クルージングヨット教室物語114
Photo by K Muramatsu on Unsplash
おめかしの終わったラッコのメンバーたちは、ラッコを降りると、ばんやに向かって歩いていた。アクエリアスの香織も、ラッコのメンバーと一緒だった。
「入っても良いの?」
「どうぞ」
先頭を歩いていた瑠璃子が、ばんやの扉を開いて、店内へ入った。
「水槽がある!」
お店を入ってすぐのところに大きな生け簀があって、魚がいっぱい泳いでいた。
「カニもいる!」
動物好きの香代は、生け簀の中にいる魚たちに喜んでいた。
「カニ食べようか?」
隆は、香代に聞いた。
「食べたくて、カニって言ったんじゃないものね」
麻美子が、香代の代わりに代弁した。
「カニも食べられるの?」
「食べられるよ!この生け簀の中にいる魚は、皆食べられるものばかりだから」
注文が入ったらしく、お店の店員さんが網で魚をすくうと調理場に持って行ってしまった。
「本当に食べちゃうんだ」
香代は、ちょっと複雑だった。
隆たちの横浜のマリーナで貸し切っている場所は、奥のお座敷だけで、手前側のテーブル席には、マリーナ関係者以外のお客さんで溢れかえっていた。
「このお店、本当に人気あるんだね」
「やっぱ、東京からお父さん、お母さんも連れて来てあげよう」
麻美子は、隆に言った。
「電車でなく、ヨットでもなければ、車で連れてくれば良いんだよ」
「表の駐車場に停めて」
「ああ」
「そうね、それで連れてくるのが一番楽かもね」
麻美子は、隆に答えながら、マリーナの皆がいる奥の座敷に向かった。
「隆くーん!」
先に店へ来ていたアクエリアスのクルーたちが、座敷の奥から隆のことを呼んだ。
「おや、可愛いお嬢様じゃないの」
瑠璃子の着ているピンクのワンピースを見て、マジックインキのマッキー、巻さんが言った。
「でしょ、服だけは可愛いでしょう」
「そうだね。服だけは可愛いよ」
マッキーの巻さんは、陽気な人でヨットでもいつも冗談ばかり話していた。
麻美子が座った香代とは反対側の席が空いていたので、瑠璃子はそこに座ったが、何回か座り直しては、スカートの裾を直していた。
「座りにくいよね、やっぱりスカートじゃなくパンツで来れば良かったね」
同じく、スカートで来ていた香織も、自分のスカートの裾を直しながら、瑠璃子に言った。
「そうか、ここお座敷だからね、スカートじゃ座りにくいよね」
それを見て、麻美子が2人に話していた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など