三澤 音(Oto Misawa)ブランドコミュニケーション事業部 事業部長
筑波大学人文・文化学群卒業後、2019年にベクトルグループの株式会社プラチナムに入社。PRコンサルタントとして2年半勤務後、株式会社Aに転職。2023年よりブランドコミュニケーション事業部の事業部長を務め、マーケティングだけでなく、商品開発からサポートするサービスの立ち上げからグロースまでを担う。
新しいPR・マーケティング手法を身につけたい
ーー大手広告代理店から転職を考えた背景について教えてください。
きっかけは、PRパーソンとしての提案の幅を広げたいと思ったことです。
前職ではクライアントのPRをお手伝いしており、テレビ、雑誌、Web記事のパブリシティ獲得をメインでおこなっていました。メディアに取り上げられることによって話題になったり、商品への信頼が増したりすることに、やりがいを感じていました。日々、メディアやトレンドについて研究をし、どのような文脈であれば記事掲載してもらえるのか、テレビで紹介してもらえるのかを試行錯誤する毎日でした。\
そもそも私が前職を選んだ理由は、企業からの一方的な発信ではなく、自然なかたちで商品やサービスを紹介できるPRという手法に惹かれたからでした。広告というジャンルは、ユーザーにとって鬱陶しく感じられてしまいがちですが、メディアなど第三者を通じた発信ならば自然に商品やサービスのよさを伝えられると思ったのです。消費者に押し付けない、一方的にならないコミュニケーションという軸は今も大切にしています。
施策の効果計測が可能で、かつ効率的にターゲットに情報を届けられる、別の選択肢を増やしたいと思うようになったタイミングで、転職活動を始めることにしたのです。
ーー株式会社A(以下、A Inc.)へ入社した理由を教えてください。
インフルエンサーマーケティングという手法に可能性を感じていたからです。
私がこれまで携わったメディアプロモーションの場合、誰に見られて、誰に買ってもらえて、どれぐらい知名度が上がったのか、といった結果はわかりにくいものでした。インフルエンサーマーケティングの場合は、インプレッション数や特定リンクへのアクセス数など、ある程度数字で結果の計測ができます。自分の企画がどれほどの人へ影響を与えられたのか、効果検証が可能な点に魅力を感じていました。
また、メディアの場合はその媒体自体にファンがいますが、インフルエンサーマーケティングは「人」にファンがつきます。消費者に共感をさせる力が強く、熱狂的なファンも多く生まれるところも魅力的でしたね。
そこで、転職活動ではインフルエンサーマーケティングに関わる会社を中心にエントリーをし、話を聞いていました。そのなかでもA Inc.は自分の求める環境として最高で、とくにいいなと思ったのは、インフルエンサーマーケティングツール『Astream』です。
Astreamはインフルエンサーのフォロワーの中身を見ることのできる、国内でNo.1のデータ量を誇るツールです。インフルエンサーのキャスティングを感覚頼りではなく、フォロワーのデータに基づいて判断するサポートをしてくれるAstreamは、まさに欲しかったツールです。最高のプロダクトだと感じて、転職活動中、思わず他社にも紹介したほどです(笑)。
マーケターの枠を越え、D2Cブランドを立ち上げに挑戦
ーー現在の業務内容を教えてください。
ブランドコミュニケーション事業部の事業部長を務めています。
事業部の創設が2023年11月ごろで、私は事業立ち上げのタイミングから事業部長を務めています。事業内容は、商品開発からプロモーションまでのサポートです。A Inc.はインフルエンサーマーケティングに絞ったサービスを提供していますが、ブランドコミュニケーション事業部の場合、マーケティング領域を越えて、商品企画からお手伝いをしています。
具体的に私が開発に携わったのは、まつ毛美容液「BASATTO」です。
(まつ毛美容液「BASATTO」)
最初にクライアントからご相談頂いたのは「特定成分を配合した商品を新しくつくりたい」という内容で、まつ毛美容液かどうかも、決まっていませんでした。市場リサーチ、消費者のインサイトリサーチから始め、市場優位性の高い商品を特定する段階から携わらせていただきました。
商品が決まってからは、ブランド名、パッケージ、ロゴと決めていき、商品リリース後はプロモーション戦略の立案から、施策運営まで任せていただいています。プロジェクトメンバーは5名で、それに加えて各領域のプロフェッショナルの方々に業務委託として入っていただき、必要な工程を適切なメンバーで進めました。
ーー新しいチャレンジかと思いますが、スムーズに進められたのでしょうか?
決してそんなことはありません。
とくに大変だったのは、あらゆる判断に根拠をもつことです。どれだけミーティングで盛り上がっても、そこで生まれたアイデアをそのまま採用することはなく、ユーザーインタビューやアンケートを駆使して、裏付けを取りながら進めていきました。
ーー一仕事を進める上で大事にしたポイントがあれば教えてください。
アウトプットのレベルを下げないことです。前職のときから変わらずに大事にしていることでもあります。
とくにBASATTO立ち上げでは、ホームページや同梱チラシなど制作物が多く、社外のパートナーと協力するケースがよくありました。当然、外注先の方々もその道のプロですが、ブランドのことを熟知しているのは我々です。だからこそ、理想のアウトプットになるように、隅々までしっかりとフィードバックをしたのです。
たとえば、BASATTOブランドサイトのトップビジュアルに起用した目元の写真は、モデル選びに非常にこだわりました。実際に何人ものモデルさんとお会いし、イメージ通りの力強いまつ毛の持ち主を探しました。撮影時には、我々もスタジオに行って、写真をチェックしながら「ここにもう少しまつ毛を増やせませんか?」と細かい調整をしました。
細かいこだわりに感じられるかもしれまそせんが、トップビジュアルの写真は商品の魅力に大きく関わるものです。それがわかっていたので、とくにこだわり抜いてつくりました。
(まつ毛美容液「BASATTO」ブランドサイトのトップビジュアル)
隅々までこだわってブランドを立ち上げただけに、実際に世の中へリリースできた瞬間や、お客さまに購入いただけた瞬間はうれしかったです。我々が仕込んでいないUGC(ユーザー生成コンテンツ)がどんどん溜まるのを見て「意図した通りの伝わり方をしているな」と安心もしました。
これまでのクライアントをサポートする側から、ブランド側に回ったことで、新しい視点を持てるようになりましたね。
ゼネラリストより、プロフェッショナルとしての道を極めたい
ーー今後の展望について教えてください。
PRに関する多様なニーズに対して、的確なソリューションの提案ができるプロフェッショナルになりたいです。
実は私は、事業部長というポジションにこだわっているわけではありません。キャリアを積んで役職を上げ、経営者に近いポジションになりたいという願望はなく、自分のできることの幅を広げ、実績を積んでいきたい気持ちの方が今は強いですね。
とくに磨きたいのはブランドと、その先の消費者を、本当の意味で理解する力です。
「顧客理解」という言葉はよく聞きますが、「ブランド理解」には、クライアントの理解だけではなく、その商品を買い求めるエンドユーザー側の理解も必要です。これまでの業務で、ブランド側の視点を身につけることができたので、これからはとくにエンドユーザーの理解を深め、両者の橋渡しがスムーズにできる人材になれればと思っています。
また、A Inc.は、社内だけでなく社外の人と協業する機会も多く、あらゆるプロフェッショナルから学びを得られる場所です。おかげで、自分とは違う専門性に触れる機会も多く、提案の幅を増やせると感じています。
今後もA Inc.の環境を活かしながら、情報の発信者も、それを受け取る生活者も、どちらもハッピーになれるコミュニケーションづくりを続けたいです。