弊社では、ウェブサイト制作から始まったソリューション提供を基盤に、デジタルコミュニケーションにおけるクリエイティブエージェンシーへと進化をしながら、最近ではサービスデザインという領域へと主戦場を遷移させつつ、日々挑戦を続けています。
今回は、サービスデザイン領域のなかでもブランディングデザインの一端を担うロゴデザイン開発について、デザインプロセスと各フェーズのポイントを書いていきたいと思います。
今回ご依頼いただいた株式会社ゴーガ様は、位置情報を主軸とした地図ソリューション・プロダクトを展開されている企業さまです。弊社とお客さまがどのように関わり合いながらデザイン制作を進めたのか、プロジェクトステップに沿ってまとめてみました。
デザインに携わる方々の参考になれば幸いです。
VISION – プロジェクトビジョンの共有 –
はじめに、ゴーガ様自身の「現在地」を理解・把握するために、会社の沿革から当時の出来事とそれらにまつわる心情、加えてこれから到来する未来社会を見据えたうえでの展望や可能性まで、幅広い視点でのヒアリングをオンラインインタビューで実施しました。弊社ではデザインプロセスのファーストステップとして、”共通視点”を形成することをとても大切にしています。このフェーズで与件の再整理を行うことで、そもそも何を成すべきプロジェクトなのか?という定義をすることが、クライアントの「成果」を生み出すために最も重要なことだと考えています。
コミュニケーションを通じて“共通のゴール”を見出すことで、お互いが向き合う関係性から、同じ方角を見つめる関係性になれることを理想として、プロジェクトにおけるビジョンを定義することからスタートをします。
今回のケースでは、ロゴのリデザインを通して生み出したい価値や影響についての対話を深めるなかで、企業としてのビジョンの不足やそれらをカタチ化できていないことなど書から、企業として社内外に発信していくメッセージ自体も同時にデザインしていく必要性が浮かびあがってきました。
そのため、次フェーズではクリエイティブを検討するうえでのピース集めと同時に、企業として発信するメッセージの背骨を見つけ出していくというステップとなっていきます。
CORE – 象徴する価値観の定義 –
◆1.キーワード抽出とマッピングによる価値観の選定
実施したインタビューの内容から、ゴーガをゴーガたらしめていると考えられる価値観を抽出。キーワード化し、マッピングをしながら相応しいものを絞り込んでいくという方法で、ブランドとして最も大切にする価値観を探り出していきました。
ゴーガ様自身の中心にあるものが言語化されることで概ねの指針が見えることと、それらをクリエイティブのマテリアルとすることで、企業としての意志が込められたアウトプットを建設的に検討していくことができます。
◆2.クリエイティブコンセプトとなるナラティブの開発
ロゴデザインというアウトプットである以上、最終的にひとつのカタチに落とし込んでいかなければなりません。価値観ワードだけでは抽象度が高いので、それらをマテリアルとして構成されたナラティブの開発をします。
また、今回のプロジェクトビジョンの実現には、カタチにも言葉にも共通したコンセプトで背骨が通っていることが必要です。
そのため、最終的には開発したナラティブ自体を企業のビジョンとしても採用し、さらにタグラインの開発も並行して進めていくこととなりました。
IDEA – 言葉と意味の視覚化 –
◆1.ビジュアルアイデアを検討する
ビジュアルをデザインするフェーズです。
しかし、すぐにロゴのデザインをするのには可能性がまだまだ広すぎる状態です。COREフェーズで作成したナラティブの内容をもとに、”タグライン”とその意味を表現する”ビジュアルアイデア”を検討していきます。ナラティブを表現できるビジュアル方針をアイデアラッシュしていき、最終的に5つほどの方向性に集約、デザイン検討していくアイデアを絞ります。
そして、抽出した価値観についてもそれぞれのアイデアごとに再現性のバランスを確認していきます。
◆2.デザイン案を検討する
ディスカッションを重ねて、定まったアイデアの方向性でデザイン案を起こしていきます。たくさんのラフスケッチから可能性を感じるデザインをピックアップして、ラフデザインを作成していきます。アイデアの時点で定めた方向性も実際のラフデザインに起こしてみると、他のアイデアの方が優れていることが見えてきたりと、ここからは思考を行ったり来たりしながら、手を動かして考えていくクラフトマンシップが必要になってきます。
また、デザインにおいては正しさだけではなく、好き・嫌いという判断基準も肯定的に取り入れていくことで、クライアント様自身が誇りの持てるシンボルとして仕上げていくことができると考えています。
デザイナーの頭の中を可能な限り共有し、一緒に作り上げていく姿勢を大切にしたいと考えていますし、サンプルのデザインはモックアップデザインファイルなどを活用し、実際に使用されるプロダクトとしてイメージ確認していただくなど、クライアント様の想像力をかき立てながらデザイン検討を進めていくことが結局のところ近道なのかなとも思います。
具体的なデザインサンプルを共有しながらディスカッションを重ね、いただいたフィードバックを咀嚼していく中で、アイデアと形が収斂されていきます。最終的には「シンプルでダイナミックなデザイン」を目指していきたいというゴーガ様の想いに応え、表現を可能な限りまで削ぎ落としたデザイン案を最終提案といたしました。
DETAIL – カタチの精緻化 –
デザインのアウトラインが定まった後は、色、サイズ、バランスなどの品質検証を繰り返すフェーズとなります。ここから細かな調整を繰り返し、ロゴデザインとしての堅牢性や耐久性、完成度をあげていきます。
シンプルでダイナミックかつ整合性の高いデザインを求められていましたので、ベストな形状とバランスを導き出すために”黄金比”を用いた設計を行いました。
幅や位置、角度などに黄金比を採用しながら最終的なバランスを決めていきました。すべての状況において万能な設計というわけではありませんが、ひとつの基準・選択肢として引き出しに入れておくと良い方法だと思います。
感覚的に調整をおこなっていった結果、計算しなくても黄金比に等しいバランスになっていたということもありますので、最後の1mmを決める際の参考として考えておいていいと思います。
FINISH
これらの工程を経て完成したのが以下の「タグライン」と「ビジョン」、そして「ロゴデザイン」となります。
◆タグライン&ビジョン
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DISCOVER DESTINATIONS
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新たな行く先を探し続け、進むべき道を示す。
その行き先は、場所にとどまりません。
業務効率化、顧客満足度向上、価値創造──。
それらすべてが、ゴーガの地図ソリューションが目指す目的地です。
印刷物だった地図は、スマートフォンで表示されるようになりました。
建物と道が記されていた地図には、自らの位置とルートが示されるようになりました。
しかし、地図ができることはそれだけではありません。
この瞬間も変わり続ける世界。人、もの、情報。そして新たに生まれる課題と解決策。
そのすべての受け皿として、ゴーガのソリューションもまた変わり続けます。
わたしたちは地図とテクノロジーの専門家として、
長きにわたり地図の可能性と向き合ってきました。
柔軟に、スピーディーに、型にとらわれない。
自由に可能性を探求する姿勢が、人を、企業を、目的地に導くと信じて。
◆ロゴデザイン
これらの工程を経て完成したのが以下の「タグライン」と「ビジョン」、そして「ロゴデザイン」となります。
ビジョンの冒頭にもあるように、人と企業とともに「新たないく先を探し続けること」こそが、ずっと大切にしてきた価値観であり企業姿勢でした。そのため、これから始まる道のりを共有する「出発地点」を意味するシンボルこそがゴーガ様に相応しいのでは?という着眼点を得てデザインされています。
そして、「進むべき道を示す」ことは、ソリューションとしてもプロダクトとしてもゴーガ様が提供していく価値そのものという考えを反映しベクトルを感じさせる大胆なカットを施したフォルムになりました。そうして、内側にあるものと外側から求められるものを内包させた、ビジョンシンボルとしてのロゴが出来上がりました。
株式会社アクアリング|実績ページ
最後に、私たちAQUARINGは「Oneness for good design」というステートメントを掲げ、プロジェクトメンバーが”仲間”となることでよりよいモノづくりを実現していくことをテーマとしています。
それらもクライアント様のご理解とご協力があって初めて成立するものですし、今回のように中長期スパンでのクリエイティブ開発においても並走し続けていただけたからこそ実現できたプロジェクトだったと思います。
今後も感謝と挑戦の中で新たなクリエイティブ開発のお手伝いをさせていただけたら嬉しい限りです。