WONDERWALL
WONDERWALLは、既存のルールにとらわれない、新しい楽しみ方ができるクライミングコンテンツです。 デジタルを組み合わせることで、クライマーの動きをインタラクティブにビジュアライズし、 よりエンターテイメントにコンテンツ化。プレイするクライマーだけでなく、 オーディエンスもいっしょになって楽しめるクライミングをデザインしました。
https://www.aquaring.co.jp/wonderwall/
アクアリングの“人” たちが、どんな想いで、どんなプロジェクトに取り組んで いるのかを拾いあげ、深掘りする社員インタビューをお届けします。
Web界のアカデミー賞とも言われる「Webby Awards」受賞をはじめ、アクアリングの新境地を切り開いた自社コンテンツ「WONDERWALL (以下WW)」。今回はプロジェクト発足時から誰よりもWWと向き合い、試行錯誤を繰り返してコンテンツの価値を高めてきたクリエイティブディレクター・佐藤直樹さんの想いを深掘りします。
WONDERWALL とは
クライミングウォールにプロジェクションマッピングとセン サーを組み合わせて、既存のクライミングにはない新しい楽し み方を体験できるスポーツコンテンツ。Webby Awards やグッ ドデザイン賞、文化庁メディア芸術祭の推薦作品に選出。日経 トレンディ(日経BP 社)「2017 ヒット予測100」、イッポウ(CBC テレビ)生中継、シューイチ(日本テレビ)「2017 年トレンド 予測」など多数のメディアからも注目されています。
最初ボルダリングで何かしようと言われたとき、ボルダリングについてよく分からないし、体験したこともないし、正直やりたくなかった(笑)。なかなかいいアイデアを出せない中で、プロデューサーの茂森さんは「ボルダリングで何かできるはず!」という強い思いを持っていて。
「“新しい競技になるようなコンテンツ”を目指そう」というお題をもらい、そこから「JINTORI」というコンテンツのベースとなるようなアイデアが生まれました。クライミングウォールに自分のカラーを塗り、制限時間内に獲得した陣地の面積を競い合い、決められたコースの完登を目指すという従来のボルダリングにはない、1対1の対戦型ボルダリングです。
JINTORI
JINTORIの開発をスタートしてすぐ、1ヶ月後にボルタリングジムでイベントを開催することが決まって。
その後、ほぼ月1回のペースでイベントがあり、改良したものを試していきました。この開発スピードを実現できたのは、通常デザイナーが担うビジュアルの考案もエンジニア主導で進めてもらったからだと思います。会場で反応を見ながらすぐに改良できたので、開発が一気に進んでいったことが印象に残っています。エンジニアメンバーが頑張ってくれたおかげですし、本当に感謝しています。
現地でのプログラム調整
JINTORIは2人のプレイヤーが同じ壁に登るので、平面ではなく上下で重なるという危険性もあります。(「シューイチ!」などのテレビ放映後)Twitterで危険だとディスられるという初めての経験もありつつ、もう一方で面白そうという賛成意見もたくさんいただき、賛否が大きく分かれたことは貴重な成功体験でした。
新しい発想のものは多くの場合、賛否の意見が出て、それが話題となって跳ねる可能性も高くなる。否定や批判があるからこそ改善ができて、もっといいものができる循環になっていくという点でも良かったのではないかと。
ボルダリングの常識からは考えられない発想だろうし、もし僕がボルダリングをしていたら思いつかなかったはずだけど、だからこそ観戦するオーディエンス的な立場でアイデアが出せて、JINTORIを見た人にインパクトを与えられたのかもしれません。
それまでデジタルがテーマのイベントに出していたんですが、割と珍しさもあって人が集まってくれることが多かったんです。でも、東京で開催されたアディダス主催のボルダリングイベントに出した時の反応の悪さ、あれほどあからさまに人が見てくれず、反応がなかったのは初めてで、トラウマレベルでしたね(笑)。
その敗北感があったからこそ、開発のベクトルが間違っていたということに気づいて、方向転換や見直しができた。WONDERWALLが賞を獲得できたり、お客様からその失敗を忘れさせていただけるような反応がもらえた今となっては、必要な過程だったと捉えています。
ADIDAS ROCKSTARS TOKYO の会場
クライマー個人の体験として「楽しかった」で終わらせず、オーディエンスが見ていても面白いものにしたいというのが僕らの狙っているところです。クラブのような音楽と映像のある空間で、ウォールを中心にエンターテインメントをつくるというイメージ。
その発想を起点に、オーディエンスの反応がウォールに反映され、クライマーが何かアクションするという演出を考えたり。純粋に壁を登るとか動くことを大事にしながらも、クライマーがパフォーマーとなって、オーディエンスが思わず写真や動画を撮りたくなるようなコンテンツを目指して作り込んでいっています。
これは、僕らの中にはCGが作れるメンバーがいなかったので、CGができないならプログラム寄りのゲームや、プレイヤーをビジュアライズするコンテンツを作ろうという逆転の発想から生まれた方向性でもあります。今後は、壁に投影される絵的な立体感だけじゃなくて、オーディエンスを含めた空間全体での立体的なコミュニケーションを考えたいと思っています。
VC-Visual Climber :
会場のBGM の曲調とクライマーの動きをウォールにビ ジュアライズし、クライミングの独特の動きや力強さをパフォーマンスとして表現。 オーディエンスの楽しみやSNS 拡散を意識したコンテンツ
僕は頭がよくないから、頑張っても初速が遅い。それが自分でわかっているから、まずプロトタイプを作るという方法がしっくりきています。
トップのクリエイターは、もしかしたらいきなり霧の中から光っているものを見つけられるのかもしれないですけど、僕は霧をかき分けてかき分けて、迷って壁にぶつかってやっと見つけるタイプなので、まあしょうがないというか、そうするしかないんだと思います。
ただ、回り道をしているからこそ、プロジェクトが終わるときには「これはこうだった、だからこうです」って、コンセプトもストーリーも整えて掴めるようになりました。
僕はディレクターだから、プロジェクトの最初の段階でアイデアを出して、自分のやりたいことをやりやすい。でも可能性を広げるためにも、最初に決めきらずにプロジェクトをスタートして、デザイナーやプログラマーに「この案はまだ途中だからいいアイデアがあったらちょうだい」と言いながら進めていて。そうすることで、自分がチャレンジしたいことだけじゃなく、プロジェクトメンバーがチャレンジしたいこともその仕事に忍ばせることができる。結果的に自分のアイデアや初期段階の想定以上のものができあがると思っています。
クライアントに対しても、作ったものを判断する人ではなく、同じプロジェクトメンバーとして加わってほしいと思っていて、「共にものを作る人として、僕らはみなさんと一緒に作り上げたいです」ということを伝えるように意識しています。
クライアントワークは、その業界の理解や業界のプロであるクライアントからの意見は重要。それを早い段階でヒアリングすることで、そのモノを作るための裏側のストーリーを作ることができる。ストーリーがあるから作りたいモノやその空間で何を実現したいのか、作り手も納得しながら進めることができるし、コンテンツを見たり体験したりした人も共感してくれるはず。つまり、僕ひとりでは何もできなくて、最初からみんなと一緒にどう作り上げるかが大事だと思っています。
どこまでいっても僕だけでできることではないし、メンバーはとても頼もしいです。自社サービスを育てるっていうアクアリングに経験値がないことで、失敗も戸惑いもあるなか、チームでなんとかしなきゃいけないという感じでここまできた。
何が正しいのか確信を持てない状況だし、仕事だからやるしかないと思ってやっていたのかもしれないけど(笑)、それでもここまで一緒に作り上げてくれたメンバーみんなに本当に感謝しています。
今回「WebbyAwards」をはじめ、多数の受賞をいただけたことは、対外的に認められたひとつの証だと思うし、みんなで獲得した成果としてとても嬉しかった。僕のわがままが叶うなら、これからもこのメンバーでやっていきたいです。
イベントの様子を見守る開発メンバー
WWの【プロジェクト秘話①】もぜひご覧ください!