです。
1-aは家業とか勤務先企業の事業領域とか学生時代からのバイト先での経験とか研究テーマとか。
1-bは開発者として使い勝手が悪いプロセスとか、就活・恋愛・結婚・転職・引越などのライフイベントでの出来事とか、営業上の悩みとか管理職としての問題意識とか。
1-cは親が悩んでた領域とか、恋人のトラブルとか。
いずれも多分「自分事」化してることが強い発見力を生み出すのだと考えてます。
なので起業家とのインタビューでは「何故、貴方自身がこの事業を行いたいのか?」という質問をよくしてます。そこでの「自分事」感が強い人ほど深い課題発見力を持ち、僕を納得感へ導きます。もちろん、まだまだ他にもドライバーあると思ってますが、これはインキュベータとしての永遠の宿題です。
もう一つの「なるほど!アプローチ」をどう生み出すかという事も常に考えてるのですが、
「“クリエイティビティの源泉”を持つ為の行動を日々行っているか?」が鍵になりそうという事を最近気がつきました。
言い換えるとクリエイティビティの源泉をもつ努力をする人こそがクリエイティブであり、そういう人が得てしてグッとくる「なるほど!アプローチ」を見いだすのではないかと。
以前は、色々な体験や人との出会いや森羅万象な書籍乱読などが源泉になると思って、自分自身そういうライフスタイルを心がけていました。もちろんそれも源泉になるとは思うのですが、ここ数年で自分が最もクリエイティブだと思う二つの領域を注意深く観察すると、必ずしもそれだけでないなと思い始めてしまい…
しかも彼等のアプローチの方が結果として高いクリエイティビティを構築してると思わざるを得ないのです。
それは、
スタートアップから随分と外れますが、
江戸前寿司とFCバルセロナ(通称バルサ)。
僕のライフホビーとも言える二つなのですが両者には極めて近い共通項を感じています。
それは「伝統に基づいた手法を・限られたリソースで・毎回同じアプローチで対応する」という事。
寿司ってヤツは、他の料理とは異なり、
・食材は米と魚介類のみというシンプルさで(あ、きゅうりと干瓢と卵もあるか)
・ソースは煮きり醤油と煮詰め(昆布締めとか漬けとかあるけどね)
・成型方法は握るか巻くか。(小鉢に米よそってイクラ乗っけて出す所もたまにあるけど)
FCバルセロナはサッカーマニアでないと分からないかもですが、明らかに他チームと異なる点が、
・守りきって1-0で勝つより、攻めきって4-5で負ける方がいい、という潔いポリシーで、
・カンテラと呼ばれる下部組織時代から同じ戦略・練習を繰り返してきたメンバーでチーム構成をし、
・試合で相手が色々な戦略やフォーメーションで攻めてこようがポゼッション志向(パス廻し志向)。
と不変なスタイルが妙に似てるなーと無理矢理こじつけてみてます。
これだけ多様化した外食産業の世の中で、来る日も来る日も魚介類を仕入れ、親方から教わった方法で仕込み、客の前で握り続ける寿司職人。
かたや巨額の移籍金で国内外からスタープレーヤーを獲得し、チームを組成するビッグチームがひしめく中、ほとんどが下部組織出身で構成されたチームメンバーで、相手ペナルティエリア内でもショートパスを繰り返し、相手ゴールにパスするようにゴールを決めるバルサ。
どちらも僕だけでなく世界中の人を圧倒的に引きつける料理・サッカーチームになっている背景として、両者がそれぞれもたらす極上のクリエイティビティがあると考えています。
そして、彼等を見ていると自分が好きで信じた仕事をシンプルに日々同じ事の繰り返しをすることがクリエイティビティの源泉なのではと思わざるを得ません。
毎日の仕込みや練習での繰り返しから小さい気づきが生まれ、それが少しづつ重なり合う事で、
・ネタの重さに対して適切なシャリの分量を無造作に掴むことができ、箸をつかうか手で食べるかで握りの強度を変える職人や
・相手が自陣にこもれば徹底的にパス廻しで挽き釣りだし、ガチで攻めてきたらショートカウンターでのパスからのゴールを目指すバルサの選手が、
もたらすコツコツとしたほんの小さな修正力が画竜点睛的なクリエイティビティの源泉となり、大きな感動を引き起こすのかなと考えてみました。
彼等のコツコツと日々の繰り返し的な行動を「コツコツアプローチ」と名付けてみます。そしてこのアプローチはスタートアップにも参考になるかも知れないなというのが起業成功の為のひとつの仮説です。
起業を志したり、今の会社で新規事業を成功させたい、という人もあれこれ情報収集やイベント参加で情報収集をするだけでなく、毎日のコツコツアプローチをすることで「なるほど!」というアイデアが生み出せるかも知れません。
例えば、
・現在担当している領域でもっとを成果を出すにはどうしたらいいか日々考えてみる
・自分の興味範囲の海外のスタートアップを日々調べて何がイケテルか自問してみる
・毎日ひたすら規則的な行動習慣を取ってみる
・心に残ったビジネス書を何十回も繰り返し読んでみる
・短いサイクルで関心領域についてのブログを書いてみる
・スゴイ!と思ったサービスをしつこく一日何回も使いこなし続ける
・気に入ったお店に通い続けてみる
という行為の中で、きっと小さい気づきが生まれると思います。
その積み重ねが、誰も気がつかなかったクリエイティブなアイデアになるに違いありません。
そして、その積み重ねの大前提として日々「ココロオドル」仕事に身を置いてないとそんなコツコツアプローチできないのは言うまでもないですよね。
自分が心から楽しいと思える仕事に従事し、そこでの毎日の本気な取り組みが、また新しい「!」が生まれてくると僕は信じています。
アーキタイプ株式会社
アーキタイプは、企業における0→1の事業開発を支援する社内スタートアッププログラムの提供、企業のアセットを活用した事業開発支援、事業のグロース支援などのサービスを提供しています。 また、事業創出プロセスを通じて、次世代を担う人材育成や、継続的に新事業を生み出す組織・制度・プロセス構築も支援しています。 主な支援サービス ◆コーポレートスタートアッププログラム 企業の個々の課題にカスタマイズした テイラーメイドな企業内新規事業創出プログラム ◆シーズドリブン事業開発 企業内の知財や優れた技術を 高付加価値のサービスにリデザインするコンサルティングサービス ◆ハンズオン型グロース支援 データドリブンな意思決定によるサービス改善で 事業を成長させるグロース支援サービス 掲載記事 ・アーキタイプ、大企業の新規事業を一気通貫で支援:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46341370Q9A620C1XY0000/ ・事業開発ステップごとにみる課題と対策法──大企業の新規事業の成功を妨げる要因を探る:Biz/Zine https://bizzine.jp/article/detail/3848