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【INTERVIEW】日本から世界へ!人と人とを繋ぐ「食のC2Cマーケット」が作る未来とは:ポケットマルシェCOO 山口幹生(中編)

前編はこちら

ロンドンから岩手の被災地へ

ロンドンでは情報が錯綜していて、震災直後は「東京がやばい」という話が耳に届いたりもしていました。出社すると、東北の工場が一つ潰れてしまったということで、影響を24時間体制で調査しました。その後、友人や家族に震災時の話を聞き、日本人にとって衝撃的なできごとだったのに、それを自分事として経験しなかったことにひどく違和感を感じました。

その年、「シェアノサイト」を一緒にやっていた友人が病気で亡くなりました。自分のことを深くまで知ってくれている友人、そして、日本に戻って一緒に事業を拡大するという未来。それらを一気に失い、喪失感をどのように処理したらよいかもわからず、途方に暮れました。ただ、一つ仮説があったんです。東北に行けば、何か道筋が見つかるかもしれない、と。そこで、ロンドンから帰国してSONYを退職し、岩手県釜石市に移り住むことに決めました。

ー 釜石では、何をされたのでしょうか?

コミュニティ支援をしていました。行政と住民の間に入ってやり取りを円滑にしたり、現地の困りごとをヒアリングして外部支援団体に伝えたりと、被災者の生活を支えるコーディネーターの役割を担っていたんです。

住んでいたのは釜石の南のはずれにある集落で、川を鮭がのぼる、とてもきれいな場所でした。暮らしているうちに現地の方と触れ合う機会が増え、その中にはご家族を震災で亡くした方々もいて、お酒を交えながら次第に色々な話をしてくれるようになりました。

最も印象的だったのは、漁師の方々との出会いでした。彼らのたくましさや自然と向き合って生きる術は、自分がこれまで知っていた世界にはなかったものだったんです。浜など漁師が多いエリアでは、震災後の被害が最小限になるよう、人々が力を合わせていました。薪を拾いに山に入ったり、土管をくりぬいてお風呂を作ったり、自宅から発電機を持ってきて皆で集まったり、冷蔵庫の中のものを持ち寄ったり。彼らは単なる食べものの供給者ではなく、生きるためのノウハウを持った人たちでした。一方、市街地では3日間食べ物がない、などということが起きていました。

漁師の方の言葉で印象に残っているものがあります。「震災がきっかけで、何もなければ絶対出会わなかったような人たちと出会えた。この出会いを大事にしたい。これまで、自分の採った食べものがどう受け入れられていたか知らなかったけれど、目の前で食べてもらって、直接「うまい!」を聞けてよかった」

高橋博之との出会い

ー 釜石で、ポケマル代表の高橋博之さんと出会われたんですよね?

そうです。人からの紹介で知り会って、都市と地方の話をしました。「東京の人が被災地にきて、違う価値観に触れ、地方の人と関係を築いていく。今後はそれが大事になるんだ」という話を博之さんから聞いて、とても共感しました。

まだポケマルは誕生していなくて、そのルーツとも言うべき「食べる通信」を博之さんが立ち上げようとしていた頃です。「幹生くんも一緒にやらないか」とお誘いを受けました。でも、その時は、博之さんと一緒にやることを選べませんでした。被災地で水産加工会社の社長さんからアドバイスを求められた時に何も答えられず、自分のビジネススキルの不足を痛感していたからです。今はまだ、博之さんと仕事をしても、自分は価値が出せないと思っていました。

そこで、東京に戻ってきて、ビジネススキルを伸ばすことに注力しました。経営コンサルティングを手がけるリヴァンプで3年ほど働き、その後独立して自分の会社を持ったことで、ようやく多少の自信がついたんです。

その頃にたまたま、博之さんと再び会うことになりました。その時、博之さんはポケマルをこう説明していました。「ポケマルは、単なるECではなく、メディアなんだ。見えないものを見えるようにする。異質なものを繋げる。そして都市と地方をかきまぜる」。

自分は、被災地での生活を通じて、人と人との繋がりが大事だということを痛感していました。当時被災地にいた東京の人が、今もなお、仲良くなった漁師さんに対して販路の紹介をしていたりする。だから、「食材を扱うITのベンチャー」ではなく、「人と人とを繋げる手段」として、ポケマルに関心を持ったんです。

生産者と消費者の間に会話が生まれ、やがてそれが信頼となり、地方の文化が都市に伝わっていく。そのきっかけを提供できるポケマルに、ジョインすることを決めました。

後編へ続く

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