変化のスピードを早める社会、人間より生産性を高めるテクノロジー。ニーゴリユースでは従業員の生産性を高めることに注力を続けていますが、変化に対応し会社の可能性を広げるためにリブランディングを選択しました。社名と理念を変えるという大胆な選択をした背景を、社長の木原さんにインタビューしました。
and TRUNK株式会社は夢を運ぶ
-新社名の発表をお願いします。
新社名は「and TRUNK株式会社」です。
Trunkは持ち運びできる箱です。いろんなものを詰めて何処へでも行ける。まさに自由に横展開をする今後の姿を現していると思います。
Trunkには木の幹という意味もあります。つまり事業を横展開する上での基本部分、中心部分が詰まっているのがand TRUNK株式会社です。and TRUNK株式会社がまず幹にあって、そこから今行なっているリユース事業の買取項目の幅を広げます。さらにマーケティングやシステム開発、広告代理業など様々な枝が生えていく。ですので、今後新しい事業を展開する際の子会社名は「◯◯ and TRUNK」のような名称にしたいと考えています。
つまり「◯◯とトランク」、何をするにもトランクと一緒だよと。様々な事業を横展開していく中で、理念とかビジョン、リソース的なものは一緒に持ち歩くんだよという思いが込められています。
価値の創造と循環で、新しいアタリマエを創る
-新社名になるにあたって理念の変更はありますか
はい。新しい理念は「価値の創造と循環で、新しいアタリマエを創る」です。
これまでの理念は「価値あるモノが循環される社会を創る」でした。循環はまさにリユースに特化した理念といえます。
and TRUNKはそこからもう一段階上に行って、価値あるモノ自体も創造する思いを込めました。and TRUNKが横展開していく中で、独自のサービスや製品を新たに生み出していくのが今後の夢ですね。そして、「楽器オーディオ、カメラを売るならニーゴ・リユース」みたいに、世の中に新しい当たり前を1つくらい創ろうと思います。
あくまでこれまでの歩みの延長線上にあるのが今回の社名変更です。社名を変更してもニーゴリユースは屋号として残りますし、リユース事業として価値あるものを循環させる取り組みをしつつ、一歩先に踏み出して「創る」ことにも取り組むイメージですね。
変化に対応するためのリブランディング
-社名変更する1つ目の理由を教えてください
一番大きな理由は危機感です。世の中のスピード感や状況変化に対して、大きな危機感を覚えたんです。変化を生き抜くためにリブランディングが必要でした。
例えば、ニーゴリユースでは買い取った品物をヤフオクに出品する際に品物の情報を入力します。以前はスタッフによる手作業で行っていましたが、現在はRPA(Robotic Process Automation)を使用し、ロボットが全自動で行うようになりました。実際に運用が始まったのが今年に入ってからですが、すでに現場での生産性に向上が見られます。
しかし、私がRPAを導入しようと思ったのが去年の春頃。そこからRPA導入に関する打ち合わせや現場に合わせたシステム開発を行い、稼働するまでに1年かかりました。生産性を上げるスタートラインに立つまでに1年なんです。これに気付いた時「やばいな」と思った。今のままのスピード感でやっていたら事業が停滞する恐怖を覚えました。
-今のスピード感だと遅いと思うのはなぜでしょう
5Gが社会に導入されて世の中の形が大きく変わると思っています。例えば自動車分野だと電気自動車、AIによる自動運転と新テクノロジーがどんどん出てきていますが、5Gによって大容量通信が行えるようになれば実用化が一気に進むはずです。
そうなるとガソリンエンジンや従来の車の部品は不要になるでしょうし、小規模メーカーは淘汰されるでしょう。もちろんそこで働いている人々の雇用は奪われます。
さらに5GによってAIの導入が進むことで、あらゆる職場で単純作業に従事している人も雇用が奪われます。AIより生産性が低いからです。
これをニーゴリユースに置き換えて考えた時に、従業員を将来的に守れるのか不安が出てきます。当社は買取をした商品を売って利益を出すビジネスモデルです。今後競争が激しくなると予想しているので売値は下がる可能性が高いですし、買取額はむしろあげなくてはならないかもしれません。当然利益は薄くなります。
それならコストをカットしようと考えるわけですが、すでにかかっている人件費は減らせない。そうなると今のうちに従業員の生産性を上げるしかないという答えに行き着きました。単純作業をする人を新たに雇うのではなく、今いるスタッフの生産性が上がればコストは下がります。
しかし、従業員の生産性を上げる目的で始めたRPAの稼働にも1年かかってしまった。これだと時代の流れに置いていかれてしまいます。リブランディングをすることでもっとしなやかでスピード感のある組織にしたいのです。
リユースに固執しない事業展開をしたい
-社名変更する2つ目の理由を教えてください
将来的にリユース事業に固執しすぎない方がいいと思ったのが理由です。
ニーゴリユースに買取を依頼するお客様の平均年齢は60〜70代が平均です。皆さんが若い頃に使用していた1970〜1980年代のオーディオ等が買取商品となります。いわゆる終活ニーズに応える形でその世代のビンテージ製品を当社が引き受けているのが現状です。
しかし、20年後に今の50代が70代になった時に同じような製品を買い取れるかと聞かれれば、答えはNOです。なぜなら今の50代は我々が今買い取っているようなビンテージのオーディオを持っていないから。つまり、ビンテージ市場は縮小しますし、そうなると社員を安定して雇用することもできなくなります。
もちろんリユース事業は当社の主要事業としてこれからも成長させていくのですが、横展開すべきだという結論に至りました。横展開させる上で屋号である「ニーゴリユース」と社名が同じなのはネックになると思ったのです。
-横展開はどのように行っていく予定ですか
ニーゴリユースでは月間800件のお宅にお邪魔して、買取査定を行っています。この過程でネット上には決して流通しないオフラインの顧客情報が膨大に蓄積される。こちらを二次利用させていただいて、お客様に役立つ事業をしようと考えています。例えば水周りのリフォームなのか、他社さんの営業代行なのか。
また、現在ニーゴリユースでは年間1億円以上の広告費をかけているのですが、自社で広告代理店を立ち上げることも考えています。自社でやれば2000万円程度は広告代理店としての売上になる。
これらの横展開で売り上げた収益で自社のエンジニアを雇おうと。つまり、将来的に自社開発できる環境を整えていきたいんです。自社の生産性を上げるためのシステムなのか外部に向けたプラットフォームなのか、エンジニアに開発してほしいプロダクトのアイデアはいくつかあります。
リユースはこれからも主力事業です
-リユース事業はこれからどのような立ち位置になるのでしょう
and TRUNKになっても、リユースが当社の根幹事業であることに変わりはありません。社名を変更してもニーゴリユースは屋号として残ります。ニーゴリユースで行なっている楽器やオーディオ・カメラの買取以外にも、別の買取事業もすでに展開しています。
こうした様々なジャンルの買取事業も横展開を増やしていきますが、and TRUNK株式会社が一段階上に存在することで、各事業のリソースの転用やバックオフィスの統合もしやすくなります。
取扱品目は趣味のジャンルに力を入れて買取を行っていきたいと考えています。人が利益抜きで好きなことに注ぐエネルギーには、大きな可能性があると思うので。今後も大切に育てていきたいですね。