11月6日(火)7日(水)に開催された、Product Manager Conference 2018。当イベントは「愛されるプロダクトを創ろう」というコンセプトのもと、プロダクトマネジメントに関わる人やそれを目指す人が集い学ぶカンファレンスです。ここでAbemaTV開発本部長の長瀬が インターネットテレビ局「AbemaTV」プロダクトの変遷 についてお話してきましたので、その一部をご紹介いたします。
熾烈な市場に埋もれないために
AbemaTVはこれまでに500億の先行投資をする、まさにサイバーエージェントの社運をかけたプロジェクト。「ネット発のマスメディアを創る」というビジョンを掲げ、現在3年目を迎えています。開発本部長として、初期から携わってきた長瀬は「PMのミッションはプロダクトの成果を最大化することである」と言い、Introduction期とGrowth期において大切なことについて語りました。
ネットサービス市場は、現在非常に熾烈な状況です。長瀬自身、サイバーエージェントで50を超えるサービスの開発に携わっていますが、現在も存続しているサービスは片手で残るくらいだといいます。プロダクトとして成立させるために大切なキーワードは「市場に埋もれないこと」だと述べました。
AbemaTVのプロジェクトがスタートした時点で、世の中には既にさまざまな動画サービスが出ていました。当時はオンデマンド視聴型のVOD、SVODが主流でしたが、そこと差別化をするために全く逆の発想をし、テレビのように受け身視聴ができるインターネットテレビ局という新しいポジションを狙うことを決めました。(長瀬)
初期は敢えて機能を絞り、ブランディング効果を狙った
”インターネットテレビ局”という新たなポジションを狙ううえで、リリース時には「横画面視聴」と「敢えて機能を絞る」の2つことを決断したAbemaTV。その真意は?
本格的に開発を開始して、半年間で250以上のモックアップを作ったのですが、当初は既存の動画サービスに倣って縦画面視聴を想定していました。しかし200個以上のモックアップを作っても、映像の見え方に納得出来るものが生まれませんでした。その中で感じたことは、映像スペックを最大限綺麗に活かすには、横画面視聴の方が良いんじゃないかということ。さらに”インターネットテレビ局”というコンセプトをユーザーに直感的に伝えることに加え、既にある動画サービスと明確に差別化する意図もありました。とはいえ、これはかなり勇気のいる決断でした。番組表についても、たくさん作ったモックの中で、ユーザビリティだけの観点なら他の選択肢もありました。けれど私たちは、より”インターネットテレビ局”というコンセプトを理解してもらいやすいものを選び、初期においてはブランド構築を優先する選択もしてきました。(長瀬)
AbemaTVでは、開局から1年後にオンデマンド視聴が可能な「Abemaビデオ」の提供を開始していますが、これも狙いの1つだと語りました。
現在「Abemaビデオ」の機能を利用している人は全体の約7割。当たり前ですが、オンデマンド視聴の方が利便性は高いです。けれど”インターネットテレビ局”というコンセプトを伝えるためには、初期のタイミングで機能を入れすぎるのは良くないと判断し、1周年のタイミングでリリースしました。立たせる機能をシンプルに目立たせ、きちんとブランドが確立したタイミングで、利便性を高めるフェーズとして実現させようと狙っていたからです。大事なのは、自分たちのサービスの特徴をきちんと理解した上で、どのタイミングでどのように出していくかの戦略も非常に大事だと思っています。(長瀬)
AbemaTVのグロース期の根幹にあるのはSNSの活用
AbemaTVのGrowth期において欠かせないのはSNSの活用で、特にTwitter投稿機能が大きく寄与しています。AbemaTVでは、コメントをソーシャル上に投稿すると、その投稿をしたタイミングの前後10〜15秒の動画がトリミングされ、一緒に吐き出されるのです。
私たちが期待していることは、常にソーシャルのトレンドに入れて、AbemaTVに来てもらうこと。ネット上の話題をいかに作るか?という課題をもとに開発した機能です(長瀬)
AbemaTVでは1年目から2年目にかけて、広告宣伝費を削減しています。初年度は広告費を投下し、ブランド認知を促進しましたが、2年目以降はコンテンツの力を使ってサービスを伸ばしていく方針で、Twitterの吐き出し機能はまさにその好例にあたります。
立ち上げ期において広報戦略を意識することもPMの大事なミッション
AbemaTVでは、2016年に9本、2017年に6本、2018年に8本、と初期のタイミングからプロダクトに関するプレスリリースが絶えず行われており、この広報戦略を練るのもPMの大事なミッションである、と長瀬は述べました。
AbemaTVがプロダクトの改善・開発に積極的であることを一般ユーザーに伝えることが大事だと考えています。特に立ち上げ期においては、広報戦略を意識することもPMの役割です。通常は数字を作る開発・事業を加速させる開発が優先されることが多いですが、AbemaTVにおいては、ある一定の割合で技術的なチャレンジや話題性を生み出せる機能開発を取り込んで定期的にローンチしています。(長瀬)
AbemaTVが開局して約2年半。ようやく世の中に認知され始め、マスメディアになるための挑戦権は得られたと思う、と語る長瀬。「ネット発のマスメディアを創る」ための挑戦はまだまだ続きます。
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