新崎 優太(Yuta Shinzaki)CBDO(Chief Business Development Officer)
サイバーエージェントグループにて「新規事業部」「コンテンツ事業部」に配属されたあと、ブロックチェーン領域でベンチャー企業の立ち上げにCOOとして参画。Web3.0、NFT、GameFiなどのコンサルティングを通して、業界の黎明期を経験。2020年3月に株式会社Aへ入社。現在はCBDO(Chief Business Development Officer)として、プロダクト開発を担当する。
ここなら、「ちゃんと」任せてくれそう
ーー株式会社A(以下、A Inc.)に決めた理由について教えてください。
複数社の話を聞いたなかで一番、自分のやりたいことが自由にできそうだと思ったからです。
転職活動中、多くの会社は、「任せたいポジションはこれ」「求めている能力はこれ」と、私に求める役割を具体的に示してきました。わかりやすいオファーに安心する人も多いと思いますが、私は「ベンチャーの面白さってそうじゃないよな」と思っていました。どうも、会社としてすでに描いているビジョンがあって、そこに向かうピースの一部を探しているように感じて、自由がないように思えたのです。
A Inc.の場合、具体的な話は二の次で、一貫して伝えてくれたメッセージは「僕らと一緒に未来を描いてほしい、これから積極的に事業展開を進めたい」というものでした。会社としてどんどん挑戦の数を増やしたいのかなと思いましたし、メッセージのシンプルさに本気度を感じました。ここなら「ちゃんと」任せてくれそうだ、と思いましたね。
ーーインフルエンサーマーケティングという領域には、魅力を感じていたのでしょうか?
はい。
A Inc.に入社する前、私はブロックチェーンサービスの会社を知人と一緒に起業しています。メディア運営、コンサルティング、海外サービスの国内展開支援など、さまざまなサービスを展開する会社でしたが、マーケティングにも力を入れていました。
あらゆるマーケティング施策に携わりましたが、インフルエンサーマーケティングの「ロジックのわからなさ」は、とくにおもしろい感じました。感覚やセンスが求められ、とくにブロックチェーンのようなテックの考え方と対極にあります。成功のロジックを見つけることは難しいですが、ハマったときの爆発力は圧倒的で、他のマーケティング手法では出せない結果を叩き出せます。インフルエンサーマーケティングを科学し、再現性を担保できれば、世の中に与えられるインパクトは大きいのではと思っていましたね。
過去の経験をもとに、開発中プロダクトの方向性を大きく転換
ーーこれまで携わった仕事のなかで、最も印象に残っているプロジェクトについて教えてください。
入社後すぐに任された、Astreamの開発は印象に残っています。実は、最初に聞いた構想は、今リリース済みのインフルエンサーマーケティングツール『Astream』とはまったく違いました。しかし、市場リサーチを進めるうちに、想定していたビジネスモデルだと、難しいのではと感じました。すでに先行しているプロダクトがあり、勝てないと思ったのです。
(インフルエンサーマーケティングツール『Astream』のサービスページ)
そう考えた背景には、前職での経験があります。私は、ブロックチェーン関連のサービスづくりに取り組んでいた最中、バブルの崩壊を経験しました。活況だったときは、多くの会社が参入し、優秀な人材も流れ込んできました。ただ、バブルが崩壊したとき、95%の会社は傾き、そのまま撤退してしまったのです。市場には流れがありその流れには抗えないのだと、恐怖にも近い、強烈な感覚を抱きました。幸い、私が起業した会社は流行に影響されにくいビジネスモデルだったので、生き残りました。ただ、一歩違えば、地獄だった可能性もあったのです。
そのような経験から、「正しいタイミングで正しいポジションを取れているか」はプロダクト開発において何よりも重要だと痛感しました。とくに新しいプロダクトを世に出すならば、今の市場にフィットしたものでなければならないと、強く考えるようになりましたね。
A Inc.でプロダクト開発を任された際は、徹底的に市場リサーチをおこないました。どこかの媒体を通じて間接的に入手できる二次情報ではなく、自分で実際にサービスを使ったり、中の人に聞いたりして集めた一次情報をもとに、新しいプロダクトのかたちを模索したのです。
そこで目をつけたのが今のAstreamの原型となる、アカウント分析機能でした。
(Astream上のアカウント分析機能「フルレポート」の一部)
同じような機能を搭載したサービスはいくつかありましたが、まだ圧倒的なシェアを獲得したサービスがなく、うまくいけば業界No.1ツールをつくれる可能性がありました。
当然、事前調査の段階で確実なことはわかりませんし、実際に思い描く機能が実装できる保証はどこにもありません。それでも、自分の調べたことを代表や役員に伝えると、「それでいこう」と、その場で方向性を判断してくれました。私への信頼の高さを感じましたし、社内プレゼンといった面倒な手続きが一切いらないところに、非常にやりやすさを感じました。
「長所を伸ばす」文化で、各メンバーの性質に合わせた任せ方
ーー裁量権の大きい企業は他にもあると思いますがA Inc.は、なにが違うのでしょうか?
本当の意味で、圧倒的な裁量権を持たせてくれるところです。私の場合は進め方からプロダクトの方向性まで、すべての判断を任せてもらえ、一切口出しはなかったです。
「任せる」と言うのは簡単ですが、本当の意味で人に任せることは、非常に難しいことだと思います。口では任せると言いつつも、そのやり方は上司から指定されるパターンも多いです。しかしそれだと、自分のプランでないぶん、どこか人ごとになってしまって、私は好きではありません。任される人のモチベーションを無視している企業が多いなか、A Inc.の場合は、相手に合わせた任せ方をしてくれるように感じました。
その根底にあるのは、「メンバーの長所を活かす」という経営陣の考え方だと思います。私は、任される範囲が大きいほど、モチベーションの上がるタイプですが、細かい道筋まで決まっている方が安心するメンバーには、より具体的な指示が出されます。メンバーの性質に合わせ、それぞれが最高のパフォーマンスを発揮できる環境づくりができている会社だと思います。
半年ごとの事業立ち上げで、経営を安定させ、メンバーエンゲージメントも向上させる
ーー現在の業務内容について教えてください。
詳細はまだ発表前なので言えませんが、Astreamとは別の新規事業を複数つくっています。
複数事業を立ち上げている背景にはコンパウンド経営という考え方があります。会社のリソースを一つのプロダクトにつぎ込むのではなく、複数のプロダクトを同時に展開することで、既存リードを活かしながら、生産性を高める戦略です。仮に市場の変化で特定プロダクトがうまくいかなくなっても、会社全体の売上は安定する、というメリットがあります。
コンパウンド経営を推奨する背景には社員の選択肢の幅を広げるという狙いもあります。これから先、インフルエンサーマーケティングを極めた社員に対して、新しいチャレンジの領域を用意できればと考えているのです。
ーー最後に、今後の展望を教えてください。
引き続き、新しいプロダクトづくりを続け、半年に一個といったハイペースでリリースし続ける予定です。目指すのは、会社の売上規模を5年で100億円まで押し上げることです。それぞれのプロダクトでどれくらい売上をつくるのか、目標から逆算しつつ、開発を進めていければと思っています。
売上が拡大し、会社にお金が貯まれば、さらに大きな「力」を持てます。力とは、決して権力のことではありません。A Inc.のビジョンに共感をしてくれたメンバーが成長でき、それぞれが才能を発揮できる環境を維持し続けるための、器のようなものだと捉えています。
ビジネスの世界は、見方によっては残酷です。市況や環境が不利に転じれば、どれほど順調に経営を続けてきた会社も、たちまち厳しい局面に立たされます。そうなったときでも、会社を立て直す、別の環境を見つける、起業する、と柔軟に生き方を選べる実力を、若いメンバーには身につけてほしいと思っています。
いわば一人一人を起業家にすることが、目指すところです。これから一緒に働くすべてのメンバーが自分の才能に目覚め、好きなことを追求できるフィールドを用意し続けるためにも、新しい事業をどんどん生み出し続けたいです。