クルージングヨット教室物語113
Photo by Yuma Nozaki on Unsplash
「え、やっぱり、これを着ていくのはやめようかな」
瑠璃子は、ラッコのキャビンの中で、自分が持ってきた衣装バッグを眺めながら言った。
「なんで?せっかく持ってきたのに」
隆は、瑠璃子に言った。
「だって、誰も皆、正装なんてしないんでしょう」
「私は、このままの格好で行くけど。こういう服以外持ってきていないから」
陽子は、瑠璃子に答えた。
「良いじゃん、可愛いんだから、瑠璃子だけでも、それを着て行こうよ」
隆は、着替えを迷っている瑠璃子に言った。
「あら、どうしたの?」
キャビンの中に戻ってきた麻美子が、瑠璃子に声をかけた。
「みんな誰も正装しないから、着替えずにそのままで卒業式に行くんだってさ」
「あら、せっかく持ってきたのに、私は瑠璃ちゃんの、そのワンピース姿を見たいな」
麻美子は、瑠璃子に言った。
「ね。じゃ、私も着替えようかな」
香織がいった。
「香織ちゃんも正装持ってきたの?」
「正装ではないんだけど、濡れたときの帰りの服と思って、普通のスカートなんだけど、バッグに入っているから」
「あら、良いんじゃない」
「でも、本当にただの普通のスカートだよ」
香織は、アクエリアスに行くと、自分のバッグを取って戻ってきた。
「あら、可愛いじゃないの」
「そう、たまに学校に行くとき着ているスカートだけど」
香織は、麻美子と話していた。
「え、なになに、どんなスカート?」
隆が、陽子と一緒にアフトキャビンに入ってきた。
「隆は、表に出ていて」
一旦、アフトキャビンに入った隆は、麻美子に追い出されてしまっていた。
「そろそろ、ばんやに行きましょうって」
アクエリアスのクルーが、隆のことを誘いにラッコのキャビンにやって来た。
「なんか、うちの連中、まだおめかしの最中なので、先に行っていてください」
隆は、アクエリアスのクルーに伝えた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など